侘とは? わかりやすく解説

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わび・さび

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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/27 08:01 UTC 版)

わび・さび侘《び》・寂《び》)は、慎ましく、質素なものの中に、奥深さや豊かさなど「趣」を感じる心、日本美意識。美学の領域では、狭義に用いられて「美的性格」を規定する概念とみる場合と、広義に用いられて「理想概念」とみる場合とに大別されることもあるが[1]、一般的に、陰性、質素で静かなものを基調とする[2]。本来は(わび)と(さび)は別の意味だが、現代ではひとまとめにして語られることが多い[3]茶の湯の寂は、静寂よりも広く、仏典では、死、涅槃を指し、貧困、単純化、孤絶に近く、さび(寂)はわびと同意語となる[4]。人の世の儚(はか)なさ、無常であることを美しいと感じる美意識であり、悟りの概念に近い、日本文化の中心思想であると云われている[5]


  1. ^ 大西克禮『美學 下巻 美的範疇論 11版』(弘文堂、1981年発行)p.422 ISBN 4-335-85002-6
  2. ^ a b c d e f g 森神逍遥 『侘び然び幽玄のこころ』桜の花出版、2015年 ISBN 978-4434201424
  3. ^ 鈴木大拙『禅と日本文化』 岩波書店、1940年 ISBN 978-4004000204
  4. ^ 鈴木大拙『禅と日本文化』136頁)
  5. ^ 吉村耕治・ 山田有子「侘び・寂びの色彩美とその背景―和の伝統的色彩美の特性を求めて」『日本色彩学会誌』 41巻 3号、2017年 p.40-43、 doi:10.15048/jcsaj.41.3__40、 日本色彩学会
  6. ^ a b c d 『日本大百科全書(ニッポニカ)』小学館
  7. ^ 日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典』第二版、小学館、14巻15冊、2000年12月 - 2002年12月
  8. ^ a b 編纂代表者千宗室『茶道古典全集第六巻』「山上宗二記」淡交社、1977
  9. ^ 井口海仙 『利休百首』p.33「点前こそ薄茶にあれと聞くものを 麁相になせし人はあやまり」淡交社、1973年 ISBN 978-4473000484
  10. ^ 倉澤行洋『珠光―茶道形成期の精神』p.43「心の文」より淡交社、2002年 ISBN 978-4473019042
  11. ^ a b c d e 熊倉功夫『現代語訳 南方録』中央公論社、2009年 ISBN 978-4120040276
  12. ^ 武野宗延『利休の師 武野紹鴎』p.127 宮帯出版社、2010年 ISBN 978-4863660571
  13. ^ 柳宗悦『民藝の趣旨』『柳宗悦全集著作篇第八巻』筑摩書房、1980年 「それ故民藝とは、生活に忠實な健康な工藝品を指すわけです。・・・その美は用途への誠から湧いて來るのです。」
  14. ^ 桑田忠親『日本茶道史』p.129-130「紹鴎侘びの文」より 河原書店、1975年 ISBN 978-4761100575
  15. ^ 岡倉天心『茶の本 The Book of Tea』p.16 IBCパブリッシング、2008年 ISBN 978-4896846850
  16. ^ 久松真一『わびの茶道』(昭和23年講演筆録)一燈園燈影舎、1987年 ISBN 978-4924520219 「・・・また今日名器として残っている朝鮮の茶碗なんか、ことに向こうでは何もお茶に使ったものではない、 ただ民間の食器であったものを択んだ。それが大した名器になって今日まで残っているのです。そういうものを好んで、 択び採ったその精神というものは、とりもなおさずこの侘数奇の精神であって、侘数奇の体系の中に包括したのであります。」
  17. ^ 河野喜雄 『さび・わび・しをり その美学と語源的意義』ぺりかん社、1983年 ISBN 978-4831503183
  18. ^ 進士五十八 ランドスケープの方法~土木家への提案~ JICE REPORT vol.24 2013.12
  19. ^ a b c d 復本一郎『さび 俊成より芭蕉への展開』塙親書57、1983年 ISBN 978-4827340570
  20. ^ 渡辺誠一『侘びの世界』p.13 論創社、2001年 ISBN 978-4846002985
  21. ^ a b c d 『芭蕉文集』「笈の小文」p.52 日本古典文学大系46 岩波書店、1959年 ISBN 978-4000600460
  22. ^ 潁原退藏『芭蕉研究論稿集成』第一巻 「さび・しをり・ほそみ」p.428 クレス出版、1999年 ISBN 4877330771
  23. ^ 藤村庸軒 『茶話指月集 2巻』今井重左衛門、1697 「いかにもさびている狐戸だけれども、遠くの山寺から人手をかけてもらってきたものだろう。侘びの心なら、麁相な猿戸が欲しいと戸屋に行って、松杉のを継ぎ合わせたものをそのまま釣りてこそさびて面白し。」
  24. ^ 復本一郎『芭蕉における「さび」の構造』p.49 塙選書77、1973
  25. ^ 松尾芭蕉『幻住庵記』「ある時は仕官懸命の地をうらやみ、一たびは佛離(ぶつり)祖室の扉(とばそ)に入らむとせしも」
  26. ^ a b c 寺田寅彦「俳諧の本質的概論」『寺田寅彦全集』第十二巻 岩波書店、1997年 ISBN 4000920820
  27. ^ 寺田寅彦「俳句の精神」『寺田寅彦全集』第十二巻 岩波書店、1997年 ISBN 4000920820
  28. ^ Bernard Leach (Adapter), Soetsu Yanagi (著) (1972) The Unknown Craftsman- Japanese Insight into Beauty. Kodansha International
  29. ^ Boye Lafayette De Mente "Elements of Japanese design : key terms for understanding & using Japan's classic wabi-sabi-shibui concepts" Tuttle Pub 2006



