歯車_(小説)とは? わかりやすく解説

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歯車 (小説)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/05 13:29 UTC 版)

歯車
作者 芥川龍之介
日本
言語 日本語
ジャンル 短編小説
発表形態 雑誌掲載
初出情報
初出 全章-『文藝春秋1927年10月号
刊本情報
収録 『芥川龍之介全集 第4巻』 岩波書店 1927年
西方の人』 岩波書店 1929年12月 画:小穴隆一
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歯車』(はぐるま)[注 1]は、芥川龍之介小説。『玄鶴山房』、『蜃気楼』、『河童』、『或阿呆の一生』と並ぶ晩年の代表作である。この時期の作品には自身の心象風景を小説にしたものが多いが、この作品もその一つと言える。執筆期間は1927年3月23日から4月7日までとされる。「話」らしい「話」はなく、芥川を自殺に追い詰めたさまざまな不気味な幻視、関連妄想が描かれている。芥川は1927年(昭和2年)服毒自殺を図るが、生前に第一章が雑誌「大調和」に発表され、残りは遺稿として発見された。遺稿中では唯一の純粋な小説である。

あらすじ

「僕」は、知り合いの結婚披露宴に出席するため、東京のホテルに向かう。途中、レエン・コオト(レインコート)を着た幽霊の話を耳にする。その後、事あるごとに、季節はずれのレエン・コオトが現れ、「僕」は段々と不気味になってくる。披露宴後、そのままホテル[注 2]に逗留して小説を執筆しだしたとき、「僕」は、義兄がレエン・コオトを着て轢死したことを知る。

ときおり「僕」の視界には半透明の歯車が回るのが見える[注 3]。レエン・コオトだけでなく、復讐の神、黄色いタクシー、黒と白、もぐらもち(もぐら)、翼(飛行機)、火事、赤光など、過去の罪の残像とも、死の予告とも知れない現象が繰り返し現れていく。何者かに生命を狙われていると感じるようになった「僕」は怯え苦しみ、東京の街を逃げ回るように彷徨する。やがて東京に耐えきれなくなった「僕」はホテルを出て妻の実家へ帰るが、そこでも不吉な現象は続く。激しい頭痛をこらえて横になっていると、妻は「お父さんが死にそうな気がした」と言う[注 4]。「僕」はもはやこの先を書き続けることも生きていることも苦痛となり、眠っているうちに誰かが絞め殺してくれないだろうかと望む。

評価

同時代の作家の複数名が芥川の最高傑作と評している。

一方で、書きすぎて雑音があるとする評(久米正雄宇野浩二徳田秋声)もある[5]

その他

2009年度第104回の医師国家試験において、視界に見えた「歯車」の表現から、その原因(病跡学)として片頭痛を選ばせる出題があった[6]

脚注

注釈

  1. ^ 自筆原稿によればタイトルは、「ソドムの夜」、「東京の夜」、「夜」と変遷したが、佐藤春夫が「歯車」の題名を薦めたという。「ソドム」とは、旧約聖書新約聖書に記される退廃の街である。『歯車』で主人公が出かける銀座関東大震災からの復興当時、モボ・モガエロ・グロの街であった。
  2. ^ 竣工間もないフランク・ロイド・ライト設計の帝国ホテルである。
  3. ^ これは、偏頭痛の予兆である閃輝暗点である可能性が高い。
  4. ^ 妻の芥川文は、後年の追想記でこの作品のラストシーンが事実そのままであったことを明かしている。

出典

  1. ^ 「文芸春秋」昭和3年7月号[要ページ番号]
  2. ^ 大学卒論、昭和4年[要ページ番号]
  3. ^ 「文芸雑感」「文芸春秋」昭和2年12月号[要ページ番号]
  4. ^ 座談会「芥川龍之介研究」「新潮」昭和10年7月号
  5. ^ 新潮文庫『河童・或阿呆の一生』の吉田精一による解説より[要ページ番号]
  6. ^ 日本頭痛学会”. www.jhsnet.net. 2021年4月1日閲覧。

関連文献

関連項目

外部リンク


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