温度差エネルギー
温度差エネルギーは1997年に施行された新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法施行令にある新エネルギーのひとつです。年間を通じて温度変化の少ない海水や河川水、地下水、生活排水や下水処理水などと外気との温度差(夏は外気よりも冷たく、冬は外気よりも暖かい)や大気中の温度差を利用してヒートポンプの原理※注を用いて、冷暖房、給湯などを行う技術で、「未利用エネルギー」として今後の可能性が期待されています。
その他身近な例をあげると、工場や変電所の排熱、地下鉄や地下街の冷暖房排熱や換気なども熱源として利用でき、雪氷の冷熱を公共施設の冷房用の冷熱源として利用する取り組みもあります。
温度差エネルギーは目立つところでは都市部を中心に「熱供給事業」による導入例がいくつかあるだけで、実績は低い水準にあります。
※注 液体が気化するときに、まわりの熱を奪い、これと逆に気体が凝縮して液化するときには、熱が発生するという性質を利用する。ヒートポンプで冷暖房を行う場合、冷房時は冷房温度と熱の捨て場との温度差、暖房時は熱の汲み上げ場との温度差が、小さければ小さいほど効率良く排熱ならびに吸熱できる。
(掲載日:2005/12/10)
海洋温度差発電
![]() | この記事は検証可能な参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。(2015年12月) |

再生可能エネルギー |
---|
![]() |
![]() |
海洋温度差発電(かいようおんどさはつでん)またはOTEC (英: Ocean Thermal Energy Conversion) は、海洋表層の温水と深海の冷水の温度差を利用して発電を行う仕組みである。深海(水深1000m程)から冷水を海洋表層へ汲み上げ、海洋表層の温水との温度差を利用してエネルギーを取り出す。
概要

海洋温度差発電(OTEC)は緯度20度までの熱帯において、深海と表層の水の間に存在する温度差を利用して熱機関を動かすことによって発電する。基本的な原理としては、アンモニアなど沸点の低い媒体を表層の暖かい温水によって気化し、気化した気体によって発電タービンを回転させ電力を得る。気化した媒体は深層の冷たい冷水により液化させた後、再度表層の温水による気化装置に供給される。装置の稼動には表層、深層から海水を取り込むポンプを稼動させるための電力を要するが、発電によって得られる電力の一部によってこれを賄う。
海洋は絶えず太陽によって熱せられ、地球表面の70%近くを覆っているのに対し、深層の水は比較的低温(10℃以下)であり、この温度の違いは人間が使うために開発される可能性を秘めた膨大な量の太陽エネルギーを含んでいる。もしもこの抽出を大規模に経済的に行えば、人口がもたらすエネルギー問題を解決できる可能性がある。水力などの他の海洋エネルギーの選択肢と比べて1桁か2桁多くの総エネルギーを利用できるが、温度差が小さいとエネルギーの抽出は困難で高価なものになる。従って典型的なOTECシステムの全体的効率は1%から3%しかない。
熱機関の概念は工学においてはごく一般的なもので、人類が利用するほぼ全てのエネルギーは何らかの形式で熱機関を利用する。熱機関では高温貯留層(コンテナなど)と低温貯留層の間に機器を置く必要がある。熱が一方から他方に流れるので、エンジンはある程度の熱を仕事の形で抽出する。この原理を用いて熱からエネルギーを取り出すのが蒸気タービンや内燃機関である。逆に、エネルギーを使うことで自然の熱の流れに逆らい熱の差を作り出すのが冷蔵庫である。OTECは燃料を燃やして得る熱エネルギーを使うのではなく、太陽熱で温められた海洋で生じる熱の差を使ってエネルギーを引き出す。
OTECでは太陽によって温められた海洋表面の水と深海(1000mまで)の冷たい水の温度差を利用して熱機関を動作させる。赤道から20度以内の海洋であれば、表層と深海で20℃の温度差がある。熱帯沿岸地域、およそ南回帰線と北回帰線の間はこれらの条件を満たしている。
開発史
最新の技術であるかのように思えるが、OTEC技術は新しいものではない。19世紀後半から始まり間歇的に進歩してきたものである[1]。1881年、フランスの物理学者ジャック=アルセーヌ・ダルソンバール (en:Jacques-Arsène d'Arsonval) が海洋の温度エネルギーの開発を提案した。しかし実際にはダルソンバールの教え子のジョルジュ・クロードが最初のOTECプラントを建設した。クロードは1930年にキューバにプラントを建てた。このシステムは低圧のタービンで22kWの電力を作り出した。
