史上最高のニュータイプとして
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/13 22:13 UTC 版)
「カミーユ・ビダン」の記事における「史上最高のニュータイプとして」の解説
最高のニュータイプ能力 比類なき天性のニュータイプであり、ガンダムの公式設定や総監督である富野由悠季の評価ではカミーユは宇宙世紀史上最高のニュータイプ能力を持つとされている。 劇中では味方から「アムロ・レイの再来」と評価されパイロットとしても目覚ましい活躍をあげ、アムロ本人もカミーユの事を「自分以上にニュータイプとして見込みがある」とその資質の高さを認めている(18話にて)。 公式ガンダム情報ポータルサイト「GUNDAM.INFO」や多数の設定資料集やアニメ誌での解説によれば「カミーユは宇宙世紀に登場した数多いニュータイプの中でも、最高のニュータイプ能力の持ち主である」と評される。 2018年3月発売のカミーユ・ビダン×ぴあにおいて優しすぎた最高のニュータイプ ―カミーユ・ビダンと謳われている。 2020年8月2日のYahoo!ニュースに掲載されたアムロとシャア…頂上決戦の結果は!? ガンダムシリーズ「最強パイロット」ランキング(宇宙世紀編)においてガンダムの生みの親である富野由悠季氏は、カミーユについて「宇宙世紀史上最高のニュータイプ能力の持ち主」と公に評している。 2021年3月11日発売のサンライズ監修・協力で出版されたガンダム41年計59作全映像作品ガイド「ガンダムヒストリー」にて公式にて最高のニュータイプ能力を持つとされると謳われている。 2021年4月30日に出版されたサンライズ監修で制作された機動戦士ガンダム・ニュータイプ伝説において宇宙世紀シリーズ全ニュータイプキャラクターの中で史上最高のニュータイプ能力を持つと評価されている。 2021年9月発行、kotoba2021 年秋号No.45 人類は「ニュータイプ」になれるのか 富野由悠季インタビュー71ページにおいて「カミーユが今まで描いてきたニュータイプの中で最高のニュータイプ能力者であると述べた理由にほんの短い期間ではありましたが、カミーユに全能者を目指させようと思ったことがありました。だけど、現代の我々と大きく変わってないいない近未来の人間に、全能を目指すだけのキャパシティーはありません。結果としてカミーユの精神は崩壊しました。カミーユ自身の意思で全能者を目指したわけでありません。少なくともそのような描写は劇中ではしていないはずです。ただ明らかに戦闘者としての能力が傑出していたために本人の人間的な限界を超えたものを負わされ続けて人間としての成長過程も、意思を強靭にするための時間的猶予も与えられず全能者への道以外の選択肢が閉ざされていきます。」またまず全能型ニュータイプなど絶対に生れないと言っておきます。とも語っている。 双葉社の『ガンダムの常識 ガンダムなんでもランキング モビルスーツ篇』の(もっとも強いパイロットは?)ニュータイプ編というランキングにおいて、カミーユは一位を取っている。その項目のなかで富野由悠季監督によると最強のニュータイプはカミーユであると説明されている。 サンライズが運営する公式ガンダム情報サイトにて、感受性が強く最高のニュータイプとして覚醒をしていくが、その能力ゆえに多くの人々の思いを受け止め、TV版では精神的に限界を迎えると評されている。 2014年12月に発売された「ガンダムUC証言集」に収録された福井晴敏氏の「ニュータイプ考察・試論で私論」(後に機動戦士ガンダムNTの公開を記念して販売された「ガンダム宇宙世紀メモリアル」にも再録)において歴史上、最も真のニュータイプに近づけたのはカミーユ・ビダンをおいて他にいないと福井氏は解説している。 ニュータイプとして強すぎる力に押しつぶされる TV版におけるカミーユは戦いの中でニュータイプとして覚醒していくのとは逆行して、その高いニュータイプ能力から彼の精神は鬱屈、疲弊していき、最終的にはシロッコとの最終決戦を終えて精神崩壊に陥ってしまう。 宇宙世紀の中でも最も優れたニュータイプ能力を持つがその力を制御できず悲劇的結末を迎えたカミーユは失敗したという見方もされている。 Zガンダムのプロデューサーを務めた内田健二によれば、自分の強すぎる力によって自滅したカミーユは失敗例でもありシロッコやハマーンといったニュータイプの力に敗北してしまったと説明している。 一方で新訳劇場版でのカミーユについて富野は、月刊マガジンのインタビューにて、「学習が出来、本当の意味でのニュータイプとなれたカミーユと比べれば、ニュータイプの代表例であるアムロでさえも、学習がないためオールドタイプとして死んでいくしかない」と評価している。 ニュータイプ同士の関係 初めて恋心を抱いた女性フォウとの出会いと悲劇的な別れは、特に重要なエピソードとして描かれている。ひたむきに向き合い続け、最後には解りあうこともできたフォウだが、自分の腕の中でその最期を見届けなければならなかった。それでもカミーユは悲しみを受け止め、その直後のティターンズを糾弾するシャアの演説を妨害から守るなど、フォウの死を無駄にしないために戦い続ける。そんなカミーユに、アムロは自分やシャアが見出すのに7年もかけた「行動する」という答えを実践できていると賛辞を送ったが、心に深い傷を残したことに変わりはなかった(38話にて)。 その後、ハマーンとはニュータイプ同士の精神邂逅を持ち、お互いの心の深奥の望むものを見て、カミーユはハマーンとも解りあえる可能性があると思ったが、ハマーンは自分の心に土足で踏み込まれたことに怒り精神邂逅を自ら拒絶したため、意識の共有ができても解り合うことはできなかった。その一方、植えつけられた偽りの記憶だが、自分を兄と慕うロザミアにはフォウの面影を見てしまう。