硫酸
硫酸(りゅうさん)とは、化学式H2SO4の化学物質である。一般には水溶液としたものを硫酸と呼んでいる。化学工業の上では基礎原料の一つで、金属製錬・製鋼・紡織・製紙・食料品工業・肥料など、広い分野で利用されている。また、化学実験に用いる試薬としても重要である。
純粋なH2SO4は無色粘稠(ねんちゅう、粘り気があって密度が濃い様子)の液体であり、融点は10.35℃。この物体は熱すると290℃でSO3(三酸化硫黄)を放って分解する。
水溶液のうち、濃度の低いもの(約90%未満)を希硫酸、濃度の高いもの(約90%以上)を濃硫酸という。10%を超えて含有する溶液は、医薬用外劇物の指定を受ける。不揮発性のため、仮に濃度の低い硫酸であったとしても、水分が蒸発すると濃縮され、衣服に付いたものを放置すると 穴があきかねず、皮膚に付いたものを放置すると、火傷をする恐れがある。
硫酸は、水溶液中では2段階で電離し、強い酸性を呈する。電離の第1段階では硫化水素イオン(HSO4−、1価の陰イオン)、電離の第2段階では硫酸イオン(SO4 2-)が生じる。硫酸イオンは、多くの金属元素と安定な塩(硫酸塩)を形成する。硫酸塩には、肥料に用いられる硫酸カリウム(K2SO4)、石膏の主成分である硫酸カルシウム (CaSO4)などがある。
硫酸を工業的に生産する場合、亜硫酸ガスを空気で酸化してから水に吸収させて製造する。
歴史上、硫酸の発見者としては、イスラム社会の2人の人物の名が知られている。8世紀の錬金術師 ジャービル・イブン=ハイヤーン、9世紀の医者・錬金術師 イプン・ザカリア・アル・ラーズィーである。硫酸は古くは「緑礬油(りょくばんゆ)」とも呼ばれた。日本国内の最初の硫酸製造工場は、1872年(明治5年)に大阪造幣局に設置されている。
りゅう‐さん〔リウ‐〕【硫酸】
硫酸
硫酸
硫酸
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/25 08:07 UTC 版)
硫酸(りゅうさん、英: sulfuric acid、独: Schwefelsäure)は、緑礬油(りょくばんゆ)、ビトリオール油としても知られており、硫黄、酸素、水素の元素からなる鉱酸である。分子式はH2SO4 で、無色、無臭の粘性のある液体で、水と混和する[2]。
- ^ a b c 厚生労働省モデルSDS
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硫酸
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/06 03:40 UTC 版)
旧式のキャピラリー(毛細管)融点測定装置では濃硫酸が加熱媒体として使用される。
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硫酸
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/12 01:21 UTC 版)
ピッツァー式(英語版)と呼ばれる複雑な実験式に基づいて、25℃における硫酸のpHが計算されている。 硫酸のpH (25 ℃)比重質量モル濃度/mol/kgpH−log10mH+/mol/kg−log10[H+]/mol/L1.00 0.146 0.86 0.84 0.84 1.04 0.734 0.09 0.13 0.15 1.09 1.497 −0.38 −0.18 −0.15 1.13 2.319 −0.79 −0.37 −0.33 1.15 2.918 −1.07 −0.47 −0.42 1.18 3.657 −1.41 −0.56 −0.50 1.22 4.485 −1.78 −0.65 −0.58 1.26 5.413 −2.19 −0.73 −0.65 1.33 7.622 −3.13 −0.88 −0.76 1.38 9.850 −4.09 −0.99 −0.84 表の2列目はモル濃度ではなく質量モル濃度である。比較のために、水素イオンの質量モル濃度 mH+ の逆数の対数を4列目に、モル濃度 [H+] の逆数の対数を5列目に示した。十分に希薄であれば、質量モル濃度から計算したpHはモル濃度から計算したpHに等しい。−log10mH+/mol/kg は、硫酸を H+ と HSO4− を溶質とする理想希薄溶液とみなしたときのpHに相当する。硫酸の質量モル濃度が 1 mol/kg を超えると硫酸のpHは急速に低下し、理想希薄溶液のpHとのずれは無視できないほど大きくなる。表から、自動車用鉛蓄電池の電解液(比重1.28の希硫酸)のpHが −2よりも低い負の値となることが分かる。また、このような強い酸性を示す硫酸のpHは、水素イオンの質量モル濃度やモル濃度の逆数の対数とはみなせないことも分かる。
