気候 気候要素と気候

気候

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/08 03:46 UTC 版)

気候要素と気候

気温降水量湿度気圧天気など、気候を述べるのに必要な気候の一面のことを気候要素という。気候要素は数えればきりがなく、の降り方、の質、台風の進路や勢力など多岐にわたる。

1要素ごとにまとめる場合は単純平均や移動平均等を用い、表やグラフで表現すると理解しやすい。いくつかの気候要素を同時に表現する場合、雨温図ハイサーグラフ(クライモグラフ)がよく用いられる。

気候区分

全世界のケッペン気候区分図

広く使用される気候区分は、数km以上の大規模な地域の気候を区分したものである。一方、一地方や一国、都市の規模で見た区分があり、中気候や小気候と呼ばれる。もっとも広く使用される気候区分はケッペンの気候区分であるが、ほかにも地表面における水収支によって気候を区分するソーンスウェイトの気候区分や、風系によって区分するフローンの気候区分、気団や前線などによって区分するアリソフの気候区分などの気候区分が存在する。

大気候

ケッペンの気候区分は、植生に着目した気候区分である。まず気候を樹木が生育できる気候(樹林気候)と生育できない気候(無樹林気候)に分類し、無樹林気候から乾燥度で乾燥帯、温度で寒帯を区分し、樹林気候は気温によって熱帯温帯冷帯(亜寒帯)の3つに分類したうえで、気温と降水量、降雨パターンによって各気候帯内でさらにいくつかの小気候に分類されている。

熱帯は最寒月の平均気温が18℃以上、年平均降水量が乾燥限界以上の地域を指し、赤道を中心として南北の回帰線(23度26分22秒)付近までの低緯度地方に分布する。熱帯気候は降雨パターンによって、乾季のない熱帯雨林気候、弱い乾季のある熱帯モンスーン気候、明確な乾季のあるサバナ気候の3つに分かれる。サバナ気候のwとsは、それぞれ冬季に乾季があるもの(w)と夏季に乾季があるもの(s)の違いである。

乾燥帯は最暖月の平均気温が10℃以上であり、年平均降水量が乾燥限界以下の地域を指す。緯度20~30度付近の中緯度地帯に主に分布するが、寒流の流れる大陸西岸や、海から遠い大陸の中心部にも存在する。乾燥帯は降雨量によって、草原の広がるステップ気候と植生のほとんどない砂漠気候に分けられる。砂漠気候・ステップ気候はともに平均気温によって、年平均気温が18℃以上の場合(h)と18℃未満の場合(k)に二分されている。

温帯は最寒月平均気温が-3℃以上18℃未満、最暖月平均気温が10℃以上で年平均降水量が乾燥限界以上の地域を指し、緯度30~40°程度の中緯度地方に主に分布する。温帯は降雨パターンと夏季の気温によって、乾季がなく暑い夏を持つ温暖湿潤気候、乾季がなく涼しい夏を持つ西岸海洋性気候、冬が乾季となる温帯夏雨気候、夏が乾季となる地中海性気候の4つに分かれる。

冷帯は最寒月平均気温が-3℃未満、最暖月平均気温が10℃以上であって年平均降水量が乾燥限界以上の地域を指し、緯度40°以上の高緯度地方に主に分布する。ただし南半球にはこの地域に陸地が少ないこともあり、冷帯に属する地域はほぼ北半球のみに限られている。冷帯は降雨パターンによって、乾季のない冷帯湿潤気候、冬が乾季となる冷帯冬季少雨気候、夏が乾季となる高地地中海性気候の3つに分かれる。ただし高地地中海性気候に属する地域は非常に小さな範囲に限られている。

寒帯は最暖月平均気温が10℃未満の地域を指す。寒帯のみ、乾燥限界が気候帯の条件に含まれていないが、これは非常に気温の低い地域の場合水蒸気の供給が少ないため降水量が極端に低くなり、なおかつ蒸発も少ないので乾燥地とはならないためである。主に北極南極中心に極点付近に分布する。寒帯は気温によって、短い夏の間には植物が生育可能となるツンドラ気候と、植物の生育がまったく不可能である氷雪気候の2つに分けられている。

