【P-3】(ぴーすりー)
ロッキードP-3"Orion(オライオン)"
旧西側陣営を代表する陸上対潜哨戒機で、世界11ヵ国の第一線に配備されている。
本機はP2V「ネプチューン」の後継として、当時ロッキード社が製作していた民間向けターボプロップ旅客機L-188「エレクトラ」をベースとして開発され、1959年11月25日原型機YP3V-1(後にYP-3Aと改名)が初飛行を行った。
旅客機がベースとなっていることもあり、前任のP2Vと較べて居住性や搭載量などが大きく改善されている。
ただし、A・B型は対潜装備については従来のものと変わらないため、戦闘能力自体はさほど向上していない。
4発機ではあるが、滞空時間を重視する任務の性格上、外側2基のエンジンを停止した状態でも飛行することが出来る。
現在の主力はC型で、このモデルは対潜装備を一新、A-NEWと呼ばれるシステムを導入した。
これはレーダー、ソナー、音響、磁気、気象など各種センサーの情報や航法、兵装、機体情報などをデジタルコンピューターにより総合的に処理するものである。
このA-NEWの導入によりC型は飛躍的に能力が向上した。
このC型にも順次改良が加えられており、以下のようなバージョンがある。
- コンピューターメモリーと処理能力を向上したアップデートI。
- 赤外線探知システム、ソノブイ照合システム、AGM-84「ハープーン」の運用能力を追加したアップデートII。
- 航法・通信能力を強化したアップデートII.5。
- ソノブイの音響収集能力を3倍に強化、UYS-1「プロテュース」音響信号処理システムを導入したアップデートIII(前期型はIIIR)
などがある。
また、対水上戦改良プログラム(AIP)が実施された機体には逆合成開口レーダー、GPSなどアビオニクスがより強化され、AGM-65、AGM-84E「SLAM」などの運用能力が追加されている。
更にシステムを強化したアップデートIV、P-3Hや全面改修型であるP-7Aなども計画されていたが予算難、開発コストの問題によりキャンセルされた。
本機をベースとした派生型も多数製作されている。
スペックデータ
乗員 | 10名(パイロット1~2名、機上整備員、戦術航空士、航法・通信員、ソナー員、機上対潜音響員、 レーダー員、機上対潜非音響員、機上電子整備員、機上武器整備員) |
全長 | 35.61m |
全高 | 10.27m |
全幅 | 30.37m |
主翼面積 | 120.77㎡ |
自重 | 27,890kg |
全備重量 | 61,240kg |
最大搭載重量 | 9,070kg |
エンジン | アリソン T56-A-14ターボプロップ(出力4,910hp)×4基 |
速度 (最大/哨戒時) | 395ノット(730km/h)/335ノット(620km/h) |
上昇率 | 594m/min |
実用上昇限度 | 8,630m |
航続距離 | 8,950km |
兵装 | Mk.46対潜魚雷×8発 AGM-84「ハープーン」×8発 150kg対潜爆弾 音響警告用水中発音弾 海上自衛隊機のみ:ASM-1C、97式短魚雷 |
主な装備 | UHF/VHF無線機(国際マリンバンドも含む) HF無線機(伝搬距離約1,200海里) 暗号通信装置 リンク11 衛星通信装置 AN/APS-115捜索用レーダー(最大捜索距離約200km)ESM逆探知装置 赤外線暗視装置 AN/APS-137逆合成開口レーダー ソノブイ投射機(ソノブイ探知距離 約30nm(CZ捜索時)、直接伝搬域探知時約3,000m) AN/UYS-1ソノブイ解析システム AQS-81磁気探知機(探知範囲約500~1,000m) ミサイル防御装置 |
派生型(カッコ内は生産・改修機数)
- YP3V-1(YP-3A):
原型機。
- P-3A(157機):
初期生産型。
現在では退役し、民間航空会社「エアロユニオン」の消防機(愛称"エア・タンカー")として運用中。
- EP-3A(7機):
電子偵察機型試作機。
- NP-3A(3機):
海軍研究所 (US Naval Research Laboratory) 向け試験機。
- RP-3A(2機):
海洋科学開発飛行隊(パタクセント・リバー海軍航空隊所属)向け。
- TP-3A(12機):
練習機型。
- UP-3A(CP-3A)(38機):
米海軍基地支援用汎用輸送機型。
- WP-3A(4機):
気象観測機。
- VP-3A(WP-3A×3機・P-3A×2機):
VIP輸送機型。
- P-3AM:
A型の近代化改修型。
グラスコックピットの導入などを行った後、ブラジル空軍に引き渡された。
- P-3B(144機):
A型のエンジン出力強化型。後にP-3C相当に改造された。
- EP-3B:
電子戦訓練機。後にEP-3Eに改造。
- NP-3B:
B型ベースの各種試験機。
- TAP-3B:
オーストラリア空軍向け訓練・輸送機型。
- P-3K(5機):
B型のニュージーランド空軍向け改修型。
- P-3N(2機):
B型のノルウェー空軍向け改修型。
- P-3C(118機):
デジタルコンピュータを搭載し、処理能力を高めた型。
- EP-3C:
電子戦機型。
- EP-3E「アリエス」(12機):
電子戦訓練機。
- EP-3E「アリエスII」(12機):
SIGINT機型。
2001年に海南島近海でJ-8IIと衝突(海南島事件)した機体はこのタイプ。
- EP-3J(2機):
アメリカ海軍向け電子戦訓練支援機。
- NP-3C(1機):
