パニック パニックの起こりにくい環境

パニック

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/06 04:31 UTC 版)

パニックの起こりにくい環境

第一には、生き残りの可能性がない場合にはパニックは起こりにくい[12]。一般に、パニックは危機的状況にある閉鎖的な空間で発生しやすいと思われている。だが、完全に逃げ場がない閉鎖的な空間においては、実際にはむしろ、パニック状態には陥りにくいことが知られている[12]。例を挙げれば、過去の大規模な航空機事故発生時には、逃げ場のない機内で乗客は強いストレスに晒されながらも、一定の理性を保っていたという報告がなされている(→日本航空123便墜落事故など)。パニックに陥り、搭乗口をこじ開けて機外に飛び出したなどの事例は極めて少ない。航空機事故の他にも潜水艦や宇宙船、鉱山での坑内事故などでは、パニックが起こらないことが知られている[12]

このことは、危機を逃れる可能性がたとえ僅かでもある場合にこそ、人は何としてもそれを達成しようしてパニック状態になることを示唆している[12]。他人と争うことで生存できるという見返りがあるのなら、人は利己的にもなる[13]

この他、視認性の高い安全経路情報の提示や、他者からの誘導がある場合も、パニックが起こりにくい。

なお、災害に対する不安や危機感がなかったり、避難するよりもその場に留まった方が安全であるという認識が広まると、人は避難行動を開始しない傾向にある[17]。その場合、危機が本当に差し迫ったものであると、結果として人々が逃げ遅れてしまう場合もある[18]。例えば1981年10月31日に神奈川県平塚市では、手違いにより、東海地震に備えてあらかじめ用意されていた「地震予知により間もなく大地震の発生が予想されるので警戒せよ」という旨のメッセージが、誤って防災無線から放送されてしまうという誤報があったが[19][20]、その放送内容は群衆のパニックを抑えることばかりを意識した、緊迫感を欠いた回りくどいものであったため[21]、予想されていたパニックは全く起こらなかった[22]。しかしこの誤報は80パーセントの市民には届かず、何らかの形で耳にした人でも真に受けた人はわずかに3.9パーセント、半信半疑だった人も10.0パーセントに留まり、大多数の市民は聞いても無視するか信じず、更に誤報の内容を真に受けたわずかな人も、そのうち60パーセント以上は何ら具体的な行動を起こさなかった[23]。安全な場所に避難したのは1パーセントにも達しなかった[19]。この放送ではパニックこそ起きなかったが[注釈 1]、結果的には「毒にも薬にもならないメッセージ」[21]と酷評されるような、避難を促す内容としても不適切なものになった。


注釈

  1. ^ ただし翌朝の新聞各社の報道ではこの出来事について、「避難騒ぎ」「パニック」といった、事実に反した内容が報道された[19]

出典

  1. ^ a b c d サトウタツヤ「うわさとパニック」立命館人間科学研究 第7号 2004.3
  2. ^ 広瀬 2004, pp. 136–140.
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  5. ^ 広瀬 2004, pp. 14–16.
  6. ^ a b c 広瀬 2004, pp. 15–16.
  7. ^ a b 山村 2015, p. 127.
  8. ^ 芳賀繁 『失敗のメカニズム—忘れ物から巨大事故まで』角川書店、2003年。ISBN 404371601X 
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  22. ^ 山村 2015, pp. 120–126.
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  50. ^ a b c J-CATニュース「女子生徒18人搬送は集団パニック? 「霊感が強かった」との報道も」2013年6月20日付
  51. ^ 生徒26人、集団パニックか 柳川高が臨時休校 - 西日本新聞、2014年7月1日
  52. ^ 福岡・柳川高校で女子が集団パニックか - 日刊スポーツ、2014年6月30日



パニック!

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2014/06/21 21:15 UTC 版)

パニック!」は、Still Small Voiceの1作目のシングル1996年6月1日ソニーレコードから発売された。




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