街路樹に対する苦情と対応策
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/06 16:04 UTC 版)
「街路樹」の記事における「街路樹に対する苦情と対応策」の解説
想定される主な街路樹の弊害を以下に挙げる。これら弊害の中には、国・地域などに特有のものや、落葉樹で葉がない時期には弊害が低減するものもある(街路樹の弊害は、同じように道路上に存在する電柱の弊害と共通するものも多い)。 倒木による弊害 街路樹は強風・地震・病害(寿命)・積雪などで倒れ(折れ)、歩行者などの人命を奪うことや、建物や車などを破損させることがある。また、倒れた木は出入口や道路をふさぎ、渋滞を発生させるなど、交通に支障をきたすことがある。特に災害時は避難や救助活動の障害にもなる。枝葉のある街路樹は信号機・電柱・街路灯などよりも風を受けやすく、倒れる街路樹がそれらを巻き添えにすることもある。このような危険性があることから、台風(強風)シーズン前に、剪定する自治体も多いが、季節外れの台風、想定外の強風・竜巻などで、倒れる木もある。倒れた場合、大木であるほど物理的に破壊力が大きく殺傷力もあるので、交通量の多い道路や住宅街などでは特に樹種・植栽箇所などには慎重な選定を要する。 水害時の弊害 台風や集中豪雨時、街路樹は暴風雨で枝葉を落とし、道路上の排水溝などを詰まらせ、冠水・浸水を発生させ、水害の(被害を拡大する)原因になることがある。台風や突発的な集中豪雨の場合、事前に剪定して被害を抑制することは難しく、また過度な剪定は樹木を傷める結果となるので望ましくない。従って、樹木の選定・場所・本数などには水害への考慮を要する。 落下物による弊害 街路樹は自然に、もしくは強風・積雪・病害などで落下物を落とすことがある。葉・枝・実・雪(サクラなどは花びらも)などの落下物は、人(特に交通弱者、高齢者・身体障害者・視覚障害者など)・車両(自転車・オートバイなど)・車いす・ベビーカー等のスリップ・つまずき・転倒や、落下物の直撃などの事故の原因になることがある。それら落下物は、道路沿いの家屋の雨樋や排水口などを詰まらせたり、冠水の原因になることもある。また、枯れ葉は可燃物であり火災や延焼の原因になることがある。落ち葉に放火される事件も各地で起こっており、投げ捨てられたタバコの火などが原因で発火する場合もある。このようなことから、こまめに清掃することが望ましいが、それは道路沿いに住む人々への負担となってしまうことになり、落葉期に住居の前や敷地内などに毎日飛んでくる落ち葉の掃除に苦労している人もいる。また、自動車や自転車などが走る道路の清掃には危険も伴う。高所の雨樋の清掃は、業者に頼むと費用がかかり、自分で行うと危険を伴うことにもなる(雨樋の清掃を公費で行うには高額な費用などが問題になる)。 落葉等への対策としては落葉前の夏剪定の実施などがある。 障害物としての弊害 街路樹は信号機や道路標識などを見えにくく(見えなく)したり、街路灯の照明を遮ったり、飛び出す人(子供)や動物(野生動物)などを見えにくくしたり、車の出入りの際など、見通しを悪くし、視界を妨げ、事故を誘発することがある。 街路樹の存在は道路を狭め、円滑な通行の妨げになることがある。 車道・歩道・自転車道の拡張・整備などの際、街路樹の移植が難しいため(伐採には反対する人もいるため)、整備に支障がでる場合がある。 街路樹が建物や看板などを、走行する車両から見えにくく(見えなく)してしまうことがある。訪問者が目的地を見落として通り過ぎるなど、目的地を発見しにくくなることもある。 救助活動時の弊害 住宅などの火災時、街路樹は消火のための放水の支障(放水位置角度などが制限されベストの位置から放水できなくなる)や、はしご車などでの救助活動の支障になることがある。 台風や震災などの災害時、倒れた木は出入口や道路をふさぎ、また、暴風雨により落下した枝葉が冠水を発生させ、救急車などの緊急車両や救助隊員らの通行を妨げ、救助活動の障害になることもある。 日照への弊害 街路樹には道路や近隣建物の温度上昇を防ぐなどの緑陰効果もあるが、枝や葉によって日照の問題を生じさせることがある(日照阻害)。日陰は照明費など光熱費の増大、植物の育成への支障、太陽光発電の発電量低下などを招く。