消費税 種類

消費税

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/20 17:22 UTC 版)

種類

消費は所得の存在を前提として発生することから、消費に課税することによって所得税などで十分に把握できない所得に対して間接的に課税することになる。ただし、所得の中には貯蓄に回される部分があるために、所得の大小と消費の大小は必ずしも一致せず、消費者の消費性向が実際の消費税の負担に対して影響を与える。

一般消費税

一般消費税は、さらに以下に分類される[4]

  • 単段階課税
    • 売上税英語版 - たとえば小売売上税では、最終消費者への小売者のみが徴収納付義務者
  • 多段階課税
    • 付加価値税(Value-Added Tax, VAT)、もしくは物品サービス税(Goods and Services Tax, GST

かつての日本の経済学では一般売上税general sales tax, GST)とも呼ばれていた税方式がモデルとなっている。一般売上税の課税方法として製造・卸売・小売の各段階のいずれか1段階で課税される単一段階課税と2つ以上の段階で課税される多段階課税がある。

OECD諸国における付加価値税(VAT)標準税率(2014年)[6]
付加価値税(VAT)を採用する国
  VATなし
  VATあり

多段階課税を採用した場合、次の段階に税負担を転嫁させていく「ピラミッド効果」が発生し、それぞれ異なる商品に同じように課税をすることによって商品に対する税負担の格差が生じることになる。こうした問題点を解消するために、納税義務者はその売上げに係る消費税ではなく、差額に係る消費税を納税する方法が考え出された。これが今日の一般消費税(VAT)である。一般消費税は付加価値の算定方法により所得型付加価値税と消費型付加価値税に分けることが出来る。前者は仕入計算時において資本財の控除は減価償却分しか認められないが、後者では資本財全額が控除の対象となり、消費部分のみが課税対象となる。

消費税と一般消費税は外見的には類似しているが、一般消費税には所得に対して課税する所得税や法人税などの直接税に対する批判に由来する代替的な要素も含まれている。所得に課税する場合には、納税者がそもそも正直な所得の申告をし正確な納付をしているかを把握するのに行政側のコストがかかり、公平性・水平性の点でも問題が多い。直接税に批判的な人々は「消費による支出を通じてより正確な所得が把握できる」という考えから一般消費税による代替を求める。

一般消費税が初めて導入されたのは1954年のフランスであるが、その前身は1917年に導入された「支払税(la taxe sur les paiements)」である。その後、1920年に「売上税 (la taxe sur le chiffre d’affaires)」、1936年に「生産税(la taxe à la production)」と名称を変更しながら現在の形になっていった。その後、1967年EC閣僚理事会においてフランスと同様の消費型付加価値税に基づく一般消費税を中心とした加盟国間の税制統一運動の推進が確認され、この方針に基づいて1968年西ドイツが一般売上税を一般消費税に変更した。

これをきっかけに1969年オランダ1970年ルクセンブルク1971年ベルギー1973年イギリスイタリアと加盟国間において一般消費税への転換が進んだ。日本でも10年に及ぶ議論の末にVAT型の消費税が1989年に導入されることになった[4]

個別消費税

個別消費税(Selected excise duties)は特定あるいは一群の財貨・サービスに対する課税である[6]。課税の対象になる財貨・サービスは特定的で税率も統一されていない。税率は、量、重さ、強度、オクタン価、アルコール度数などが基準として使われている[6]

この方式で課税される対象としては3つの分類が考えられ、酒や煙草のような嗜好品に賦課する「嗜好品課税」、ガソリンのように応益原則・受益者負担の原則に基づいて特定の公共サービスを行うために関連した商品・サービスにかける「目的税」、その他の物を対象とした「奢侈品・娯楽用品・サービス課税」と呼ばれる奢侈品や日常生活で用いられてはいるが生活必需品とはいえない商品に課される。かつて日本に存在した物品税の多くがこれに含まれている。

個別消費税は、元は内国消費税excise)として、16世紀末期にスペインからの独立戦争を継続していたオランダで軍費調達のために始められたと言われている。イングランドではこれを範として内国消費税を導入して財政難を克服しようとした。これに対する英国議会の反発が、清教徒革命へと発展するが、皮肉にも革命軍の軍事費を得るためにジョン・ピムオリバー・クロムウェルが採用したのが内国消費税であった。

その後、王政復古期に王権と議会の対立の原因となっていた徴発権などの国王大権を国王が返上する代わりに内国消費税の半分を国王の生活のための供与金として認めることで合意が成立した。その後も財政難を理由として何度か内国消費税の引き上げが行われた。1733年に当時(初代)の首相ロバート・ウォルポールが地租の削減・廃止と関税の引き下げの代償に更なる内国消費税の大幅引き上げを図った。

これに対して政敵のボリングブルック子爵が噛み付き、民衆も生活苦から暴動を起こす騒ぎとなったためにウォルポールは提案を撤回した。これを「消費税危機」(excise crisis)という。産業革命以後には産業育成のために内国消費税を削減して関税に転嫁する方針が採用された。フランスではジャン=バティスト・コルベールが導入した塩の専売制に付随してかけられたガベル(gabelle)と飲料品税に由来するエード(aides)が知られ、絶対王政期のフランス財政を支えた。ドイツでも17世紀後半以後盛んに導入されたが、余りの高率に国民生活の不安定と国家財政の極度の個別消費税依存を招きフェルディナント・ラッサールから厳しい批判を浴びた。

