加藤九祚とは? わかりやすく解説

加藤九祚

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/18 13:59 UTC 版)

加藤 九祚
人物情報
別名 李 九祚
生誕 (1922-05-18) 1922年5月18日
日本統治下朝鮮 慶尚北道
死没 2016年9月11日(2016-09-11)(94歳没)
ウズベキスタン テルメズ
出身校 上智大学
学問
研究分野 人類学、文化史
研究機関 国立民族学博物館相愛大学創価大学
学位 学術博士
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加藤 九祚(かとう きゅうぞう、1922年5月18日[1] - 2016年9月11日[1])は、日本の人類学者。アジア文化史考古学で、多くの著作と訳書がある。創価大学国立民族学博物館名誉教授。朝鮮名は李九祚(イ・クジョ)[1][2] [3]

経歴

出生から太平洋戦争終結・シベリア抑留

1922年、朝鮮慶尚北道に生まれ、山口県に育った[1]。鉄工所工員・小学校代用教員を経て、1942年に上智大学予科へ入学した[1]。1944年に応召し、満洲へ出征[1]。1945年の敗戦により、ソ連軍に捕らえられ、シベリアに抑留された[1]

抑留より帰国

1950年に日本に帰国[1]。1951年、上智大学文学部独文科に復学し[1]、1953年に同大学を卒業[1]。卒業後は恩師の小林珍雄の紹介で平凡社に入社[1]。抑留中に習得したロシア語やドイツ語を生かしてユーラシア大陸考古学やシベリアの諸民族に関する研究の翻訳紹介を始め、1963年に最初の著作である『シベリアの歴史』を刊行[1]。1971年、平凡社を退社[1]。念願のシルクロードを旅行している途中で、梅棹忠夫と出会った[1]

国立民族学博物館時代以降

1975年、梅棹に招かれる形で国立民族学博物館教授に就任[1]。1983年、学位論文『北東アジア民族学史の研究:江戸時代日本人の観察記録を中心として』を大阪大学に提出して学術博士号を取得[1][4]。1986年、国立民族学博物館を退官し[1]相愛大学教授に就いた[1]。1988年、創価大学教授に転じた[1]。同大学では「創価大学シルクロード学術調査団」を組織し、シルクロード研究センター長に就任した[1]。1998年に創価大学を退職[1]

その後も精力的に中央アジア地域の調査に関わり、ウズベキスタン科学アカデミー考古学研究所と共同で、テルメズ郊外・カラテパでクシャン時代仏教遺跡の発掘を開始[1]。1999年、南方熊楠賞を受賞[1]。2001年より毎年1冊、秋から冬の時期に、単独編集誌『アイハヌム 加藤九祚一人雑誌』を東海大学出版会から刊行し続けた[1][注釈 1]

没時まで発掘調査を行い[注釈 2]、2016年9月、ウズベキスタンで発掘調査中に倒れ、搬送されたテルメズの病院で死去。享年94[5]

受賞・栄典

家族・親族

著書

ロシア語著作
共著・編著
追悼出版
  • 『ユーラシア研究56号 〈特集〉ウズベキスタン考古学調査と加藤九祚』(ユーラシア研究所、2017年8月)
  • 『アイハヌム 加藤九祚一人雑誌 追悼号』平凡社、2022年7月[10]