  • 高山気候(グループH)
    • 高山気候はケッペンの気候区分には無い区分で、トレワーサが後に追加したものである。

その他の分類

中気候・小気候

日本における気候区分

日本においては大気候として中南部の温暖湿潤気候および北部の冷帯湿潤気候のどちらかに国土のほとんどが属しているが、それとは別に、日本国内のみをいくつかの小気候に分類することも行われている。日本国内の気候は、夏季の多雨多湿と冬季の少雨乾燥を特徴とし太平洋岸に広がる太平洋側気候、夏季にやや降雨が少なく冬季に豪雪となる日本海側気候、年間を通じて降雨量が少ない瀬戸内海式気候、年間を通じて温暖多雨である南日本気候の各小気候に分かれている。太平洋側気候のうち中央高地地方は、年間を通じて降雨量が少ない中央高地式気候と分類される場合もある[14]。また太平洋側気候は東日本型、九州型、南海型、日本海側気候はオホーツク型、東北・北海道型、北陸・山陰型の小気候にさらに分かれている。

都市部は自動車エアコンなどからの排熱が多く、さらに密集する建造物は風を通しにくい上、アスファルト舗装や建造物によって地面が覆われているため蒸発が少なく、高温で乾燥した都市気候と呼ばれる特有の気候を作り出す。さらにこうして滞留した熱は、ヒートアイランド現象を引き起こす[15]

微気候

微気候とは、洞窟オアシスなど狭い地域の地形、またはビルなどの建造物によって作られる、周囲の「大気候」とは異なる地域である。

洞窟の中は外よりも気温が低く、生物環境なども周囲とは大きく異なる。オアシスには植物が密集しており、乾燥のために植物が無い砂漠と比べて対照的である。同様に、乾燥した地域を流れる川の河畔には植物が生育する。コンクリートで覆われたビルの屋上は、その性質のために温度が高い。しかし、植物を植えるなどして温度を下げることが可能である。また、地下や公園などの気候も周囲と異なる微気候である。

気候の変動性

1991年のピナトゥボ山の噴火によりこの年は全世界で気温が低下した

気候はそもそも変化する中の平均的状態であり、短期間である程度の変動幅を持つのがふつうである。また、長い時間的スケールの中でも変化をしてゆく。しかし、その変化はしばしば自然や人間活動に影響を及ぼし、許容されないような被害が起こることがある。近年でのこの典型的な例が地球温暖化である。

一般的には、気候変動という言葉は時間的・空間的スケールの大小にかかわらず用いられる。しかし、気候学においては区別する場合があり、ある平均的な気候と比較した、年度ごとの上下のばらつきを気候変動と呼び、平年状態が徐々に変化していく場合を気候変化と呼ぶ。

さまざまな研究により、数千年以上に渡って長期的に見ると、気候には周期的に変化するパターンと突発的に変化するパターンとがあることが分かっている。

周期的な気候変動・気候変化の要因としては、太陽黒点数の変化などに代表される太陽活動や、地球公転軌道、自転軸の傾き、自転速度、近日点などの軌道要素の変化などがある。

また、プレートテクトニクスも気候に大きな影響を及ぼす。大陸は海よりも温度が下がりやすく、また熱輸送に大きな影響を持つ海流をせき止める役目を持つため、大陸の配置や移動によって各地域の温度が大きく上下する。例えば、約2500万年前に南極大陸南アメリカ大陸が分離してドレーク海峡が誕生したため、南極大陸を取り囲むように誕生した南極海で寒流である南極環流が誕生し、それまで南極大陸に到達していた暖流が届かなくなった。このため南極大陸に届く熱量は急減し、それまで一部にしか発達していなかった氷床が南極大陸全土を覆うまでに成長することとなった。この南極の巨大な氷床は地球全土に大量の寒気を供給することになり、また熱帯地域との温度勾配が激しくなったために赤道周辺との間の大気循環が非常に活発となった。逆に、北極は極点付近に大陸が存在せず、周囲をユーラシア大陸北アメリカ大陸に囲まれているため、大西洋から暖流が流れ込む北極海沿岸は南極に対してより温暖な気候となり、大規模氷床はグリーンランドのみに発達することとなった。また、400万年前にはパナマ地峡が成立して大西洋と太平洋の間の海流が遮断され、現在のような海流が成立した。このため高緯度地域への大量の蒸気供給によって氷河の発達が促され、これ以降氷期が出現するようになった[16]。また、これにより太平洋の海水が大西洋に流れ込まなくなったためにカリブ海の海水は北大西洋北部にて深海へと流れこむようになり、北大西洋深層水が誕生した。そしてそれまでに存在した南極底層水と合わせ、熱塩循環も現在のようになった[17]