1935年、クロードは ブラジルの沖に停泊させた10,000トンの輸送船を使った別のプラントを建てた。両方のプラントは正味電力を生成できるようになる前に、天候と波によって破壊されてしまった(正味電力とは生成した電力からシステムを動作させるのに必要な電力を引いたものである)。
1956年、フランスの科学者たちは、コートジボワールのアビジャンに設置するために別の3MWのOTECプラントを設計した。しかし、そのプラントは非常に高価なために完成することはなかった。
アメリカ合衆国政府は、ハワイのコナコーストにあるKeahole Pointeのハワイ州立自然エネルギー研究所 (NELHA) が設立された1974年にOTECの研究に着手した。この研究所は世界のOTEC技術を先導する実験施設となった。
日本政府もまたOTEC技術の開発研究への資金提供を継続している。
インドではタミル・ナドゥの近くで1MWの浮体式OTECプラントを試験的に稼働した。インド政府は浮体式OTECの開発など様々な研究に対して出資を続けている。
計画中のプロジェクト
計画段階のOTECプロジェクトに、インド洋のイギリス領ディエゴガルシア島にあるアメリカ合衆国海軍基地向けの小さなプラントがある。提案された8MWプラント(2MWガスタービンでバックアップ)によって、既存の15MWガスタービン発電装置は置き換えられるだろう。アメリカ合衆国の企業もまたグアムに10MWのOTECプラントの建設を提案している。
2013年4月、アメリカのロッキード・マーティン社は中華人民共和国の不動産開発業者であるReignwood Groupと海洋温度差発電所建設に関する契約に調印、出力10MWの試験プラントの建設を2014年から始めるとしている[2]。
日本の取り組み
佐賀大学の上原春男教授のグループが1994年にアンモニアと水の混合媒体を冷媒に用いた「ウエハラサイクル」を発明した[1][3]。従来のランキンサイクル(媒体に純アンモニアを用いる)と比較して50 - 70%サイクル熱効率が向上し、実用レベルの効率を持つ海洋温度差発電プラントを実現できるようになった[3]。
日本の領土で唯一北回帰線より南にある沖ノ鳥島は、島のすぐ近くで急激に深くなる海底地形も含め、海洋温度差発電の適地であるとして、島が属する東京都知事である石原慎太郎(当時)は、島に実験的に発電プラントを建設する計画があることを明らかにしている。沖ノ鳥島は経済活動を行えない岩礁であるという中国の主張に対抗するため、佐賀県選出の元参議院議員陣内孝雄ら自民党の議員も推進していたが未だ実現には至っていない。
2012年1月26日、沖縄県産業政策課は久米島町にある海洋深層水研究所において2013年初頭に100kw級の発電プラントを設置し、商用化に向けた実証試験を開始すると公表した。1年間の連続運転を予定しており、実際の発電能力や稼働率を検証し実用化への課題を探るとしている。事業費は約5億円の見込みで、2月定例県議会に予算案が提出される。国内においては佐賀大学の海洋エネルギー研究センターが30kw級実験プラントを佐賀県伊万里市で稼働中であるが、沖縄県によれば商用化を視野に入れた実海域での実証試験は世界初だという[4]。
2013年6月16日、沖縄県久米島で佐賀大学海洋エネルギー研究センターの研究チームが開発し、沖縄県が主体となり建設した「海洋温度差発電実証プラント」(出力50kw)が試験運転を開始した[5] [6][7]。
2015年3月、久米島で3年間の実証事業が終了するにあたって、さらに2年間の追加プロジェクトで技術開発を継続することが決定[8]。
2015年4月、久米島での2年間の次フェーズプロジェクト開始[8]。発電効率を向上させるための技術開発に加えて、発電後の深層水を利用したコスト削減の手段の開発にも取り組む[8]。
2016年10月、佐賀大学、神戸製鋼所、沖縄県、久米島町などは出力を100キロワットに上げ、発電効率を1割以上高め、海洋深層水の二次利用も開始する実証第2段階に移ると発表した[9]。
久米島での海洋温度差発電実証事業は2019年度から久米島町主体に移行し、2022年度には商船三井などが参加した[10]。
用途
OTECにはエネルギー発生以外の重要な利点がある。
冷気と温海水の温度差から得られるエネルギー
