無線LAN 各国の法規制

無線LAN

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/14 01:32 UTC 版)

各国の法規制

日本

電波法

1992年(平成4年)に小電力無線局の一種、小電力データ通信システム無線局として制度化[29]された。 小電力無線局は免許不要局の一種で、無線局免許は不要だが、適合表示無線設備を使用しなければならない。 そのため技術基準が規定[30]され、技術基準適合証明の対象[31]ともされた。 また、電気通信回線に接続するものは電気通信事業法令上の端末機器として技術基準適合認定も要する。

小電力データ通信システムの無線局として必要な表示は小電力データ通信システム#表示を参照

技適マークがなければ日本国内で使用してはならない。また、技術基準にはアンテナ系を除き「容易に開けることができないこと」とあり、特殊ねじなどが用いられているので、使用者は改造はもちろん保守・修理のためであっても分解してはならない。国内向けであっても改造されたものは、技術基準適合証明が無効になるので不法無線局となる。

ISMバンドを用いる高周波利用設備からは、有害な混信を容認しなければならない[32]。最も普及している2.4GHz帯の機器の場合、稼働中の電子レンジの付近では、通信に著しい影響が出たり通信不能に陥る。

法的にはVICS (ETC)・一般用RFIDアマチュア無線局機器など、無線局免許状・無線局登録を受けて運用する無線局からの有害な混信に対しては、異議・排除を申し立てる権利は一切無く、逆に使用中止を要求されたら、利用者は従わねばならない。近年では医療機器の通信など重要な用途にも使われていることから[33]、無線LANが公共用途である場合は無線LANが優先され、最終的には当事者間の話し合いで解決しているのが現状である[34]

無線LANと同等の小電力無線局として小電力用RFID、2.4GHz帯デジタルコードレス電話、模型飛行機のラジコンマルチコプターBluetoothなどがあり、これらに対しては先に使用しているものが優先するが、実際には混信を完全に回避できるものではない。特に都市部ではコンビニエンスストアに設置された大出力の業務用電子レンジ、公衆無線LANなどが多数あり混信の回避は不可能に近い[35][36]

別ネットワークの複数機器がアクセスポイント等でチャネルが重なると、スループット低下などの影響を受けるため、対応策として電波法の規定を超えた出力の無線LAN機器の違法販売も行われていたが[37]スマートアンテナビームフォーミングなど、出力を上げずに電波干渉を抑制する技術の導入や、5GHz帯の普及で下火となった。

アマチュア無線における無線LAN

2009年(平成21年)5月、アマチュア無線局JF1DQIが5.6GHz帯、10.1GHz帯、24GHz帯においてIEEE 802.11b/g方式の無線LANをアマチュア業務として運用できる無線局免許状を与えられた。設備は一般的に市販されているUSB無線LANアダプタで外部アンテナ端子がある機種(2000円以下)を用い、そのアンテナ端子にトランスバーター(周波数変換を行う機器)を接続し5.6GHz帯、10.1GHz帯、24GHz帯での運用を可能にしている。

アマチュア無線では、暗語の使用や秘匿性のある無線設備は認められていない[注 2][注 3]ため、暗号化技術であるWEP・WPAの設定などをせず、無線局を運用することが条件として求められた。アマチュア無線で使用できる周波数帯には2.4GHz帯もあるが、この周波数帯での運用は、一般的に使用されている「無線LANとの誤接続の可能性がある」として許可されなかった。マイクロ波における遠距離および高速データ通信の実験を目指している。この局以外にも、首都圏で数局が無線局免許状の申請を準備している[38]

アメリカ

アメリカでは連邦通信委員会 (FCC)が無線LAN網についての管理を行っている[39]

なお、アメリカでは自治体による無線LANを含むブロードバンド網構築について、通信事業者等からは民業圧迫だという主張があり州法で規制する動きもある[39]。2014年2月時点で20州がブロードバンド・サービス提供に何からの制限を加えている[39]


注釈

  1. ^ ただし商用サービスのスカイネットVでは約15kmまでとうたい[17]、日本電業工作では30kmで7Mbpsの通信を行った実績がある[18]
  2. ^ 電波法第58条 実験等無線局及びアマチュア無線局の行う通信には、暗語を使用してはならない。
  3. ^ 無線設備規則第18条の2 アマチュア局の送信装置は、通信に秘匿性を与える機能を有してはならない。

