動物倫理
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動物を殺す必要がないという動物倫理は培養肉拡大のトリガーの一つとなっている。 世界ではじめて培養肉に資金提供したGoogleの共同創業者であるセルゲイ・ブリンは、培養肉に投資した理由を「動物福祉のためだ」、「人々は近代の食肉生産に間違ったイメージを持っている。人々はごく一部の動物を見て自然な農場を想像する。しかしもし牛がどんなふうに扱われているかを知ったら、これは良くないと分かるだろう。」と述べている。 2015年に設立され、現在では代替肉や培養肉をプロモートする世界的イニシアチブであるThe Good Food Institute(英語版)の目的は動物の犠牲を減らすことにある。同団体の創設者であるBruce Friedrichはもともと毛皮へ抗議するなど動物の権利活動家であったが、より効果的に動物の犠牲を減らすために同団体を設立したという。 畜産を伴わない代替たんぱく質移行へのもう一つのイニシアチブと言えばFAIRR(Farm Animal Investment Risk & Return)だ。FAIRRは、投資機関に畜産のリスクを啓発することを目的とした投資機関ネットワークで、FAIRRをサポートする投資機関は2019年12月で199名、その運用資産は2197兆円(20.1兆ドル)にものぼる。FAIRRは代替たんぱくへの移行を企業に促すプロジェクトを進めている。FAIRRの創業者で最高経営責任者(CEO)であるジェレミー・コラー(英語版)は、動物の権利や、工場畜産の恐怖について、問題視している人物だ。ただ彼はそれらの解決方法として「動物がかわいそう」というメッセージではなく、人々に工場畜産を「人間の世界的な持続可能性の問題」として提起している。 また、2020年12月に動物飼育を伴わない「培養鶏肉」を世界で初めて販売開始したEat Just(英語版)だが、同社の設立者の一人であるJosh Balk(英語版)は、食肉処理場や工場畜産の覆面調査員として働き、工場畜産反対キャンペーンを展開したあと、Humane Society of the United States(英語版)(アメリカの動物保護団体)の副社長で畜産動物保護を担当している人物でもある。 消費者の意識としては、2019年のベルギーの調査では、培養肉の魅力として一番大きいのが「動物の苦しみ無く肉を食べることができること」だという結果であった。また、日本国内で2020年に行われた調査によると、培養肉のイメージを問う質問では、「知らないのでわからない」という回答が5割、「未知のものに対する不安がある」といった回答が3割、「環境や動物にやさしくて良さそう」といった好意的な回答が2割という結果であった。 培養肉を作る細胞培養の過程で、培地としてウシ胎児血清(FBS)が使用されることが多いが、動物倫理や持続可能性の観点からはFBSを使用しない技術の研究が進められている。2022年1月には、オランダの培養肉メーカーであるモサミート(英語版)が細胞の培養時にFBSを使用しない技術に関する査読論文を発表した。
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動物倫理
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「ユヴァル・ノア・ハラリ」の記事における「動物倫理」の解説
彼はヴィーガン(乳製品等も摂らない完全な菜食主義者)でもあり、動物(とりわけ家畜)の置かれている深刻な状況に対して見解を持っている。2015年、英国ガーディアン紙に寄稿した記事においては「工業的に飼育されている動物たちの運命は(中略)我々の時代における最も逼迫した倫理上の問題のひとつである」と述べている。 彼は『サピエンス全史』の執筆過程で、ヴィ―ガンになったという。 "サピエンス全史の執筆を通して、動物たちが食肉産業や酪農産業でどんな扱いをされているかということに詳しくなった。私はとてもぞっとして、それ以上そのようなことに加担することはしたくないと思った" —ユヴァル・ノア・ハラリ、Yuval Noah Harari: ‘We are quickly acquiring powers that were always thought to be divine’、 家畜の飼育を始めたことが人類の最悪の罪だ、と述べられた著書『サピエンス全史』は、第44代アメリカ大統領バラク・オバマ、第13・17代イスラエル首相のネタニヤフ、実業家のビル・ゲイツやマーク・ザッカーバーグらに影響を与えた。
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動物倫理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/29 04:40 UTC 版)
ヴィーガンのような、脱動物搾取という考えは、代替肉市場の拡大のトリガーとなっている。 2018年にフランスの調査会社 CREDOC(Centre de recherche pour l'étude et l'observation desconditions de vie)がドイツ、スペイン、イギリス、フランスで、ベジタリアンの動向に関する調査を行ったところ、四か国合計データによれば、「肉を食べない」または「消費を減らす」と回答した動機として一番多かったのが、「殺すための飼育は残酷なため(49 %)」、次が「飼育条件の悪さのため(12 %)」、続いて「肉への嫌悪感(10 %)」、「環境への影響(8 %)」「健康(3 %)」という結果であった。 また、農畜産業振興機構(エーリック)が2021年1-3月にかけて実施した8カ国におけるアンケート調査によると、肉を食べない割合はドイツで13 %と最も高く、次いで米国が11 %、日本が9 %となった。