復活祭
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/01 22:12 UTC 版)
復活祭に連動する教会暦・礼拝・典礼・奉神礼
復活祭(復活大祭、復活日)は教会暦において、移動祭日と呼ばれ[20](移動祝祭日[21]もしくは移動祝日[22]とも)、最も重要な祭り(祝日)と位置づけられるとともに[1][2][3][4][5][6]、復活祭によって教会暦における他の移動祭日(移動祝祭日、移動祝日)が決められる。
大斎(四旬節)
正教会、カトリック教会、聖公会、ルーテル教会においては、復活祭(復活大祭、復活日)の前にイエスの荒野での試みや十字架の受難を記念する「40日間」が設けられている。ラテン語でQuadragesima、英語では古ドイツ語の「断食」を語源とするLentと標記されるが、日本語においては四旬節(カトリック、ルーテル他)、大斎節(たいさいせつ、日本聖公会)、大斎(おおものいみ、正教会)のように呼び名が異なる。また、開始日や数え方も教派ごとに違いがある。
カトリック教会、聖公会、ルーテル教会などの西方教会では、四旬節は復活祭の46日前にあたる灰の水曜日に始まる[22][23][24]。カトリック教会では主の晩さん(聖木曜日)の夕べのミサの前までを四旬節とするが[22]、聖公会、ルーテル教会では復活日前日までを四旬節とする[23][24]。復活祭前の一週間は「聖週」「受難週」等と呼ばれ、教会暦の中で非常に重要な位置を占めている。復活祭前の日曜日は枝の主日(復活前主日、棕櫚の主日など)と呼ばれ、重要な主日のひとつとされている[22][24]。
ルーテル教会以外のプロテスタント(改革派教会、メソジスト、バプテストなど)にも、教義又は伝統的に四旬節を取り入れている教派があるが[25][26][27][28]、概して現代のプロテスタントには四旬節をはじめとする教会暦にあまりこだわらない傾向がある。他方、プロテスタント内でも四旬節の意義を見直そうとする意見もある[28]。
正教会においては、大斎(おおものいみ)は復活祭の7週前の主日である断酪の主日(赦罪の主日)の日没後から始まり[29][30]、聖枝祭前日の「ラザリのスボタ」(ラザロの土曜日)の前日金曜日に一応の区切りを迎える[31]。ラザリのスボタ、聖枝祭を経て、受難週がある。それぞれの日を、聖大月曜日、聖大火曜日、聖大水曜日、聖大木曜日、聖大金曜日、聖大スボタと呼び、毎日特別の礼拝を行い、イエスのエルサレム入城から受難を経て復活するまでのそれぞれの日を象り記憶する[32]。大斎期間中には祈りと食事の節制が行われ[33]、喜びと浄化の時とされる[30]。
復活祭当日
教会暦の区切りは日没頃にある[34][35]。従って、教会における復活祭の当日は、一般の暦で言う前日晩の「復活徹夜祭」から始まる。
正教会における復活大祭当日における奉神礼は、一般の暦でいう前夜に始まり、夜半課、早課、一時課、聖体礼儀と続けて行われる。夜半課と早課の間には十字行が行われる。夜半課、早課、一時課は構造が通常のものと若干異なる上に、普段は誦経 (正教会)される部分も詠隊によって歌われる聖歌となる。これらの奉神礼の際、「ハリストス復活!」「実に復活!」という挨拶が繰り返し交わされ、パスハの讃詞が繰り返し歌われる。またこの祈祷の最中に、復活の生命を象徴する赤く染められた卵が成聖されて参祷者に配られる[36]。
カトリック教会では、キリストの受難と復活からなる過越の聖なる3日間は、全典礼暦年の頂点と位置づけられ、復活の祭日は典礼暦年の中で最高位を占める主日であると位置づけられる[37]。「過越の聖なる3日間」は、始まりを「主の晩さんの夕べのミサ」とし、中心は復活徹夜祭であり、終わりは「復活の主日の晩の祈り」としている[37]。復活徹夜祭は夜から明け方にかけて行われるよう定められている[37]。この日、イースター・エッグが配られる[注釈 5]。また毎年、教皇から復活祭のメッセージが発表される[38]。
聖公会では、復活日前日に復活徹夜祭(復活日前宵礼拝)、復活日当日には復活を祝う聖餐式が行われる。また、復活日の聖餐式後に祝会やイースター・エッグ配布を行う教会も多い[39]。
プロテスタント諸教会においては、教会暦にあまりこだわらない場合もあるなど[28]、内実の多様性から一概に言えない。しかし、特別に復活日(復活祭)を祝う礼拝を行い、正教会、カトリック教会、聖公会と同様、イースター・エッグが配られる場合もある[40][41][42]。
