主人公と居候たち
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/22 22:14 UTC 版)
織部悠(おりべ ゆう) 主人公。ナポリの泥棒市で仕立て屋を開く日本人青年。年齢は連載開始時点で26歳。連載中の時間経過は明確でないが、概ね20代後半から30代前半の男性として描かれている。縁のない丸眼鏡をかけた優男で、物腰は柔らかいが、年齢以上に落ち着きがあるため若年寄と形容されることもある。一方で職人気質で偏屈なところがあり、職人として我を通して強引に仕事を突き通すことも多い(特に初期は金を積まれても気に入らない仕事は拒否することもあった)。仕立て屋としては若造ながら、「ミケランジェロ」と称されたナポリの伝説の仕立て職人マリオ・サントリヨの唯一の弟子として熟達した腕を持つ。後述の経緯からカモッラ(マフィアと並ぶナポリの犯罪組織)相手に莫大な借金を作ってしまっており、持ち込まれる難題な案件を、高額報酬と引き換えに特急仕事と呼ぶ仕立てで解決していく。 仕立て屋としては若輩ながらその力量は非常に高く、服飾に対する知識も深い。他の職人と比べ仕事のスピードが異常なほど早く、またマリオがコーディネート一式を全て一人で作る流儀だったことから、ジャケットからシャツ、スラックス、靴下まで幅広く仕立てることができる。さらに見ただけで相手の体型や骨格をおおよそ把握してしまい、実際に触ることで体質や病歴なども察することができる。洋の東西を問わず古典から雑学まで服飾以外の広範な見識も備えており、それを駆使してコーディネートの演出を行うことで、顧客の服飾への価値観や人生観などを一変させてしまうことも少なくない。 悠のサルトの特徴として、本来は数ヶ月かかるナポリ仕立てを特急と称して数週間ないし数日で仕上げる。その代わり料金は割増となり(特急料金)、客に高額な報酬を請求する(時に金持ちの着道楽でも驚くほどの額が請求される)。ただし、これは悠自身、外道仕事と呼んでおり、一流の腕を持つが、職人として若いことや外国人であるために正規の依頼がほとんどなく、先述の莫大な借金を返済するために仕方なく行っている。ただし、そうした特別な仕事もそうそうにはないため、普段は仕立て仲間の下職(手伝い)で糊口をしのぐ。 プライベートでは大の酒好きで懐柔のネタにされることもある。また、女性運は今一つで、全く女性受けしないという訳では無いが(ヴィレッダとイザベッラは男性として評価している)、恋愛に対して不器用と見られているため恋仲に発展しない。しかし、(交際には至らなかったが)エレナからは明確なアプローチを受けている。概して本人の与り知らないところでの評価は高いが、当の本人が身もふたもない発言をするためか、なかなかロマンチックな展開にならない。 生まれは東京都台東区にある自転車屋で、3人兄弟の末っ子。幼い頃に実家の近くに住む足袋屋のお辰婆さんから裁縫の基礎を学び、お辰から紳士服の仕立ての道を勧められたことをきっかけに高校卒業後イタリアへ渡る。そこで上記マリオ・サントリヨの弟子となり、ナポリ仕立てや仕立て屋のイロハを学んだ。25歳の時(物語開始の前年)、師匠が急逝してしまったことで多額の借金(日本円にして約1億円)を背負い、独り立ちを余儀なくされる。 物語初期では気に入った仕事以外はせず、代金を吹っ掛けるようなこともしていたが、マルコが居候し始めた辺りから現在の生活スタイルのベースができる。ジラソーレ社のナポリ進出で同社と関わり合いを持つようになりヘルプとして働くことが多い。社長のユーリアに嫌われているとは言え、社のピンチを何度も救ったために今やジラソーレ社にとって無くてはならない存在となり、専属と勘違いされる時もある。第一部の終盤において、マリオと確執があったベリーニ伯に認められ、確かな伝統技術を持ちながら金銭的に裏社会に関与せざるを得なくなってしまっている状況を伯爵に助けられる。伯爵からの残りの借金の肩代わり、及びカモッラへの手切れ金と追加融資の申し出を受け入れ、これまでの自宅兼仕事場とは別に店舗を借りサルトリア・オリベを開店する。 マルコ・ジュリアーニ ナポリの靴磨き兼靴職人見習いの少年。たまたま客として訪れた悠を一目見てファッションへの見識を見抜き、知り合いとなった後、押しの強さで悠の家に居候し始める。現在では悠の相棒役とも言える重要な存在。悠はよく「小動物」と呼ぶ。悠のことはファーストネームで呼ぶ。 まだ10代前半と思しき外見、言動であるが、長年の道端での靴磨きなどにより、革ソムリエと自称する程に革に対する造詣が深い。例えば、牛革を見て種類は当然のこと、その牛が生前何を食べていたかも当ててみせると言う。また行動力も高く、情報収集力もある。前述の知識と合わせて悠が助けられることもあるが、基本的にはトラブルを呼び込む方が多い。特に妹弟子であるヴィレッダが登場すると、2人で悪ノリするシーンが多くなる。連載が進むにつれ、セルジュとの漫才やネタも多くなってきている。幼くはあるが先述の図々しさなどのナポリ人らしい性格があり、悠と共に出会う各界の大物にも全く物怖じせず、美人を見つけるとナンパしてしまう。とはいえ、年相応の感覚も持っており、漫画やゲームなどの日本文化にも興味がある(そもそもそれが悠の家に居候を決め込んだ理由の一つとも言える)。2度の日本滞在経験からか、それら以外の日本文化にもかなり詳しくなった。 悠との生活では炊事を担当。時を経るごとに料理に対する造詣が深くなっていき、悠に「方向性を見失ってないか」と言われる程に本業にも劣らない技術・知識を身に着けている。サルトリア・オリベ開店後は従業員となっている。 セルジュ・リヴァル フランス人青年。自国では有名なモデル。フランスのモード服の大ブランド「リヴァル」の総帥、アラン・リヴァルの次男。後述の理由により家出し、ナポリの悠の家に居候する。 トップモデルらしい童顔の端正な顔立ちの青年。 お坊っちゃま育ちでややナルシスト、大言壮語的な性格をしているが、気が弱く臆病な面もある。「リヴァル」の後継ぎであるが、当初は兄エリックが家業を継ぐことになっていたので(後に家出)、工房入りを免除されモデルとして活動していた。ジラソーレ社パリ支店長・エレナに秘かに惚れており、悠が彼女の誘いを断ったことに腹を立て、悠の才能が上げ底であると証明するために策を仕掛ける。しかし、知識不足によって失敗した上に父に工房に入れられそうになって家出し、ナポリの悠の家に転がり込む。「リヴァル」の工房を地獄と呼んで父を恐れ、例え冗談でも「パリへ帰す」というような発言をすると、周りが心配するほどに動揺する。 居候後は悠の弟子のようなポジションにいる。当初は悠が過去にやっていた骸骨磨きのバイトで、人体構造を把握する修行をやらされていたが、悠自身よりも短期間で人の骨格を見てとれるようになり(曰く「道行く人が骸骨に見える」)、悠を驚かせる。ギルレーズ・ハウス編までには相手を見ただけでおおよその寸法を見切ることもできるようになっており、才能の高さを伺わせる。また、セルジュ修行編では最終的に、詰めが甘く不合格とされつつも、アランやマダム・ロスタンにその服飾のセンスや技術を高く評価される。また、ナポリ式の仕立て技術が矯正不可能と言われるほどまで身に着いてしまったことから、父にリヴァル工房入りを断念させる。マルコと同じく現在はサルトリア・オリベの従業員となっている。
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