再構 (言語学)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/31 08:31 UTC 版)
言語学的再構(英: Linguistic reconstruction)は再建とも言い、文献に残っていない時代の言語や祖語を理論的に推定し、再構築(復元)することを指す。以下の二手法が存在する。
- 子孫言語の間の比較によって行われる再構を比較再構(英語: Comparative reconstruction)、あるいは外的再構(英: External reconstruction)と言う[2]。この手法によって再構された言語はしばしば祖語と呼ばれる。印欧祖語やドラヴィダ祖語などが一例である。
再構形にはアステリスク ⟨*⟩ を付ける。
再構はあくまで推定に過ぎない。例えばロマンス語の祖語はラテン語であるが、現代のロマンス語から祖語(俗ラテン語)を再建しても、実際のラテン語のごく一部しか明らかにできない。
手法
第一に、共通祖語から分岐したと推測される諸語はグループ化される際に一定の基準を満たす必要がある。この過程をサブグループ化と呼ぶ。このグループ化は言語学のみに基づくため、古文書や他の歴史的文献の解析が必要となる。しかしながら、言語学上の分類が常に文化・民族のそれと一致すると仮定してはいけない。基準のひとつとして、同グループの言語は通常共通する変化を示しているというものがある。すなわち、その言語群が歴史を通じて共通の変化を示していなければならない。さらに、同グループの言語には通常共通の保持(retention)が存在する。第一の基準と一見似ているが、これは変化ではなくむしろ不変の性質である[3]。
他の学問と同様に、言語学は単純さを追求するため、再構における重要原理は、使用可能なデータから最低限の音素のみを構築するというものである。この原理は音素の音質を選択する際にも反映され、(データに対する)変化が最も少ないものが好まれる[4]。
比較再構は多数派原理(Majority Principle)と最も自然な発展原理(Most Natural Development Principle)というふたつのやや一般的な原理を用いる[5]。多数派原理はもし同根語に一定のパターン(例えば語中特定の位置での文字の繰り返し)が見られた場合、そのようなパターンは祖語から保持されたものだとする原理である。最も自然な発展原理は、通時的にみた時、言語変化には他のものよりもよく見られる変化があるというものである。以下の4つの重要な傾向がある。
音再構
多数派原理は予測される語源、つまり同根語の語源となった祖語の最も可能性の高い発音を推測する際に適用される。最も自然な発展原理は、言語変化の一般的な傾向を示しており、そのような指標を探すことができる。一例として、スペイン語の cantar とフランス語の chanter を比較した場合、閉鎖音は通常摩擦音に変化することから、閉鎖音 [k] のある同根語のほうが摩擦音 [ʃ] を有する同根語より本来の発音に近いと考えられる[5]。
関連項目
脚注
- ^ Jøhndal 2016, p. 6.
- ^ Jøhndal 2016, p. 1.
- ^ Fox, Anthony (1995) (英語). Linguistic Reconstruction: An Introduction to Theory and Method. Oxford University Press. ISBN 9780198700012
- ^ Smith, John Charles; Bentley, Delia; Hogg, Richard M.; van Bergen, Linda (1998–2000). Historical linguistics 1995: selected papers from the 12th International Conference on Historical Linguistics, Manchester, August 1995. Amsterdam: John Benjamins. ISBN 9027236666. OCLC 746925995
- ^ a b Yule, George (2 January 2020). The Study of Language 2019. New York, NY: Cambridge University Printing House. ISBN 9781108499453
参考文献
- Jøhndal, Marius (2016年1月23日). “Li11 Historical Linguistics: The comparative method”. Linguistics at Cambridge. 2020年3月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年3月28日閲覧。
- Anthony Fox, Linguistic Reconstruction: An Introduction to Theory and Method (Oxford University Press, 1995) ISBN 0-19-870001-6.
- George Yule, The Study of Language (7th Ed.) (Cambridge University Press, 2019) ISBN 978-1-108-73070-9.
- Henry M. Hoenigswald, Language Change and Linguistic Reconstruction (University of Chicago Press, 1960) ISBN 0-226-34741-9.
「再構 (言語学)」の例文・使い方・用例・文例
- 我々は方針を再構築する必要がある。
- それはその国の秩序の再構成のために欠かせないステップである。
- かつて世界最大のフィルム製造業者だったイーストマンコダック社は、デジタルカメラ台頭に対処するべく、既存のバリューチェーンの再構築を抜本的に強いられたことだろう。
- 私たちは検討したことの一部を再構成の際に用いる。
- いままでとは違う方法で再構築する必要を感じている。
- 日本では今、ブランドを再構築する時期に来ている。
- 私達はその安全システムを再構築する必要があります。
- あなたはそれをいつ再構築しますか。
- 夫の会社人間からの脱却を始め、新しい夫婦関係を再構築し、ゆとりある家庭生活を形成することが理想であろう。
- 抜本的に事業の再構築を行ったおかげで、当社の黒字は3倍に膨らんだ。
- 抜本的な再構築[リストラ].
- われわれの仕事は, これらの僅かな証拠物件を基に, あの犯罪がどのように行なわれたかを再構成することだ.
- 情報を覚えるようにそれを再コード化し、再構築する
- 再構築されたフェミニスト
- 事故の後、彼は人生を再構築しなければならなかった
- 彼の心は全世界を再構築する
- 心からの関係を再構築する
- 比較データの量的分析に基づく生物学的分類の体系で、(推定される)系統発生と生命体のグループの進化歴との関連をまとめる樹系図の再構築に使われる
- バビロニアのバビロンの捕囚の後、エルサレムでユダヤ人の法律と崇拝を再構成する紀元前5世紀のラビの努力について書かれている旧約聖書本
- 現在は消滅したインド=ヨーロッパ語族の中の言語で、碑文から知られており、インド=ヨーロッパ祖語の再構築に重要
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