占領統治一般
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/14 05:43 UTC 版)
「イスラエル国防軍軍律」の記事における「占領統治一般」の解説
宣言1号(1967年6月7日) ヨルダン川西岸地区を占領し、「治安と公益のために」支配権を掌握したことを宣言。軍事閉鎖地域を宣言し、住民に夜間外出禁止令を課し、移動を禁止。同日、ガザ地区でも同内容を布告。6月14日、ゴラン高原でも同内容を布告。 宣言2号(6月7日) 地域司令官にすべての行政権、執行権、司法権を付与する。施行地域は「(ヨルダン川)西岸」と表現する。1967年6月7日以前の(ヨルダンによる)法律は、軍律と矛盾しない限り引き続き有効とする。現金、銀行口座、武器、弾薬、車両その他移動手段、およびヨルダン当局の財産は、軍の管理下に置かれる。また、1967年6月6日以前に課された(ヨルダンによる)課税、関税、手数料は、軍が徴収するものとする。違反者は処罰する。 宣言3号(6月7日) 治安規定。本宣言35条の規定により、1949年8月12日のジュネーヴ条約の間に矛盾がある場合は、条約の規則を優先する。 一般命令:軍司令官の任命が及ぶ範囲、管轄区域と権限を規定。 裁判所と司法:軍事裁判所の設置。管轄区域の概説と手続詳細を規定。 犯罪:銃器の所持および使用の禁止。対人を標的とした銃器の所持の最高刑は死刑。 拘留、捜索、没収:本宣言67条により、誰でも最高6ヶ月の行政拘禁(予防拘禁)の対象となる。将校又は兵士の判断で、悪事を働いたと判断した者を拘留することができる。将校又は兵士はまた、許可を得た上で犯罪に関与していると疑われる財産を、時間と場所を問わず捜索し、没収することができる。 移動の制限:軍司令官は、地域を封鎖し、移動を拒否し、就労を禁止することができる。 特別な検閲:検閲は、治安と秩序の利益のために許可される。 輸送と交通:軍は道路の使用を制限し、規制することができる。また、兵士は住民に、道路の障害物を撤去するよう命令することができる。 夜間外出禁止令:区域を閉鎖して宣言する。許可の無い立ち入りは罰せられる。 命令5号(6月8日) ユダヤ・サマリア地区の閉鎖に関する命令。ユダヤ・サマリア地区を軍事閉鎖地域とし、IDFの定めた命令と条件に従って出入りを規制する。 命令12号(6月11日) 政令および規則の施行に関する命令。宣言3号の1、3、4、50、52、56、59~61、65、72、73条は、ただちに施行する。 命令18号(6月13日) 閉鎖地域に関する命令。命令5号の改正1号。ユダヤ・サマリア地区への入域希望者は、軍の許可証を必要とする。 命令34号(7月2日) 閉鎖地域に関する命令。命令18号の改正。ユダヤ・サマリア地区は、ここに閉鎖地域と宣言する。 命令71号(7月27日) イスラエル・ボイコット法の廃止に関する命令。(ヨルダンによる)1958年のイスラエル・ボイコット法、1953年のイスラエル貿易禁止法と関連法制は、いずれも廃止する。 命令144号(10月22日) 治安規定に関する命令。宣言3号35条を廃止し、(ヨルダン川)西岸地区、ガザ地区、ゴラン高原のパレスチナ人に対して、(軍は)ジュネーヴ諸条約に制約されないものとする。また命令27号を廃止し、新たな宣言3号35条として、実刑判決を受けた被告人の、未決勾留日数の算入を認める。 命令271号(1968年8月12日) 苦情に関する命令。IDFの作戦によって引き起こされた損害賠償の申請を審理する権限を与えられた請求委員会を設立する。請求委員会は、IDFの作戦、または軍のために働いている他の団体や居住者に損害賠償の申請を審理する権限を与えられる。請求に際しては、請求者は「安全保障上の必要性」の無い作戦であることを立証する必要がある。1967年6月28日以前に発生した損害、またはすでに保険請求が行われている場合は、請求を行うことはできない。 命令284号(9月26日) 軍隊の訓練および外部組織との連絡禁止に関する命令。その地域の居住者であるかどうかにかかわらず、何人も、最寄りの軍又は警察に、軍事訓練の経験と外部組織との連絡を、たとえその連絡が義務的であったり、避けられないものであったとしても報告しなければならない。