パニック 暴発行動

パニック

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/06 04:31 UTC 版)

暴発行動

動物の場合、の処理能力を超える状況に陥った場合に、人間のパニック状態同様の、非論理的な行動が見られる。例を挙げれば、室内に閉じ込められた鳥が出口を求めて窓ガラスや壁などに体当たりをする行動や、ネズミが川へ群れで飛び込む集団行動、罠に掛かった動物が傷付くのも厭わずに暴れ回る行動などがある。

人間にしても動物にしても、強いストレスの下で衝動的な行為を起こした場合、偶発的にでも、ストレスの元から逃れる可能性が生じるため、このような緊急的な行動様式が発達したと考えられている。

パニックの功罪

パニックによって引き起こされる衝動的な行動は、目前の火災や頭上から崩れ落ちてくる岩石群といった危険物からいち早く逃れようとする場合には一定の効果が見られるわけだが[要出典]、特に集団的なパニックが発生した場合や、本来は危険度が低い現象であるにもかかわらず、強いストレスを受けてパニックを起こした結果、被害が拡大するケースも見られる。

火災によるパニック状態では、天ぷら油火災の際に鍋の中で火柱が立っている(まだ周囲への延焼は無い)状態にて、消火器の使用を思い付かず慌てて水を掛けてしまう人は少なくない。この場合は油が燃えながら飛び散るため、被害が拡大する事故が報じられている。また、ビル火災では、「一見押してあけるように見えるが実は引いてあける扉」の前で人が折り重なって死んでいたという事例がある。押してあかなければ普通は引いてみるところであるが、火事でパニックになっているため必死で押してあけようとしているうちに煙に巻かれたのである[8]

集団的なパニック現象が発生した場合、個々が先を争ってその場から逃れようとするのが一般的だが、そのような一定集団がパニックに陥り易いケースでは、危険状況の発生が広範囲に及んでいる場合が多い。このような場合、無理に移動しようとすると、他のパニック状態にある被災者同士で衝突したり踏まれたりする現象も起き易く、そのような事態によって死傷者が発生しているケースは多い。

また地震等の災害発生時には、屋内で家具や調度品等の倒壊を目の当たりにしてパニックに陥った際に、とにかく頭上に何も無い屋外に飛び出したいという衝動に駆られることが知られているが、今日の都市部では高層ビルの窓ガラスや外壁に用いる建材などが、ビル周辺部に降り注ぐ現象が起き易いとされる。これを考慮に入れず咄嗟に屋外へ飛び出して、それら落下物の犠牲となるケースも報告されており、特に補強の入った屋内にいる場合は、外に飛び出さなかった人のほうが安全な場合が多い。また、日本家屋ではの落下や塀の倒壊に伴う事故が報告されている。

このような緊急事態に於ける適切な行動の情報が多く出回っており、またそのような緊急事態が発生しやすい環境(地域)では、一定の訓練を繰り返す所もある。このような場合では、緊急事態を模擬的に体験することで、そのような事態への耐性を高め、パニックによる事故を未然に防ぐ効果があるとされており、それにより被害を最小限に食い止めた事例は数多い。

パニックの起こる状況

パニックは、正しい情報を得られない状況に陥った人々が冷静な判断力を失った時に発生する[9]。こうしたパニックが発生する状況には幾つかの必要条件がある[10]。それはまず群衆が差し迫った脅威を現実のものとして実感していること[11]、何からの方法によってその危険から逃れて助かる見込みがあると信じられていること[12]、しかし確実な脱出が困難であり、他の脱出者との競争に勝たなければ生き残れないかもしれないという危機感が集団の間に広がること[13]、そしてコミュニケーションが機能せず全体の状況を把握することができなくなること[14]、といった条件である。これらの条件はいずれも実際の状況がそのようなものであるかどうかに関係なく、人々の主観的な思い込みだけで引き起こされるが[15]、条件のうちの幾つかが成り立たなくなれば、パニックを防ぐことができる[15]

一方、火災などの差し迫った脅威から助かるために争って出口に殺到することが、たとえ理性的に判断したとしても唯一の合理的な生存手段となる状況で、そのような避難行動を取ったことによって助かった成果が、避難行動のせいで生じた犠牲を上回るような場合、このような集団行動をパニックと呼ぶことに対しては異論がある[16][7]。ただし生存者が少なく現場の損傷が激しいような場合、そのような避難行動が合理的な判断に基づく行動であったかどうかは判断が困難な場合もあり、折り重なった遺体の状況から「パニックが起こった」と安易に結論づけられてしまう場合もある[16]


注釈

  1. ^ ただし翌朝の新聞各社の報道ではこの出来事について、「避難騒ぎ」「パニック」といった、事実に反した内容が報道された[19]

