細胞間コミュニケーション
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/25 04:07 UTC 版)
細菌の一部には、生物発光の化学システムを持つものが知られている。例えば魚と共生している発光細菌では、魚はその光を利用して、他の魚や動物を引き付け捕食することに役立てている。 細菌はしばしば、多細胞凝集体(バイオフィルム)という構造をとり、様々な分子シグナルを交換し合う細胞間コミュニケーションを行い、協調した多細胞行動をとっている 。多細胞間で協力し合うことは、細胞間での分業を可能にしたり、単一細胞では効果的に使用できないリソースを分配することに役立つほか、拮抗薬に対する集合的な防御や、異なる細胞型への分化による集団生存の最適化にも寄与している。たとえば、バイオフィルム内の細菌は、同じ種の個々の浮遊性(自由生活性)細菌よりも抗菌剤に対する耐性が500倍以上高くなる例が報告されている。 分子信号による細胞間コミュニケーションの1つのタイプは、クオラムセンシングと呼ばれている。これは、ある特定の生物プロセスを実施するのに十分な細胞密度がその環境に存在しているのか、を判断する際に利用される。具体的には、細菌が細胞分裂を繰り返し、ある程度の密度に達した際に初めて消化酵素を分泌したり発光を始めたりする例が知られており、この生物プロセスの開始タイミングの調整にクオラムセンシングが利用されている。クオラムセンシングにより、細菌は遺伝子発現を調整し、細胞集団の成長とともに蓄積する自己誘導物質やフェロモンを生成、放出、および検出することができる。
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