ラスカー・ドゥベーキー臨床医学研究賞
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| ラスカー・ドゥベーキー臨床医学研究賞 Lasker-DeBakey Clinical Medical Research Award |
|
|---|---|
| 受賞対象 | 患者に対する臨床治療法の改善に貢献した研究者 |
| 国 | アメリカ合衆国 |
| 主催 | ラスカー財団 |
| 初回 | 1946年 |
| 最新回 | 2025年 |
| 最新受賞者 | マイケル・J・ウェルシュ Jesus Gonzalez w:Paul Negulescu |
| 公式サイト | www |
ラスカー・ドゥベーキー臨床医学研究賞(ラスカー・ドゥベーキーりんしょういがくけんきゅうしょう)は、アルバート・ラスカー医学研究賞の一部門。アメリカ合衆国のラスカー財団によって授与される国際的な医学賞の一つで、患者に対する臨床治療法の改善に貢献した研究者を対象とする[1]。1946年に創設され、2008年にアルバート・ラスカー臨床医学研究賞から改称された。
歴代受賞者
1940年代
| 年度 | 受賞者 | 国籍 | 受賞理由 | |
|---|---|---|---|---|
| 1946年 | ジョン・F・マホーニー John F. Mahoney |
ペニシリンによる梅毒の治療に関する先駆的業績 | ||
| カール・ラントシュタイナー[2] Karl Landsteiner |
( |
赤血球のRh因子および胎児に対する重要な役割の発見 | ||
| アレクサンダー・ウィーナー Alexander S. Wiener |
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| フィリップ・レビン Philip Levine |
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| 1947年 | トーマス・フランシス・ジュニア Thomas Francis Jr. |
インフルエンザに関する知識の拡大、および効果的なワクチンの開発 | ||
| 1949年 | マックス・タイラー Max Theiler |
黄熱に対する効果的なワクチン開発を導いた実験的業績 | ||
| エドワード・カルビン・ケンダル Edward C. Kendall |
リウマチ性疾患に対するコルチゾンの治療効果発見をもたらした、副腎皮質ホルモンに関する研究 | |||
| フィリップ・ショウォルター・ヘンチ Philip S. Hench |
||||
1950年代
1960年代
| 年度 | 受賞者 | 国籍 | 受賞理由 | |
|---|---|---|---|---|
| 1960年 | カール・P・リンク Karl Paul Link |
抗凝固薬の開発 | ||
| アーヴィング・ライト Irving S. Wright |
||||
| エドガー・アレン Edgar Van Nuys Allen |
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| 1962年 | ジョセフ・スマデル Joseph E. Smadel |
リケッチア症におけるクロラムフェニコールの治療効果の実証を含む、ウイルスおよびリケッチア感染への理解に対する貢献 | ||
| 1963年 | マイケル・ドゥベーキー Michael E. DeBakey |
心臓血管外科学の発展におけるリーダーシップの発揮 | ||
| チャールズ・ハギンズ Charles B. Huggins |
( |
ヒトと動物の腫瘍を制御する内分泌機能の理解に対する貢献 | ||
| 1964年 | ネイサン・S・クライン[4] Nathan S. Kline |
重度のうつ病治療におけるイプロニアジドの使用 | ||
| 1965年 | アルバート・サビン Albert Sabin |
急性灰白髄炎(ポリオ)予防のための経口生ワクチンの開発 | ||
| 1966年 | シドニー・ファーバー Sidney Farber |
小児急性白血病に対するアミノプテリンおよびメトトレキサートの使用、および抗がん物質探索におけるリーダーシップの発揮 | ||
| 1967年 | ロバート・A・フィリップス Robert A. Phillips |
コレラによる致死の機序解明および静脈内輸液を用いた治療法の開発 | ||
| 1968年 | ジョン・ヘイシャム・ギボン John H. Gibbon |
人工心肺装置の開発 | ||
| 1969年 | ジョージ・コティアス George Cotzias |
( |
レボドパ(L-dopa)投与によるパーキンソン病治療効果の実証 | |
1970年代
| 年度 | 受賞者 | 国籍 | 受賞理由 | |
|---|---|---|---|---|
| 1970年 | ロバート・A・グッド Robert A. Good |
免疫系に対する理解を深める独創的な貢献 | ||
| 1971年 | エドワード・フレイス Edward D. Freis |
中等症高血圧に対する薬物療法の効果の実証 | ||
| 1972年 | リー・ミンチウ Min Chiu Li |