日当たりの悪い道路は、ソーラーカーなど太陽電池を搭載した車の燃費が悪くなる。落葉樹の場合、葉のない季節(日本では主に秋冬ごろ)は日照悪化が軽減される場合(場所)も多い。しかし、落葉樹とて影が完全になくなることはない。ゆえに、冬場の影の長大化により、落葉期だけ陰る(冬場の弱い日光が、さらに弱まってしまう)場合(場所)もある。 日照問題への対策としては街路樹の適切な選定などがある。 根による弊害 街路樹の根の伸展により、根が下水管のつなぎ目から入り込み、詰まらせるというトラブルが頻発することがある。また、根が周囲にまでのびることで地面を盛り上げて歩道などの路面を凸凹にしてしまうこともある。 根の進出による路面への影響を抑えるため、対策としては植え枡を大きくし街路樹の周囲の根張り空間を確保することなどがある。 風通しへの弊害 街路樹のせいで風通しが悪くなり、部屋の換気などに影響することがある。風通しが悪いせいで、道路や庭・部屋などに汚れた空気や匂いがこもったり、熱がこもり暑くなることもある。落葉樹の場合、葉があるので暑い夏場に風通しが悪くなり、葉のない冬場に風通しがよくなって寒い場合がある。 維持管理に関する弊害 道路上の木は安全や風通し・落下物・根の被害などへの対策上、森林や公園などの木以上に丁寧なメンテナンスを必要とするため、通常、一本あたりのメンテナンスの費用は森林や公園の木以上の高額な費用(日本では主に税金)を必要とする。それが利権になることもある。財政悪化などで点検・剪定・清掃などに十分な予算を割けなくなる自治体もある。また、それら作業時には通行などに支障をきたすことがある。 電波への弊害 街路樹のせいで電波の受信状態が悪化(電波障害)しテレビ受信などに支障をきたすことがある。地上波放送・衛星放送とも、将来、家から見て街路樹のある方向から電波が送信されるようになった場合、自前でのアンテナによる受信が不可能になる可能性もある。 花粉による弊害 花粉はアレルゲンであるため、花粉を飛ばす街路樹は人によっては花粉症・喘息などのアレルギーの発作の原因になる場合がある。 人間によって品種改良された樹種・外来種などを持ち込むことにより、地域の自生種(在来種)などの樹木が交雑して遺伝子汚染することがある。 眺望への弊害 街路樹は窓などからの見晴らしを悪化させることがある。ひどい場合は窓から葉しか見えなくなることもある。家や道路などから見えたタワーなどのランドマークや、山の新緑や紅葉・雪景色などが見えなく(見えにくく)なってしまう場合もある。 景観への弊害 風景・環境などに合わない樹木を植える、不適切な場所に植える、手入れを怠るなどすると、景観を悪化させる原因になることがある。また、道路上に木があれば美しい景観なのかどうかも賛否がある。うっとうしさなどから、木がなく、さっぱりとして開放感のある吹き抜けの道路を好む人などもいる。 動物による弊害 街路樹に毛虫などの害虫が大量に発生することがある。害虫が木を傷め、枝などの落下物をもたらしたり、害虫自体が落下してくることもある。 木の枝に止まった鳥が糞を落としたり、飛び立つ蝉がおしっこをかけるなどで、通行人の着衣などを汚すことがある。ムクドリなど大群をなす鳥が街路樹をねぐらにするようになると、糞害を引き起こしたり、鳥や蝉の鳴き声が騒音化する場合もある。 薬剤による弊害 街路樹に害虫・病害の対策・予防として農薬や殺虫剤が散布されることがある。薬剤は人や育てている動植物などに悪影響を及ぼすこともある。 薬剤の散布は定期的に行われるものと、害虫・病害の発生により適宜に行われるものがある。散布の際、近隣には窓を閉め洗濯物やペットなどは出さないように事前に通知されることも多い。薬剤が通行人や車両などにかからないように、夜間・早朝に散布されることもある。薬剤の散布には、無農薬で育てている野菜などに薬剤がかかってしまうドリフトの危険性もある。 名所化による弊害 サクラや電飾された街路樹など綺麗な並木のある道路や、文学作品・映画・ドラマ・漫画・アニメなどのロケ地やモデルとなった並木道などは、ちょっとした観光名所と化し、多くの見物人が訪れるようになり、渋滞・騒音・ゴミ問題などが発生することがある。
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