出典

  1. ^ WaveLAN
  2. ^ Home Networking's Bitter Brawl”. Wired (2000年9月15日). 2017年8月22日閲覧。
  3. ^ <KEY WORD> IEEE802.11b 次世代の無線LAN規格 webBCN
  4. ^ 無線LAN〜その栄光への道のり(後編) ITmedia
  5. ^ 11Mビット/秒無線LAN「AirStation」を新発売 BUFFALO
  6. ^ 「WEPは10秒で解読可能」、神戸大と広島大のグループが発表 Impress Watch 2008年10月14日
  7. ^ 一般家庭における無線LANのセキュリティに関する注意 情報処理推進機構
  8. ^ 隣家の無線LANの電波でネット接続したら違法なの? ITpro 日経NETWORK 2008年8月号 p.15
  9. ^ 『Wi-FiのセキュリティはなぜWEPでは駄目なのか』”. Canon ITソリューションズ マルウェア情報局 (2015年11月17日). 2016年9月28日閲覧。
  10. ^ 「WEPは10秒で解読可能」、神戸大と広島大のグループが発表”. Internet Watch (2008年10月14日). 2016年9月28日閲覧。
  11. ^ 磯谷 智仁 (2019年4月11日). “Wi-Fiセキュリティ新規格「WPA3」に脆弱性、登場から1年経たずに発見される”. Internet Watch. 2019年10月28日閲覧。
  12. ^ Walker-Morgan, Dj (2011年12月29日). “Wi-Fi Protected Setup made easier to brute force”. The H. オリジナルの2012年5月2日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20120502071608/http://www.h-online.com/open/news/item/Wi-Fi-Protected-Setup-made-easier-to-brute-force-Update-1401822.html 2011年12月31日閲覧。 
  13. ^ Wi-Fi Security – The Rise and Fall of WPS”. Netstumbler.com (2013年1月18日). 2013年12月17日閲覧。
  14. ^ a b 無線LAN設定を簡素化する「WPS」、PIN方式の仕様に脆弱性 - @IT” (2012年1月5日). 2016年5月7日閲覧。
  15. ^ メッシュWi-Fiで“超手軽”な無線LAN”. businessnetwork.jp (2019年8月9日). 2019年12月25日閲覧。
  16. ^ 電波を強くするメッシュWi-Fiおすすめ機種”. PREMOA MAGAZINE (2019年11月20日). 2019年12月25日閲覧。
  17. ^ 別海,中標津地区」『高速無線通信サービス「SKYNET V」』 株式会社オーレンス
  18. ^ 平成26年度 沿岸域海水中温暖化ガス連続モニタリング装置・システムの要素技術の検討補助事業 報告書」 2015年3月、一般財団法人エンジニアリング協会、資料21
  19. ^ a b 5GHz帯無線アクセスシステム 総務省
  20. ^ 据置型無線LAN JRL-849AP2シリーズ 日本無線
  21. ^ 「導入事例 日本ゼオン株式会社 様」『富士通ネットワークソリューションズ』 富士通ネットワークソリューションズ
  22. ^ 「ソリューション 導入事例 本社と支社間のデータ通信を無線化」『DENGYO 日本電業工作株式会社』 日本電業工作株式会社
  23. ^ 「ソリューション 導入事例 放送映像・FM放送局臨時伝送路」『DENGYO 日本電業工作株式会社』 日本電業工作株式会社
  24. ^ 「導入事例 福島県只見町 様」『富士通ネットワークソリューションズ』 富士通ネットワークソリューションズ
  25. ^ 恩納村 長距離無線LAN構築」『株式会社リウデン』 株式会社リウデン
  26. ^ 次世代無線ネットワークシステム 5GHz帯無線アクセスシステムのご提案」『Toa 東亜株式会社』 2013年2月、東亜株式会社、13ページ
  27. ^ 沖縄県宜野座村地域限定ブロードバンドサービス」『宜野座村』 沖縄県国頭郡宜野座村
  28. ^ 総務省の取組② p.6 総務省
  29. ^ 平成4年郵政省令第78号による電波法施行規則改正
  30. ^ 平成4年郵政省令第79号による無線設備規則改正
  31. ^ 平成4年郵政省令第80号による特定無線設備の技術基準適合証明に関する規則改正
  32. ^ 総務省告示周波数割当計画の脚注J37”. 総務省. 20201118閲覧。
  33. ^ Author. “医療機器と干渉しない無線Wi-Fi環境の構築”. KOSネットワーク株式会社. 2022年8月31日閲覧。
  34. ^ ワイヤレスLAN製品(IEEE802.11b/g準拠)の電波に関するご注意 | NetWalker:シャープ”. jp.sharp. 2022年8月31日閲覧。
  35. ^ 日経クロステック(xTECH). “無線LANを妨害、電波干渉を引き起こす意外な存在”. 日経クロステック(xTECH). 2022年8月31日閲覧。
  36. ^ 日経クロステック(xTECH). “これでいいのか“汚れた”無線LAN”. 日経クロステック(xTECH). 2022年8月31日閲覧。
  37. ^ 『「無料でネット」と違法無線LAN販売 容疑で業者ら逮捕へ』 大阪府警 産経新聞 2010年9月22日
  38. ^ 「マイクロウェーブワールド」熊野谿寛『CQ ham radio』2009年7月号、CQ出版
  39. ^ a b c 諸外国における公衆無線LANの整備状況 調査報告書 一般財団法人マルチメディア振興センター


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