( |
妊娠性絨毛癌に対する化学療法の確立 | |
| ロイ・ハーツ Roy Hertz |
||||
| デニス・バーキット Denis P. Burkitt |
バーキットリンパ腫の発見 | |||
| ジョセフ・バーチェナル Joseph H. Burchenal |
モデル疾患としてのバーキットリンパ腫の重要性の発見 | |||
| ヴィクター・アノマ・ヌグ V. Anomah Ngu |
バーキットリンパ腫に対する化学療法の開発 | |||
| ジョン・L・ジーグラー John L. Ziegler |
バーキットリンパ腫化学療法における治癒率の改善 | |||
| エドムント・クライン Edmund Klein |
皮膚の悪性腫瘍および前癌病変の治療に対する貢献 | |||
| エミル・フライ Emil Frei |
リンパ腫および成人急性白血病に対する複合化学療法の適用 | |||
| エミル・フライライク Emil J. Freireich |
複合化学療法およびその患者に対する支援療法における顕著な貢献 | |||
| ジェームズ・F・ホランド James F. Holland |
小児急性白血病に対する複合療法の適用 | |||
| ドナルド・ピンケル Donald Pinkel |
||||
| ポール・P・カーボン Paul P. Carbone |
小児急性白血病複合療法の進歩における貢献 | |||
| ヴィンセント・デヴィータ Vincent DeVita, Jr. |
ホジキンリンパ腫に対する複合療法の適用 | |||
| ユージーン・スコット Eugene J. Van Scott |
菌状息肉腫に対する局所的化学療法の適用 | |||
| アイザック・ジェラッシ Isaac Djerassi |
化学療法適用患者に対する血小板輸血による支援療法の開発 | |||
| ゴードン・ズブロド Gordon Zubrod |
(特別賞)がん化学療法の発展におけるリーダーシップの発揮 | |||
| 1973年 | ポール・ゾル Paul Zoll |
非開胸式徐細動器および心臓ペースメーカーの開発 | ||
| ウィリアム・カウエンホーフェン William B. Kouwenhoven |
開胸式・非開胸式徐細動器の開発、および体外心臓マッサージ技術の創始 | |||
| 1974年 | ジョン・チャンレイ John Charnley |
関節炎および関節障害の治療に新たな地平を拓いた、人工股関節全置換術に対する技術的貢献 | ||
| 1975年 | ゴッドフリー・ハウンズフィールド Godfrey Hounsfield |
放射線診断学に革命をもたらしたコンピュータ断層撮影(CT)技術の発見 | ||
| ウィリアム・オルデンドルフ William H. Oldendorf |
放射線診断学における革命的発見 | |||
| 1976年 | レイモンド・アールキスト Raymond Ahlquist |
プロプラノロールの開発に道を開いた、αおよびβ受容体に関する概念の確立 | ||
| ジェームス・ブラック James W. Black |
心臓病治療におけるプロプラノロールの開発 | |||
| 1977年 | インゲ・エドラー Inge Edler |
非侵襲的診断法としての超音波検査の臨床応用 | ||
| カール・ヘルムート・ヘルツ Carl Hellmuth Hertz |
医学領域における超音波検査法の開発 | |||
| 1978年 | ロバート・オーストリアン Robert Austrian |
莢膜多糖体ワクチンによる肺炎球菌感染予防効果の実証 | ||
| エミル・C・ゴットシュリッヒ Emil C. Gotschlich |
( |
髄膜炎菌感染を予防する莢膜多糖体ワクチンの開発およびその効果の実証 | ||
| マイケル・ハイデルベルガー Michael Heidelberger |
莢膜多糖体ワクチン開発の基礎を築いた免疫化学的研究 | |||
1980年代
| 年度 | 受賞者 | 国籍 | 受賞理由 | |
|---|---|---|---|---|
| 1980年 | シリル・クラーク Cyril Clarke |
Rh因子の遺伝学的解析および新生児溶血性疾患との関連を示す基礎的研究 | ||
| ロナルド・フィン Ronald Finn |
胎児が母親の免疫系から保護される機構、およびRh因子関連疾患の発生機序の解明 | |||
| ヴィンセント・フリーダ Vincent Freda |
新生児溶血性疾患を予防する抗Rhワクチン開発における臨床研究 | |||
| ジョン・G・ゴーマン John G. Gorman |
( |
抗Rhワクチン開発における免疫学的洞察 | ||
| ウィリアム・ポラック William Pollack |
( |
抗Rhワクチン開発における免疫学的知識ならびに薬学的理解への貢献 | ||
| 1981年 | ルイス・ソコロフ Louis Sokoloff |
中枢神経系ネットワークにおける生化学的活動を視覚化する手法(2DG法)の開発 | ||
| 1982年 | ロスコー・ブレイディ Roscoe Brady |
効果的な遺伝カウンセリング手法の開発、および欠損酵素の置換による治療法の検討 | ||
