気候 気候の概要

気候

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/08 03:46 UTC 版)

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アメリカサンフランシスコは霧の多い町で知られる。は冷たい北西が吹き、緯度の割に涼しく、移流霧がよく発生する。気候区分はCsb(地中海性気候)。

概要

「気象」と「気候」はいわば表裏一体で、似たような意味を持つ部分があり、混同される場合もある。明確に使い分ければ「気象」は現象に焦点を当てた言葉である一方、「気候」は時間的・種類的に多数の気象の組み合わせからなる傾向(パターン)に焦点を当てた言葉である[1]

地球上どの地域においても、気象(気象現象)は毎、毎、あるいは数日などの周期で繰り返し似たような表情を見せる。気候は、気象観測を積み重ねていき、このような繰り返しの1周期を1区間として、統計により割り出すことで科学的に分析することができる。結果、例えば「ロンドンが多い」「日本は高温多湿である」といったことが分かる。そして、観測の精度や統計方法は、気候の分析結果に大きな影響を与えるので注意を払う必要がある。

気候は長期間観測したときの平均的な傾向から分析される。その比較対象期間はふつう数十年間であり、平年値世界気象機関(WMO)によって基本的に比較時点の前の30年間と定められている[2]。比較対象期間内において、気象要素の値や気象現象の様子は平年値を中心とした一定の範囲内に収まるが、気象には日々年々の変動が存在し、その推移は数学でいう非線形の変化を見せるのがふつうである。非線形の変化の中では突出した値が出現することもあり、それは一般的に異常気象という形で現れる。異常気象の比較対象期間は世界気象機関によって25年間(日本の気象庁では30年間[3])と定められている。

また、日々年々の変動よりもさらにスケールの大きな、気候変動と呼ばれる変化も存在する。これは、数十年以上の周期でゆっくりと気候が変わっていくことを指し、一般的に異常気象とは認識されないが、人類の生活や生物などには大きな影響を及ぼす。人類史上においても気候変動による海進や海退植生生物相の変化、それらによる生活環境の変化などが起こっている。

過去数十年〜現在までを扱う現在気候に対して、近代気象観測が始まる以前の気候を古気候といい、年輪や氷床コアといった、気候変化が生む二次的結果から逆に気候を推定する。現在気候を対象とする学問が気象学、同様に古気候を対象とするのが古気候学である。

気候学においては、地域を特徴づける気候を面的な広がりから分類する、気候区分がよく用いられる。全世界を一瞥する気候区分としては、植生の特徴・成因などから分類したケッペンの気候区分(後述)が広く用いられる。

気候といえば陸地の気候を指すことが多い。海洋(海面)にも気候は存在するが、人間が定住しないという点から一般的に注目されることは少ないが、航海漁業にとっては重要である。

気候系

1961-1990年の世界月別平均気温の分布図。
ノルウェー北部にあるハンメルフェスト市。北緯70度に位置するが、北大西洋海流によって温暖な気候となっており、世界最北の不凍港のひとつとされる

気候学の専門用語に気候系(気候システム、: climate system)という言葉がある。一般に多用される言葉ではないが、気候という概念を捉える上で重要である。

気候は、熱塩循環炭素循環温室効果に代表されるような、熱や物質の循環の中で形作られるため、その中で起こった変化は循環の中へ波及する。より小さな具体例で言えば、地球における緯度やその地域の周辺の海陸分布・地形に起因する、大気の流れ()・の蒸発量(湿度)・海流気温などの要素が気候を形作っている。また、植生の違いや生物による活動、工業などの人間活動も気候を形作る要素である。気候学では、気候に作用するこれら1つ1つの要素を気候因子という。気候因子の変化は気候を変化させる一方で、気候の変化は気候因子を変化させるという、相互作用が成り立っている。

地球上では、大気大気圏)・海洋水圏)・陸上地圏)とそこにまたがって存在する生物(生物圏)が、一体となって気候を生み出している。これは、各要素の相互の関係によってできた、いわばシステム(系)のようなもので、これを気候系と呼んでいる。生物を取り巻く環境を生態系と呼ぶ考え方とよく似ている。

気候系の各要素(気候因子)は常に変化をしているが、お互いの変化が相殺(負のフィードバックという)されたり相乗効果(正のフィードバックという)を生んだりして、大きなスケールで見れば安定してバランスをとっている。

気候に最も大きな影響を与える因子は緯度であり、基本的には緯度が低いほど温暖に、緯度が高いほど寒冷になる。これは、太陽高度角の違いにより、低緯度ほど受け取る太陽の放射熱が多くなるためである[4]。また、緯度に影響される面が大きいため、同じ気候帯は南北ではなく東西に延びることがほとんどである。ただし地球の自転軸は23.4度傾いているため、時期によって同じ緯度でも太陽から受け取る熱量が異なり、このため季節が生まれる。たとえば12月から2月にかけては南半球が太陽の方に向けて傾いているため、南半球の受け取る熱量が大きくなりこの地域は夏となる。逆に北半球はこの時期冬となり、気温が低下する。6月から8月にかけてはこの反対で、北半球が太陽の方に向けて傾いているために北半球が、南半球はとなる[5]

