ロシアにおける渤海研究とは? わかりやすく解説

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ロシアにおける渤海研究

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/11 15:19 UTC 版)

渤海 (国)」の記事における「ロシアにおける渤海研究」の解説

ロシア学界から渤海に関する式見解が出されたのは、アレクセイ・オクラドニコフの『シベリア古代文化』(加藤九祚加藤晋平訳、講談社1974年)においてであり、そこでは「渤海極東地方諸種族の歴史における彼ら自身最初階級社会、つまり、最初国家」であり、その民族国家靺鞨人であるとした。そして靺鞨人は、元来起源異に言語異にするさまざまな種族集合体であったが、数千年を経て渤海人として単一民族形成したとした。アレクセイ・オクラドニコフは、ソビエト極東考古学調査隊を率いて沿海州一体の発掘調査おこない渤海文化高句麗共通性が多いことは確認されるが、渤海主体民族高句麗ではなく『新唐書』渤海伝の記事通り粟末靺鞨であると結論付けた。 정석배(英語: JUNG Sukbae、韓国伝統文化大学英語版)は、ロシア沿海州には渤海城跡寺跡住居跡古墳などの遺跡多数分布しており、1950年代から渤海遺跡の発掘調査が行われており、ロシア歴史史料考古学史料の両方使用して渤海研究することができる客観的条件形成されており、ロシア渤海歴史と文化について歴史的な側面考古学的な側面両方多く学問的業績積み上げてきたと評している。また정석배は、大祚栄出自に関してロシア渤海学界異口同音靺鞨、特に粟末靺鞨渤海建国したと主張しているが、中国研究者研究結果少なからず参考にしているのが実情であり、韓国研究者研究業績ロシア語翻訳してロシア渤海学界紹介する必要がある指摘している。 Z. N. Matveev(英語: Z. N. Matveev、ロシア語: З. Н. Матвеев)とエ・ヴェ・シャフクノフ(極東連邦大学、英語: E. V. Shavkunov、ロシア語: Эрнст Владимирович Шавкунов)以前ロシア渤海研究は、例えパルラディウラジーミル・アルセーニエフなどは「極東民族初期国家権力渤海)は、高句麗中国の影響受けて形成された」「極東民族の間に中世国家形成されたのは、靺鞨族が社会経済的に発展したためではない、隣人文明国から外部的に影響受けたためである」などの意見持っていたが、この意見は、後にロシア渤海研究者の批判を受けることになる。エ・ヴェ・シャフクノフは、乞四比羽乞乞仲象靺鞨将軍表記して、「二人将軍東牟山に拠って中国侵略され靺鞨土地回復するための闘争の力を蓄積し始め避難逃れた高句麗人と靺鞨が彼らに大きな助け与えた」「渤海靺鞨族が建国した」と直接的に言及し、「極東民族の間に中世国家形成されたのは、靺鞨族が社会・経済的に発展したためではなく近隣文明国から外部的影響受けたため」とする学説批判して、「靺鞨族が高度に発達した近隣高句麗中国中央アジア民族と、比較早くから政治・経済的関係を結ぶことにより、それらの間に原始共産制解体され階級関係が形成され固有の主権国家建設され靺鞨渤海物質精神文化出現する一連の過程急速に進展した」と主張したロシア渤海研究者はすべて靺鞨人が渤海建国したと把握しており、これらの伝統イアキンフから始まり、Z. N. Matveevを経て(Z. N. Matveevは、渤海人祖先粛慎挹婁勿吉靺鞨であり、粟末靺鞨渤海建国したと主張している)、その基本的な考え方は、エ・ヴェ・シャフクノフとアレクサンド・イブリエフ(英語: Alexander IVLIEV、ロシア語: А. Л. Ивлиев、ロシア科学アカデミー極東支部歴史・考古学民族学研究所)にも継承されている。イアキンフ『新唐書』収録され渤海関連記録いくつか翻訳紹介したが、ロシア語紹介した渤海翻訳は「渤海王国の創始者は、粟末靺鞨人だった。...」から始まる。イアキンフ渤海関連翻訳内容は以下である。 渤海王国の創始者は、唐王朝歴史によると、粟末靺鞨人、高句麗被支配者、名前は乞乞仲象であった668年高句麗滅亡することによって、彼は自分の民と一緒に挹婁東牟山を占めた。(中略中国の朝廷は、彼を震国公の地位として君主認めた彼の息子の祚栄は王国設立し震国王という称号使用した彼の領土5000里に達した。