出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/27 03:25 UTC 版)

わび・さび」の記事における「侘」の解説

侘(わび、侘びとも)とは、辞典の定義によれば、「貧粗・不足のなかに心の充足をみいだそうとする意識」を言い動詞「わぶ」の名詞形である。「わぶ」には、「気落ちする」「迷惑がる」「心細く思う」「おちぶれた生活を送る」「閑寂を楽しむ」「困って嘆願する」「あやまる」「・・・しあぐむ」といった意味がある。 本来、侘とは厭う(いとう)べき心身の状態を表すことばだったが、中世近づくにつれて、いとうべき不十分なあり方に美が見出されるようになり、不足の美を表現する新し美意識へと変化していった。室町時代後期には茶の湯結び付いて侘の理解急速に発達し江戸時代松尾芭蕉が侘の美を徹底したというのが従来の説である。しかし、歴史記載されてこなかった庶民、特に百姓美意識中にこそ侘が見出されるとする説が発表されている。 侘に関する記述古く『万葉集』時代からあると言われている。『万葉集』では、恋愛におけるわびしさを表す意味で用いられる場合が多い。(「わび・さびの語源と用例参照) 「侘」を美意識を表す概念として名詞形用いる例は、江戸時代書『南方録』が初出と言われる。これ以前では「麁相」(そそう)という表現美意識の侘に近く例えば、茶人山上宗二(1544-1590)は「上をそそうに、下を律儀に(表面粗相であっても内面丁寧に)」(『山上宗二記』)と言っていた。もっとも、千利休(1522-1591)などは「麁相」であることを嫌っていたから必ずしも同義とは言い難い。しかしこの時代茶の湯では、わびしさが単に粗末であるというだけではなく美的に優れたのであることに注目するようになっていった。 侘の語は、先ず侘び数寄」という熟語として現れた。これは「侘び茶人」つまり「一物持たざる者、胸の覚悟一つ作分一つ手柄一つ、この三ヶ条整うる者」(『宗二記』)のことを指していた。「貧乏茶人」のことである。宗二は「侘び数寄」を評価していたので、侘び茶人すなわち貧乏茶人親し境地評価していたといえる千宗旦(1578-1658)の頃になると侘の一字無一物茶人言い表すようになり、やがて茶の湯精神支え支柱として侘が醸成されていったのである。 ここで宗二記の「侘び」についての評価引用しておこう。「宗易愚拙ニ密伝、コヒタ、タケタ、侘タ、愁タ、トウケタ、花ヤカニ、物知、作者花車ニ、ツヨク、右十ヶ条ノ内、能意得タル仁ヲ上手ト云、但口五ヶ条ハ悪シ業初心如何」とあるから「侘タ」は、数ある茶の湯のキーワードの一つに過ぎなかったし、初心者目指すべき境地ではなく一通り習い身に着け初め目指しうる境地とされていた。この時期侘び茶の湯代名詞としてまだ認知されていない一般にわび茶」の創始者と言われる室町時代村田珠光1422-1502)は、当時高価な唐物」を尊ぶ風潮に対して、より粗末なありふれた道具用い方向茶の湯をかえていった珠光浄土宗僧侶であり、臨済宗の僧一休宗純(1394-1481)の下に参禅し禅の思想触れた。