復活節・復活祭期
復活祭から始まる期間が「復活節」(ふっかつせつ、カトリック教会[8]/ 聖公会[43]/ ルーテル教会[44]の用語)・「復活祭期」(ふっかつさいき、正教会の用語[45])であり、ペンテコステ(聖霊降臨)の日まで7週間続く。それぞれの教会の教会暦において、読まれるべき聖書の箇所や、特別に行われる礼拝、典礼、奉神礼が定められている。
正教会においては、復活祭期には「ハリストス復活!」「実に復活!」との挨拶が信者間で交わされる。復活大祭からの一週間は光明週間と呼ばれる[46]。この一週間には斎(食品の制限をはじめとする精進)は行われず[46][47]、この一週間に奉神礼が行われる場合は全て復活大祭と同様の形式で行われる[48]。光明週間は復活大祭翌主日(翌日曜日)である、「聖使徒フォマの主日」とも呼ばれる「アンティパスハ(代逾越節)」まで続く[48][49]。
カトリック教会においては、復活節の最初の8日間を「主の復活の8日間」と呼び、この期間内には主日(日曜日)ではない平日でも主の祭日のように祝われる[8]。
なおプロテスタントの一部では、復活祭・復活日当日を「復活節」と呼ぶこともある[12]。
注釈
- ^ 「パスハ」表記の大本はギリシア語である。ギリシア語: Πάσχαは、古典ギリシア語再建からは「パスカ」と転写し得るが、現代ギリシア語では「パスハ」。新約時代以降のギリシア語の発音はアクセントやイ音化、各種子音の発音等、かなり現代ギリシア語に近くなっていた。正教が優勢な地域におけるスラヴ系言語、ルーマニア語等における、ギリシア語に由来する教会関連の語彙の発音は、中世以降のギリシア語発音に則っている。
- ^ 「祭」の表記が教会暦において頻繁に使われる教会(正教、カトリックなど)では「復活祭」の表記が使われ、「祭」と位置づけられ呼ばれるが、「祭」の表記が比較的もしくはあまり使われない教会(聖公会、プロテスタントなど)では「復活日」という表記が一般的であり、「祝日」といった説明がなされる。プロテスタントの参照元である『キリスト教大事典』でも項目名は「復活日」となっていて、その説明冒頭において「祝日」としており「祭」とは書かれて居ない。
- ^ 春分の日の扱いが異なること、正教会では復活祭をユダヤ教の過越とともに祝わないという古い規定をそのまま守っていること、これら二つの違いが東西教会間にある。
- ^ 古典ギリシャ語再建音:パスコー、現代ギリシャ語転写:パスホ
- ^ 卵が配られる習慣は正教、カトリック、聖公会、プロテスタントに広くみられるが、正教会では「イースター・エッグ」とはあまり呼ばれない(先述の通り、復活祭が「イースター」とはあまり呼ばれないため)。ただし日本正教会公式サイトには記述が無いものの([1])、地方教会のウェブサイトでの用例はある([2])。
- ^ ちなみに日本のイースターでも一般的に採用されている西方教会の日付の場合、日本の会計年度の始まりである4月1日を挟んで毎年変動するため、復活祭が1回ある年度だけでなく、2回ある年度(2015年度)、1回もない年度(2016年度)が混在する(上表参照)。
出典
- ^ a b 正教会の出典:正教会の復活祭 2003年復活祭フォトレポート(名古屋ハリストス正教会)[リンク切れ]
- ^ a b カトリック教会の出典:四旬節 断食(大斎・小斎) カーニバル(カトリック中央協議会)
- ^ a b 聖公会の出典:復活祭を迎える(日本聖公会 東京教区 主教 植田仁太郎)
- ^ a b c d プロテスタントの出典:『キリスト教大事典』910頁、教文館、昭和48年9月30日 改訂新版第二版
- ^ a b Пасха + Словарь церковных терминов + Православный Церковный календарь(正教会:教会用語辞典)(ロシア語)
- ^ a b c d CATHOLIC ENCYCLOPEDIA: Easter(カトリック百科事典)(英語)
- ^ 正教会用語集 Archived 2011年4月30日, at the Wayback Machine. (大阪ハリストス正教会 Archived 2010年7月27日, at the Wayback Machine.)
