本作に登場する医学・遺伝子工学関係の用語
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/03/28 10:01 UTC 版)
「EIGHTH」の記事における「本作に登場する医学・遺伝子工学関係の用語」の解説
HLA遺伝子 ヒト白血球型抗原。俗称、恋愛遺伝子。HLAはヒトの免疫機能を決める遺伝子であり、女性は自分と違うHLA遺伝子の型を持つ男性を無意識に体臭で判断し惹かれるという。ナオヤは真里に自分はどうかと尋ねたがはぐらかされた。なお次の回でセルシアは「(ナオヤの洗濯物を扱うのは)イヤじゃない」「ナオヤのニオイがするのはすき」と発言している。(いなくてもいるみたいだもの、と続く。) 臨床試験 医学における介入研究。臨床試験は全て人体実験である。動物による実験を臨床試験以前の基礎研究という。新薬や新技術を用いた新しい治療などに対して、その効果や安全性について確認するために行われる試験。治療の効果や安全性は、決められたルールに従い、計画的に試験を行って初めて、科学的に効果を確かめた結果が得られる。新しい薬や治療法も、今までの治療の経験から効果をある程度予測することができるが、予想できなかった効果や副作用があらわれることもあり、注意深く観察して確認するので「試験」である。主に患者に対して行うので「臨床」という言葉がついて「臨床試験」となる。 治験 薬の候補を健康な成人や患者に使用して、効果や安全性、治療法(適正な投与量や投与方法)などを確認する目的で行われる臨床試験のこと。 遺伝子組み換え作物 GM作物とも呼ばれる。商業的に栽培されている植物(作物)に遺伝子操作を行い、新たな遺伝子を導入し発現させたり、内在性の遺伝子の発現を促進・抑制したりすることにより、新たな形質が付与された作物。本作ではGMとして代表的なトウモロコシが登場する。 遺伝子汚染 本来その地域には棲息していない近縁種や同種の生物が、人間活動の影響によって移入され交雑が進み、本来その地域の生物がもっていた遺伝子の多型性が乱れること。一種の環境破壊との意味を込めて批判的視点からこう呼ばれる。本作では、遺伝子解析依頼がきたトウモロコシに遺伝子汚染が疑われた。 H5N1型ウイルス 鳥インフルエンザとして有名なA型インフルエンザウイルスの亜型。本作ではH5N1はBSL-3として扱われている。本作で登場する亜型は人に感染するよう人為的に改変されたウイルスで、感染した際の致死率は不明。しかし改変前の感染例では致死率60%であり、シンヤは感染力が強い新種であることから致死率は高くなると推測している。 H5N1がヒトにとりつける遺伝子変異を起こす前にワクチンを研究開発する目的で、CDCからアトランタにある大学の研究所に開発が依頼された。しかし、人為的流行からのワクチン販売というマッチポンプを計画したクラトス社によってワクチンのサンプルと共に買収され、取引現場を襲撃したルカが強奪し、セルシア発見のためのバイオテロの道具として使用された。 BSL バイオセーフティレベル。細菌・ウイルスなどの微生物・病原体等を取り扱う実験室・施設の格付け。4段階に分かれており、最高レベルは4。BSLはリスクグループに対応しており、例えばリスクグループ3の病原体は、原則BSL-3以上の実験室で扱うこととされている。各国が定めるリスクグループとは異なり、BSLの要件は世界共通。BSL-4の実験室を保有している国家は限られている。なお、BSL-3以上の場合、封じ込め実験室が必要となる。 万能ワクチン エイス研が開発している、どのインフルエンザにも効果のあるワクチン。従来のワクチンがウイルス表面のタンパクの型に反応するのに対し、変異した際に変化の少ない内部のタンパクに反応することでウイルスの型を無視できる。臨床試験が始まったばかりで認可がおりていないが、トリニティはH5N1亜型「豚インフルエンザ」に対するWHOの警戒フェーズが6であることを挙げ、認可外ワクチンを使用可能だと判断し提出を要請した。しかし安全性確認ができていないという理由でエイス研はこれを拒否した。ただしシンヤは予防と治験のため同意なしでトリニティに接種している。 