岡田英弘とは? わかりやすく解説

岡田英弘

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/01/29 00:01 UTC 版)

岡田 英弘
(おかだ ひでひろ)
人物情報
生誕 (1931-01-24) 1931年1月24日
日本東京市本郷区
死没 (2017-05-25) 2017年5月25日(86歳没)
配偶者 宮脇淳子
学問
研究分野 東洋史
研究機関 東京外国語大学
常磐大学
学位 文学士東京大学
公式サイト
岡田宮脇研究室
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岡田 英弘(おかだ ひでひろ、1931年(昭和6年)1月24日[1] - 2017年(平成29年)5月25日)は、日本東洋史学者。東京外国語大学名誉教授東洋文庫専任研究員。専攻は満洲史・モンゴル史であるが、中国・日本史論についての研究・著作もある。

経歴

1931年(昭和6年)、東京市本郷区(現・東京都文京区)曙町に生まれた[2]。戦時下の1943年旧制暁星中学校入学[3]1946年旧制成蹊高等学校尋常科へ転入[3]1947年、 旧制成蹊高等学校高等科理科乙類入学[3]1950年、旧制成蹊高等学校高等科理科乙類を卒業した[3]1953年東京大学文学部東洋史学科を卒業[3]。その後は同大学大学院に進み、1958年 東京大学大学院博士課程を満期退学した[3]

1959年から1961年まで、フルブライト奨学金を得てアメリカ合衆国シアトル市に所在するワシントン大学に留学。ニコラス・ポッペらの下で学んだ[4]1963年ドイツ連邦共和国ボン大学東洋研究所客員研究員となった[3]

1966年東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所助教授に就任[3]1968年、ワシントン大学客員副教授となった( - 1971年[3]1973年東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所教授に昇進[3]1993年、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所を定年退官し、名誉教授となった。その後は1996年より 常磐大学国際学部教授として教鞭をとった(〜2000年)。2002年、国際モンゴル学会名誉会員に選出された。

2017年5月25日、心不全のため死去[5]

受賞・栄典

家族・親族

研究内容・業績

  • 中国史、古代日本史韓国史を専門とした。日本の中国史学会に異を唱えた研究、発言、著作がある。
  • 歴史を理論として確立しているのはヘロドトスに始まるヨーロッパ史と司馬遷らに始まる中国史だけであり、両者の歴史観はまったく原理を異にしていること、そしてその他の地域の歴史は両者いずれかの歴史観による焼き直しであることを主張した。この観点から、両者を単に融合して世界史を記述するのではなく、両者を止揚・昇華させた新たな原理による世界史を構築する必要性を説き、世界史の始まりをモンゴル帝国によるヨーロッパ文明・中国文明の接触に求めている[7]
  • しばしば著作内で「三国時代漢族は激減し、ほぼ絶滅した」と主張している[8]
  • 朝鮮半島について、歴史学的には「韓半島」と呼ぶのが正しいとしている。韓国起源説については、「もともと、日本は未開野蛮の国で、朝鮮がすべて、いいことを教えてやったんだと思いたい。極端な話が、日本の歌謡曲だって、実は朝鮮人発明して、それを有名な音楽家である古賀政男が朝鮮に来て、それを聞いて帰って、つまり盗んで、自分が作曲したと言って発表した。それが日本の歌謡曲の起こりだ、という解釈まである。これは国民的な信念なのだ。このようなことに至るまで、とにかく、自分たちがで、日本はだ、という信念が、韓国人アイデンティティーの基礎にあって、これを否定されたら、韓国人でいられない」と評している[9]

言論・評価

岡田は「私は“群れる”ことができない性質なのを痛感しつつ、学者人生を過ごしてきた。学界では孤立したが、それを苦痛にも、寂しいとも思ったことがない。強がりではなく、どうも私にはそうした神経がないらしい。周囲を恨んだこともない。学界という狭い世界ではなく、メディアに広く求められ認められたことで、私はやりたい学問ができ、主張したいことを主張してこられた」と述べている[10]