出典

  1. ^ a b c d サトウタツヤ「うわさとパニック」立命館人間科学研究 第7号 2004.3
  2. ^ 広瀬 2004, pp. 136–140.
  3. ^ 広瀬 2004, p. 139.
  4. ^ a b c 広瀬 2004, p. 128.
  5. ^ 広瀬 2004, pp. 14–16.
  6. ^ a b c 広瀬 2004, pp. 15–16.
  7. ^ a b 山村 2015, p. 127.
  8. ^ 芳賀繁 『失敗のメカニズム—忘れ物から巨大事故まで』角川書店、2003年。ISBN 404371601X 
  9. ^ a b 山村 2015, p. 126.
  10. ^ 広瀬 2004, p. 140-145.
  11. ^ 広瀬 2004, p. 141.
  12. ^ a b c d e 広瀬 2004, p. 142.
  13. ^ a b 広瀬 2004, pp. 143–145.
  14. ^ 広瀬 2004, p. 145.
  15. ^ a b 広瀬 2004, p. 140.
  16. ^ a b 広瀬 2004, p. 147-149.
  17. ^ 広瀬 2004, p. 84.
  18. ^ 広瀬 2004, p. 16-18.
  19. ^ a b c d e 松田 2014, p. 32.
  20. ^ 山村 2015, pp. 120–121.
  21. ^ a b 山村 2015, p. 125.
  22. ^ 山村 2015, pp. 120–126.
  23. ^ 山村 2015, p. 122.
  24. ^ 広瀬 2004, pp. 128–129.
  25. ^ 広瀬 2004, pp. 14–18, 128, 147–149.
  26. ^ 山村 2015, pp. 124–130.
  27. ^ 山村 2015, pp. 118, 127.
  28. ^ a b c d e 松田 2014, p. 31.
  29. ^ 山村 2015, pp. 118, 126–127.
  30. ^ a b c d e Mika Yamamoto (2015年4月18日). “正常性バイアスを知っていますか?「自分は大丈夫」と思い込む、脳の危険なメカニズム”. tenki.jp. 日本気象協会. 2016年4月24日閲覧。
  31. ^ a b 広瀬 2004, pp. 11–14.
  32. ^ a b 山村 2015, pp. 18–19.
  33. ^ 広瀬 2004, pp. 12–14.
  34. ^ 広瀬 2004, pp. 147–148.
  35. ^ 広瀬 2004, pp. 13, 16–17, 129–130.
  36. ^ a b c 山村 2015, pp. 128–129.
  37. ^ 広瀬 2004, pp. 16–17, 129–130.
  38. ^ 山村 2015, p. 130.
  39. ^ 広瀬 2004.
  40. ^ 被曝後に肺がん、死亡の作業員に労災認定 福島第一原発:朝日新聞デジタル” (日本語). 朝日新聞デジタル. 2022年7月8日閲覧。
  41. ^ Pooley, Jefferson D, and Michael J Socolow. “Checking Up on The Invasion from Mars : Hadley Cantril, Paul Lazarsfeld, and the Making of a Misremembered Classic.” International Journal of Communication 7, no. 0 (2013): 29.
  42. ^ Hayes, Joy Elizabeth, and Kathleen Battles. “Exchange and Interconnection in US Network Radio: A Reinterpretation of the 1938 War of the Worlds Broadcast.” Radio Journal: International Studies in Broadcast & Audio Media 9, no. 1 (2011): 51–62.
  43. ^ 佐藤卓己『メディア論の名著30』ちくま新書、2020
  44. ^ 松田 2014, p. 30.
  45. ^ 松田 2014, p. 8.
  46. ^ livedoor news J-CASTテレビウォッチ 2013年06月20日付
  47. ^ a b "集団パニック". 知恵蔵mini. コトバンク. 24 June 2013. 2016年12月9日閲覧
  48. ^ a b c "集団パニック". 知恵蔵mini. コトバンク. 2 July 2014. 2016年12月9日閲覧
  49. ^ "集団ヒステリー". 世界大百科事典 (第2版 ed.). コトバンク. 2015. 2016年12月9日閲覧
  50. ^ a b c J-CATニュース「女子生徒18人搬送は集団パニック? 「霊感が強かった」との報道も」2013年6月20日付
  51. ^ 生徒26人、集団パニックか 柳川高が臨時休校 - 西日本新聞、2014年7月1日
  52. ^ 福岡・柳川高校で女子が集団パニックか - 日刊スポーツ、2014年6月30日



パニック!

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2014/06/21 21:15 UTC 版)

パニック!」は、Still Small Voiceの1作目のシングル1996年6月1日ソニーレコードから発売された。




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