C型ベースの開発研究用試験機。
- NP-3E:
各種テスト機(RP-3A、RP-3D、UP-3A を改称)。
- RP-3C(1機):
大気観測機。
- RP-3D(1機):
「Project Magnet」用に改造された能力試験機。
MAD装置の最適化データ収集に使用された。
- WP-3D(2機):
米海洋大気局(NOAA(ノア))所属の大気観測機。
ハリケーン・ハンターとして運用中。
- P-3F(6機):
帝政期のイラン空軍向けの機体。
C型にP-3A/B相当の電子機器を搭載し、空中給油機能を追加装備している。
- P-7(P-3G「オライオンII」):
近代化改修型(開発中止)。詳しくは項を参照。
- P-3H:
P-7計画を簡略化した近代化改修型。提案のみ。
- P-3P(6機):
ポルトガル向けの機体。
旧オーストラリア空軍向け P-3B をUpdate II 相当に向上させたもの。
- P-3T:
タイ向けの機体。
- P-3W:
オーストラリア空軍向けアップデート2.5の機体。
- P-3AEW&C「センチネル」:
E-2「ホークアイ」と同じAPS-96レーダーと電子機材を搭載する早期警戒機型。
アメリカ合衆国連邦関税局が麻薬密輸機取締り用に使用している。
- P-3A(CS):
米国税関向けの機体。赤外線探知システムを搭載。
- P-3A「ブラック・オライオン」(3機):
CIA用の特殊偵察機。
主に沖縄・嘉手納基地から中国、ビルマ、チベット、ラオス、ベトナム方面への偵察に使用された。(3機とも、のちにEP-3(試作機)に改造)
- EP-3(5機):
海上自衛隊向けELINT用電子戦機。P-3Cベースで、胴体前部下面にバルジが増設されている。
第31航空群第81航空隊(岩国基地)に配備(コールサインは"VIOLET")。
- UP-3C(1機):
海上自衛隊の装備品評価試験機。第51航空隊(厚木基地)に配備。
- UP-3D(3機):
海上自衛隊の電子戦訓練機。標的曳航も可能。
第31航空群第91航空隊(岩国基地)に配備(コールサインは"DELPHI")。
- OP-3C(4機):
海上自衛隊の遠距離(広域)画像情報収集機。
SLAR、側方画像監視レーダーまたはLOROP・長距離監視センサーを装備。
第31航空群第81航空隊(岩国基地)に配備(コールサインはEP-3と同様)。 - CP-140「オーロラ」(18機):
カナダ軍向けにS-3「バイキング」のものに類似する装備を追加搭載した海洋監視任務型。
- CP-140A「アークトゥルス」(3機):
飛行訓練及び海洋監視専用型。
関連:潜水艦
P-3 (航空機)
(P・3 から転送)
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P3V / P-3 オライオン
- 1 P-3 (航空機)とは
- 2 P-3 (航空機)の概要
P3
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ナビゲーションに移動 検索に移動P3
- Pentium III - インテルのCPU。
- Intel 80386 - インテルのCPU - の開発コードネーム。
- コンピュータゲーム『スーパーリアル麻雀PIII』の略称。
- コンピュータゲーム『ペルソナ3』の略称。
- Display P3 - Appleが策定した色空間の名称。
- 航空機
- 第3周期元素 (period 3 elements)
- P3 (ホンダ) - ホンダの二足歩行ロボット。 →ASIMO
- 物理的封じ込めレベル3。 →バイオセーフティーレベル
- 国道P-3号線 (エリトリア) - エリトリアの第1級国道。アスマラとセナフェを結ぶ。
関連項目
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P-3
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/17 14:44 UTC 版)
空冷エンジン型。当初に搭載する予定だったカーチスR-1454が不調のため、P&WR-1340-1を搭載した。P&WR-985に換装してXP-21に改称された。
※この「P-3」の解説は、「P-1 (戦闘機)」の解説の一部です。
「P-3」を含む「P-1 (戦闘機)」の記事については、「P-1 (戦闘機)」の概要を参照ください。
P-3
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/28 02:21 UTC 版)
「ロッキード L-188」の記事における「P-3」の解説
詳細は「P-3 (航空機)」を参照 L-188を母体に開発された対潜哨戒機。旅客機としては失敗に終わったエレクトラだが、皮肉なことに、低速巡航性能と低燃費が哨戒機としての適性を満たしたため、対潜哨戒機として改設計された型がP-3 オライオンとして大きく花開くことになる。出自が旅客機のため良好な居住性や電子機器搭載能力、STOL性、長時間滞空性能、ジェット燃料使用による資材共通化なども評価された。P-3は高い商業的成功を収め、500機以上が生産されている。海上自衛隊にも100機以上が導入されている。
※この「P-3」の解説は、「ロッキード L-188」の解説の一部です。
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