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硫酸
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化学関連作業においての最難関素材かつ最重要アイテム。現代ではあらゆる化学産業の根幹をなしている薬品。
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硫酸
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「トルネコの大冒険 不思議のダンジョン」の記事における「硫酸」の解説
地面から熱い酸が噴出し、装備している盾がさび付く(守備力1ポイント低下)。メッキされた盾や錆びない盾を装備している場合や、盾を装備していない時は影響なし。
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硫酸
出典:『Wiktionary』 (2021/06/15 14:03 UTC 版)
名詞
翻訳
- アラビア語: حمض كبريتيك
- ブルガリア語: сярна киселина
- ブルトン語: trenkenn sulfurek
- ボスニア語: sumporna kiselina
- カタルーニャ語: àcid sulfúric
- チェコ語: kyselina sírová
- デンマーク語: svovlsyre
- ドイツ語: Schwefelsäure 女性
- ギリシア語: θειικό οξύ
- 英語: sulfuric acid
- エスペラント: sulfata acido
- スペイン語: ácido sulfúrico
- エストニア語: väävelhape
- フィンランド語: rikkihappo
- フランス語: acide sulfurique 男性
- ガリシア語: ácido sulfúrico
- ヘブライ語: חומצה גופרתית
- ハンガリー語: kénsav
- インドネシア語: asam sulfat
- アイスランド語: brennisteinssýra
- イタリア語: acido solforico 男性
- 朝鮮語: 황산
- ラテン語: acidum sulphuricum
- リトアニア語: sieros rūgštis
- ラトヴィア語: sērskābe 女性
- マレー語: asid sulfurik
- 低地ドイツ語: swevelsüür
- オランダ語: zwavelzuur 中性
- ノルウェー語(ニーノシュク): svovelsyre
- ノルウェー語: svovelsyre
- ポーランド語: kwas siarkowy(vi)
- ポルトガル語: ácido sulfúrico
- ルーマニア語: acid sulfuric
- ロシア語: серная кислота
- スロヴァキア語: kyselina sírová 女性
- スロヴェニア語: žveplova kislina
- セルビア語: сумпорна киселина
- スウェーデン語: svavelsyra 通性
- タイ語: กรดกำมะถัน
- ウクライナ語: сульфатна кислота
- ベトナム語: axít sulfuric
「 硫酸」の例文・使い方・用例・文例
- 硫酸アンモニウム, 硫安.
- 硫酸銅.
- 【化学】 塩化[酸化, 硫酸]第 2 鉄.
- 塩化[酸化, 硫酸]第 1 鉄.
- 硫酸カルシウム, 石膏(せつこう).
- 硫酸マグネシウム.
- 硫酸カリ.
- 硫酸ソーダ.
- 硫酸.
- 硫酸が 1 滴こぼれて白衣に穴があいた.
- 硫酸塩
- 硫酸
- 無水硫酸
- 硫酸バリウムは放射線を通さない
- 硫酸塩の変える
- 造影剤(通常硫酸バリウム)が直腸に注射される浣腸とレントゲン検査は、障害を捜すためにされる
- 塩酸および硫酸は、無機物と呼ばれる
- 技術的な等級の硫酸
- 硫酸塩の影響に露出するあるいは、硫酸塩で負傷する
硫酸と同じ種類の言葉
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