坊つちやん 作品の成立

坊つちやん

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/29 14:15 UTC 版)

作品の成立

漱石自身が高等師範学校(後の東京高等師範学校、旧東京教育大学、現在の筑波大学の前身)英語嘱託となって赴任を命ぜられ、愛媛県尋常中学校(松山東高校の前身)で1895年(明治28年)4月から教鞭をとり、1896年(明治29年)4月に熊本の第五高等学校へ赴任するまでの体験を下敷きにして、後年書いた小説である。

漱石は本作を10日足らずで書き上げた[14][15]

現在読まれている本文は、『ホトトギス』編集者である高浜虚子による手が加わっている[15]。漱石は虚子宛て書簡において松山方言の添削を依頼しているが[15]、漱石直筆原稿を検討した渡部江里子は、虚子の「手入れ」が「方言の手直しを越えた改変」にも及んでいることを指摘している[15]。渡部は漱石の依頼を越えた「虚子の越権行為」と判断しており、現行のテキストをそのまま受容してよいか議論の必要を提起している[15]

また漱石の初稿では、坊っちゃんの赴任先は「四国辺」ではなく「中国辺の中学校」となっていた。ここから本作と官立山口高等中学校との関連を指摘する論考もある[16]

「坊っちゃん」の表記

一般的表記(当時の小宮豊隆ら)は、「坊つちやん」、現代表記では、「坊っちゃん」。初出である『ホトトギス』第九巻第七号の目次の表記は「坊っちやん」である。漱石自身は、自筆原稿の表紙や最後の149枚目にあるとおり、「坊っちやん」とも「坊つちやん」とも書いている。印刷物など、「坊ちゃん」と表記されるケースも多い。

批評・分析

井上ひさしは、『坊っちゃん』の映像化が、ことごとく失敗に終わっているとする個人的見解を述べ、その理由として、『坊っちゃん』が、徹頭徹尾、文章の面白さにより築かれた物語であるからと主張している[17]

丸谷才一は、清は、主人公である坊っちゃんの生みの母であるという説を提出した[18]

翻案

映画

詳しくは『坊つちやん (映画)』を参照。

テレビドラマ

詳しくは『坊つちやん (テレビドラマ)』を参照。

アニメ

『坊っちゃん』(1980年6月13日・フジテレビ版)[25]
当時フジテレビで放送されていた『日生ファミリースペシャル』の中の一作品として放送された。マドンナは登場するが、セリフが一切ない。
『坊っちゃん』(1986年日本テレビ版)[26]
日本テレビで放送された「青春アニメ全集」の中の一作品として放送された。

舞台・ミュージカル

  • 夏休み特別企画「坊っちゃん」 (1987年8月、大阪・新歌舞伎座、坊っちゃん役:近藤真彦、マドンナ役:宮崎萬純
  • アイ・ラブ・坊っちゃん(1992年初演、音楽座公演)
    • 漱石の日常と「坊っちゃん」の世界が二重構造で展開されるミュージカル。1993年1995年2000年2007年に再演。2000年公演時の坊っちゃん役は中村繁之
  • 『赤シャツ』(2001年初演、劇団青年座公演、脚本:マキノノゾミ、演出:宮田慶子
    • 赤シャツの視点から展開されるストーリー。坊っちゃんからは見えていなかった裏の事情を描く。
  • ミュージカル『坊っちゃん!』(2006年、劇団わらび座公演、脚本・演出:ジェームス三木、音楽:飯島優、振付:室町あかね
  • 明治芸能祭『坊っちゃん』(2018年、明治150周年記念事業、明治村・呉服座、脚本・演出:尾平晃一 制作 Entertainment Project Beat)
    • 「坊っちゃん」が幼い頃から松山へ行くまでを描いた、笑いあり感動ありのオリジナルストーリー。

漫画

  • 『坊ちやん繪物語』(1917年、作画:岡本一平
  • 『漫画坊つちやん』(1918年、作画:近藤浩一路[27]
  • 『坊っちゃん』(作画:水島新司) - 若干アレンジしてある。1965年、日の丸文庫[28]
  • 『坊っちゃん』(作画:モンキー・パンチ[29] - 『マンガ少年』1980年6・7月号に掲載。先述のスペシャルアニメ版放送に先駆け、キャラクター原案担当のモンキー・パンチによって漫画化。
  • 『坊っちゃん』(作画:一峰大二、構成:辻真先)1987年、暁教育図書、『コミグラフィック. 日本の文学』[30][31]
  • 『BOCCHAN 坊っちゃん』(作画:江川達也) - 『コミック・ガンボ』連載、「坊っちゃんは、明治のサムライである」という観点の元、『坊っちゃん』を江川流の解釈でコミカライズした作品。2007年、ガンボコミックス、ISBN 9784903955018[32]
  • 『マンガ 坊っちゃん : 英語圏版』(増山和恵 (著), マンガ:月館蛍人 (著)) - 2011年、ゆまに書房、ISBN 978-4843335260[33][34]
  • 『坊っちゃん』(作画:大和田秀樹)- 『別冊漫画ゴラク』、『漫画ゴラクスペシャル』で連載されたギャグマンガ[35]。坊っちゃんを男勝りのために坊っちゃんとあだ名を付けられた女性にする、うらなりが延岡への転勤が決まった後もまだ松山に留まっており、赤シャツ達の陰謀を免職後の坊っちゃんと山嵐に伝えるなどの大胆な改編がされているが物語は基本的に原作に準じて展開する。2016年、ISBN 9784537134186[36]