そのロザミアも強化人間の呪縛から逃れられず、カミーユを敵と認識して襲い掛かるが、カミーユは自ら手を下すことでしか苦しむロザミアを救うことができなかった。この頃、度重なる戦いのために限界に近づいていたカミーユは、自分の能力も結局は戦争の道具でしかないのではないか、また戦争という大きな流れの中では自分もなすすべがないという心情を、「ニュータイプにできることといえば人殺しくらいなもの」という言葉で表現する(48話にて)。 グリプス戦役 グリプス戦役の最終局面では、カツ、ヘンケン、エマといった身近な人間が目前で次々と命を散らし、自らもジェリドら、立ち塞がる者の命を次々と奪っていってしまう。戦いの果ての平和に希望を持ちながら、本来は戦争自体を嫌悪していたカミーユは、その先鋭化しすぎた感覚によって戦場全体の悪意、哀しみ、人の死をより強く感じ取り、ヤザン・ゲーブルのような殺戮を愉しむ者への激情によっても精神をすり減らしていく。戦いと怒りを重ねるごとに無制限に肥大化していくニュータイプ能力は、疲弊しきったカミーユの精神を押し潰そうとする。 最終的にカミーユは、戦争を傍観者としてコントロールするシロッコこそ元凶と見て、この戦争で死んでいった人々のためにも討つことを誓い、死んでいった者たちの思念を自分の精神に取り込むことによってシロッコを討ち果たすが、その結末は周知の通りで、大きくなりすぎた自分の力が疲弊した精神を凌駕し、シロッコの断末魔の業想念という最後の一押しによって、精神疾患を発症してしまう。「いくらカミーユのニュータイプ能力が最も高くても、人間の限界なんてそんなものです。だからカミーユは気が触れるしかないんです」との富野の言葉にあるように、カミーユはその才能のために、テレビアニメ『機動戦士Ζガンダム』では悲劇的な結末を迎えたことになる。 精神疾患の発症後 精神疾患を発症はしたが、続編である『機動戦士ガンダムΖΖ』にも重要な役割を持って登場する。無論パイロットなどできるわけもなく、ファ・ユイリィや、ハヤト・コバヤシ、ガンダム・チームの少年達やアーガマのクルーなどに助けてもらいつつ生活することになる。 普通の人間のように生活し、意志を表現できなくても彼のニュータイプ能力は健在で、その能力でジュドー・アーシタやエルピー・プルだけでなく、ガンダム・チームの少年、少女達によきアドバイスを、言葉ではなく思念を送ることにより助ける。ジュドーはグレミー・トトとの決戦において、互いの戦いに対する理念について論破されそうになり身動きが取れなくなっていたが、カミーユは遠く離れたジュドーに「理不尽に対して感じた怒りこそが戦う理由だ」と思念で告げ、それが精神的にジュドーがグレミーに逆転するきっかけを与え、グレミーに打ち勝つ助けとなった。その後の、最終決戦であるジュドーとハマーンの一騎討ちにおいても、地球からのカミーユの思念のエネルギーが、今は肉体を持たないニュータイプ達の力と共にジュドーに届き、勝利させる。最後には精神疾患から回復した彼が、ファと地球で幸せに過ごしている様が見られる。 新たなニュータイプの理想像 テレビアニメ『Ζ』『ΖΖ』においてカミーユの物語が語られてから約20年のときを経て、劇場版『機動戦士Ζガンダム A New Translation』が制作され、そこで監督の富野は新たなニュータイプの理想像としてのカミーユを示した。『A New Translation』シリーズで、カミーユが精神疾患を発症することなく無限に拡大した自分のニュータイプ能力を前向きに受け入れることができた要因は、カミーユは自分が関わる事件や出来事を常によく観察しており、多くの仲間の死や戦場の悲しみを感じても、そのストレスを受け流す術を身につけただけでなく、その経験を自分の成長の糧となるものとして学習し受けとめていた。 また周囲の人間とのコミュニケーションや触れ合いを常に大事にし、宿敵シロッコに対してすらテレビ版のように存在を全否定するのではなく、人間を家畜や道具のように扱ってはならないと諭すように叫んでいる。そして何よりテレビ版のように死んでいった人々との精神的な繋がり(共感)だけでなく、ファという大事な女性の肉体的な繋がり(体感)を得たことが大きく、これによって自分の力や、戦いの中での悲劇と向き合い、乗り越える強さを得たといえる。この精神的な共感と肉体的な体感を得たカミーユのラストは、隣の人を大事にできる究極的なニュータイプと、北里大学の講演会「ニュータイプを継承するために」で富野は発言している。なお富野は今まで明確にできなかったニュータイプというテーマに『A New Translation』で「ニュータイプとは精神的、肉体的な繋がりを活かして隣人を大事にできる人」という結論が出せたとも語っている。 その他、テレビ版最終話では、排除しなければならないのは「地球の重力に魂をひかれた人々」と主張していたが、劇場版では「地球の重さ、大きさを想像できないあなたたち」と変化している。 また、Ζガンダムの総監督である富野は、月刊マガジンのインタビューにて、TV版のカミーユと新約劇場版のカミーユを比較した上で、新約劇場版のカミーユは「周りの事象に取り込まれるのではなく、その事象を自分できちんと受け止めていき、そういう現実を学習する・見つめる事を訓練し獲得したカミーユはエンディングで示すような未来をつくっていけるかもしれない」と語った。そして、ニュータイプとして先輩であるアムロやシャアについては逆襲のシャアで彼らの悲劇が見えると言い、「彼等は学習してないから結局はオールドタイプとして死んでいかなければならない。歳を取るとは過酷であり、若い時にそこまでのフィーリングを付けられなかった」と評価している。
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