エクソソームと細胞間コミュニケーション
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/03 01:31 UTC 版)
「エクソソーム (小胞)」の記事における「エクソソームと細胞間コミュニケーション」の解説
エクソソームの細胞間シグナル伝達における役割について活発な研究が行われている。エクソソームは起源細胞から離れた細胞と融合して内容物を放出することができるため、受容側の細胞に影響を与えている可能性がある。例えば、"exosomal shuttle RNA" として知られる、細胞間を往来するRNAは、受容側の細胞のタンパク質産生に影響を与えている可能性がある。樹状細胞やB細胞など、特定の細胞に由来するエクソソームは、細胞間で分子を輸送することによって病原体や腫瘍に対する適応免疫応答の媒介に機能的な役割を果たしている可能性がある。 反対に、エクソソームの産生や内容物が起源細胞が受けた分子シグナルの影響を受ける可能性もある。この仮説の証拠として、低酸素にさらされた腫瘍細胞は血管新生能や転移能の高いエクソソームを分泌しており、血管新生を促進することで低酸素微小環境に適応したり、より好ましい環境への転移を促進したりしていることが示唆される。近年では、慢性リンパ性白血病の進行に従ってエクソソームのタンパク質内容物が変化する可能性が示されている。 腫瘍のエクソソームによる細胞間コミュニケーションががんの転移を媒介しているという仮説がある研究から立てられている。仮説では、エクソソームは腫瘍の情報を新たな細胞へ植え付け、転移によってその器官へ移動する準備を整えるとされている。研究では、腫瘍のエクソソームによるコミュニケーションはさまざまな器官への転移を媒介する能力があることが発見された。さらに、腫瘍細胞の増殖が不利である場合であっても、新たな領域や器官に植え付けられた情報は器官特異的な転移の拡大を促進する。 エクソソームは自然免疫応答を高める積み荷を運搬している場合がある。例えば、サルモネラSalmonella entericaが感染したマクロファージは、ナイーブマクロファージと樹状細胞からのTNF-α、RANTES(英語版)、IL-1ra(英語版)、MIP-2(英語版)、CXCL1(英語版)、MCP-1(英語版)、sICAM-1(英語版)、GM-CSF、G-CSFなど、免疫促進サイトカインの分泌を促進する。エクソソームの炎症促進効果の一部は、エクソソームに取り込まれたリポ多糖によるものである。
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