注釈

  1. ^ 「坊っちゃん」が物理学校卒業という設定になっているのは、漱石自身が同校の設立者(東京物理学校維持同盟員)である桜井房記中村恭平と親交が深かったほかに、当時の一般的イメージとして物理学校出身教員が高い評判を得ていたことも関係していると考えられている[2]
  2. ^ 正式には「東京市街鉄道」で、現在の都電の前身の一つとなった路面電車鉄道である。のち東京電車鉄道・東京電気鉄道と合併して東京鉄道となり、さらに東京市に買収されて東京市電と改称された。
  3. ^ 1977年中村雅俊出演映画での名は近藤大介となっている。また大和田秀樹のコミカライズ『坊っちゃん♥』では、少なくとも姓は「多田野」である事が示唆されている。
  4. ^ 夏目漱石は、満仲の弟、満快の子孫。
  5. ^ 1873年-1938年、山口県湯野村(現周南市)出身。1893年12月柳井小学校高等科英語代用教員、1894年同志社普通学校(現同志社大学)卒業、1895年愛媛県尋常中学校、以後各地の中学校に勤務。
  6. ^ この三円は、清の分身だから「返す」のではなく「帰す」なのだというのが坊っちゃんの理屈である。このあたりについて詳しくは、参考文献の 山下浩 を参照。
  7. ^ 教科書等では「さっぱりしない」
  8. ^ これについて坊っちゃんは内心で「兄にしては感心なやり方だ」と評価して、礼を言ってもらっておいた。
  9. ^ 師範学校との乱闘を報じた新聞を「四国新聞」としているが、これは架空の新聞である。実際に香川県で発行されている四国新聞がこの名称になったのは、本作の発表から40年後の1946年のことで、当時は存在しない

