砂防ダム
砂防堰堤
砂防ダム(治山ダム)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/10 09:37 UTC 版)
詳細は「砂防ダム」を参照 土石流は渓流沿いに発生することから、土石流が流下する渓流に土砂を受け止めるダム(英語:check dam)を建設する方法が最もよく採用される。ダムは土石を直接受け止めるほかにもダム上流の勾配を緩くすることで、土石流の流下速度軽減や堆積を促して威力を軽減する。また、河床や両岸の浸食の軽減の効果もある。 日本においては砂防法に基づき国土交通省が管轄し、各地の地方整備局や都道府県の土木系の部署が建設するものを「砂防堰堤」、森林法に基づき林野庁が管轄し、各地の森林管理署や都道府県の林業系の部署が建設するものと「治山ダム」などとして分けるが、構造物の形はほぼ同じである(以下、特に区別する必要がない場合は砂防ダムもしくはダムに統一する)。ダムの規模は砂防ダムの方が大きいことが多いが、火山地帯や河川の大きな支流に設けられる治山ダムにも非常に大きなものがある。事業は一般に民有地は都道府県、国有地は国が行う。ただし事業規模が大きいものや難工事が予想される民有地の件では国が直轄代行事業で行うことがあり、逆に民家等がなく僅かな資産を守るために行う事業では国有地内の事業を都道府県が行うこともある。 砂防ダムは一般にTシャツのような形をしており、中央に一段低くなった「水通し(放水路ともいう)」(Tシャツでいう首を通す部分)、水通しの左右に袖と呼ばれる高くなったパーツを持つ(Tシャツでも袖の部分)。袖は水通しに土石流を集める働きがあり、両岸を削られてダムが決壊することを防止する。 ダムの各種数値には設計根拠がある。たとえば、堤高は渓流内に堆積する土砂の量を受け止めきれるかどうか、また土石で満杯になったときに上流側の渓流勾配を十分緩和できるかどうかで決められる。提体の厚みは渓流内に堆積する転石の大きさや土質を根拠に決定され、転石の大きさが大きいほど提体を丈夫にするために厚くする。提体の断面は一般に台形であるが、安定計算の許す限り急傾斜に作ることで土石の流下による提体の損傷を低減するような形状になっており、一般にみるような貯水用のダムとは見た目も異なっている。水通しの断面積は想定される最大の洪水量を通過させることができるように設定され、想定以上の洪水が起こった場合にも極力流水を両岸に当てないように袖部に傾斜を設けることもある。 コンクリート製の砂防ダム(フランス) 貯砂量に余裕があり堤体下部の水抜き穴から排水する砂防ダム 満砂になり水通しから排水する砂防ダム 一般に天端部分に傾斜がついており提体中央部に水を集めるようになっている 水通しから流下する土石で提体が摩耗・損傷しにくいよう急傾斜で作られる 砂防ダムは一般に重力式ダムであり、自重により自立しているが一部にアーチ式のものもある。材質は一般にコスト面、施工性、耐久性などからコンクリート製が多い。ただし、コンクリートダムは重量の重さ、変形に対する弱さ、貯水性の高さ等が軟弱地盤や地すべりを起こしやすい斜面を持つ場所において不利になる場合がある。このような場所では鋼材で作った枠の中に石を詰め込んだ鋼製枠の砂防ダムも作られる。土石だけでなく流木に対策の重点を置いたダムもある。古くは中央部を金属製で鎧戸状のバットレスダムタイプにしたもので、土石の直撃には弱いが流木をせき止めることを期待して建設される。また、既存のコンクリートダムに鋼材などを付けることで土石だけでなく流木対策を施したものもしられる。土石と流木対策に加えて普段の土砂の流下や水生生物の移動を妨げないスリットダム(透過型堰堤などとも呼ばれる)もある。鋼材や木材を用いた比較的低コストでできるものから、コンクリートで巨大な柱を作り上げる大規模なものもある。ダムに魚道を付けることや農業用水、飲料水採取用にパイプ等を付けることが行われることがある。 コンクリート製の不透過ダムは貯水性が高い 北海道美瑛町の観光名所「青い池」は砂防ダムへの貯水で生まれた名所である ダムへの貯水が一因となり大規模な地すべりが発生したバイオントダム(イタリア) 参考:石を詰めた蛇篭(英:gabion)。これで小さなダムを作ることもあるが、ダム直下に洗堀防止のため置くことのほうが多い。 福山藩の砂留と呼ばれる石積みの砂防ダム(広島県) 石積みの砂防ダム(ドイツ) 丸太2本を並べて作った簡易な砂防ダム(エチオピア) 流木対策に重点を置いたとみられる鋼材スリットダム 流木対策のスリットダム(スイス) コンクリート柱のスリットダム(ポルトガル) コンクリート柱を持つスリットダム(新潟県) 砂防ダムで致命的な破損は下部の洗堀、もしくはダムの袖を埋め込んでいる両岸斜面の洗堀や崩壊により貯砂を無制御状態で下流に流してしまうことで、いわゆる「底抜け」や「袖抜け」と呼ばれる。甚だ激しい場合は決壊につながり、ダムが貯めていた土砂が一気に下流へ流れ出すことになる。このため、ダムの底部や両岸の根入れには十分を行う。また、下流側に本堤より低い副堤を設けることで流水の浸食能力を減衰したり、下流側に蛇篭の埋め込みやコンクリート三面張りの水路にして浸食と洗堀を防止する場合もある。袖部に関しては「袖隠し」や水通し下流部に「側壁」と呼ばれる護岸パーツを付けることで極力端部が露出しないようにしている。