| エリザベス・F・ニューフェルド Elizabeth F. Neufeld |
ある種の遺伝性リソソーム蓄積症の分子的基盤の解明および診断法の確立 | |||
| 1983年 | F・メイソン・ソーンズ F. Mason Sones |
冠動脈疾患の診断治療に新時代をもたらした、心臓カテーテル法と冠動脈造影の複合技術開発 | ||
| 1984年 | ポール・ラウターバー Paul Lauterbur |
核磁気共鳴画像法(MRI)の開発における理論的・技術的貢献 | ||
| 1985年 | バーナード・フィッシャー Bernard Fisher |
生存率の改善およびQOLの向上をもたらした、乳がん治療法の確立 | ||
| 1986年 | マイロン・エセックス Myron Essex |
ヒトの免疫系に対するレトロウイルス感染の影響に関する研究 | ||
| ロバート・ギャロ Robert Gallo |
後天性免疫不全症候群(AIDS)の原因が、(現在はHIV-1として知られる)レトロウイルスの1種であることの特定 | |||
| リュック・モンタニエ Luc Montagnier |
後にAIDSの原因であることが判明するレトロウイルスの検出 | |||
| 1987年 | モーゲンス・スコー Mogens Schou |
精神病治療に革命をもたらした、躁鬱病に対するリチウムの予防治療効果に関する臨床試験 | ||
| 1988年 | ヴィンセント・ドール Vincent Dole |
麻薬中毒の生理学的機序に関する研究、およびヘロイン中毒の治療薬・メサドンの開発 | ||
| 1989年 | エティエンヌ=エミール・ボリュー Étienne-Émile Baulieu |
ステロイドホルモンの生合成・代謝・受容体に関する幅広い研究、および効果的かつ安全性の高い妊娠中絶薬・ミフェプリストン(RU-486)の開発 | ||
1990年代
| 年度 | 受賞者 | 国籍 | 受賞理由 | |
|---|---|---|---|---|
| 1991年 | 簡悦威(ユエ・W・カン) Yuet W. Kan |
ヒト遺伝学の発展における顕著な貢献、特に組換えDNA技術を用いたヘモグロビン異常症の研究 | ||
| 1993年 | ドナルド・メトカーフ Donald Metcalf |
がんおよび造血系疾患の治療に用いられるサイトカイン、コロニー刺激因子の発見 | ||
| 1994年 | ジョン・A・クレメンツ John A. Clements |
肺サーファクタントの機能に関する研究、およびサーファクタント製剤による新生児呼吸窮迫症候群治療法の開発 | ||
| 1995年 | バリー・マーシャル Barry Marshall |
消化性潰瘍の原因であるヘリコバクター・ピロリの発見 | ||
| 1996年 | ポーター・W・アンダーソン Porter W. Anderson Jr. |
インフルエンザ菌b型(Hib)感染の発生を激減させた、効果的なワクチン(Hibワクチン)の開発および製品化 | ||
| デイヴィッド・H・スミス David H. Smith |
||||
| ジョン・B・ロビンス John B. Robbins |
||||
| レイチェル・シュネールソン Rachel Schneerson |
( |
|||
| 1997年 | アルフレッド・ソマー Alfred Sommer |
第三世界の子供たちにおける失明や感染死を、低用量のビタミンA摂取によって予防できることの証明 | ||
| 1998年 | アルフレッド・ジョージ・クヌードソンJr Alfred G. Knudson, Jr. |
がんの原因となる遺伝子異常の同定、および分子レベルでのがん診断に関する研究 | ||
| ピーター・C・ノウェル Peter C. Nowell |
||||
| ジャネット・ラウリー Janet Rowley |
||||
| 1999年 | デイヴィッド・クッシュマン David Cushman |
タンパク質の構造に基づいた創薬手法の開拓、および高血圧などの治療に絶大な効果を発揮したACE阻害薬の開発 | ||
| ミゲル・オンデッティ Miguel Ondetti |
||||
2000年代
| 年度 | 受賞者 | 国籍 | 受賞理由 | |
|---|---|---|---|---|
| 2000年 | ハーベイ・オルター Harvey J. Alter |
C型肝炎ウイルスの発見を導いた先駆的業績、および輸血による感染のリスクを劇的に減少させた検査法の開発 | ||
| マイケル・ホートン Michael Houghton |
||||
| 2001年 | ロバート・G・エドワーズ Robert G. Edwards |
不妊治療に革命をもたらした体外受精技術の開発 | ||
| 2002年 | ウィレム・コルフ Willem J. Kolff |
( |
多数の腎臓病患者を延命させた、人工透析治療の開発 | |
| ベルディング・スクリブナー Belding H. Scribner |
||||
| 2003年 | マーク・フェルドマン Marc Feldmann |
関節リウマチおよび他の自己免疫疾患に対し効果を発揮する、抗TNF抗体治療法の発見 | ||
| ラヴィンダー・マイニ Ravinder N. Maini |
( |
|||