訳書

  • ロジェ・ガロディー『実存主義批判』青木書店 青木文庫 1955
  • 『ソヴェト大百科事典 第二次世界大戦』相田重夫共訳、青木文庫 1955
  • ボリス・ジューコフロシア語版『湖底に消えた都 イッシク・クル湖探検記』 角川新書 1963
  • アルダン・セミョーノフロシア語版『知られざる大地 探検家チェルスキーロシア語版ロシア語版の生涯』 学習研究社 1964
    • 改題新版『永遠のシベリア 探検家チェルスキー夫妻の生涯』新時代社 1970
  • プルジェワルスキー『黄河源流からロプ湖へ』中野好之共訳、(西域紀行探検全集) 白水社 1967、新版「西域探検紀行選集」2004
    • 『黄河源流からロプ湖へ』(世界探検全集) 河出書房新社 1978、新版 2022[11]
  • アレクセイ・オクラドニコフ『黄金のトナカイ 北アジアの岩壁画』美術出版社 1968
  • 『西域の秘宝を求めて 埋もれていたシルクロード』ヤクボーフスキーほか、編訳、新時代社 1969、新版 1981
  • ワシーリー・パセツキーロシア語版『極地に消えた人々 北極探検記』 白水社 1969、新版 2002
  • ワディム・マッソン『埋もれたシルクロード』岩波新書 1970、復刊 1981
  • セルゲイ・ルデンコ『スキタイの芸術』江上波夫共訳、新時代社 1971
  • ユーリー・シムチェンコ『極北の人たち』岩波新書 1972
  • アレクセイ・オクラドニコフ『シベリアの古代文化 アジア文化の一源流』加藤晋平共訳、講談社 1974
  • ウラディミール・アルセーニエフデルス・ウザーラ』角川文庫、1975[12]
  • ゲオルク・シュテラーカムチャツカからアメリカへの旅』(世界探検全集) 河出書房新社 1978、新版 2023[13]
  • フォン・シーボルト 日本』中井晶夫ほか共訳[14]雄松堂出版 1979
  • L.I.アリバウム『古代サマルカンドの壁画』文化出版局 1980
  • ボリス・ピオトロフスキー『埋もれた古代王国の謎 幻の国ウラルトゥを探る』岩波書店 1981
  • 『ソ連国立歴史博物館ロシアの染織』学習研究社 1984
  • ボリス・B.ピオトロフスキー『エルミタージュ美術館』岩波書店 1985
  • D・マイダル『草原の国モンゴル』新潮選書 1988
  • V.I.サリアニディ『シルクロードの黄金遺宝 シバルガン王墓発掘記』岩波書店 1988
  • エドヴァルド・ルトヴェラゼ『考古学が語るシルクロード史 中央アジアの文明・国家・文化』平凡社 2011
  • イリヤス・エセンベルリン『小説 遊牧民』「アイハヌム2011」東海大学出版会 2011
  • ショキルジョン・ピダエフ『ウズベキスタンの仏教文化遺産』(立正大学ウズベキスタン学術交流プロジェクトシリーズ) 、今村栄一共訳、六一書房 2019

参考文献

外部リンク

脚注

注釈

  1. ^ 2010年版は他の著作が重なり翌年に発行、最終号は追悼集成
  2. ^ 白鳥正夫『シルクロードの現代日本人列伝』(三五館、2014年)-「第3章 ウズベキスタンで遺跡調査―加藤九祚・九〇歳超えても発掘ロマン」に詳細な紹介がある。
  3. ^ ネフスキーは、天才的な東洋言語学者で夫人は日本人。帰国後、ソ連スターリン体制で「国家叛逆罪」により、日本人妻イソと共に粛清処刑された(スターリンの死後に名誉回復)。初刊版では没年を1945年と記載したが、後に関係者の調査が進み1937年であることが判明した。新版で「死の真相」解明と、遺族(長年の交流がある)や関係者たちのその後を増補した。ネフスキー自身の論考集『月と不死』(平凡社東洋文庫, 1971)は加藤が解説担当。

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac 加藤九祚 :: 東文研アーカイブデータベース”. www.tobunken.go.jp. 国立文化財機構 東京文化財研究所. 2023年10月27日閲覧。
  2. ^ 李九祚의 생애와 실크로드의 유리 (李九祚の生涯とシルクロードのガラス)”. 慶北大学校. 2020年9月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年6月2日閲覧。
  3. ^ ノ・ヒョンソク (2014年10月7日). “九十路を越えた"シルクロード権威者"の帰郷”. ハンギョレ新聞. 2019年6月2日閲覧。
  4. ^ CiNii(学位論文)
  5. ^ 人類学者の加藤九祚氏が死去 国立民族学博物館名誉教授 / 共同通信 - ウェイバックマシン(2016年9月12日アーカイブ分)
  6. ^ 第1回~第10回南方熊楠賞受賞者”. 南方熊楠顕彰館. 2022年8月16日閲覧。
  7. ^ 加藤定子さん死去(朝日新聞)
  8. ^ 「読者マップ」対話集。巻末に文献案内がある。
  9. ^ 毎年秋・冬に計11冊発行(2011刊の訳書「小説 遊牧民」を除く)
  10. ^ 集大成の追悼出版、訳・遺作、書誌を収録。
  11. ^ 単独訳。解説は川内有緒が担当、電子書籍も刊。白水社版も度々再版
  12. ^ 映画『デルス・ウザーラ』公開での編訳版
  13. ^ 解説は角幡唯介。本書には、S.クラシェニンニコフ『カムチャツカ誌』の抄訳も収録されている。電子書籍も刊
  14. ^ 訳者の一員として参加。




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