出典

  1. ^ 新潮文庫のあらすじより
  2. ^ 馬場錬成『物理学校:近代史のなかの理科学生』(中公新書ラクレ2006年)参照
  3. ^ 東京理科大学近代科学資料館が6月23日~8月10日まで企画展「『坊っちゃん』とその時代」を開催 -- 明治期の科学者と夏目漱石の交友を探る”. 大学プレスセンター (2016年6月18日). 2021年2月16日閲覧。
  4. ^ a b c 朝日新聞 1971年10月2日
  5. ^ 「新潮文庫」『坊っちゃん』8~10頁より。
  6. ^ 坊っちゃん自身も早く清に会いたくて下宿にも行かずに真っ直ぐ清の元に向かっており、「余り嬉しかったから、『もう田舎へは行かず、東京で清とうち(家)を持つんだ』と宣言している。(「新潮文庫」『坊っちゃん』131頁)
  7. ^ 夏目漱石「坊っちゃん」(明治39年発表)の文中に「…六月に兄は商業学校を卒業した。…」とある。「坊ちゃ... | レファレンス協同データベース
  8. ^ 近藤哲・著『漱石と會津っぽ・山嵐』歴史春秋社 1995年
  9. ^ 上田正昭、津田秀夫、永原慶二、藤井松一、藤原彰、『コンサイス日本人名辞典 第5版』、株式会社三省堂、2009年 11頁。
  10. ^ a b 企画展「『坊つちやん』に登場する赤シャツのモデル? 横地石太郎」 - 金沢ふるさと偉人館、2019年12月2日閲覧。
  11. ^ a b c d 漱石と明治人のことば54「(漱石は)誰とでも交際する人ではないが友情に厚い人だった - サライ.jp、2019年12月2日閲覧。
  12. ^ 『坊っちゃん』 偕成社文庫 解説 村松定孝 1988年
  13. ^ 安倍能成『我が生ひ立ち』
  14. ^ 漱石の自筆原稿『坊っちやん』における虚子の手入れ箇所の推定、ならびに考察”. www.hiroshiyamashita.com. 2021年7月31日閲覧。 “漱石が『坊っちやん』を書き始めたのは明治三十九年三月十五日、あるいは十七日頃で、「ホトヽギス」編集者の虚子が原稿を受け取ったのは三月二十五日頃と推定されている。つまり漱石は『坊っちやん』を十日足らずで書き上げたことになり”
  15. ^ a b c d e 渡部江里子「漱石の自筆原稿『坊っちやん』における虚子の手入れ箇所の推定、ならびに考察」『漱石雑誌小説復刻全集』三巻所収(リンク先は書誌学者山下浩のウェブサイト)
  16. ^ 河西喜治 『坊っちゃんとシュタイナー 隈本有尚とその時代』 ぱる出版、2000年、ISBN 4-89386-806-3
  17. ^ 『児童文学名作全集1』 福武文庫 あとがき
  18. ^ 「『坊つちやん』のこと」、『群像』2007年1月号。丸谷才一『星のあひびき』所収。
  19. ^ 番組表検索結果 | NHKクロニクル - NHKオンライン
  20. ^ 松下奈緒、二宮主演ドラマ『坊っちゃん』マドンナ役”. ORICON STYLE (2015年12月1日). 2015年12月2日閲覧。
  21. ^ 二宮和也で“坊っちゃん”!多くの名優演じたヤンチャ教師が蘇る”. SANSPO.COM (2015年8月4日). 2015年8月4日閲覧。
  22. ^ “正月じゃないとできない顔ぶれ!フジ系新春SPドラマ「坊っちゃん」”. SANSPO.COM (株式会社 産経デジタル). (2015年11月4日). https://www.sanspo.com/article/20151104-66Q2CCJDIVNKXEVM3ZZ5UMKHTI/ 2015年11月4日閲覧。 
  23. ^ “又吉直樹が夏目漱石役で出演 嵐・二宮主演ドラマ『坊っちゃん』”. ORICON STYLE (株式会社oricon ME). (2015年12月23日). https://www.oricon.co.jp/news/2064305/full/ 2015年12月23日閲覧。 
  24. ^ 愛媛発地域ドラマ制作開始!題材はあの名作“くたばれ”坊っちゃん - NHKオンライン
  25. ^ 坊っちゃん | 1980年代 | TMS作品一覧”. アニメーションの総合プロデュース会社 トムス・エンタテインメント. 2023年5月16日閲覧。
  26. ^ 青春アニメ全集 - メディア芸術データベース”. mediaarts-db.bunka.go.jp. 2023年5月16日閲覧。
  27. ^ 近藤浩一路『漫画坊つちやん』新潮社、1918年。NDLJP:1087976
  28. ^ 東京・日の丸文庫(光伸書房)/水島新司/原作=夏目漱石「坊っちゃん」”. ekizo.mandarake.co.jp. 2023年5月16日閲覧。
  29. ^ 坊ちゃん - メディア芸術データベース”. mediaarts-db.bunka.go.jp. 2023年5月16日閲覧。
  30. ^ 漱石, 夏目 (1987). 坊っちゃん. 東京: 暁教育図書. https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001884573-00 
  31. ^ 一峰大二●坊ちゃん―夏目漱石/日本の文学●コミグラフィック/990円/古本通販/夢の屋”. yumenoyabook.web.fc2.com. 2023年7月24日閲覧。
  32. ^ 達也, 1961-, 江川 (2007). 坊っちゃん. 東京: デジマ. https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000009139280-00 
  33. ^ マンガ『坊っちゃん』 : 英語圏版 (Learning language through literature ; 1) | NDLサーチ | 国立国会図書館”. 国立国会図書館サーチ(NDLサーチ). 2024年4月27日閲覧。
  34. ^ 増山和, 恵; マンガ:月館蛍, 人; 原作:夏目漱, 石; ジョーン・E・エリクソン (2011-09-30). 英語圏版 マンガ 坊っちゃん (英語圏版 ed.). ゆまに書房. ISBN 978-4-8433-3526-0. https://www.amazon.co.jp/%E8%8B%B1%E8%AA%9E%E5%9C%8F%E7%89%88-%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%82%AC-%E5%9D%8A%E3%81%A3%E3%81%A1%E3%82%83%E3%82%93-Learning-Language-Through-Literature/dp/4843335266 
  35. ^ 坊っちゃん(最新刊) |無料試し読みなら漫画(マンガ)・電子書籍のコミックシーモア”. www.cmoa.jp. 2023年5月16日閲覧。
  36. ^ 大和田秀樹『坊っちゃん』東京: 日本文芸社、2016年。
  37. ^ 関恵実『続・漱石 : 漱石作品の続編』 専修大学〈博士(文学) 甲第114号〉、2009年。doi:10.34360/00002335NAID 500000476121https://doi.org/10.34360/000023352023年5月6日閲覧 






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