同時多発テロ以後 (2001年〜現在)
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「アメリカ合衆国の歴史」の記事における「同時多発テロ以後 (2001年〜現在)」の解説
民主党ビル・クリントンの次に政権に就いたのは、共和党でネオコンサバティブや、キリスト教右派、ローマ・カトリック、キリスト教根本主義に支持されていたジョージ・W・ブッシュ(先のブッシュ大統領の息子)であった。ブッシュの支持率は当初から低かったが、アメリカ市民は20世紀から21世紀の世紀転換期を比較的長く続いていた平和を謳歌していた。しかし、2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件(nine eleventh、September eleventh)を期にブッシュ政権は支持率を拡大、アフガニスタン侵攻、イラク戦争と言った対テロ戦争をはじめ、対外強硬路線に舵を切った。 こうしたアメリカの強硬な外交政策はユニラテラリズムと呼ばれ、冷戦後に欧州で発言力を増したドイツやフランスなどから批判を受けている。ロシアや中国もテロ対策に賛同したが、イラク戦争によって対立へと変わった。2004年に再選されたブッシュは、アフガニスタンやイラクのほかにもイラン、北朝鮮を「テロ支援国家」「悪の枢軸」と規定しているが、イラク戦争が泥沼化し、国内のハリケーン災害が後手に回ったこともあり、強行外交の見直しと軍の再編が行われている。 BRICs新興国の台頭、中国やインドなどの開発途上国の経済の急成長が主要な原因となって貿易赤字も増大傾向である。景気はクリントン時代のITバブルが崩壊して一時的に鈍化したが、続いて住宅人気による宅地造成・建設ラッシュが好景気を招いたが、住宅価格バブルは2008年に崩壊した。かつて世界一を誇った工業力も、企業が工場の海外移転を進め、また、投資事業や金融に力を入れた結果、産業の空洞化が起こっている。米国の国際力は長期的に衰退する可能性がある一方、産業移転と投資によって中国やインドは工業的に急成長し、原油高によってロシアの経済力も回復した。ドイツ・フランスの周辺国への影響も増しており、冷戦に続く米国の一極構造は崩れつつあるという見方もある。強硬な反米姿勢で知られるベネズエラのウゴ・チャベス大統領は「我々は世界の新しい秩序を築きつつある。一極支配はすでに崩壊した。アメリカ帝国の力は瓦解しつつある」と述べている。 国家を形成する人種構成も20世紀末から大きく変化した。ラテンアメリカからのスペイン語系移民(ヒスパニック、ラティーノ)が土着し、それまでの白人・黒人のどちらにも属さない新たなコミュニティを形成している。貧しいラテンアメリカから豊かに見えるアメリカ合衆国への人々の流れは増加の一途にあり、黒人人口を上回る地域も発生した。この事象はメキシコと国境を接する各州共通の問題であるが、ヒスパニックが低賃金の新たな労働資源となっていることや、ラテンアメリカ系の商品売買による新たな経済活動の機会となっているため、単純な同化政策を採りづらくなっている。しかし、同化政策の遅れは言語分断を招くなど大きな問題となっている。どちらにしてもヒスパニックは今後のアメリカを左右する重要な勢力になると思われる。米国政府の推測では、2006年10月に人口が3億人を超えたが、これはヒスパニックの流入と、アメリカの合計特殊出生率が安定していることなどによる自然増が要因と考えられている。 2000年代以降、長らくあった黒人差別の解消に近づくための象徴ともいえる出来事が起こり、アフリカ系アメリカ人のコリン・パウエル、コンドリーザ・ライスが第65代、第66代国務長官に就任し、そして史上初のアフリカ系初の大統領のバラク・オバマとそのファーストレディのミシェル・オバマが登場した。バラク・オバマ第44代アメリカ合衆国大統領就任式はアメリカの有名人も多く参加するほどの盛り上がりであった。 2008年の南オセチア紛争や2000年代後半以降の東欧ミサイル防衛構想でロシアと対立が始まっており、親米のイスラエルがベネズエラやボリビアから国交を断絶され、反露のグルジアがロシアと国交を断絶し親米化を進めた。さらにウクライナは親米派、親露派に分かれた。