12のエチュードとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > デジタル大辞泉 > 12のエチュードの意味・解説 

じゅうにのエチュード〔ジフニの‐〕【十二のエチュード】

読み方:じゅうにのえちゅーど

原題、(フランス)12 Etudes》⇒十二の練習曲


タールベルク:12のエチュード

英語表記/番号出版情報
タールベルク:12のエチュードZwölf Etüden Op.26初版出版地/出版社: Breitkopf  献呈先: J. Epstein

作品概要

楽章・曲名 演奏時間 譜例
1 嬰へ短調 fis-mollNo Data No Image
2 ト短調 g-mollNo Data No Image
3 嬰ハ長調 Cis-durNo Data No Image
4 ホ長調 E-durNo Data No Image
5 ロ短調 h-mollNo Data No Image
6 変ロ短調 b-mollNo Data No Image
7 ロ長調 H-durNo Data No Image
8 ハ長調 C-durNo Data No Image
9 ニ長調 D-durNo Data No Image
10 変ホ長調 Es-durNo Data No Image
11 変イ長調 As-durNo Data No Image
12 ヘ長調 F-durNo Data No Image

作品解説

2011年5月 執筆者: 上田 泰史 

 本練習曲は、六曲ずつの二巻からなり第一巻37年に、第二巻が翌38年出版された。今回演奏されるこの作品26タールベルクにとって唯一のエチュード集である。今日ではオペラなどの主題によるパラフレーズ作曲家というイメージ付きまとうタールベルクだが、彼もまた30年代の「エチュード・ブーム」の波に突き動かされ優れたエチュード集書いたエチュード慣例に従って各曲限られたリズムモチーフで構成している。いずれのモチーフも指の敏捷さ大きな跳躍、手の伸張交差など特定の技術的目標達成するために書かれており、それを過激なテンポ演奏するよう指示されている。たとえメトロノーム指定速度遅くとも一拍が細かい音符分かれているために指示通りテンポで弾くことは決し容易ではない。しかし、同時代生きたパリ音楽院教授マルモンテル伝えところによれば、ショパン同様、巧みにペダル操り音響コントロールできたタールベルク演奏には、粗っぽさや力まかせ打鍵からくる音の濁り一切なく、極めて端正透き通るような印象与えたという。

 作曲家解説箇所で既に述べたが、この練習曲にも中音域に旋律を置きそれを分散和音でとりまくというタールベルク典型的な書法見られる参考までに第2巻第4番冒頭挙げておこう。


オペラ旋律多く作曲用いたタールベルクだけあって旋律彫琢には余念がない


ドビュッシー:12のエチュード(練習曲)

英語表記/番号出版情報
ドビュッシー:12のエチュード(練習曲12 Etudes作曲年: 1913-15年  出版年1916年  初版出版地/出版社: Durand 

作品概要

楽章・曲名 演奏時間 譜例
1 5本の指のために(チェルニー氏による) "Pour les cinq doigts, d'apres M.Czerny"3分00 No Image
2 3度音程のために "Pour les tierces"4分00 No Image
3 4度音程のために "Pour les quartes"5分00 No Image
4 6度音程のために "Pour les sixtes"4分30秒 No Image
5 8度音程のために "Pour les octaves"3分30秒 No Image
6 8本の指のために "Pour les huit doigts"1分40 No Image
7 半音階のために "Pour les degres chromatiques"2分30秒 No Image
8 装飾音のために "Pour les agrements"4分30秒 No Image
9 反復する音符のために "Pour les notes repetees"3分30秒 No Image
10 対比的響きのために "Pour les sonorites opposees"4分30秒 No Image
11 組み合わされアルペッジョのために "Pour les arpeges composes"4分30秒 No Image
12 和音のために "Pour les accords"4分30秒 No Image

作品解説

2007年6月 執筆者: 和田 真由子

 1915年これまで健康の不調第一次大戦への苦悩などからしばらく作曲ができていなかったドビュッシーだが、ショパン楽譜校訂する仕事きっかけに、創作力とりもどした。ここで作曲されたのが《12の練習曲》であり、これはショパン献呈されている。
 この練習曲では、ただ技巧追求するための作品として作曲されているわけではない。彼はこの作品通じて、彼自身音楽性あり方再検討したのであろう
 練習曲ありながら運指法が指示されていないことも特徴一つであるが、ドビュッシーはこれを意図的におこなっている。つまり、演奏者の腕や手の構造には違いがあるため、各人合った運指法を各自追求していくこともまた、課題一つになっているのである