また、突発的な気候変動・気候変化の要因としては、火山噴火、隕石の衝突、地殻変動温室効果による温暖化、熱帯雨林の伐採などがあげられる。火山噴火による気候への影響はおもに火山灰二酸化硫黄などが噴火によって大量に空気中に放出され、地表への太陽光の到達を妨げることにより起こるもので、火山の冬と呼ばれるように基本的には気温を下げる方向に作用する。1883年インドネシアクラカタウ火山の噴火や1991年フィリピンピナトゥボ山の噴火などの大規模噴火は、その年の気温を0.5度[18] から0.8度ほど下げ、その年に冷涼な気候をもたらした。これらの噴火の影響は小規模であり、翌年には空気中に放出された物質が洗い流されることで終息したが、さらに大規模な破局噴火が起きた場合、さらに大きな影響を気候にもたらすと考えられている。今から7万年前から7万5千年前に起きたと考えられているインドネシア・トバ火山の噴火は気温を平均5度も下げ、人類を一時絶滅寸前にまで追い込んだとする理論(トバ・カタストロフ理論)も存在する[19]。ただしこれらはあくまでも大気中への火山灰などの大量の噴出が原因であり、中長期的に気候に影響をもたらすことはない。こうした影響を及ぼすのは隕石衝突も同様であり、6600万年前の白亜紀には巨大隕石の衝突によって寒冷化が起き、恐竜の絶滅が起きたとの説が有力である[20]。温室効果は人類活動の拡大と関連付けて論じられることが多いが、主な温室効果ガスである二酸化炭素自体は生命活動に伴い古くから普遍的に存在している物質であり、地殻変動などに伴い増減を繰り返して気候に大きな影響を及ぼしてきた。温室効果が全く存在しない場合は地球の平均表面温度は-18℃になると考えられており、温室効果は地球の気候を温暖なものとしている大きな要因となっている[21]

熱帯雨林の伐採は、人間の活動が主原因となる人為的なものであり、また19世紀以降の地球の平均気温の上昇に関しては化石燃料の使用を中心とする人間活動の活発化に伴うものであると考えられている[22]。また、オゾン層の破壊・酸性雨などの地球環境問題も、気候変化と関連して考えていく必要がある。




