DRTSとは? わかりやすく解説

ディー‐アール‐ティー‐エス【DRTS】

読み方:でぃーあーるてぃーえす

data relay test satellite》⇒こだま


こだま

分類:人工衛星


名称:データ中継技術衛星「こだま」/Data Relay Test Satellite(DRTS)
小分類:技術開発衛星
開発機関・会社:宇宙開発事業団(現 宇宙航空研究開発機構(JAXA))
運用機関会社:宇宙航空研究開発機構(JAXA)
打ち上げ年月日:2002年9月10日
打ち上げ国名機関:日本
打ち上げロケット:H-IIAロケット3号機
打ち上げ場所:種子島宇宙センター
国際標識番号:02042B

こだまは、低い軌道を回る人工衛星宇宙機と、地上基地との通信中継する実験衛星です。現在建設中国際宇宙ステーション完成すると、地上基地大量データ通信必要になりますが、現状ではISS日本の上空へ来たときしか交信ができません。データ中継衛星使えば地球上空の約60%のエリアから地上へ交信可能になります「こだま」データ中継衛星実用化に向けてさまざまな実験を行う目的打ち上げられました。

1.どんな形をして、どのような性能持っているの?
本体箱形で幅2.2m、高さ2.4m、長さ2.2m、太陽電池パネル本体両側にあり、片翼で7.3×2.4mあります開口径約3.6mの衛星間通信アンテナと、開口径約1.8mのフィーダリンクアンテナをもちます重量は2,800kgで設計寿命は約7年です。

2.どんな目的使用されるの?
将来衛星間での、大容量データ中継対応する目的で、受信機通信アンテナ高性能にしたり、追尾技術高度化するための実験行いますまた、人工衛星開発期間短縮ペイロード比率の向上・発展目的に、将来中型静止三軸衛星バス開発必要な基盤技術研究します

3.宇宙でどんなことをし、今はうなっているの?
2002年9月10日打上げ後、13日14日軌道変更行い静止トランスフゼ軌道からドリフト軌道移動し、約1ヵ月後の10月11日所定軌道位置静止化、実験開始しました

4.このほかに、同じシリーズでどんな機種があるの?
ありません。

5.どのように地球を回るの?
東経90.75度の赤道上空約36,000kmにある静止衛星です。静止衛星24時間かけて地球周回するので、地上からは同じ位置止まっているように見えます


こだま (人工衛星)

(DRTS から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/22 13:14 UTC 版)

データ中継技術衛星「こだま」
DRTS
所属 宇宙開発事業団(NASDA)
宇宙航空研究開発機構(JAXA)
主製造業者 三菱電機
公式ページ データ中継技術衛星「こだま(DRTS)」
国際標識番号 2002-042B
カタログ番号 27516
状態 運用終了
目的 衛星間通信実験
設計寿命 7年
打上げ機 H-IIAロケット 3号機
打上げ日時 2002年9月10日
11時45分(JST)
運用終了日 2017年8月5日
停波日 2017年8月5日
14時45分(JST)
後継機 光データ中継衛星
物理的特長
衛星バス DS2000
本体寸法 2.2 m x 2.4 m x 2.2 m[1]
最大寸法 約17m(太陽電池パネル展開後)[1]
質量 打ち上げ時 2.8t
静止化後初期 1.5t
発生電力 2,115W以上
(7年後夏至)[1]
主な推進器 統合型調圧ブローダウン方式
500N 二液式アポジエンジン
1Nスラスタ x 16
20Nスラスタ x 8
DCアークジェット(南北制御) x 4
姿勢制御方式 コントロールドバイアスモーメンタム方式三軸制御
軌道要素
周回対象 地球
軌道 静止軌道
静止経度 東経90.75度[1]
高度 (h) 3万6,000km
軌道傾斜角 (i) 0度
軌道周期 (P) 24時間
ミッション機器
Sバンド衛星間通信機器
Kaバンド衛星間通信機器
Kaバンドフィーダリンク機器
テンプレートを表示

こだまDRTSData Relay Test Satellite)は、宇宙開発事業団(現:宇宙航空研究開発機構)が開発した、日本データ中継衛星である。

2002年9月10日H-IIAロケットで打ち上げられ、2017年8月5日に運用を終了した[2]