多くの国で「肉を食べない」は若年層で多く、ドイツでは肉を食べない理由として「動物がかわいそうだから」は最も高かった(牛肉(32 %)、豚肉(28 %)、鶏肉(46 %))。そのドイツでは肉の消費量が減少し、2021年には過去最低の消費量を記録した。日本で肉を食べない理由として「動物がかわいそうだから」は、牛肉(14 %)、豚肉(24 %)、鶏肉(20 %)となっており、豚肉では環境問題や健康への懸念といった理由を抜いて第一位となっている。 また、現在の動物性タンパクから植物性タンパクへという動きを作った主要な組織の中心人物の動機の一つも脱動物搾取にある。 2015年に設立され、現在では代替肉や培養肉をプロモートする世界的イニシアチブであるGood Food Instituteの目的は動物の犠牲を減らすことにある。同団体の創設者であるBruce Friedrichはもともと毛皮へ抗議するなど動物の権利活動家であったが、より効果的に動物の犠牲を減らすために同団体を設立したという。 畜産を伴わない代替たんぱく質移行へのもう一つのイニシアチブと言えばFAIRR(FARM ANIMAL INVESTMENT RISK & RETURN)だ。FAIRRは、投資機関に畜産のリスクを啓発することを目的とした投資機関ネットワークで、FAIRRをサポートする投資機関は2019年12月で199名、その運用資産は2197兆円(20.1兆ドル)にものぼる。FAIRRは代替たんぱくへの移行を企業に促すプロジェクトを進めている。FAIRRの創業者で最高経営責任者(CEO)であるジェレミー・コラー(英語版)は、動物の権利や、工場畜産の恐怖について、問題視している人物だ。ただ彼はそれらの解決方法として「動物がかわいそう」というメッセージではなく、人々に工場畜産を「人間の世界的な持続可能性の問題」として提起している。 また、世界ではじめてつくられた培養肉(人工肉)に資金提供したのはGoogleの共同創業者のセルゲイ・ブリンだが、彼は投資の理由を「動物福祉のためだ」と言い、次のように述べている。「人々は近代の食肉生産に間違ったイメージを持っている。人々はごく一部の動物を見て自然な農場を想像する。しかしもし牛がどんなふうに扱われているかを知ったら、これは良くないと分かるだろう。」。 代替肉の先駆的開発企業である、ビヨンド・ミート社のサイトには次のように書かれている。「私たちは、人間の健康の改善、気候変動へのプラスの影響、天然資源の保護、そして動物福祉の尊重に尽くします」。同社の創業者兼CEOのEthan Brownはヴィーガンだ。7歳で「人間は犬をペットとして大事にするが、とてもよく似た豚は食用にして、尊重しないのは何故か?」と疑問抱き、成長するにつれて食肉大量消費の問題を知ったという。ビヨンド・ミート社と肩を並べる代替肉開発の主要企業がインポッシブル・フーズだが、同社の創設者のパトリック・O・ブラウン(スタンフォード大学生化学名誉教授)もまたヴィ―ガンである。彼は2009年、18ヶ月の休暇を取得し、彼が世界最大の環境問題であると考えていた工業用畜産農業の廃止のために費やした。その結果、自由市場の中で動物を使用した農業を減らすための最善の方法は動物によって作られている既存の市場の中にこれに競合する動物を使用しない製品を送り出すことだとの結論に達し、2011年にインポッシブル・フーズを設立した。 Eat Just(英語版)社は、最も有名な「代替卵」の会社で、2020年12月には動物飼育を伴わない「培養鶏肉」を世界で初めて販売開始した。同社の設立者の一人であるJosh Balk(英語版)は、食肉処理場や工場畜産の覆面調査員として働き、工場畜産反対キャンペーンを展開したあと、HSUS(アメリカの動物保護団体)の副社長で畜産動物保護を担当している人物でもある。 ヴィ―ガンの概念は広まりつつあり、現在、世界3か国を除く全ての国(北朝鮮、バチカン市国、エスワティーニ(スワジランド)以外)の消費者がVeganuary運動(ヴィーガニズムを奨励する運動)に参加しており、2014年にこの運動が始まって以来、参加者は毎年二倍以上増えている。Veganuaryによると、推定で人口の3 - 10 %は肉を食べないという。 2019年9月には、ヴィーガンと気候変動対策のためのETF(上場投資信託)が米国証券取引委員会に登録され、2020年1月から投資受付を開始され、同信託はアメリカの大企業のうちヴィーガンと気候変動に配慮した企業のみで構成され、動物性食品を取り扱う企業や動物実験を実施している会社の株は全て除外された。 また2019年、欧州連合(EU)農業アウトルック会議では次のように報告された。「EUの食肉消費は、これまで増加傾向で推移してきたものの、菜食主義者の定着、健康志向および環境、動物福祉への配慮などによる植物性たんぱく質への移行や、EU市民の高齢化などもあり、緩やかに減少すると予測されている。なお、1人当たり総食肉消費量は、2010年から2020年までの間に3キログラム増加するも、2020年から2030年までの間で約1キログラムの減少が見込まれる」。2020年にFAO(国連食糧農業機関)が発表したOutlook 2021–2030においても、ヨーロッパの1人あたりの肉の総消費量は減少すると予想しており、FAOは肉消費量の決定要因の一つに、動物福祉をあげている。 米国では2017年から2021年まで、畜産業と動物性食品の代替品に対する意識調査が継続されているが、畜産業のさまざまな側面に対して反発が見られ、74.6 %が畜産業に不快感を示しているという結果であった。さらに、と殺場の禁止には49.1 %、工場畜産禁止には52.7 %、畜産全体の禁止には38.8 %が同意するなど、様々な政策転換に対して比較的強い支持があることがわかった。また、動物性食品の消費量をすでに減らしているとの回答は49 %、社会全体で減らすべきだとの回答は56 %となった。
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