  1. ^ 「【大人のための図鑑】天気・気象の新事実」p63 木村龍治監修 新星出版社 2014年6月25日初版発行
  2. ^ 日下 博幸、2013、『学んでみると気候学はおもしろい』、ベレ出版 ISBN 978-4-86064-362-1
  3. ^ 「【大人のための図鑑】天気・気象の新事実」p182 木村龍治監修 新星出版社 2014年6月25日初版発行
  4. ^ 「百万人の天気教室 5訂版」p76-77 白木正規 成山堂書店 平成10年5月8日5訂版発行
  5. ^ 「気候 変動し続ける地球環境」(サイエンス・パレット030) p8 マーク・マスリン著 森島済監訳 丸善出版 平成28年6月25日発行
  6. ^ 「海の気象がよくわかる本」p100-101 森朗 枻出版社 2012年3月30日第一版第一刷
  7. ^ 「気候変動で読む地球史 限界地帯の自然と植生から」p225-227 水野一晴 NHK出版 2016年8月25日第1刷
  8. ^ 「海の気象がよくわかる本」p134-135 森朗 枻出版社 2012年3月30日第一版第一刷
  9. ^ 「乾燥地の自然」(乾燥地科学シリーズ2)p29 古今書院 篠田雅人編 2009年3月31日初版第1刷
  10. ^ 「乾燥地の自然」(乾燥地科学シリーズ2)p23 古今書院 篠田雅人編 2009年3月31日初版第1刷
  11. ^ a b 「生命の意味 進化生態から見た教養の生物学」p30 桑村哲生 裳華房 2008年3月20日第8版発行
  12. ^ 「気候変動で読む地球史 限界地帯の自然と植生から」p121 水野一晴 NHK出版 2016年8月25日第1刷
  13. ^ 「現代地図帳」三訂版 p43 昭和63年3月10日発行 二宮書店
  14. ^ 「せまりくる「天災」とどう向き合うか」p32-33 鎌田浩毅監修・著 ミネルヴァ書房 2015年12月15日初版第1刷
  15. ^ 「海の気象がよくわかる本」p210-211 森朗 枻出版社 2012年3月30日第一版第一刷
  16. ^ 「基礎地球科学 第2版」p134 西村祐二郞編著 朝倉書店 2010年11月30日第2版第1刷
  17. ^ 「気候 変動し続ける地球環境」(サイエンス・パレット030) p84 マーク・マスリン著 森島済監訳 丸善出版 平成28年6月25日発行
  18. ^ http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/041500050/「史上最大の噴火は世界をこれだけ変えた 200年前のタンボラ山噴火から現代の被害を想像する」National Geographic 2015.04.16 2017年7月13日閲覧
  19. ^ https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/18/031400115/?P=1 「古代の超巨大噴火、人類はこうして生き延びた」ナショナルジオグラフィック 2018.03.14 2020年3月19日閲覧
  20. ^ https://news.yahoo.co.jp/byline/tatsumiyoshiyuki/20200129-00160738/ 「恐竜絶滅を引き起こした「隕石の冬」と「火山の冬」」巽好幸 ヤフーニュース 2020年1月29日 2020年3月19日閲覧
  21. ^ 「海の気象がよくわかる本」p200-201 森朗 枻出版社 2012年3月30日第一版第一刷
  22. ^ 「トコトンやさしいエネルギーの本 第2版」(今日からモノ知りシリーズ)p36 山﨑耕造 日刊工業新聞社 2016年4月25日第2版第1刷
  23. ^ http://www.suntory.co.jp/eco/teigen/knowledge/04/ 「「水の知」最前線 第4回 “青い水の惑星”だけが地球の姿ではない!? ~白く輝く凍てついた地球 スノーボールアースとは」サントリー 2017年7月13日閲覧
  24. ^ 「基礎地球科学 第2版」p178 西村祐二郞編著 朝倉書店 2010年11月30日第2版第1刷
  25. ^ a b 「基礎地球科学 第2版」p155 西村祐二郞編著 朝倉書店 2010年11月30日第2版第1刷
  26. ^ 「キリマンジャロの雪が消えていく―アフリカ環境報告」p18 石弘之(岩波新書、2009)
  27. ^ 「キリマンジャロの雪が消えていく―アフリカ環境報告」p19-21 石弘之(岩波新書、2009)
  28. ^ 南直人『ヨーロッパの舌はどう変わったか: 十九世紀食卓革命』〈講談社選書メチエ 123〉、1998年2月10日、第1刷、26頁。ISBN 406258123X
  29. ^ http://www.afpbb.com/articles/-/3004321 「太陽活動の低下、地球への影響は?」AFPBB 2013年12月02日 2017年7月13日閲覧
  30. ^ http://www.afpbb.com/articles/-/2939945 「20世紀後半、過去1400年で最も温暖」AFPBB 2013年04月22日 2017年7月13日閲覧
  31. ^ 「せまりくる「天災」とどう向き合うか」p137 鎌田浩毅監修・著 ミネルヴァ書房 2015年12月15日初版第1刷


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