6曲ずつの2巻分けられている。
1.5本の指のための(チェルニー氏による) 」"Pour les cinq doigts, d'apres M.Czerny"
 チェルニー練習でなじみのいくつかのモティーフ模しチェルニーへのオマージュとなっている。

2.3度音程のための / "Pour les tierces"
 3度音程は、《小組曲》の〈行列〉、《スコットランド行進曲》の冒頭、《ベルマスク組曲》の〈月の光〉の開始、など、多く楽曲の中で使用されている。

3.4度音程のための / "Pour les quartes"
 4度ドビュッシー好んだ音程である。変容しつつ流れていく4度アラベスクの中で、ドビュッシーは「まだお聴きになったとがないものを、あなたは発見なさるでしょうと書いている。

4.6音程のための / "Pour les sixtes"
 ドビュッシー六度音程を「サロンとりのこされた気どった令嬢」と形容している。
 変ニ長調はじまり、転調重ね変ニ長調に終わる。フレーズ構造は複雑で、多様なヘミオラ用いられている。

5.8度音程のための / "Pour les octaves"
〈陽気に、そして昂揚し、自由にリズム強調して〉。3分形式の形をとっている。
スケルツォ的な練習曲

6.8本の指のための / "Pour les huit doigts"
「この練習曲では、両手位置がよくわかるので、親指をつかうのは具合が悪い。親指をつかう演奏は、曲芸のようになるだろう」とドビュッシーが注をつけている。

7.半音階のための / "Pour les degres chromatiques"
32音符半音階的進行する右手中心とした半音階練習曲

8.装飾音のための / "Pour les agrements"
下行分散和音前打音練習曲ドビュッシー自身イタリアふうバルカローレ舟歌)のかたちによっている」とのべている。全曲中で特に高く評価されている曲の一つ

9.反復する音符のための / "Pour les notes repetees"
同音連打練習曲

10.対比的響きのための / "Pour les sonorites opposees"
テンポ音域ディナーミクなど、あらゆる要素対比的配置されており、非常に微妙なニュアンスをもった作品

11.組み合わされアルペッジョのための / "Pour les arpeges composes"
この作品には曲想表示がない。

12.和音のための / "Pour les accords"
和音オクターブ跳躍進行構成される明確なリズム演奏することが要求されている。3つの部分からなっており、レントの穏やかで、表情にとんだ中間部分をもつ。

関連コーナー
金子一朗 ドビュッシー探究 ⇒こちら


スクリャービン(スクリアビン):12のエチュード(練習曲)

英語表記/番号出版情報
スクリャービンスクリアビン):12のエチュード(練習曲12 Etudes  Op.8作曲年1894年  出版年1985年  初版出版地/出版社: Belaïev 

作品概要

楽章・曲名 演奏時間 譜例
1 嬰ハ長調 Cis dur2分00 No Image
2 嬰ヘ短調 fis moll2分00 No Image
3 ロ短調 h moll2分30秒 No Image
4 ロ長調 H dur2分00 No Image
5 ホ長調 E dur2分30秒 No Image
6 イ長調 A dur2分00 No Image
7 変ロ短 b moll2分00 No Image
8 変イ長調 As dur3分30秒 No Image
9 嬰ト短調 gis moll5分00 No Image
10 変ニ長調 Des dur2分00 No Image
11 変ロ短調 b moll4分30秒 No Image
12 嬰ニ短調悲愴」 dis moll 'Pathetic'2分30秒 No Image

