ステップ5:再構体系の類型的な検証
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/12 09:48 UTC 版)
「比較方法 (言語学)」の記事における「ステップ5:再構体系の類型的な検証」の解説
最後のステップとして、再構された祖音素が既知の類型的制約に適合するかをチェックする。例えば、仮説的な子音体系 p t k b n ŋ l は、有声破裂音が *bしか存在しないにもかかわらず、歯茎鼻音と軟口蓋鼻音 *n and *ŋ が存在し、両唇鼻音との対応はない。しかし、言語は通常は、音素体系において"対称性"を維持する[要出典]。この場合、前に *b と再構したものが、実際には *m であるか、 *n および *ŋ である可能性を調査する必要があるかもしれない。 ただ、この"対称的"な体系でさえ、類型論的に疑わしい場合がある。たとえば、次の表は従来のインド・ヨーロッパ祖語の破裂音である。 両唇音 歯茎音 軟口蓋音 両唇化音 軟口蓋化音 無声音 p t k kʷ kʲ 有声音 (b) d g ɡʷ ɡʲ 有声 有気音 bʱ dʱ ɡʱ ɡʷʱ ɡʲʱ 以前再構されていた無声有気音系列は、証拠が不十分であるという理由で削除された。20世紀半ば以降、多くの言語学者は、この音韻論は信じがたいとし、対応する無声有気音系列なしに、有声有気音(息もれ声)系列を持つ体系は、非常にあり得にくいと主張してきた。 タマズ・V・ゲンクラリゼー(英語版)とヴャチェスラフ・イヴァーノフは、この問題を解決する可能性がある方法を提示し、伝統的に有声音として再構されてきたた系列は、声門音(入破音 (ɓ, ɗ, ɠ) または放出音 (pʼ, tʼ, kʼ))として再構されるべきと主張した。したがって、無声音と有声有気音の系列は、無声有気音と有声有気音の系列に置き換えられた。言語類型論を言語の再構に適用したその例は、グロッタリック理論(英語版)として知られるようになった。(この理論には多くの支持者がいるが、一般的には受け入れられていないとされる。) 原音の再構は、文法的な形態素(造語接辞と語尾変化)、曲用、活用などパターンなどの再構に、論理的に先行するものである。 記録が無い祖語の完全な再構は、終わりの無い道のりである。 表 話 編 歴 歴史言語学トピック共時態と通時態 言語史 言語消滅 遺伝的関係 系統分類比較言語学 祖語 語族(語族の一覧) 言語系統論 言語年代学 言語変化音変化 言語交替 言語接触 基層言語 波紋説 系統樹説 方法比較再構 内的再構 多数量比較 人類学との関係父系言語仮説 Category:歴史言語学
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