ショパン:ノクターン ハ短調
英語表記/番号 | 出版情報 | |
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ショパン:ノクターン ハ短調 | Nocturne c-Moll KK.IVb/8 CT128 | 作曲年: 1847年 出版年: 1938年 初版出版地/出版社: Warsaw |
作品解説
KK IVb Nr.8
このノクターンの成立年代については諸説あるが、20世紀のショパン研究者たちの多くは1837年とみている(M. J. E. Brown, 1872 ; K. Kobila?ska, 1977)。そうだとすれば、このノクターンは《二つのノクターン》作品37(第11、12番)と同時期の作である。この曲に関しては、完全な自筆譜が一点、スケッチが二点残されており、前者にショパンの筆跡で「ノクターンNocturne」と書き込まれているので、これが現在、第21番としてノクターンの中に数えられている。この曲が出版されたのは20世紀に入ってからのことで、1939年にワルシャワで出版されたのが最初である。
この曲の形式は、生前に出版されたノクターンに比して一風変わっている上に、曲の規模も小さい。曲は、すべて4小節ずつにフレーズが分かれている。それぞれのフレーズは、旋律・和声の特徴から、a, b, c, dの4種類に分けることができる。これを図式化すると、以下のような構造がみえてくる。
小節 | 1-8 | 9-16 | 17-20 | 21-28 | 29-32 | 33-36 | 37-44 |
[a1 a2] | [a1’ a2’] | b | [c1 c2] | d1 | b’ | [c1’ c2’] | |
ハ短調 | ヘ短調 | 変イ長調 | ハ短調 |
通常、ショパンのノクターンでは、冒頭で提示された主題は、曲の後半に主調で回帰する。ところが、この曲では冒頭17小節に繰り返されるモチーフは、最初に現れたきり回帰しない。むしろ、後半に主調で再現されるのは、上の図で色づけされたbとcのモチーフである。つまり、この曲には彼が出版した作品にみられるA(主調)―B(X調)―A(主調)というシンメトリー構造が欠如しているのである。
もうひとつ、このノクターンが他の生前に出版されたノクターンと異なる点は、装飾である。ショパンは、ノクターンにおいて、同じメロディが反復される際、必ず装飾をくわえている。これは、旋律を反復するときに彼が普段から二回目は即興的に装飾をして演奏していたという習慣を示唆している(これはどんなに細かい装飾音符でも、必ず楽譜通りに弾くのを良しとする現代の演奏習慣との決定的な違いである)。ところが、この曲ではどうだろうか。a1とa1’の旋律は、記譜上はまったく同じように装飾が施されているのである。こういうことは、ショパンの楽譜の書き方としてはそう多くあることではない。ショパンが出版を認めたノクターンを基準に考えれば、この曲はつまり、楽曲のプラン、旋律の創意という点から見て、あまり気乗りがしないで書かれた曲ではないかと推察される。(上田泰史)
ショパン:ノクターン 嬰ハ短調
英語表記/番号 | 出版情報 | |
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ショパン:ノクターン 嬰ハ短調 | Nocturne cis-Moll (Lento con gran espressione) KK.IVa/16 CT127 | 作曲年: 1830年 出版年: 1875年 初版出版地/出版社: Leitgeber |
作品解説
Nocturne cis-moll Op.posth.
1830年にウィーンで完成され、ショパンの姉ルドヴィカに送られた作品。慣例的にノクターンの1つに数えられているが、これは、ルドヴィカの編纂したショパンの未発表作品の目録の中で「ノクターンの様式のレント」と記されているからであり、恐らく、ショパン自身はノクターンと命名しなかったと推測されている。そのため、速度表示の「Lento con gran espressione」がそのままタイトルとして使われることも多い。ルドヴィカに送られた手稿は、後にショパンの父の友人で、民俗学者・音楽家のOskar Kolbergによって筆写され、それをもとに1875年に初版が出版された。
曲は、大きく分けると、前奏-A-B-A’-コーダとなる。最初のAでは、いかにも歌唱的な旋律が印象的だが、メロディーの最低音と最高音の幅は、3オクターヴと半音であり、実際に歌うことは無理である。また、Aの最後にはさりげなく半音階的和声が使われ、微妙な陰影が与えられている。
続くBは、Aと同じ伴奏型が続く前半と、3/4に拍子が変わる後半とに分けられ、ショパン自身の《ピアノ協奏曲》第2番、及び彼の歌曲《乙女の願い》のモチーフが引用される。
譜例1 第23~24小節
譜例2 《ピアノ協奏曲》第2番 第1楽章 第41~42小節
譜例3 第21~23小節
譜例4 《ピアノ協奏曲》 第2番 第3楽章 冒頭
この部分の前半で、ショパンは当初、左手4/4拍子1小節に対し、右手3/4拍子2小節という書き方をしていたが、難しすぎると判断したのか、ルドヴィカに送られた手稿では、両手とも2/2拍子で弾けて、リズムも簡略化されたものになっている(譜例3; 通常この簡略化された形で演奏されるが、これをショパンの妥協と考えたのか、当初の複雑な形で演奏する人もいる)。
A’に戻って第53小節目に入ると、音楽がVに半終止して落ち着くかと思わせたところで、旋律は一気に上昇し緊張を高め、次の小節でバスがfisisに下がり減七の和音になると、緊張は頂点に達する。この53小節目の旋律最後の音であるfisと54小節目の左手冒頭のfisisの間には、和声学で避けることが望まれる対斜が生じている。(譜例5)。