概要

静止衛星であり、東経90.75度のインド洋上空に占位している。低 - 中高度衛星と地上局の通信を中継することで、これら衛星の通信可能範囲を大幅に広げ、限られた地上局でも効率よくデータの送受信を行うのが目的である。使用できる周波数として、従来の2-4GHz帯(Sバンド)に加え、大容量通信に向いている26-40GHz帯(Kaバンド)を持つ。これによる最大通信容量は240Mbps以上という高速かつ大容量のデータを効率よく地上局に送信できる(2006年2月、世界最高速度278Mbpsの衛星間通信実験に成功)[3]

運用期間中に、みどりIIきらりだいちなど、さまざまなミッションにおいてデータ中継を行った。また、欧州宇宙機関(ESA)の地球観測衛星Envisatと観測データの中継実験も行い相互運用・支援性の確認をした。このうち、だいちとの連携では特に成果を上げ、運用期間中に地上局(10ヶ所)が直接受信したデータの26倍を中継するなど、今後のだいちの運用にもこだまが不可欠であると報告された[3]。また、国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」の衛星間通信システム(ICS)とのデータ中継にも使われた。

データ中継

低 - 中高度の衛星は、低い軌道高度(300-1000km)を周回するため、地上局の上空(直接通信可能な範囲)を短時間で通過してしまう。中高度で大量の情報を送信する必要がある地球観測衛星などでは、周回中にデータを圧縮しておき、地上局上空でまとめて送信するなどの手法がとられるが、本来の観測能力に対するボトルネックとなっていた。

地上局と低 - 中高度の衛星が互いの可視範囲にあるのは、軌道上の1割程度に限られている。しかし、そのはるか上空の静止軌道衛星からは、眼下の中高度衛星が飛行する軌道の6割を見渡すことが可能であり、足下の地上局に中継することによって、ほぼリアルタイムで通信可能範囲とすることができる。これは、観測衛星の実質能力を数倍に拡大できる可能性を示している。こだまは、ALOSミッション参加後、容量の嵩む画像データの99%を中継したことが報告されており、観測精度向上や期間短縮のほか、大規模災害の早期把握に大きく貢献した。

なお、空白域をなくすには最低2機による運用が必要で[4]、こだまの場合、南北アメリカ大陸をほぼすっぽりと含む円形の地域の上空が、通信が不可能な範囲となっている。

仕様

  • 打ち上げロケット:H-IIAロケット
  • 打ち上げ日:2002年9月10日(JST
  • 打ち上げ質量:約2800kg
  • 軌道:東経90.75度
  • 寸法:2.2m×2.4m×2.2m
  • 太陽電池パドル寸法:2.4m×7.3m(1枚あたり)
  • 発生電力:2100W以上
  • 衛星間通信アンテナ寸法:開口径約3.6m
  • フィーダリンク用アンテナ寸法:開口径約1.8m
  • 設計寿命:7年
  • ミッション機器:Sバンド衛星間通信機器、Kaバンド衛星間通信機器、Kaバンドフィーダリング機器

経過

技術試験衛星きく6号、通信放送技術衛星かけはしを継承する、衛星間通信、データ中継システムの実験・実証機として計画された。

  • 2002年9月10日 - 打ち上げ
  • 2003年1月10日 - 定常段階移行
  • 衛星間通信実験の実績[3]
    • 2003年2月17日 - 10月24日 環境観測技術衛星 みどりII
    • 2005年9月1日 - 2009年9月10日 光通信技術衛星 きらり
    • 2006年2月19日 - 2011年5月12日 陸域観測技術衛星 だいち
    • 2006年4月4日 - 9月26日 欧州宇宙機関 地球観測衛星 Envisat
    • 2009年3月3日 - 2009年6月16日 小型実証衛星1型(SDS-1
    • 2009年8月18日 - 継続中 国際宇宙ステーションきぼう(2011年8月1日 - 「きぼう」衛星間通信システム(ICS)の故障のため利用を中止[5]
  • 2009年9月28日 - 定常段階終了、後期利用段階へ
  • 2017年8月5日 - 静止軌道離脱、停波し運用終了[2]