コンクリートダムにおける亀裂(特に漏水を伴うものは危険度が高い)や鋼製枠ダムにおける鋼材の破断による中詰材の流出もダムの強度を大きく下げかねない重大な破損である。 渓流では土砂がたまりダムの貯砂可能容量はやがて減少する。貯砂可能容量が減少した状態で土石流が発生した場合、下流に被害が及ぶ可能性があるので、容量を回復させるために浚渫する場合がある。ただし、満砂状態になることによって上流側の勾配が緩和されダムの機能を果たしているとして浚渫を行わない場合も多々ある。特に治山ダムでは堆砂により河床勾配が緩和され保安林の生育に適した状態になっているとして、河床勾配を増加せることになる浚渫はしないことが多い。スリット式ダムでは水生生物の移動等に重点を置いた場合、堆積物を適宜取り除きダムを挟んで大きな高低差が無いようにすることが求められる。 土石と流水により水通し天端部が摩耗した砂防ダム(滋賀県) 提体下流側に大きな側壁を持つ砂防ダム(オーストリア) 副堤の連続と天然石の配置で河床の洗堀防止と景観維持の工夫がされたダム(オーストリア)
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砂防ダム(小)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/19 14:37 UTC 版)
4番目の砂留の上流の標高210mの場所で渓流Bは左右に分かれる。渓流の分枝を左側に進むとまもなく小型のコンクリート製砂防ダムが少なくとも3基連続して設けられている。ダムには「土留工」と記載されており01から番号が振られている。昭和50年代の構築で、半円形の鋼製導水管で3つの砂防ダムが接続されている。 分枝部右側に設置されている小型の砂防ダム(2番)
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砂防ダム(大)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/19 14:37 UTC 版)
砂防ダム(小)がある渓流を更に上流に進むと、500mほど先の標高320mの場所に大型のコンクリート製砂防ダムが1基ある。林道大谷線から60mほど降りた場所にある。(北緯34度30分04.3秒 東経133度16分11.7秒 / 北緯34.501194度 東経133.269917度 / 34.501194; 133.269917 (大型のコンクリート製砂防ダム))
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砂防ダム(中)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/19 14:37 UTC 版)
渓流の分枝を右側に進むとY字型に3基の大型砂防ダムが距離60-80mほどの範囲に設置してある。標高は230-240mで、1979年度(昭和54年度)に「復旧治山事業渓間山復工事」として、広島県林務部によって設置されたものである。3基とも国土地理院の地図にも掲載される(北緯34度30分4.04秒 東経133度15分48.79秒 / 北緯34.5011222度 東経133.2635528度 / 34.5011222; 133.2635528 (Y字に配置された大型のコンクリート製砂防ダム))。周囲には標高差50mほどの大規模な土砂崩れ跡が多数見られる。左側の砂防ダムから流れ出る渓流水は赤身を帯びており、大谷鉱山(後述)の坑道排水との関連が示唆される。砂防ダムの上流側は左右双方とも未確認。 下流側の砂防ダム 砂防ダムの上流側 左側の砂防ダム 右側の砂防ダム 砂防ダムのプレート
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砂防ダム(中)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/19 14:37 UTC 版)
渓流Cに入ってすぐにある中型のコンクリート製砂防ダム。渓流Bに設置されている3基の中型砂防ダムと同じもので、最も下流側のダムの右側に「昭和54年度 復旧治山事業渓間工事 工事番号 No2 谷止工 広島県林務部」と記載されている。下流側の2基は連続して設置されているが、2基目砂防ダムの上流側で渓流Cは左右に枝分かれし、それぞれの渓流にも各1基ずつ設置され、合計で渓流Cには4基存在する。 1基目の砂防ダム 2番目の砂防ダム 右側の渓流奥の砂防ダム 左側の渓流奥の砂防ダム 左側の渓流奥の砂防ダムの上流側 1基目の砂防ダムのにあるプレート
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砂防ダム(中)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/19 14:37 UTC 版)
橋を過ぎて暫く上ると、中規模のコンクリート製砂防ダムがある。堀町川の右手側にかつて歩道があったが、土砂崩れや川の侵食で寸断されている。その後、ため池(B)との間に形が崩れた石積砂留が1基残されている。
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