ブラジル、アルゼンチン、ペルーなどの中南米諸国は、アメリカ合衆国とは異なる国家の統治モデル、経済モデルを模索し追求している。東側諸国のBRICsのロシアと中国は超大国化しアメリカ合衆国と同等またはそれ以上の国際的影響力の拡大をめざしている。また、中ロは人権弾圧国家も支援しているためにアメリカを含む西側と対立している。 2008年9月、リーマン・ブラザーズの破綻を発端にアメリカ発の世界金融危機が世界経済に深刻な打撃を与えた。西側諸国に限らず、ロシアや中国も事実上の資本主義体制であるため、経済に深刻な打撃を受けた。中国では2009年6月現在まで2000万人が失業したとされる。アメリカの同盟国である日本も非正規労働者を中心に多くの失業者が出るあど、甚大な影響を受けた。ロシアは世界で最も経済にダメージを受けた国と言われ、失業者は公式統計でも200万人に上り、労働争議が多発し、ドミートリー・メドヴェージェフ、ウラジーミル・プーチン政権の支持率が低下した。ロシアのメドヴェージェフ大統領は「世界不況はアメリカによる一極支配が原因」とアメリカを批判した。2012年5月7日から、再びプーチンがロシア連邦大統領として政権復帰し、中華人民共和国では習近平が2012年11月15日に中国共産党中央委員会総書記・最高指導者となり、新体制に突入した。しかし、中国・ロシアともに不況下にあっても軍事力の増強・近代化は強力に推し進めており、アメリカの一極支配を脅かしている。 バラク・オバマ大統領は伊勢志摩サミット出席後の2016年5月27日、日本の安倍晋三総理とともに、現職のアメリカ大統領としては初めて、世界史上初めて戦争時において核兵器の使用がなされた場所である広島県広島市の広島平和記念公園を訪問した。 2016年大統領選挙で、ラストベルト地帯における、従来は民主党の支持層であった白人労働者の支持を受けるなどして、「AMERICA FIRST(アメリカ第一)」、「Make America Great Again(アメリカを再び大国に)」といったスローガンを掲げて、その並外れた言動から「暴言王」とも称された、実業家出身で政治経歴のないドナルド・トランプが共和党候補として出馬し、元ファーストレディ(大統領経験者の配偶者)であるヒラリー・クリントン民主党候補を破り当選を果たし大統領に選出され、2017年1月20日に第45代アメリカ合衆国大統領に、副大統領にはマイク・ペンスが就任した。 トランプ政権は、環太平洋パートナーシップ協定(通称:TPP)からの撤退表明、駐イスラエル米国大使館のエルサレムへの移転および同国首都としてのエルサレムの承認、シリアへの空爆、メキシコからの不法移民規制、気候変動抑制に関する多国間協定(通称:パリ協定)からの米国離脱宣言、イラン核合意からの離脱、国連人権理事会からの離脱、ホワイトハウス報道官やCIA(中央情報局)長官、国務長官、国防長官などの相次ぐ政府高官人事の罷免・交代、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の第3代最高指導者である金正恩朝鮮労働党委員長との史上初の米朝首脳会談の開催、中国との貿易摩擦、人種差別問題など、内政・外交面ともにさまざまな課題に直面した。しかし、その中でも特に、新型コロナウイルス感染症の蔓延防止に手こずり、2020年大統領選挙で再選を目指すも敗北し、民主党のジョー・バイデンにホワイトハウスを譲ることになった(その際、2021年アメリカ合衆国議会議事堂襲撃事件が引き起こされた)。 中国から発生した新型コロナウイルスの流行はアメリカにも到来し、2021年12月現在でも、スペインかぜや世界大戦を超え南北戦争に匹敵する死者を出している。感染拡大とともに株価は暴落し、失業率は一時14%に及んだため数兆ドル単位の財政出動と金融緩和が行われた結果今度は30年ぶりのインフレーションに見舞われることとなった。 バイデン大統領はアフガニスタンから撤兵を完了させ20年に及ぶ戦争状態を終結させたが、アフガニスタンの民主化は達成できずタリバンに再びその地を明け渡す事となった。
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