冬の北極沿岸の地域では、海水の温度は局所的な気温と比べて 40℃(70°F) も高いことがある。クローズドサイクルOTECシステムに基づいた技術がこの温度差を活用できるかもしれない。深海の水を抽出する長いパイプが不要になるため、この概念に基づいたシステムはOTECよりも安く作れる可能性がある。この方法は、海水容器の温度が露天の温度と等しい場合のみ有益である。なぜなら、氷点以上のいかなる温度でも蒸発させられる唯一の液体だからである。大気が海水より低い温度でも構わないが、総合的な空気の熱伝導 -hal/k が水の熱伝導 -ka^t より大幅に小さくなければならない。
空調設備
OTECプラントはビルに冷房を提供することができる。冷房用の熱交換器(コイル)に対して直径が30cmの主パイプに冷水を通し、毎秒0.08m3(80L) の水を送り込むことができると見積もることができる。そして6℃の冷水を通すなら、それは大きな建築物のために十分な冷房を提供できるかもしれない。このシステムが作動するなら8000時間の売電ができ、1kwh当たり5¢ - 10¢の電力を売ることができる。年間の電気代をアメリカにおける電気料金 (U.S. DOE1989) で換算すると20万ドルから40万ドルを節約できると考えられる。
冷却土耕
OTECでは冷たい土壌を用いる農業も出来る。冷たい海水を地下のパイプに通すと周りの土壌が冷やされる。植物の根が冷たい土壌にあれば温帯性の植物であっても亜熱帯で栽培することができる。ハワイ州自然エネルギー研究所は実証農園をOTECプラントの近くに整備し、ハワイでは通常生育できない果物や野菜を100種以上栽培する予定である。
養殖
養殖はOTECのおそらく最もよく知られた副産物である。OTECで得られる栄養に富んだ海洋深層水を用いてサーモンやロブスターなどの冷たい水に棲む海産物を養殖することが出来る。スピルリナ(健康食品サプリメント)のような微細藻類もまた、海洋深層水で栽培されている。
海水淡水化
オープンまたはハイブリッドサイクル・プラントは凝縮器を使用し脱塩された水を作り出すことができる。凝縮器は、オープンシステムで費やされた蒸気と冷たい海水との間接的な接触で水が凝縮する。この水を集めたものを農業のための自然な淡水供給や飲み水が限られている地方に対して売ることができ、水の供給限界を開放する。システム分析の結果、2MWの工場がおよそ4300m3の淡水を生産する可能性があると示している。(出典:Block and Lalenzuela 1985年)
採鉱
海水には57種の微量元素が塩やその他の形で溶存しており、OTECはそれらを採鉱する中間拠点となりえる。
貴重な海水溶存物質の採鉱は採算が取れないとされている。これは海水を汲み上げるために莫大なエネルギーが必要であり、また、海水から鉱物を分離抽出するためにも多大なコストが掛かるためである。歴史的には金の抽出が考えられたが、採算の取れる見込みが無く実現しなかった。OTECならば副産物として膨大な海水が既に得られているため、抽出過程のコストさえ下がれば採算が取れる可能性がある。
日本では、波力発電を使って海水に溶存するウランを取り出す方法が研究された。この結果、諸分野(特に材料工学)の成果によって実現の可能性が出てきた。[要出典]
海洋調査
現在の海洋調査には長期にわたって海上停泊できない調査船を当てにしているが、OTECの設備は海洋調査研究の永続的な基地となる。設備は人工岩礁にもなっている。
観光
OTECの設備は、深海やリーフダイブを経験したい娯楽的なダイバーに永続的な場を提供する。
動作原理
エネルギーの専門家は、もし発電コストの競争力が他の発電技術に並ぶエネルギー源となればOTECによる発電量は数ギガワットになるだろうとしているが、OTECシステムを採算に乗せるのは大変な試みである。OTECのプラントは表層へ冷却水を運ぶため深海に設置する巨大な引き込みパイプなど概して設備が高価である。
設置場所による分類
- 陸上のプラント
- 大陸棚固定プラント
- 船上プラント
- 水面間のプラント(概念上)
使用されるサイクルによる分類
- オープン サイクル
- クローズド サイクル
- ハイブリッド サイクル
この冷たい海水は3種類のOTECシステムに不可欠である。
クローズド サイクル
クローズドサイクルはアンモニアのような低沸点の媒体を用いる。温かい表層水を熱交換器に通して媒体を気化させた蒸気によって発電タービンを回す。次に冷たい深層水を凝縮器に通して蒸気を液体に戻し再利用する。タービンを回す媒体が循環する閉じたシステムであるためにクローズドサイクル(閉じた循環)と呼ばれる。