しかし他の因子もかなりの影響を与えており、なかでも風系と海流の影響は大きい。風に関して最も大きな要因は低緯度地帯で卓越する貿易風である。貿易風は赤道付近の熱帯収束帯で空気が温められて上昇し、高緯度に向けて移動したのち、緯度20度から30度付近の亜熱帯高圧帯で冷却されて下降し赤道付近に向けて移動する、いわゆるハドレー循環の一部である[6]。この循環によって、常に上昇気流が発生する赤道地方は一年中大量の降雨がある熱帯雨林気候となり、一方で常に下降気流の発生する亜熱帯高圧帯の地域は年間の降雨がほとんどない砂漠気候となっている。この気圧帯は太陽の移動に応じて南北に移動するため、上記の2地区の中間の地域に季節によって降雨をもたらし、この地域にサバナ気候およびステップ気候を形成する[7]。中緯度地方に吹く偏西風も気候に大きな影響をもたらす。このほか、気候に大きな影響を及ぼす風は季節風(モンスーン)である。大規模な季節風は熱しやすく冷めやすい大陸と、熱しにくく冷めにくい大洋との気圧差によって生じるため、夏は大洋から大陸に、冬は大陸から海洋に向けて吹き込む。世界で最も大規模なモンスーンはアジアモンスーンと呼ばれ、インド洋から日本にかけての広い範囲に影響を及ぼし、特に夏の酷暑と湿潤をもたらす[8]

海流はその地方の気温に大きな影響を与える。暖流の流れる地方は同緯度の他地域に比べて温暖になり、また寒流の流れる地域は他地域に比べ気温が低くなる。この傾向を最も如実に示しているのがメキシコ湾流である。メキシコ湾流はカリブ海地方から大西洋を横断して西ヨーロッパを通り北極海へと流れ込む海流であるが、この海流の運ぶ熱量は膨大なものであり、湾流の流れる西ヨーロッパの大西洋岸やイギリス諸島、ノルウェーの大西洋岸やアイスランドなどは緯度に比べて非常に温暖な気候となっている。また、この海流の影響下にある地域は同じ気候の特徴を共有しており、西岸海洋性気候という気候区分の名称の元ともなった。逆に、南極環流によって取り囲まれている南極大陸は他地域からの熱の輸送がはばまれるためにきわめて寒冷な気候となっており、大陸全体が氷床によっておおわれている。このほか、寒流の流れる大陸の沿岸では海水温が低いために上昇気流が起こらず雨が降らない地域が多い。こうした砂漠は海岸砂漠と呼ばれるほか、各大陸の西岸にできることが多いことから西岸砂漠ともよばれる。海岸砂漠は大気が安定しているために降雨にいたることがほとんどなく、砂漠の中でも極度に乾燥した地域となることが知られている[9]

海流だけでなく、海そのものも気候に大きな影響を与える。海から非常に遠い地域において、海岸から高い山脈にさえぎられた反対側では山脈の方から吹き込む卓越風の風下となり、すでに水分のほとんどを雨として落としてしまっているため、極度に乾燥した気候となることがある。これを雨陰効果と呼び、タクラマカン砂漠グレートベースンなどがこの要因によって砂漠となっている[10]。また逆に海にほど近い地域で山脈が風系をさえぎる形で走っている場合、海からの風に含まれる水蒸気が山にあたって降雨をもたらし、湿潤な気候となることが多い。海は陸に比べ温度が変動しないため、一般に海岸部は内陸部よりも気温の変動は穏やかになる。また、陸に比べ海は温暖であるため、海岸部の気候は内陸部よりも温暖なものとなる傾向が強い[11]

こうした大きな因子のほか、その地方の地形や標高なども気候に影響を与えている。標高は高いほど気温が低くなり、同じ緯度でも低地が温帯であるのに対して高地が冷帯に属するなどということは珍しくない。例えば赤道直下に位置するキリマンジャロ山の場合、山麓低地はサバンナ気候であるが、標高が上がるにつれて熱帯雨林・雲霧林と植生が変化していき[12]、標高3000mで森林限界、4400mで植生限界となり、5500m以上では氷河の広がる氷雪気候となる[13]。また標高が上がるほどに乾燥限界は下がるため、低地が砂漠であっても高地がステップ気候に属するような場合もある。