この他アメリカでも独立戦争時にイギリスを真似て個別消費税を導入したが、1794年にウィスキー税に反対するウィスキー反乱が発生してジョージ・ワシントン政権を揺るがした。

日本では、江戸時代以前の運上冥加が一種の個別消費税に相当するが、近代的な税制は明治維新以後に各種の間接税が導入されて以後である。特に酒税は一時は歳入中最大の割合を占めるほどになった。戦後になってシャウプ勧告と消費税法施行に伴って2度にわたって間接税の整理が行われる。

関税

総合消費税

総合消費税(general expenditure tax)は、イギリス経済学者ニコラス・カルドアが提唱した方法で、spendings tax支出税)とも呼ばれる。個々の消費者がその年度内に発生した財貨・サービス支出を税務署に自己申告をおこない、累進課税にもとづく税額の算定にもとづいて納付する。元は所得税を補完する税法として考案され、キャピタル・ゲインなどの所得からも支出に対する課税の形で税を徴収でき、かつ預貯金とその金利は支出に相当せずに課税されないために節約と貯蓄奨励にもなるとされ、インドなどで一時導入が検討された。

だが、全ての人が正確な納付をおこなうためには、各個人が自己の支出に関する正確な記録を作成して、収入・支出・貯蓄に関するバランス・シートを作成しなければならないことから、本格的に導入した国は存在しなかった。また、税務署が全居住者の収入・支出・貯蓄情報を把握する必要があるため、事務の煩雑さから実施が困難であると言える。


  1. ^ a b OECD 2014, p. 9.
  2. ^ 菊池 威「モーリス・ローレ著『付加価値税論』」『亜細亜大学経濟學紀要』第1巻第12号、1975年、 179-189頁、 NAID 110004849880
  3. ^ a b c OECD 2014, p. 15.
  4. ^ a b c d e f g h i 鎌倉治子 2008.
  5. ^ OECD 2014, p. 14.
  6. ^ a b c d OECD 2014, Chapt.4.
  7. ^ Revenue Statistics 2016 (Report). OECD. (2016). p. 35. doi:10.1787/rev_stats-2016-4-en-fr. 
  8. ^ a b OECD 2018, p. 66,41.
  9. ^ 海外の消費税、平均19%=税と社会保障、重い課題:時事ドットコム” (日本語). 時事ドットコム. 2020年6月4日閲覧。
  10. ^ なぜ日本の消費税率はOECD平均を下回っているのか?” (日本語). nippon.com (2018年4月26日). 2020年6月4日閲覧。
  11. ^ カナダには国レベルの税制として、日本の消費税にあたる付加価値税としてGST(物品およびサービス税)がある。それ以外に州レベルの付加価値税があり、各州によって異なる。例えば、オンタリオ州だと8%なので13%。石油で財政が潤っているアルバータ州は付加価値税がない例外州で5%のみである。国と州の税率を合わせたVATは、13~15%ぐらいが一般的である。
  12. ^ カナダはなぜ消費税を引き下げることができたのか。カナダ人記者が指摘する、日本の財政問題に必要な視点 - 政治・国際 - ニュース” (日本語). 週プレNEWS[週刊プレイボーイのニュースサイト] (2019年7月18日). 2020年4月28日閲覧。
  13. ^ 標準税率は20%、食品・レストランのサービスなどに軽減税率がある。軽減税率は10%、5.5%、2.1%の三つある
  14. ^ フランスの消費税と軽減税率、免税手続き方法”. 消費税・軽減税率情報Cafe (2019年1月28日). 2019年10月24日閲覧。
  15. ^ 1968年に10%で導入し、1%ずつ適宜引き上げたことで1998年に16%
  16. ^ いずれ議論不可避 消費税の「段階的増税論」とは(産経新聞)” (日本語). Yahoo!ニュース. 2019年10月24日閲覧。
  17. ^ a b c d 諸外国における付加価値税の標準税率の推移 (2017年1月現在)
  18. ^ 世界の消費税率と軽減税率制度の比較”. 消費税・軽減税率情報Cafe (2019年1月10日). 2019年10月24日閲覧。
  19. ^ Taxes by State Retirement Living Information Center, Inc.
  20. ^ a b NEWS FILE 米国が今も消費税を導入しない「もっともな理由」 PRESIDENT Online - プレジデント 2013年9月16日
  21. ^ 一定の事業者向けの金融のみ0税率
  22. ^ すべての国内消費に標準税率で課税された場合に得られる仮定での税収に対する実際の税収の比率
  23. ^ イタリアの増税が裏目に、付加価値税収減少-緊縮策強化で Bloomberg 2012年6月13日
  24. ^ Revenue Statistics 2016 (Report). OECD. (2016). p. 103. doi:10.1787/rev_stats-2016-4-en-fr. 
  25. ^ OECD 2009, Overview.
  26. ^ [1]なぜ日本の消費税率はOECD平均を下回っているのか?
  27. ^ 消費税率8%で痛手受ける日本経済、欧州が20%でも耐える訳 Bloomberg 2014年11月19日
  28. ^ 消費税率8%で痛手受ける日本経済、欧州が20%でも耐える訳
  29. ^ 税率アップでイギリスは倹約経済へ
  30. ^ 2014年度の実質経済成長率は、マイナス成長に陥った
  31. ^ 財務省 (2020年8月23日). “令和2年度国庫歳入歳出状況”. 財務省. 2020年8月23日閲覧。





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