| 2004年 | チャールズ・ケルマン Charles Kelman |
合併症の頻度を抑えるとともに通院治療を可能にした、白内障手術療法の劇的な改良 | ||
| 2005年 | アレック・ジェフリーズ Alec Jeffreys |
ヒト遺伝学や法医学診断のあり方を大きく変化させた強力な手法、サザンブロッティングおよびDNAフィンガープリンティングの開発 | ||
| エドウィン・サザン Edwin Southern |
||||
| 2006年 | アーロン・ベック Aaron T. Beck |
精神疾患への理解および治療に変革をもたらした、認知療法の開発 | ||
| 2007年 | アラン・シャルパンティエ Alain Carpentier |
多くの心臓病患者の寿命を延長させた、人工弁の開発 | ||
| アルバート・スタール Albert Starr |
||||
| 2008年 | 遠藤章 Akira Endo |
心血管疾患の予防・治療に革命的な効果をもたらした脂質降下薬、スタチンの発見 | ||
| 2009年 | ブライアン・ドラッカー Brian Druker |
慢性骨髄性白血病に対する効果的な分子標的治療法の開発 | ||
| ニコラス・ライドン Nicholas Lydon |
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| チャールズ・ソーヤーズ Charles L. Sawyers |
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2010年代
2020年代
| 年度 | 受賞者 | 国籍 | 受賞理由 | |
|---|---|---|---|---|
| 2021年 | カリコー・カタリン Katalin Karikó |
( |
非常に効果的なCOVID-19ワクチンの迅速な開発を可能にした、メッセンジャーRNAの修飾による新しい治療技術の開発 | |
| ドリュー・ワイスマン Drew Weissman |
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| 2022年 | 盧煜明(デニス・ロー) Dennis Yuk Ming Lo |
ダウン症の非侵襲的な出生前診断を可能にした、母体血中の胎児由来DNAの発見[10] | ||
| 2023年 | ジェームズ・フジモト James Fujimoto |
視力を損なう網膜の病気の迅速な検出を可能にし、眼科に革命をもたらした光干渉断層計(OCT)の開発 | ||
| デイヴィッド・ファン w:David Huang |
( |
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| エリック・A・スワンソン Eric A. Swanson |
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| 2024年 | ジョエル・ハベナー Joel Habener |
肥満治療に革命をもたらしたGLP-1受容体作動薬の発見と開発 | ||
| ロッテ・ビエレ・クヌーセン Lotte Bjerre Knudsen |
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| スヴェトラーナ・モイソフ Svetlana Mojsov |
( |
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| 2025年 | マイケル・J・ウェルシュ Michael J. Welsh |
嚢胞性線維症に対する新たな治療法の開発 | ||
| ヘスス・ゴンザレス Jesus Gonzalez |
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| ポール・ネグレスク Paul Negulescu |
||||
国籍欄に二つ表示のある者は二重国籍者。
脚注
- ^ “The Lasker Awards Overview”. Lasker Foundation. 2011年11月26日閲覧。
- ^ 没後の受賞。
- ^ 1954年に次ぐ、2度目の受賞。
- ^ 1957年に次ぐ、2度目の受賞。
- ^ “2015 Lasker Awards”. Lasker Foundation. 2016年10月9日閲覧。
- ^ “2016 Lasker Awards”. Lasker Foundation. 2016年10月9日閲覧。
- ^ “2017 Lasker Awards”. Lasker Foundation. 2017年9月14日閲覧。
- ^ “2018 Lasker Awards”. Lasker Foundation. 2018年9月15日閲覧。
- ^ “2019 Lasker Awards”. Lasker Foundation. 2019年9月12日閲覧。
- ^ “Award Description”. Lasker Foundation. 2022年10月3日閲覧。
関連項目
外部リンク
固有名詞の分類
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