当初計画

当初はDRTS-EDRTS-Wの2機で地球周辺軌道の全領域をカバーし、携帯電話の基地局のように2機の衛星が通信を引き継いで連続中継する計画だった。DRTS-Eは現在こだまが位置する東経90度、DRTS-Wは西経170度を予定していた。DRTS-Wの打ち上げは2002年に予定されていたが、1年前の2001年8月の宇宙開発委員会で、予算不足から1機のみの計画に変更することが了承された。DRTS-Wとして製作された衛星は予定通り2002年に打ち上げられたが、軌道上の位置はDRTS-Eが予定していた東経90度に変更され、単にDRTS(こだま)と呼称することになった。2機目の衛星は地上予備機として完成させることも検討されたが、結局製作中止になった。

後継衛星

こだまの設計寿命は2009年に尽きており、後継衛星は準備されていないため、以後当面は寿命を超えての運用となる。推進薬を節約するため、2009年11月以降は衛星の南北制御を中止し、東西制御のみにする。南北制御を中止したことにより次第に軌道傾斜角が増大するため、軌道傾斜角が南北1度に達する2012年1月以降の運用は、衛星の状態を判断しながら決定される予定である[3]。こだまの故障時に備えて、バックアップとしてNASAのデータ中継衛星TDRS2010年4月以降に使用できるよう、準備が進められている[6]

JAXAでは、こだまの当初計画と同様に、2機の後継衛星をもって低軌道全体をカバーする体制を構築したい意向である。通信方法はこだまと同じKa帯電波の他、きらりで技術実証されたレーザー通信も検討されているが、いずれを搭載するか、あるいは両方を搭載するかは決定されていない。なお、当面計画されている低軌道衛星にはレーザー通信装置を搭載する予定はなく、衛星間通信を行う衛星はこだまとの通信を前提としているため、少なくともKa帯通信装置は搭載する可能性が高い。

2012年7月31日に開催された宇宙政策委員会 第1回会合の情報によれば、こだまの後継機は2015年度に民間事業者から調達する衛星でサービスを引き継ぐ方針とされている[7]

光データ中継衛星

情報収集衛星(IGS)とのデータ中継には「こだま」は使われなかった。政府は情報収集衛星用に大量のデータを迅速に中継するデータ中継衛星1号機と、これとは別予算の光データ中継衛星を導入した[8]。平成31年度(2019年)の打ち上げを目指して、平成27年度予算案に関連予算の一部を盛り込んだ。光データ中継衛星はデータを電波でなく光形式で送るため、他国による妨害や傍受を防ぐことも可能になる[8]。 その後、データ中継衛星1号機と光データ中継衛星は1機の衛星に機能をまとめられ、光データ中継衛星として2020年11月にH-IIAロケット43号機で打ち上げられた。

注釈

関連項目

  • 通信衛星
  • 宇宙開発事業団
  • 宇宙航空研究開発機構
  • H-IIAロケット
  • 光データ中継衛星
  • TDRS - NASAのデータ中継衛星
  • ESAのデータ中継衛星 実験用のARTEMIS、実用のEDRS(2015年に商業通信衛星EUTELSAT-9Bに光通信機器を搭載し、2016年にも2機目のHylas-3に搭載する予定)
  • 天鏈1号 - 中国のデータ中継衛星
  • ルーチ - ロシアのデータ中継衛星。2011年12月11日にLuch-5Aを、2012年11月3日にLuch-5Bを打上げた。2014年4月28日にLuch-5Vを打ち上げて3機体制にした[1]。ロシアは1980-90年代にもLuchを使ってミールなどを運用していたが、1990年代末に寿命が切れ、以後は財政難で保有していなかった。

外部リンク

  1. ^ “Proton-M successfully lofts two satellites”. NASA Spaceflight.com. (2014年4月27日). http://www.nasaspaceflight.com/2014/04/upgraded-proton-m-launches-two-satellites/ 2014年5月1日閲覧。 

「DRTS」の例文・使い方・用例・文例

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