パニックと初歩的ミス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/16 08:42 UTC 版)
「エアブルー202便墜落事故」の記事における「パニックと初歩的ミス」の解説
衝突の69秒前に山岳の接近を知らせる「TERRAIN AHEAD」というEGPWS (対地接近警報装置) の最初の警報が鳴り、副操縦士は左旋回をするよう求めた。この時点までに、機長は精神的に非常に苛立っていたことが会話の様子に現れている。 十数秒後、管制官から空港を視認できているか質問されると、副操縦士はすぐに返答せず、機長に対し「なんて答えましょうか?」と聞いている。再度、地表を視認しているかと聞かれた際には「見えている」と返答したが、このやりとりから、既に二人とも空港を視認できていなかったことや、地理的方向感覚を喪失していた可能性が推察される。一方で、そのような状況でもレーダーに誘導支援を求めることはしなかった。 副操縦士が再度、山岳の接近を警告すると、機長は左旋回すると言いながら、方位ノブを左に回し続けた。しかしNAVモードの状態でノブを回しても機体が旋回することはなかった。旋回させるにはそのノブを手前に引き、HDGモードに切り替える必要があった。ここに至るまでの苛立ちや混乱、不安からパニック状態にあった機長は、手元をよく確認せず、このような初歩的な操作さえ失念していた。 衝突の40秒前、ようやく機長はノブを引いたが、ノブは回され過ぎて087°にセットされていた。そのためオートパイロットは左旋回するどころか右旋回を始めた。 衝突の39秒前にさらに危険が差し迫ったことを示す「TERRAIN AHEAD PULL UP」というEGPWSの警告が鳴り出し、副操縦士は「左旋回し、上昇してください。機首を上げてください。 (Sir turn left, Pull Up Sir. Sir pull Up) 」と発言した。しかし機長との間に作られた心理的な壁に阻まれ、自ら操縦を交代するという積極性は見せなかった。 機長は依然としてマニュアル操縦に切り替えることなく、オートパイロットのみで方位と高度をコントロールしようとしていた。高度は3,100フィート (940 m)にセットされ上昇しはじめた。推力は一時MCT (最大連続推力) にセットされた。方位ノブはさらに回され025°にセットされており、以後墜落までこのままだった。 衝突の24秒前、機長はオートパイロットを解除し、操縦桿を左に目一杯倒した。「(オートパイロットで) なぜ左に旋回しないんだ?」とも発言した。機体は右旋回から一気に左52度まで傾いた。また、機首下げ入力も行ったので高度は3,110フィート (950 m)を境に降下に転じた。最終的な衝突時の高度は2,858フィート (871 m)、降下速度は3,000フィート (910 m)/分だった。衝突地点は空港の北北西9.6海里 (17.8 km)だった。 衝突前最後に記録された副操縦士の言葉は「機長落ちています、落ちて… (Sir we are going down, Sir we are going da)」だった。
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