- ^ a b c 典礼解説 復活節(カトリック中央協議会)
- ^ 日本聖公会 日本聖公会とは
- ^ News & Topics(日本聖書神学校)
- ^ 教団活動(日本アッセンブリーズ・オブ・ゴッド教団)
- ^ a b 日本キリスト改革派国立聖書教会
- ^ 3月29日、4月1日の欧州金融市場は休場-復活祭前後の祝日 - Bloomberg 2013年8月1日閲覧
- ^ 復活祭の日付の問題(名古屋ハリストス正教会)
- ^ Easter Dating Method - Calculate the Date of Easter Sunday
- ^ Date of Pascha in Coming Years | Antiochian Orthodox Christian Archdiocese
- ^ a b c d Easter(The 1911 Classic Encyclopedia)
- ^ V. Rev. Fr. Anastasios Gounaris: Pascha: The New Passover
- ^ ニコライ堂での復活大祭(パスハ)の予告
- ^ ホプコ、小野 p39
- ^ 横浜・カトリック金沢教会-カレンダー
- ^ a b c d 教会のこよみ Catholic Calendar _ Senri New Town Catholic Church
- ^ a b 大斎節を迎えるにあたって | 日本聖公会北海道教区 札幌聖ミカエル教会
- ^ a b c 東京ルーテルセンター教会 教会暦
- ^ 「あなたがたはわたしを何者だと言うのか」ウイリアム・モーア2010.2.21 - 西谷伝道所(日本キリスト改革派伊丹教会西谷伝道所)
- ^ 町田福音キリスト教会(日本フリーメソジスト教団) » 2011年3月20日
- ^ 教会用語ミニ辞典(日本基督教団 尾陽教会)
- ^ a b c 宗教法人 日本バプテスト連盟 瑞穂キリスト教会
- ^ み言葉に立ちどまる (名古屋ハリストス正教会)
- ^ a b ホプコ、小野 p41
- ^ ホプコ、小野 p47
- ^ ホプコ、小野 p49 - p57
- ^ ギリシャ正教の奉神礼について(中西裕一)
- ^ シリア正教の典礼
- ^ カトリック尼崎教会
- ^ 正教会の復活祭 2003年復活祭フォトレポート(名古屋ハリストス正教会)
- ^ a b c 典礼解説 過越の聖なる三日間(カトリック中央協議会)
- ^ 教皇ベネディクト十六世の2011年4月24日の復活祭メッセージ(ローマと全世界へ)
- ^ 2013年 復活日礼拝・聖洗式・祝会 | 神戸昇天教会 | 日本聖公会神戸昇天教会のブログページ
- ^ 淡路福音ルーテル教会: 3月31日イースター礼拝と洗礼式がありました
- ^ イースター礼拝にいらっしゃいませ - 日本キリスト改革派 勝田台教会
- ^ イースター礼拝 :: 川崎バプテスト教会
- ^ 改訂増補日本聖公会祈祷書解説編集委員会『改訂増補 日本聖公会祈祷書解説』5頁、日本聖公会管区事務所(1994年2月)
- ^ 東京ルーテルセンター教会 教会暦
- ^ 正教会にわくわくの好奇心を抱いておられる方に(名古屋ハリストス正教会)
- ^ a b 祈り-祭と斎:日本正教会 The Orthodox Church in Japan
- ^ Fasting and Great Lent | Antiochian Orthodox Christian Archdiocese
- ^ a b ホプコ、小野 p60
- ^ OCA - Liturgics - Fasting & Fast-Free Seasons of the Church
- ^ Mimi Sheraton. The German Cookbook. Random House, 1966年。452-453頁
