反応・批判・批評
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/08 22:48 UTC 版)
「ザ・シークレット」の記事における「反応・批判・批評」の解説
本節では、科学概念の誤用の指摘、疑似科学という反応以外について述べる。 出版から1年半たった時点で、amazon.comのレビューは半分が星5、1/4は星1で、熱愛する読者と全くナンセンスだと考える読者に分かれている。「オプラ・ウィンフリー・ショー」のオプラ・ウィンフリーは『ザ・シークレット』を支持しており、彼女が番組を通じて伝えようとしてきたメッセージと同じであると語った。バーンはのちに番組に招待された。「ザ・シークレット」映画に出演していたチャネラーで引き寄せの法則指導者のエスター・ヒックス(英語版)にインタビューし、バーンに利用され虐げられていたいう話を聞いたこと、『ザ・シークレット』の教えの指導者ジェームス・アーサー・レイが断食と蒸気サウナを行う高額のスピリチュアルイベントを主催し3人が死亡したなどの出来事があり、ウィンフリーは『ザ・シークレット』運動から距離を取るようになり、2008年にはやや懐疑的なコメントを出している。 角川出版は、モデルの道端ジェシカ、女優の小雪[要曖昧さ回避]、脳科学者の茂木健一郎、経済評論家の勝間和代などの数多くの著名人に人生の指南書として愛読されていると述べている。 エリザベス・スコットはVerywellの批評で、長所と短所について次のように述べている。悪い状況でもできることがたくさんあることを思い出させてくれる。高価なものを手に入れるために、直接行動せずに引き寄せの法則を利用する方法について、かなりのページが割かれているが、多くの人は、外的なことや物質的な豊かさに焦点を当てることは、引き寄せの法則の精神的な知恵に反すると考えている。また、極度の貧困状態で生まれた人でも、現実はすべてその人が作っていると言えるのか、科学的に証明されていないがエピソードから推察される現象という点に注意を促している。とはいえ、『ザ・シークレット』の教えにはいくつもの支障があるが、ストレスを取り除く良い機会と、より良い生活のための雑な指針になりうると評した。 Good Housekeeping の Valerie Frankel は、「秘密」を4週間実践し、いくつかの目標は達成され、いくつかは改善した。祝福を数えることは、人生の素晴らしい点を見直させてくれ、視覚化で自分の望みに注意を払いやすくなった。人は悪い考えに苦しむ必要はない。『ザ・シークレット』の極端で単純化が過ぎる格言を無視すれば(宇宙は車をプレゼントしてくれやしないだろう、忙しいのだ)、役に立つアドバイスは含まれている。しかし、目新しい内容はないと評した。 Brian Dunning は、『富を引き寄せる科学的法則』の自己啓発のアイデアを「古代の知恵」として巧みに提示しており、大衆は古代の叡智に拠るものが好きなので、この設定は不思議ではないと述べている。また、「犠牲者非難」というアイデアが利己的な我々の自我には魅力的で、醜く恥ずかしいことだが、この暗い喜びが『ザ・シークレット』の心理的な魅力になっていると指摘している。ポジティブな態度をとることに何の問題もなく、ネガティブな態度より通常は良いものだが、ファンタジーと現実を区別するべきであり、思考が物理的な物ごとに具現化するというのは疑わしい思想であるという。 心理学者は、複数の人気のある人物、権威ある人物の言葉をまとめた体裁を取ることで、人々に信頼できると思わせる心理的トリック、権威に訴える論証が利用されていると指摘している。 ニューヨークタイムズの CHRISTOPHER F. CHABRIS と DANIEL J. SIMONS は、人間の心の弱さを利用するために進化した知的なウィルス(ミーム)と言っていいもので、認知バイアスを利用して巨額の利益を得ようとしたものだろうと語っている。