…去年、岡田英弘の歴史書を読みました。そのあとで、私はこの人物の傾向と立ち位置を理解しました。彼は日本の伝統的な史学に対し懐疑を示し、日本史学界から“蔑視派”と呼ばれています。彼は第三世代(白鳥庫吉和田清につぐ?)の“掌門人(学派のトップ)”です。モンゴル史、ヨーロッパと中国の間の地域に対するミクロ的な調査が素晴らしく、民族言語学に対しても非常に深い技術と知識をもっており、とくに語根学に長けています。彼は1931年生まれで、91年に発表した本で、史学界で名を成しました。これは彼が初めてマクロな視点で書いた本で、それまではミクロ視点の研究をやっていたのです。私はまずミクロ視点で研究してこそ、ミクロからマクロ視点に昇華できるのだと思います。大量のミクロ研究が基礎にあってまさにマクロ的にできるのです。
  • 杉山清彦も、岡田のことを「モンゴル史・満洲史に軸足をおきながら、ひろく中国史・日本古代史などさまざまな分野で発言をつづけており、その卓抜した史眼には定評がある」として、岡田の著書『中国文明の歴史』(講談社現代新書2004年)を、「少なくとも学界では正当な評価を受けているとは言いがたいと思われる。たしかに史料的根拠や論証は、おそらく、なかば意図的に省略されているが、さまざまな専門の研究者は、それぞれおのが分野において氏の投げたボールを受け止めるべきではなかろうか」と評している[13]

著作

単著

著作集

  • 『歴史とは何か』藤原書店〈岡田英弘著作集 第1巻〉、2013年6月。ISBN 978-4-89434-918-6 
  • 『世界史とは何か』藤原書店〈岡田英弘著作集 第2巻〉、2013年9月。ISBN 978-4-89434-935-3 
  • 『日本とは何か』藤原書店〈岡田英弘著作集 第3巻〉、2014年1月。ISBN 978-4-89434-950-6 
  • 『シナ〈チャイナ〉とは何か』藤原書店〈岡田英弘著作集 第4巻〉、2014年5月。ISBN 978-4-89434-969-8 
  • 『現代中国の見方』藤原書店〈岡田英弘著作集 第5巻〉、2014年10月。ISBN 978-4-89434-986-5 
  • 『東アジア史の実像』藤原書店〈岡田英弘著作集 第6巻〉、2015年3月。ISBN 978-4-86578-014-7 
  • 『歴史家のまなざし 〈附〉年譜/全著作一覧』藤原書店〈岡田英弘著作集 第7巻〉、2016年2月。ISBN 978-4-86578-059-8 
  • 『世界的ユーラシア研究の六十年』藤原書店〈岡田英弘著作集 第8巻〉、2016年7月。ISBN 978-4-86578-076-5 

共編著

  • Poppe, Nicholas; Hurvitz, Leon; Okada, Hidehiro (1964), Catalogue of the Manchu-Mongol section of the Tōyō Bunko, Seattle: University of Washington Press, LCCN 65-73597 
  • 岡田英弘「清の太宗嗣立の事情」『東洋史論叢 山本博士還暦記念』山本博士還暦記念東洋史論叢編纂委員会 編、山川出版社、1972年10月。NCID BN04061578 
  • 神田信夫松村潤、細谷良夫 と共著『鑲紅旗檔 雍正朝』東洋文庫清代史研究室 編、東洋文庫、1972年3月。NCID BN05481047 
  • 伊東俊太郎 ほか 編「まえがき・真実と言葉・秘密結社」『アジアと日本人』研究社出版〈講座・比較文化 2〉、1977年11月。ISBN 978-4-327-35002-4 
  • 小堀桂一郎 編『家族 文学の中の親子関係』PHP研究所、1981年7月。ISBN 978-4-569-20605-9 
  • 岡田英弘「陶晶孫伝稿」『論集近代中国研究』市古教授退官記念論叢編集委員会 編、山川出版社、1981年7月。ISBN 978-4-634-65270-5 
  • 岡田英弘「康熙帝・雍正帝・乾隆帝」『激動の近代中国』尾崎秀樹 責任編集、集英社〈人物中国の歴史 9〉、1982年2月。ISBN 978-4-08-177009-0 
    • 『激動の近代中国 人物中国の歴史9』尾崎秀樹責任編集、集英社文庫、1987年9月。ISBN 978-4087510713
  • 岡田英弘 述「「倭人伝」をどう読むか」『倭人伝を読む』森浩一編、中央公論社〈中公新書 665〉、1982年10月。ISBN 978-4-12-100665-3 
  • 神田信夫松村潤、細谷良夫 と共著『鑲紅旗檔 乾隆朝 1』東洋文庫清代史研究室 編、東洋文庫、1983年3月。NCID BN05481047 
  • 護雅夫 編『中央ユーラシアの世界』山川出版社〈民族の世界史 4〉、1990年6月。ISBN 978-4-634-44040-1 
  • 岡田英弘 ほか 編『歴史のある文明・歴史のない文明』筑摩書房、1992年1月。ISBN 978-4-480-85607-4 
  • 西尾幹二 編『日本とヨーロッパの同時勃興』産経新聞ニュースサービス(出版) 扶桑社(発売)〈地球日本史 1〉、1998年9月。ISBN 978-4-594-02570-0 
    • 西尾幹二 編『日本とヨーロッパの同時勃興』産経新聞ニュースサービス(出版) 扶桑社文庫(発売)〈地球日本史 1〉、2000年12月。ISBN 978-4-594-03030-8 
  • 「第41回国際アルタイ学会」『常磐国際紀要 常磐大学国際学部紀要 第3号』常磐大学国際学部編・刊、1999年3月。ISSN 13430645 
  • 神田信夫、松村潤 と共著『紫禁城の栄光 明・清全史』講談社〈講談社学術文庫 1784〉、2006年10月。ISBN 978-4-06-159784-6  - 初刊版『大世界史 11』(文藝春秋、1968年)
  • 岡田英弘 編『清朝とは何か』宮脇淳子 ほか執筆、藤原書店〈別冊環 16〉、2009年5月。ISBN 978-4-89434-682-6 
  • 岡田英弘「アジアとヨーロッパ」『「アジア」を考える 2000~2015』藤原書店編集部編、藤原書店、2015年6月。ISBN 978-4-86578-032-1 
  • 岡田英弘 編『モンゴルから世界史を問い直す』藤原書店、2017年1月。ISBN 978-4-86578-100-7 

