歯車 種類

歯車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/04 17:46 UTC 版)

種類

歯すじの形状等で分類される。2つの歯車を組み合わせた際に、それぞれの軸の位置関係は平行となるもののほか、交差するものや食い違いとなるものがある。

平歯車

ひら歯車、ひらはぐるま、英語: spur gear
平歯車の動き
ラック(下)とピニオン

歯を回転軸と平行に切った歯車[1]。製作が容易であるため動力伝達用(駆動列)に最も多く使われている。歯車同士が外接する外歯車と、小歯車が円筒の内面に歯筋を設けた大歯車に内接する内歯車がある[1]

大小2つの平歯車を組み合わせる時に、大きい方をギヤといい、小さい方をピニオンという。ピニオンに組み合わされる大歯車は外歯車に限定されず、内歯車や、直径を無限大にしたラック(英語: rack)とも組み合わされる[1]

回転運動を直線運動に変えるには、ラックと小歯車を組み合わせたラック・アンド・ピニオンが用いられる[1]。ラック・アンド・ピニオンは工作機械の位置送りや自動車のステアリング装置に用いられている。

内歯車・内歯歯車

うちはぐるま、うちばはぐるま
内歯車

平歯車の一種で、読んで字のごとく内側に歯がついている歯車。

内側に噛ませるため小径の歯車としか組み合わせられない。遊星歯車機構のようにこの歯車が無ければ成立しない構造のものも存在する。

はすば歯車

斜歯歯車、英語: helical gear
はすば歯車(上)とねじ歯車(下)

平歯車の歯を軸線に対して斜め(はす)に切って、螺旋状とした歯車[2]

同時にかみ合う歯数を増やし、歯当たりが分散されるので音が静かで、トルクの変動が少ない。トルクがかかると推力(スラスト)が発生するので、何らかの形のスラスト軸受が必要になる[2]

減速機構では原動機側のトルクは小さいので傾きを大きく、最終段ではトルクが大きいので傾きを小さくする。

ねじ歯車

はすば歯車と同じ形の歯車を組み合わせて、2軸の間に平行以外の角度で動力の伝達を行う歯車である[2]

やまば歯車

山歯歯車、英語: Herringbone geardouble helical gear
やまば歯車

同じ傾斜でねじれ方向が逆向きのはすば歯車を2つ組み合わせた形をしていて、はすば歯車の軸方向に発生する推力を互いに打ち消しあう構造とした歯車である[2]

フランスの自動車メーカー、シトロエンのダブルシェブロンとも呼ばれるエンブレムは、この歯車をモチーフにしている。

かさ歯車

傘歯車、ベベルギヤ、ベベルギア、英語: Bevel gear
かさ歯車

円錐面上に歯を刻んだ歯車で、広げたのような形状をしていることからこのように呼ばれる[2]。 平行ではなく角度がついた軸の間で動力を伝達する際に用いられる。

一般的には入出力の2軸を同一平面上とし、平歯車を円錐状に窄めた形のすぐばかさ歯車、はすば歯車を円錐状に窄めた形のはすばかさ歯車、歯形が曲線(円弧)状のまがりばかさ歯車がある[2]

さらに、入出力の2軸を同一平面上ではなくねじれの位置としたハイポイドギヤ英語: hypoid gears)があり[2]、 自動車の駆動系、特に縦置きエンジン車の差動装置はかさ歯車の応用の1例である。

冠歯車

かんむりはぐるま、クラウンギヤ、クラウンギア、英語: Crown gear
冠歯車

冠歯車はかさ歯車の一種で、歯が回転軸に対し垂直につけられたもの。歯車の形状は王冠に似る。

かさ歯車と組み合わせのほか、小径の平歯車(ピニオン)とも組み合わされる。

ウォームギヤ

英語: worm gears
ウォームギヤ

ウォームとウォームホイールを、互いの軸が直角で交わらない位置で組み合わせたもの[2]をウォームギヤと呼ぶ。1段で大きな減速比が得られ、他の歯車機構に比べて騒音が少ない[2]

オルゴール調速機(ガバナー)、自動車のステアリングギア(ウォームアンドローラー)、天体望遠鏡赤道儀鉄道模型の駆動などに採用されている。

球状歯車

きゅうじょう歯車、英語: Cross spherical gear

球体の表面に、2軸が直交した歯を持つもの。

回転3自由度の運動を可能とする歯車機構の中でも小型、軽量、伝達効率の高さを特徴とする[3]

円盤・円柱の直径方向に軸を持つモノポールギヤとの組み合わせで、ロボットアーム関節ドローン用カメラのジンバル制御などへの利用が期待されている。

スプロケット

スプロケットと
ローラーチェーン

1枚の歯車とローラーチェーンをかみ合わせて回転の伝達を行う機構、あるいはその歯車をスプロケットと呼ぶ。

2つ歯車による機構ではないので歯車機構という意味では歯車とは呼ばれない。


注釈

  1. ^ 摩擦面に同じ金属を使う事を「ともがね」と言い、歯車に限らず摩擦面に用いるのは基本的に避けるのがセオリーである。これは摩擦・摩耗の分野では常識であり、トライボロジーが発展する前からの経験則から知られていた事象である。
  2. ^ 三輪自動車で駆動輪が一つのものを除く。

出典

  1. ^ a b c d e 大西1997 pp11-2
  2. ^ a b c d e f g h i 大西1997 pp11-3
  3. ^ 久保田龍之介 (2021年7月29日). “【有料記事】SNS沸騰の「球状歯車」 全方向無制限駆動で人型ロボットに衝撃”. 日経クロステック. 2021年8月17日閲覧。
  4. ^ a b c 大西1997 pp11-1
  5. ^ a b “Planetary Gears”. Nature 444: 7119. 
  6. ^ a b A-G・オードリクール『作ること使うこと:生活技術の歴史・民俗学的研究』 山田慶兒訳 藤原書店 2019年、ISBN 978-4-86578-212-7 pp.251-256.
  7. ^ “歯車”を使ってジャンプする昆虫ナショナルジオグラフィック2013年9月13日、2016年5月9日閲覧





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