批判的視点から
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/09 02:13 UTC 版)
ただし、治水目的としてはダムの存在が越流被害を一定以下に抑える効果はあるものの、越流や破堤による被害が大きかった川では堤防の設計が不十分だったのではないかという観点もあり、複合的な要因があることを考慮すると、一概にダムがなかったことだけが洪水被害の原因とは言い切れない面もある。また、近年の集中豪雨ではダムの洪水調節機能が計画を超える大幅な洪水に対応できていない現実もあり、ただし書き操作による洪水調節も目立っている。近年の降雨の傾向が「長期間にわたる穏やかな雨」から数十年に一度と言われる「短時間の激しい降雨」(記録的短時間大雨)に移りつつあり(地球温暖化が原因との見方が強い)、ダム建設以前に降水量の分析をはじめ、全てにわたる治水対策の抜本的見直しを図る方が先ではないかという見方もあって、問題を複雑にしている。渇水対策についても、ダムのある川で渇水が発生し、逆にダムのない川で渇水が発生しないという河川もあるなど、矛盾した事象もある。洪水・渇水は元来気候的問題が絡んでいることから、ダム事業に批判的な専門家は、洪水・渇水対策としてのダム単体の効果を事業者・流域住民双方が依存・強調することに疑問を呈している。 環境面で考えた場合、ダム建設が周辺の自然環境に直接的な悪影響を与えることを原因に反対であるという意見は、天野礼子などダム事業を否定する評論家などの間で未だに根強い。ダムの存在が河川の生態系を遮断し、生物の交流を妨げるのではないかという意見は自然保護団体など数多く見られる他、2003年(平成15年)に奈良県の大滝ダム(紀の川)で発生した地すべり(多くの住民が仮設住宅への移転を余儀なくされている)はダム建設時の斜面対策不備が原因ではないかという、国土問題研究会などの指摘もある。また、水力発電のクリーン面を強調することに対しては、こういった施策がCO2削減に大きく寄与するかという点について、ダム建設に伴う森林喪失で削減効果が相殺される、逆に森林自体の削減効果が過大評価過ぎるなど、様々な議論がある。
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