- ^ Nika Standen Hazelton. The Swiss Cookbook. Hippocrene, 1998年。164頁
- ^ Carol Field. Celebrating Italy. Harper Perennial, 1997年。410頁
- ^ Natur och Kultur. The Best of Swedish Cooking. 1995年。159頁
- ^ Beatrice A. Ojakangas. The Finnish Cookbook. Crown Publishers, 1989年。230頁
- ^ Nanna Rögnvaldardóttir. Icelandic Food and Cookery, Hippocrene. 2002年。12頁
- ^ Robert & Maria Strybel. Polish Heritage Cookery. Hippocrene, 2005年。
- ^ Marielle Cormier-Boudreau & Melvin Gallant. A Taste of Acadie. Goose Lane, 1991年。16頁
- ^ a b Easter egg - definition of Easter egg by the Free Online Dictionary, Thesaurus and Encyclopedia.
- ^ a b かたち-その他の慣習:日本正教会 The Orthodox Church in Japan
- ^ a b c CATHOLIC ENCYCLOPEDIA: Easter
- ^ a b 函館ハリストス正教会の「ウクライナたまご」 - あなたのテーマでディープな函館 - 函館市公式観光情報サイトはこぶら
- ^ 函館ハリストス正教会 イースターエッグ(紅卵)染め
- ^ ЗАЯЦ КАК ПЕРСОНАЖ И АТРИБУТ ПАСХИ У ИНОСЛАВНЫХ
- ^ a b The Origin and History of the Easter Bunny - Yahoo Voices - voices.yahoo.com
- ^ 北國新聞朝刊 加賀百万石異聞・高山右近(4)2002/02/05付(2020年5月7日閲覧)
- ^ 「ディズニー・イースター」の功罪を考える(舞浜新聞 2015年6月22日)
- ^ “史上空前の春、はじまる。” 息をのむ興奮、瞬きができないほどの感動 !! 大人も子どもも夢中になる、パーク史上最大のスケールで繰り広げる春イベント!(株式会社ユー・エス・ジェイ:ニュース 2012年12月18日)
- ^ 盛り上がりを見せ始めたイースター商戦 購買意欲を刺激するかわいいタマゴグッズやイベントが目白押し(マイナビニュース 2012年3月19日)
- ^ a b 「イースター商戦」定着狙う 百貨店や菓子業界(SankeiBiz 2015年4月1日)/東京で拡大する「イースター商戦」(産経ニュース 2015年4月4日)
- ^ イースター、春祝う TDLでイベント・百貨店で催事(日本経済新聞 2015年3月31日)
- ^ イースター商戦白熱 ウサギや卵ちなみ菓子やパン次々発売(神戸新聞NEXT 2015年4月4日)
- ^ 伝統的な行事である正月、新たに定着するハロウィーンなどイベントにおける加工食品市場を調査(2014年見込)(株式会社富士経済 2014年10月16日)
- ^ “【流通】「イースター」―日本で定着しない理由”. ネットアイビーニュース. (2013年3月25日) 2020年2月26日閲覧。
- 1 復活祭とは
- 2 復活祭の概要
- 3 復活祭に連動する教会暦・礼拝・典礼・奉神礼
- 4 復活祭に関する習俗
- 5 日本とイースター
- 6 脚注
- 復活祭のページへのリンク