(中略713年中国の朝廷彼に渤海郡王の称号与えたその時から祚栄は、靺鞨称号捨てて渤海国王と呼ぶようになった彼の息子大武芸自分年号使用した。 — Н. Я. Бичурин、Собрание cведенийо народах, обитавших вСредней Азии в древние времена 『朝鮮日報』やロシア科学アカデミー極東支部歴史・考古学民族学研究所歴史著述家の윤희진や盧泰敦(朝鮮語版)(朝鮮語: 노태돈、ソウル大学)や宋基豪(ソウル大学朝鮮語: 송기호、英語: Song Ki-ho)によると、ロシア学界で大祚栄靺鞨人であり、渤海靺鞨国家考えられており、アレクセイ・オクラドニコフ、エ・ヴェ・シャフクノフ、アレクサンド・イブリエフ、KRADIN Nikolay Nikolaevich(ロシア科学アカデミー極東支部歴史・考古学民俗学研究所)、Kim Aleksandr Alekseevich(ロシア語: Ким Александр Алексеевич)などが靺鞨説を支持している。 ロシア渤海学界は、渤海靺鞨社会・経済的に発展して成立した独立主権国家であり、極東ロシア少数民族歴史であると主張しており、エ・ヴェ・シャフクノフから具体化されこのような意見は、ロシア渤海学界で一度否定批判されることなく擁護されており、これが渤海帰属問題についてのロシア渤海学界公式的な立場把握することができる。エ・ヴェ・シャフクノフは、「沿海州歴史は、私たち偉大な民族祖国歴史切り離せない部分であり、その祖先が既に7世紀から8世紀自分自身の、当時としては高度な文化を持つ国家建国したのは、ソビエト極東少数民族歴史だ。靺鞨族による国家建設には、地域種族政治的経済的文化的民族的発展先行した」と述べており、ナナイウデヘオロチ族満州人ニヴフロシア極東地域少数民族歴史とこれに先行した渤海靺鞨歴史切り離せない関係にあると把握し沿海州渤海歴史ロシア極東地域少数民族歴史であると主張している。エ・ヴェ・シャフクノフは以下のように述べている。 後に渤海と名前を変えた靺鞨震国は、存在した最初の日から、独立主権国家であり、その支配者たちは、独自の対内外政策を行ったが、中国の皇帝でさえもこれを考慮せざるを得なかった。中国の皇帝数回にわたり渤海軍隊海軍艦隊の力を知ることとなり、渤海人たちはその軍隊力を借りて山東半島登州のような唐の一級海軍基地果敢に攻撃した。すぐに、中国の皇帝は、渤海友好的な関係を設定することが唐帝国最良対外政策行為であることを悟り、これは極東及び中央アジア複数の国中国において渤海地位をさらに上げた中国訪問した渤海使者が、他の国使者の中で最も名誉ある地位占めたことは理由があるのだった。 — Э. В. Шавкунов、Государство Бохайи памятники его культуры в Приморье, Ленинград エ・ヴェ・シャフクノフを代表とするロシア渤海学界は、渤海は、靺鞨人、高句麗人、契丹人室韋人、突厥人ウイグル人アイヌ人ソグド人渤海住民構成していた多民族国家であり、そのなかで粟末靺鞨が最も多く占めており、その次が高句麗、その次にそれ以外複数民族混在していたという視点持っており、安史の乱堅昆による回鶻滅亡などにより、渤海多く民族流入した指摘しており、渤海信仰されていた宗教は、仏教渤海支配層信仰されシャーマニズム渤海平民の間で信仰されたと考察し仏教景教シャーマニズムなど、一つ国家体制のなかで複数宗教共存していることは、渤海複数民族構成され多民族国家であることを示していると指摘している。 エ・ヴェ・シャフクノフは、渤海ツングース系民族である靺鞨人が住民基本成したが、靺鞨人以外にも高句麗人、ウイグル人契丹人室韋人、ソグド人などの民族構成される多民族国家であり、渤海朝鮮史中国史には属さない独立した靺鞨史と主張しており、エ・ヴェ・シャフクノフは、「渤海靺鞨社会・経済的に発展した国だ」と明らかに規定しており、靺鞨社会・経済発展について以下のような意見提示したツングース系民族である靺鞨族が唐、高句麗東突厥結んだ政治的経済的交流は、彼らの社会原始共産制解体初期階級関係の形成大きく促進させた。唐が靺鞨同盟関係にあった高句麗を攻撃し、その後靺鞨自体攻撃することで、結果的に靺鞨強力な軍事政治的同盟体を成して、ついに中国東北地方沿海州北朝鮮地域包括する統一国家である渤海建国するに至った。 — Э. В. Шавкунов、 Гоcударcтво Бохай(698-926 гг.) и племена Дальнего Воcтока Роccии 靺鞨人が渤海建国したという意見は、ロシア渤海研究者大勢成しており、Yu.G.ニキーチン(英語: Yu. G. Nikitin、ロシア語: Ю.Г. Никитин、ロシア科学アカデミー極東支部歴史・考古学民俗学研究所)、V.I.ボルディン(英語: Vladislav. BOLDIN、ロシア語: В.И. Болдин、ロシア科学アカデミー極東支部歴史・考古学民俗学研究所)、E.I.ゲルマン(英語: E. I. Gelman、ロシア語: Е. И. Гельман、ロシア科学アカデミー極東支部歴史・考古学民俗学研究所)など、現在のロシア渤海研究主導している研究者基本的に同じ考え持っており、渤海専攻ではないニコライ・クラージン(英語版)も「渤海国伝統的にツングース-満州族該当する靺鞨人が建国した」と述べており、E.I.ゲルマンは以下のように述べている。 粟末靺鞨中心に結集した種族形成され渤海国は、その繁栄期広大な領土占めている。 — Е. И. Гельман、Взаимодействие центра и периферии в Бохае ロシア渤海研究者渤海建国者の大祚栄に関する視点は、基本的に靺鞨そのなかで粟末靺鞨要約されこの伝統は、イアキンフ始まり、Z. N. Matveevとエ・ヴェ・シャフクノフを経て今日のアレクサンド・イブリエフにまで継承されており、この見解は、Yu.G.ニキーチン、V.I.ボルディン、E.I.ゲルマンなどの現在のロシア渤海研究者たちそのまま転移されている状況である。 宋基豪(朝鮮語: 송기호、ソウル大学)や정석배(朝鮮語: JUNG Sukbae、韓国伝統文化大学英語版)によると、ロシア渤海学界渤海靺鞨系の独立主権国家であったことについてはほとんど満場一致とすることができる程度統一され意見示しており、Z. N. Matveevは、渤海軍隊と艦隊保有し、唐の山東攻撃しており、渤海王中国皇帝から称号受けていることをもって独立主権国家ではないとする主張は、中国皇帝は、いくつかの民族、特に遊牧民にも称号与えており、これは自身領土に彼らが侵入することを防ぐためであり、また、渤海中国日本外交交渉行っており、渤海中国日本使臣派遣するのは完全に独自の行動であり、尚且つ中国日本渤海使臣派遣し契丹が唐に脅威与えたとき、唐は渤海軍事援助求めていることなどを根拠渤海は完全な独立主権国家だと位置づけた。 今日ロシア渤海研究は、ほとんどアレクサンド・イブリエフが主導しており、アレクサンド・イブリエフの研究は、ロシア渤海研究者にほとんど無批判的受け入れられており、アレクサンド・イブリエフは文献史料中国学者たちの論著引用しながら渤海が「最初靺鞨国」「668年滅亡した高句麗勤めていた渤海建国者の父である粟末靺鞨人の乞乞仲象営州移住していた。その当時、そこには高句麗征服避けて中国隠れ処探して暮らしていた少なくない粟末靺鞨人が暮らしていた」「唐の高句麗征服は、靺鞨居住地南部中部地域荒廃させ、彼らの種族共同体居住システム崩壊させた。そしてすぐに牡丹江流域大祚栄首長とする粟末靺鞨衰退した種族共同体靺鞨結集するとなり、そして最初靺鞨国が形成された」と述べており、「渤海歴史上における最初靺鞨国」であり、渤海と唐の関係において、渤海と唐のあいだにみえる従属性は実質的なものではなく名目的なものであり、渤海独立主権国家であった主張しており、渤海と唐の関係について以下のような意見提示した。 忽汗州都督府という名称は、渤海首都通って流れ牡丹江の古の名称忽汗に相当する大祚栄統治する州の一つ承認することで唐は、渤海隣接する新羅のような国として認めつつ、新し靺鞨国を唐の世界秩序編入するようにした。(中略大祚栄渤海という名称は、すぐに靺鞨国の新しい名前になり、後には民族名になった。(中略中国の歴史学者たちの論著でよく発見されるような、渤海を唐帝国領土 - 行政単位、あるいは唐の「民族自治区のような、唐と靺鞨国の封建的依存関係誇張してならない。 — А. Л. Ивлиев、Очерк истории Бохая

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