1979年、ハワイ州立自然エネルギー研究所と民間企業の共同で小さなOTEC実験を行い、クローズドサイクルによる海上発電に初めて成功した。この実験器を積んだ船はハワイアンコースト沖1.5マイル (2.4km) に設置され、船上の照明や運用設備を賄うだけの充分な電力を得た。
1999年 ハワイ州立自然エネルギー研究所ではそれまでで最大の運用規模となる250kW級のクローズドサイクルOTECを試験的に製作したがそれ以降、アメリカで新しいOTECの実験器は作られていない。主としてエネルギー創出に関する経済性の問題が解決されていないためであるが、プラントの運用は継続中である。
アメリカ以外にはインド政府がOTECの研究をしており、クローズドサイクルによる1MW級の海上施設OTECプラントを建設している。
オープン サイクル
オープンサイクルは媒体として熱帯の海洋表層水を用いる。温かい表層水を低圧沸騰器に入れ水を気化させた蒸気によって低圧発電タービンを回す。塩分を低圧沸騰器に残しているので、タービンを回した蒸気を冷たい深層水で凝縮すると純水を得ることが出来る。タービンを回す媒体が密閉されず次々と供給される循環のため、オープンサイクル(開いた循環)と呼ばれる。
1984年、太陽エネルギー研究所(現:国立再生可能エネルギー研究所)はオープンサイクルで温かい海水を低圧蒸気に変換するための垂直噴出蒸発器を開発し、エネルギー変換効率は97%を達成した (注: 垂直噴出式蒸発器を用いたOTECシステムの全体効率は今尚わずか数%である)。1993年3月にハワイ、ケアホールポイントのオープンサイクルプラントで50,000ワットの正味電力を作り出し1982年に日本の研究が打ち立てた40kWの記録を破った。
ハイブリッド
ハイブリッドはクローズドサイクルとオープンサイクルの両方の特徴を組み合わせたものである。ハイブリッドOTECシステムではオープンサイクルの気化プロセスに似た吸入室に温かい海水を通してフラッシュ気化によって蒸気に変換する。蒸気はアンモニア気化器の反対側の上でメガネ・サイクル輪の加工液を蒸発させる。次に、蒸発している流体は電気を発生させるタービンを動かす。蒸気は、熱交換器の中に凝縮して、脱塩された水を供給する。
システムで発電された電気は、送電網に供給するか、メタノール、水素、金属の精錬、アンモニア、及び類似品の製造に使用できる。
OTECシステムの技術的な分析
OTECシステムは熱力学的なサイクル(仕様)に基づいて、(1)クローズドサイクル、(2)オープンサイクル、の2種類に分類できる。
深さによる海洋の温度の変化
海洋が受ける総日射量 = (5.457 × 1018 MJ/yr) × 0.7 = 1.9 × 1018 MJ/yr. (taking an average clearness index of 0.5)
このエネルギーの15%が吸収される。
ランベルトの法則を使って水に吸収されるエネルギーの定量化が可能である。
この一時的に過熱状態になった水は、従来の加熱面を接触させるボイラーで行われるプール沸騰とは異なる、等積的な沸騰状態にさらされる。
すなわち水は二相平衡状態で部分的に蒸気となる。蒸発器の内圧がT2 における水の飽和圧力に維持されると仮定すると、この過程は等エンタルピーであり、
- この節の加筆が望まれています。
関連書籍
- 「7 海洋温度差発電の技術の現状とロードマップ (PDF) 」『NEDO 再生可能エネルギー技術白書』独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(2010年7月27日)
- Vega, Luis A. 「Ocean Thermal Energy Conversion (PDF) 」、『Encyclopedia of Sustainability Science and Technology』、Springer、2012年8月、7296-7328頁。(英語)
関連項目
外部リンク
- 佐賀大学海洋エネルギー研究センター(全国共同利用施設)
- 海洋温度差発電とは 緑のgoo「環境用語集」
- U.S Department of Energy, Information Resources (英語)
- Wired Magazine's interview with John Piña Craven on the future of OTEC (英語)
- OTEC News - a news site about OTEC (英語)
- 特許出願から見た海洋温度差発電 日本技術貿易(2013年9月25日時点) (日本語)
- 温度差エネルギーのページへのリンク