違反した場合の罰則は、10年以下の懲役刑又は10,000イスラエルリラ以下の罰金に処し、若しくはこれを併科する。 命令297号(1969年1月8日) 身分証明書および個人情報に関する命令。身分証明書、出生又は死亡証明書の発行に関する規定。16歳以上の者は、常に身分証明書を携帯し、要求に応じて提示しなければならない。地区外への転出時に身分証明書を持ちだしてはならない。また、死亡者や他人の身分証明書の携帯を禁止する。身分証明書を紛失した場合は、ただちに届け出なければならない。特定の人は、地区司令官により身分証明書の携帯を免除されることがある。 命令329号(6月29日) 潜入者防止に関する命令。「潜入者」の定義を、発効日以降にヨルダン、シリア、エジプトまたはレバノンの東岸の滞在者が、故意に不法にこの地域に侵入した者とする。地区司令官は、有罪判決の有無にかかわらず、これらの犯罪者を追放する権限を有し、追放までの間、拘留・投獄することが出来る。命令125号の改正。占領地から追放された、あるいは逃亡したパレスチナ人の帰郷を防ぐための軍律。 命令418号(1971年3月23日) 都市と農村の計画に関する命令。1966年都市農村計画法79条の改正。すべての地方自治体や機関、国の計画委員会が土地利用の計画に参加することを廃止し、地方自治体の許認可権限を制限する。これらの権限はすべて、地域計画委員会と高等計画審議会の手に移されることとする。IDFが自治体計画を指図するための命令。地域計画委員会と高等計画審議会は、IDFが人事権を持っている。また、高等計画委員会は、ユダヤ人入植地の計画を承認する機関となっている。 命令537号(1974年2月17日) 地方自治法に関する命令。1955年市町村法29条および命令194号の改正。地区司令官は、首長および自治体議会議長が実施していない自治体の業務を遂行するために任免権を行使することができ、または当局にその業務を義務付ける権利を有する。また、自治体の境界線や、自治体が実施している開発プロジェクトや活動を調査するために、調査委員会を任命することができる。地区司令官はまた、自治体の境界線の変更を命じることができる。選挙で選出された首長を軍が罷免し、地方議会を解散できるようにするための軍律。 命令947号(1981年11月8日) 民政局の確立に関する命令。地域の秩序ある行政と公序良俗の維持の必要性を考慮し、住民の福祉と利益のため、公共サービスの供給と実施のため、この命令の指示に基づき、地域の文政を行う。民政局長は、地区司令官が任命する。民政局長は、一部の立法権を除き、軍律に定められた全ての権限を行使することができる。イスラエル民政局(英語版)を設立し、住民を管轄下に置くための軍律。 命令1369号(1992年12月16日) 追放に関する命令(暫定)。1945年の国防(緊急事態)規則の改正。軍司令官は、暫定的に特定個人を最長2年間追放する権限が与えられる。また、軍事裁判所の裁判官が議長を務める異議申立委員会を設置するが、治安上の理由で被追放者の立会なしで行うことができる。被追放者は、弁護士または親族のいずれかによって委員会の前で弁護を受ける権利がある。この命令は即時施行される。 命令1650号(2009年10月13日) 潜入者防止に関する命令(修正第2号)。ユダヤ・サマリア地区への潜入者の定義を「発効日以降に不法に本地域に侵入した者、または本地域に存在し、合法的に許可証を保持していない者」とする。潜入者は7年以下の懲役に処する。潜入者が入域が合法であることを証明した場合でも、(許可証が期限切れであった場合は)3年以下の懲役に処する。強制送還は原則として、72時間経過後に実施される。送還費用は7500新シェケルを限度として、潜入者に請求できる。命令329号の改正。ヨルダン川西岸地区で出生したがIDFの許可証を所持していない者や、許可が必要とされる以前に域外から入境した者を、「潜入者」の定義に追加し、追放を可能にしたもの。
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