譜例5 第50~52小節
そして、旋律は下降を続けI度に落ち着くと、伴奏はI度とその刺繍和音の2種類を延々繰り返す。右手もまた、同じことを何度もつぶやくが如く、音階の上昇と下降を4回繰り返し、最後に突然同主長調になってピカルディ終止する。
ラヴィーナ:ノクターン
英語表記/番号 | 出版情報 | |
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ラヴィーナ:ノクターン | Nocturne Op.13 | 作曲年: 1845年 初版出版地/出版社: Lemoine |
作品解説
J. フィールドがノクターンをいうジャンルを始めて以来、ショパンを筆頭に多くのピアニスト兼作曲家たちがこのジャンルに取り組んだ。ラヴィーナもまた当時の慣習に倣い左手に分散和音を、右手には豊かな装飾音を交えた歌唱的旋律を配している。三部形式によるこの曲では、中間部に劇的でシンフォニックな展開が用意されている。「ノクターン」というジャンルは、変化の少ない伴奏音型とオペラ・アリアやロマンス風の旋律で構成され、一貫して暮色に染まった静かな雰囲気を漂わせるのを常とするが、ラヴィーナは中間部にオーケストラの響きを用いることで劇場の華やかな雰囲気を創り出している。この作品は、ロンドンで《イネース》Inès、《シルヴィア》Sylvia、《すみれ》La violetteなどのタイトルで売り出されたほか、ドイツはボンでも出版され人気曲となった。本演奏会ではフランスのルモワーヌ社から出た第二版(1868頃出版)を使用するが、これにはイギリス初版にはない4小節の前奏が付いている。
1840年代半ばの作で、ラヴィーナの出世作。”Ines”、”Sylvia”、”La Nuit”等々、多種多様なタイトルで出版されていた当時の有名曲。
ノクターン
夜想曲
( ノクターン から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/02/23 14:34 UTC 版)
夜想曲(やそうきょく)は、性格的小品(主にピアノ独奏曲)の一種。ムツィオ・クレメンティの弟子でアイルランド出身のピアニスト兼作曲家ジョン・フィールドが創始した名称。英語でノクターン(nocturne)、フランス語でノクチュルヌ(nocturne)、イタリア語でノットゥルノ(notturno)。ノットゥルノはまた、セレナードと同様の器楽合奏を意味する場合もある。語源はラテン語で「夜の」または「夜に属する」を意味する形容詞nocturnusであり、これはラテン語で「夜」を意味する名詞noxの語幹noct-から成ったものである。
ショパンは、夜想曲をより自由でロマンティックな楽曲へと発展させた。今日では夜想曲と言えばショパンの一連の作品が最もよく知られている。その他、フォーレやドビュッシーの管弦楽曲が有名である。
主な作品
独立した「夜想曲」
ピアノ曲
- ミハイル・グリンカ
- 夜想曲『別れ』
- ショパン(21曲) - 夜想曲 (ショパン) を参照。
- ショパンの夜想曲はおおむね簡単な三部形式で構成されている。21曲(全21曲)いずれも演奏は比較的簡単でショパン作品の入門としても適当である。作曲者本来の創作意志からは外れてしまう洗練優美な作風のものばかりであるが、発表当時既に多くの支持を集め、未だに衰えがない。時に深刻な展開のもの(ハ短調)もあるが、奏者は優雅さを失うことなく作者の身近な感情を表演するように求められる。
- 『夜想曲 第2番 変ホ長調』Op.9-2
- 『夜想曲 第20番 嬰ハ短調』遺作
- リスト
- 『愛の夢、3つの夜想曲』第3番
- 3曲とも歌曲から編曲したもの。第3番は『おお、愛しうる限り愛せ』(詩:フェルディナント・フライリヒラート)
- 『ジュネーヴの鐘: 夜想曲』(巡礼の年 第1年の1曲)
- 『愛の夢、3つの夜想曲』第3番
- ガブリエル・フォーレ
- 夜想曲(全13曲)
- エリック・サティ
- 5つの夜想曲(1919)
- アレクサンドル・スクリャービン(5曲)
- 『左手のための前奏曲と夜想曲』Op.9——作曲者が右手を痛めたときに作曲。
- フランシス・プーランク(9曲)
- グスターヴ・ホルスト
- バルトーク・ベーラ
- 夜想曲(ミクロコスモス4巻・No.97)
管弦楽曲
- フレデリック・ディーリアス:夜想曲『パリ:大都会の歌』
- クロード・ドビュッシー:『夜想曲』
室内楽曲
- フランツ・シューベルト:ピアノ三重奏曲『ノットゥルノ』(D 897)
楽曲の一部としての「夜想曲」
- ボロディン:弦楽四重奏曲第2番の第3楽章
- ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番の第1楽章
- ヴォーン・ウィリアムズ:ロンドン交響曲(交響曲第2番)の第3楽章
参考文献
- ヴラディミール・ジャンケレヴィチ 著、千葉文夫、松浪未知世、川竹英克 訳 『夜の音楽』シンフォニア、1986年3月。
ノクターン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/09 09:32 UTC 版)
「ハーメルンのバイオリン弾き〜シェルクンチク〜」の記事における「ノクターン」の解説
妖精の国の指導者の一人にして科学者。非道な研究の実験と実践の果てに、精霊武闘術に最適化された改造人間である「殉教者(マーター)」を生み出す。
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