阻害薬 ヒカルが真里に要望したインフサルエンザの薬。ノイラミニダーゼ阻害薬のことであり、市販品ではタミフル等が有名。 ALL 急性リンパ性白血病。りおが発症した。悪性化したリンパ球が異常に増える疾患で、他の正常な血液細胞を圧迫することで造血機能の障害等が起こる。2011年掲載の本作では、放置すれば4ヶ月以内にほとんどの患者が死亡する、りおの発症した小児ALLは80%〜90%が長期生存が可能であるが抗がん剤を大量に投与する治療が必要で子供には優しくはない、と説明されている。 TPMT チオプリンS-メチルトランスフェラーゼ。肝臓でつくられる酵素の一つ。この酵素をつくる遺伝子が機能していないと抗がん剤の一つである「6MP」の毒性を代謝・分解できずに重度の肝障害や骨髄抑制を引き起こす可能性があるため、投与量の判断が難しくなる。りおの遺伝子にはTPMTの欠損があり通常の投薬治療ができない状態であった。 SCID 重度複合免疫不全症。先天的な要因により免疫系の構成要素が欠けているまたはうまく機能しないため、免疫系が正常に働かない遺伝性疾患の一つ。T細胞の欠損かつB細胞の欠損または機能異常による液性・細胞性免疫能の欠如であり、造血幹細胞移植等が行われなければ乳児期に死亡する重篤な疾患。 ADA欠損症 アデノシンデアミネース欠損症。SCIDの症例の一つ。T細胞、B細胞、NK細胞の全てが欠損し、免疫不全を起こす。日本でも遺伝子治療が成功した疾患。ナオヤはADA欠損症であったが、幼少期にアメリカで遺伝子治療の臨床試験を被験したことで快方した。 遺伝子治療 異常な遺伝子を持っているために機能不全に陥っている細胞の欠陥を修復・修正することで病気を治療する手法。臨床試験が行われている段階であり、治療法として確立されていない。ナオヤの受けた遺伝子治療には200万ドルかかった(臨床試験でありアメリカの税金が使用されている)とシンヤが話している。 サイトカイン 細胞から分泌される低分子のタンパク質で生理活性物質の総称。サイトカインにはケモカインやインターロイキン等がある。本作では簡単に説明するために「細胞間で情報の伝達をするタンパク質」「対応する相手の細胞に増殖や分化や活動化(抑制も)をさせる物質」と表現されている。 インターロイキン サイトカインの一つ。ヘルパーT細胞によって分泌され、細胞間コミュニケーションの機能を果たすものをいう。本作では「白血球間の調整をするサイトカイン」と表現されている。ILのあとにタンパク質として同定された順に番号を付けて呼ばれており、30種類以上が知られている。ナオヤはIL-12と18の値が高く、ヴァレリアを助けるために極度の疲労状態となった際に肺炎を発症し、免疫の過剰反応が起こり危篤状態となった。 ヒトゲノム計画 ヒト染色体の遺伝情報を全て解読し、染色体のどこにどのような遺伝情報がかかれているかを明らかにしようとする計画。1990年にアメリカで始まり、1953年のDNAの二重らせん構造の発見から50周年となる2003年に完了した。本作ではヒトゲノム計画の一環で始まったELSI研究に、HINに所属していたヒロトが関わっていた。 ELSI研究(えるしーけんきゅう) 新しい研究や技術が社会に与える影響を予見し、どのように対処するべきかを考える研究。「ヒトゲノム計画」のなかで登場した用語。ヒトゲノム研究がもたらしうる影響は、医師や患者に留まらず、すべての人に関わるものであり、社会全体にまで及ぶため、ELSIの研究は一般市民・政策立案者・企業などを含めた多様な観点から行われる必要があり、医科学研究者だけではなく哲学者や法学者、社会学者、倫理学者など幅広い学問領域からの参加や、領域を飛び越えて検討することが求められる。様々な人が被る影響を様々な観点から考えていくこと、そして研究と技術が社会からの信頼を得られるよう研究者と社会の間に入り、研究と技術のあり方を一緒に考えていくことが進められている。本作では社会倫理にELSIのルビがふられ、「法整備と啓蒙が必要だ」という言葉で表現されている。ヒロトが関わっていた。
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