作品解説

2008年4月 執筆者: 齊藤 紀子

 スクリャービン22歳時に書き始められ翌年完成した。この練習曲集は、ペテルブルグ音楽院後援者であり音楽出版業者でもあるべリャーエフが出版すすめた。この練習曲集作曲にあたりスクリャービンショパン練習曲集意識して12曲で1つまとまりなすよう構成したことが、べリャーエフにあてた手紙からわかっている。なお、ベリャーエフは、この作品出版した後のスクリャービン演奏旅行企画している。実際にスクリャービンは、1895年にはドイツスイスイタリアベルギーへ、1896年にはパリブリュッセルベルリンアムステルダムハーグローマへ旅している。
 第1曲目は、3連符多用する練習曲。3連符重音連打単音組み合わせからできている。主として右手の3連符3つ目の音がメロディー構成する
 第2曲目は、スクリャービン特有のポリ・リズム練習曲。5連符基調としている。スクリャービンは、この曲のような3対5の数比を特に好んで用いたテヌートスタッカートスラーなど、多様なタッチ求められる30小節足らずで、演奏時間も約1分と短い曲ではあるが、曲が進むにつれ左手音域広がっていくなど、推進力変化みられる。なお、幅広い音域を扱う左手分散和音は、右手痛めたピアニストというスクリャービンならではの音形と見ることもできる
 第3曲目は、オクターヴ単音交互に弾くトレモロのような練習曲両手でこの形を弾く部分では、オクターヴ単音位置がずれている。また、いずれかの手のみがこの形を弾く部分では、ポリ・リズム構成する。8分の6拍子のこの曲では、4分の3拍子としてのリズムアーティキュレーションももち合わせ複雑な構成見せている。なお、スクリャービンはこの曲の冒頭に「テンペストーゾ」という指示書いたものの、実際にはこの語が充分に曲の性格示していないと感じ、気に入らなかったという。
 第4曲目は、スクリャービン特有のポリ・リズム練習曲。5連符基調としている。第2曲目同様に、3対5の数比がみられる。しかし、その曲想第2番とは異なり、こちらはアラベスクのような趣を持つ。
 第5曲目は、オクターヴ、2音間のスラー跳躍がキーワードとなる練習曲後半からは、基本音価が8分音符の3連符となる。スクリャービン当初、この曲のテンポアレグロとしていたが、気に入らず、「ブリオーゾ」と改めた。しかし、それでもこの曲の性格充分に示していないとして満足することはなかったという。
 第6曲目は、6度重音練習曲冒頭でコン・グラツィアと指示されているように、スクリャービン練習曲の中では穏やかな性格の曲となっている。
 第7曲目は、拍の区切りずらして3連音符を弾くクロス・フレーズの練習曲終始一貫してpp-p」のディナーミクの中で急速に弾くことが求められる。なお、生涯好んで用い続けたポリ・リズムとは異なり、このクロス・フレーズは晩年の作品になるにつれ、影をひそめていく。
 第8曲目は、メロディー内声としての和音つけられ練習曲再現部では、ポリ・リズムとなる。左手の弾くバス・ラインは、対旋律役割も担う。そして、ポコ・ピウ・ヴィーヴォとなる中間部で、右手8分音符と3連符組み合わせ印象的なメロディー奏でる。そこには、和音主体とした左手添えられる。この曲は、初恋の人と言われるナターリア・セケリーナに寄せられていることから、「ナターリアレント」と呼ばれており、叙情的な美しさが大変好まれている。
 第9曲目は、16分音符8分音符、3連音符など、多様な音価によって、両手オクターヴポリ・リズムもたらすディナーミク頂点は「ff 」で、「pppp 」で曲を閉じるため、非常に幅広いディナーミク表現することになる。中間部は、コラールとなっており、左右の拍のずれがある種浮遊感生み出している。作品8の中では最も規模大きな練習曲となっている。
 第10曲目は、右手重音を、左手跳躍音程を弾く練習曲右手重音長3度響きをもち、4度音程記譜されているところでも、響き長3度となっている。また、3部形式書かれた他の練習曲とは異なり2部形式書かれている
 第11曲目は、メロディー内声バス3層テクスチュア構成されている。内声和音両手交差させて弾くため、同じく変ロ短調書かれシマノフスキ作品4-3練習曲にどこか通じるものが感じられる。なお、シマノフスキ作品20世紀幕開けである1900年代と、スクリャービンよりも後に作曲されている。
 第12曲目は、オクターヴ跳躍音程織り交ぜ和音連打等、複雑な見かけをしている練習曲ショパン作品10-12革命)の練習曲との類似指摘されている。再現部では、オクターヴメロディー両手和音連打伴われる。なお、この曲は、スクリャービン自身が大変好んで演奏したと言われている。



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「12のエチュード」の関連用語

12のエチュードのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



12のエチュードのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
社団法人全日本ピアノ指導者協会社団法人全日本ピアノ指導者協会
Copyright 1996-2025 PianoTeachers' National Association of Japan

©2025 GRAS Group, Inc.RSS