  1. ^ 「【大人のための図鑑】天気・気象の新事実」p63 木村龍治監修 新星出版社 2014年6月25日初版発行
  2. ^ 日下 博幸、2013、『学んでみると気候学はおもしろい』、ベレ出版 ISBN 978-4-86064-362-1
  3. ^ 「【大人のための図鑑】天気・気象の新事実」p182 木村龍治監修 新星出版社 2014年6月25日初版発行
  4. ^ 「百万人の天気教室 5訂版」p76-77 白木正規 成山堂書店 平成10年5月8日5訂版発行
  5. ^ 「気候 変動し続ける地球環境」(サイエンス・パレット030) p8 マーク・マスリン著 森島済監訳 丸善出版 平成28年6月25日発行
  6. ^ 「海の気象がよくわかる本」p100-101 森朗 枻出版社 2012年3月30日第一版第一刷
  7. ^ 「気候変動で読む地球史 限界地帯の自然と植生から」p225-227 水野一晴 NHK出版 2016年8月25日第1刷
  8. ^ 「海の気象がよくわかる本」p134-135 森朗 枻出版社 2012年3月30日第一版第一刷
  9. ^ 「乾燥地の自然」(乾燥地科学シリーズ2)p29 古今書院 篠田雅人編 2009年3月31日初版第1刷
  10. ^ 「乾燥地の自然」(乾燥地科学シリーズ2)p23 古今書院 篠田雅人編 2009年3月31日初版第1刷
  11. ^ a b 「生命の意味 進化生態から見た教養の生物学」p30 桑村哲生 裳華房 2008年3月20日第8版発行
  12. ^ 「気候変動で読む地球史 限界地帯の自然と植生から」p121 水野一晴 NHK出版 2016年8月25日第1刷
  13. ^ 「現代地図帳」三訂版 p43 昭和63年3月10日発行 二宮書店
  14. ^ 「せまりくる「天災」とどう向き合うか」p32-33 鎌田浩毅監修・著 ミネルヴァ書房 2015年12月15日初版第1刷
  15. ^ 「海の気象がよくわかる本」p210-211 森朗 枻出版社 2012年3月30日第一版第一刷
  16. ^ 「基礎地球科学 第2版」p134 西村祐二郞編著 朝倉書店 2010年11月30日第2版第1刷
  17. ^ 「気候 変動し続ける地球環境」(サイエンス・パレット030) p84 マーク・マスリン著 森島済監訳 丸善出版 平成28年6月25日発行
  18. ^ http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/041500050/「史上最大の噴火は世界をこれだけ変えた 200年前のタンボラ山噴火から現代の被害を想像する」National Geographic 2015.04.16 2017年7月13日閲覧
  19. ^ https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/18/031400115/?P=1 「古代の超巨大噴火、人類はこうして生き延びた」ナショナルジオグラフィック 2018.03.14 2020年3月19日閲覧
  20. ^ https://news.yahoo.co.jp/byline/tatsumiyoshiyuki/20200129-00160738/ 「恐竜絶滅を引き起こした「隕石の冬」と「火山の冬」」巽好幸 ヤフーニュース 2020年1月29日 2020年3月19日閲覧
  21. ^ 「海の気象がよくわかる本」p200-201 森朗 枻出版社 2012年3月30日第一版第一刷
  22. ^ 「トコトンやさしいエネルギーの本 第2版」(今日からモノ知りシリーズ)p36 山﨑耕造 日刊工業新聞社 2016年4月25日第2版第1刷
  23. ^ http://www.suntory.co.jp/eco/teigen/knowledge/04/ 「「水の知」最前線 第4回 “青い水の惑星”だけが地球の姿ではない!? ~白く輝く凍てついた地球 スノーボールアースとは」サントリー 2017年7月13日閲覧
  24. ^ 「基礎地球科学 第2版」p178 西村祐二郞編著 朝倉書店 2010年11月30日第2版第1刷
  25. ^ a b 「基礎地球科学 第2版」p155 西村祐二郞編著 朝倉書店 2010年11月30日第2版第1刷
  26. ^ 「キリマンジャロの雪が消えていく―アフリカ環境報告」p18 石弘之(岩波新書、2009)
  27. ^ 「キリマンジャロの雪が消えていく―アフリカ環境報告」p19-21 石弘之(岩波新書、2009)
  28. ^ 南直人『ヨーロッパの舌はどう変わったか: 十九世紀食卓革命』〈講談社選書メチエ 123〉、1998年2月10日、第1刷、26頁。ISBN 406258123X
  29. ^ http://www.afpbb.com/articles/-/3004321 「太陽活動の低下、地球への影響は?」AFPBB 2013年12月02日 2017年7月13日閲覧
  30. ^ http://www.afpbb.com/articles/-/2939945 「20世紀後半、過去1400年で最も温暖」AFPBB 2013年04月22日 2017年7月13日閲覧
  31. ^ 「せまりくる「天災」とどう向き合うか」p137 鎌田浩毅監修・著 ミネルヴァ書房 2015年12月15日初版第1刷


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