そして、禅と同様、「茶の湯を学ぶ上で一番悪いことは、我慢(慢心我執の心を持つことである」(倉澤行洋珠光茶道形成期精神』p.43「心の文」より 淡交社 2002)として、禅と一致説いたいわゆる茶禅一味である。その方向を、武野紹鴎(1502-1555)や千利休代表される堺の町衆深化させたのである。彼らが侘について言及したものが残っていないため、侘に関しては、彼らが好んだものから探るより他はない。茶室はどんどん侘び風情強め、「床壁の張付取り去って土壁とし、木格子を竹の格子とし、障子腰板取り去り、床のかまちが真の漆塗りであったのを木目見え程度薄塗りにするとか、またはまったく漆を塗らず白木のままにした。」(『現代語訳 南方録』「 一茶室の発達」p.225-226熊倉功夫 中央公論社 2009張付けだった壁は民家倣って土壁」『南方録』)になり藁すさ見せた茶室広さは「4畳半から3畳半、2畳半に」、6尺の床の間は5尺、4尺へと小さくなり、塗りだった床ガマチも節つきの素木になった紹鴎日常品である備前焼信楽焼き好み日常雑器中に新たな美を見つけて茶の湯取り込もうとした。このような態度は、後に柳宗悦(1889-1961)等によって始められた「民芸」の思想にも一脈通ずるところがある。 一方利休は自然で無駄のない楽茶碗新たに創出させた。 侘は茶の湯の中で理論化されていったが、「わび茶」という言葉出来るのも江戸時代である。江戸時代には多く書が著され、それらによって、茶道根本美意識として侘が位置付けられるようになった武野紹鴎は侘を「正直に慎み深くおごらぬ様」と規定している。(桑田忠親日本茶道史』p.129-130「紹鴎侘びの文」より 河原書店1975一時千利休秘伝書目された『南方録』では、侘が「清浄無垢の仏世界」(前出現代語訳 南方録』「滅後茶の湯将来」p.650)と示されるまでになる。『南方録』は全篇で「わび茶の心」(同書「はじめに」p.1)が語り続けられているが、その冒頭には、「小座敷茶の湯第一に仏教教えをもって修行し悟りをひらくものである。…こういうことは全て釈迦祖師のやってきた修行であり、そのあとをわれわれが学ぶことである」(同書覚書わび茶精神」p.15)との利休言葉記される岡倉覚三天心)(1863-1963)の著書The Book of Tea茶の本)』の中では「茶道根本は‘不完全なもの’を敬う心にあり」と記されている。この“imperfect不完全なもの)”という表現が侘をよく表していると言える。英語で書かれ同書通じて侘は世界へ広められその結果日本代表する美意識として確立されていった大正・昭和時代には茶道具美術作品として評価されるようになり、それに伴って、侘という表現がその造形美を表す言葉として普及した柳宗悦(1889-1961)や久松真一(1889-1980)などは高麗茶碗などの美を誉める際に侘という言葉をたびたび用いている。

※この「侘」の解説は、「わび・さび」の解説の一部です。
「侘」を含む「わび・さび」の記事については、「わび・さび」の概要を参照ください。

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