また、エピソードを挙げて、特定のイメージを行った後に良い結果が得られた、だからイメージによって出来事が起こった、という論証は、錯誤相関であり、前後即因果の誤謬が用いられているという。結局のところ『ザ・シークレット』の教えによって富と幸福を得るのは、著者と関連会社だけであると批判している。 バーンのメッセージはナルシスティックであり、自己に焦点を当て、他人を助けることを軽んじ、結果を得るための努力を無視しているという批判がある。 バーバラ・エーレンライク(英語版)は『ポジティブ病の国、アメリカ』(Bright-sided 、2009)で、悪夢のような逆境に個人が打ち勝つ場合があるからといって心で思っただけで物質を圧倒するわけではなく、『ザ・シークレット』のような自己啓発本は、資本主義の悲惨な側面のごまかしになり、政治における自己満足と現実での失敗を促進すると語った 。困難な状況を無視し、現実がすべて自分の思考から生まれたと思い込めば、2006年の津波襲来の際にバーンが「津波などの災害に見舞われるのは『その災害と周波数を同じくする』人だ」とコメントしたような独善に、知らずに陥ってしまうと注意を促している。 宗教学者のダグラス・E・コーワンは、悪い考えを持っているからひどい目に合うという論理で被害者を非難することを批判し、「この理屈に従うなら、誘拐された人やレイプされた人が、なにを言われることになるか想像してください」と語っている。バーンの本で長らく引用されてきた引き寄せの法則の専門家 Bob Proctor は、ABCニュースでの「ダルフール紛争で餓死した子供たちは、その飢餓を自分自身で引き寄せましたか?」という質問に、「おそらく国のせいだと思う」と答えた。しかし、彼らが主張する法則とこの答えは矛盾している。 表象文化研究者の加藤有希子は、「この洋服に何もこぼしたくない」「遅れたくない」など例示される悩みは浅薄なものばかりで、読者層にとって実感のある悩みはこの程度の軽さであり、多くの現代人に根本的に不幸に対する想像力が欠如していることを示していると述べている。 エーレクラインは、バーンの一見無邪気な信仰に隠された、ネガティブな思考を監視するようにという要求を警戒している。ポジティブであらねばならないという思いが義務感に近いものになっており、積極思考がある意味では、カルヴァン主義のような前時代的な厳しい精神修養になっているという。 ロバート・キャロルは、良い結果が得られたのは良い態度と思考を持ったからで、悪い結果が出たなら態度と思考を本気で変えなかったからだという、結果によって原因を断定する方法がとられており、「秘密」の指導者が本当に豊かになる方法を教えてくれることはないと述べている。「秘密」は魂を対象にしたアムウェイのようなもので、拡大に買い手が買い手を勧誘する連鎖販売取引(マルチ商法)の手法が用いられていると指摘している。 宗教面では、「引き寄せの法則」の現世での願いの実現、人間の力を巨大とみなす発想と、キリスト教における神と来世を重視する発想の違いが指摘されている。宗教指導者たちは、『ザ・シークレット』の倫理面での問題を批判している。ザ・シークレットの批判書『ザ・シークレットの真実』には「神は私利私欲に応えてくれる万能のサンタクロースではない」と述べる牧師オリヴァー・トーマスの言葉が引用されている。キリスト教徒からは、人間を神に成り変わらせ、罪を無視するよう仕向けているという批判もある。 いくつかのニューソートの宗派は、「引き寄せの法則」で物質的に豊かになろうとするバーンの考えに反対している。ニューソート系のユニティ (新宗教)(英語版)の歴史・神学研究者のトーマス・シェパードは、「引き寄せの法則」は神に近づくための精神的成長のためにあり、高級車のキャデラックを手にれたり個人的な力を得るためのものではないと述べている。 このほか、『ザ・シークレットの真実』では、「引き寄せの法則」に結び付けられる過去の著名人の事例を挙げ、彼らの生涯や成功を収めるまでの実践との間に大きな差異があることを指摘している。
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