訳書

監修

その他

脚注

  1. ^ 岡田英弘』 - コトバンク
  2. ^ a b c 岡田 (2016b, p. 525).
  3. ^ a b c d e f g h i j k 岡田英弘教授:年譜と著作目録」『アジア・アフリカ言語文化研究』第45号、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所、1993年、227-264頁、ISSN 03872807NAID 1200009973362022年1月12日閲覧 
  4. ^ ポッペ (1990, pp. 266, 304).
  5. ^ 岡田英弘氏が死去 歴史学者 日本経済新聞 2017年5月30日
  6. ^ a b 福島香織 (2015年8月5日). “王岐山イチオシの日本人歴史学者”. 日経ビジネス. 2015年8月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年12月25日閲覧。
  7. ^ 岡田 (2001a)
  8. ^ 例えば岡田 (2012, p. 91)など。彼の説についての批判は加藤 (2006)などがある。
  9. ^ 岡田英弘『歴史とはなにか』文藝春秋文春新書155〉、2001年2月20日、136頁。ISBN 4-16-660155-5 
  10. ^ 岡田英弘 (2005年10月). “グラビア 私の写真館・アルバムの中に(128)”. 正論 (産業経済新聞社): p. 13-19 
  11. ^ “王岐山氏退任、剛腕があだに 党内安定優先”. 日本経済新聞. (2017年10月25日). https://www.nikkei.com/article/DGXMZO2269356025102017EA1000/ 2017年10月31日閲覧。 
  12. ^ 中沢克二 (2015年7月15日). “「反腐敗」のキーマンは幼なじみ 洞窟で築いた絆”. 日本経済新聞 (日本経済新聞社). オリジナルの2015年7月16日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20150716003525/https://www.nikkei.com/article/DGXMZO89239970T10C15A7000000/ 2015年7月22日閲覧。 
  13. ^ 杉山清彦 (2005年10月). “高等学校 世界史のしおり” (PDF). 書評 わたしの一冊 岡田英弘「中国文明の歴史」. 帝国書院. 2013年9月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年5月24日閲覧。
  14. ^ 宮脇淳子「毛沢東路線への復帰を本気で進めている新皇帝・習近平」を新たに増補

参考文献

外部リンク


岡田英弘

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義経=ジンギスカン説」の記事における「岡田英弘」の解説

また、満洲史、モンゴル研究者である岡田英弘も、「1195年ケレイトオン・ハーンとその部下チンギス・ハーン(このときはテムジン)は、金と同盟してタタール人大規模な征伐作戦行い、金から恩賞受けている。これが初め歴史登場した事件であり、これ以前チンギス・ハーン事跡ははっきりとは分からない。」と述べる。

※この「岡田英弘」の解説は、「義経=ジンギスカン説」の解説の一部です。
「岡田英弘」を含む「義経=ジンギスカン説」の記事については、「義経=ジンギスカン説」の概要を参照ください。

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