国際単位系 国際単位系の定義

国際単位系

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/08 09:51 UTC 版)

国際単位系の定義

2019年に、国際単位系の定義は根本的に改められた。すなわち2006年公式文書までは、7つの基本単位をベースにして組立単位接頭語からなる単位の組み合わせ(単位系)を国際単位系と定義していた。しかし2019年の第9版の公式文書は以下の定義のように、「7つの定義定数の数値を固定する」ことによって逆にSIを定義することとしたのである[14]

国際単位系(SI)は である単位系である[15]

ここで、ヘルツ記号: Hz)、ジュール(記号: J)、クーロン(記号: C)、ルーメン(記号: lm)、ワット(記号: W)は、それぞれ(記号: s)、メートル(記号: m)、キログラム(記号: kg)、アンペア(記号: A)、ケルビン(記号: K)、モル(記号: mol)、カンデラ(記号: cd)と、 Hz = s−1、J = kg m2 s−2、C = A s、lm = cd m2 m−2 = cd sr、W = kg m2 s−3 で関係付けられている。 7つの定義定数の数値には不確かさはない。

この定義ではそれぞれの定数の値を対応するSI単位で表現したときの厳密な数値を定めている。 定数の値は数値と単位の積であるため、厳密な数値を固定することによって単位を定めることができる。 7つの定数はすべてのSI単位がこれらの積と比によって表すことができるように選ばれている。

表1 SIの七つの定義定数とそれらによって定義される七つの単位[15]
定義定数 記号 数値 単位
セシウムの超微細遷移周波数 ΔνCs 9192631770 Hz
真空中の光の速さ c 299792458 m/s
プランク定数 h 6.62607015×10−34 J s
電気素量 e 1.602176634×10−19 C
ボルツマン定数 k 1.380649×10−23 J/K
アボガドロ定数 NA 6.02214076×1023 mol−1
視感効果度 Kcd 683 lm/W

注釈

  1. ^ 国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission、IEC)の前身である。
  2. ^ 2019年の改定は、2018年11月に開催された国際度量衡総会で合意に達し、2019年5月20日に発効した。この日が選ばれた理由は、5月20日が1875年にメートル条約が締結された日で「世界計量記念日」となっているためである。
  3. ^ 組み立て単位の定義において基本単位を記載する順序は、SI文書第8版(2006年)と同第9版(2019年)とで異なる。この意図は、対応する物理量の表式によるもので、物理学を基礎としたものである。ただし、一部の組み立て単位についてこの順序は絶対のものではない。
  4. ^ なお、この改訂案が議決された日は2018年11月16日である。
  5. ^ より正確な定義文はSI基本単位を参照。
  6. ^ 国際単位系国際文書における英語の綴りである。meterではない。
  7. ^ 独立した存在は、7つの単位そのものではなく、それらのもととなる7つの定義値(物理定数あるいは物質固有の特性値)である。
  8. ^ units of the SIとも。
  9. ^ 倍量および分量接頭語
  10. ^ ただし例外としてキログラムは、一貫性のある SI単位の中で唯一つ、歴史的経緯により、その名称と記号に接頭語が含まれている。
  11. ^ BIPMによる原表では当初はCODATA2014の数値が掲げられていたが、その後、CODATA2018の数値に差し替えられた。
  12. ^ 国際単位系国際文書における英語の綴りである。meterではない。
  13. ^ は計量法上は計量単位ではなく、の単位と位置づけられている。
  14. ^ 国際標準化機構(ISO)による ISO 1000 を翻訳した物。ISO 1000 は2009年に ISO 80000-1 に置き換えられ、JIS Z 8203 も2014年に ISO 80000-1 を翻訳した JIS Z 8000-1 に置き換えられた。

出典

  1. ^ 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版, pp. 122, 129–134.
  2. ^ 「図解入門 よくわかる最新単位の基本と仕組み」p67 伊藤幸夫・寒川陽美著 秀和システム 2004年8月10日第1版第1刷
  3. ^ a b 「図解入門 よくわかる最新単位の基本と仕組み」p.23 伊藤幸夫・寒川陽美著 秀和システム 2004年8月10日第1版第1刷
  4. ^ 佐藤文隆、北野正雄 『新SI単位と電磁気学』、pp.2-3、岩波書店、2018年6月19日、ISBN 978-4-00-061261-6
  5. ^ a b 佐藤文隆・北野正雄、「新SI単位と電磁気学」、p.148、岩波書店、2018-06-19、ISBN 978-4-00-061261-6
  6. ^ 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版, p. 91, 第9版への緒言.
  7. ^ 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版, p. 122.
  8. ^ 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版, p. 173.
  9. ^ 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版, p. 175.
  10. ^ SI Brochure: The International System of Units (SI)
  11. ^ 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版, p. 93, 本文に関する注釈.
  12. ^ 国際単位系 (SI) は世界共通のルールです SIパンフレット、産業技術総合研究所 計量標準総合センター 計量標準普及センター 計量標準調査室、2023年3月、最終の第8ページ下段
  13. ^ Previous editions of the SI Brochure SI Brochure: The International System of Units (SI), BIPM
  14. ^ SI文書第9版(2019)日本語版及び関連資料”. 国際単位系(SI)第9 版(2019)日本語版. 国立研究開発法人産業技術総合研究所. p. 98. 2023年8月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年10月4日閲覧。
  15. ^ a b The InternationalSystem of Units (SI) 9th ed. Text in English 2.2 Definition of the SI, p.127
  16. ^ 国際単位系(SI)第9版(2019)要約 日本語版 [リンク切れ]、計量標準総合センター、産総研、経済産業省。表1 SI の七つの基本単位
  17. ^ 『国際単位系(SI)第9 版(2019)日本語版』国立研究開発法人産業技術総合研究所 計量標準総合センター、2020年3月。 
  18. ^ 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版, pp. 99–103.
  19. ^ 国際単位系(SI)国際文書第8版(2006) p.15
  20. ^ 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版, p. 104, 表3.
  21. ^ a b 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版, p. 105.
  22. ^ 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版, p. 148.
  23. ^ 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版, p. 106しかし、接頭語が SI単位と共に使われる場合、接頭語によって、1 以外の係数が導入されるため、結果として生ずる単位は一貫性を持たないものとなる。
  24. ^ 国際単位系(SI)国際文書第8版(2006) p.16下欄訳注、* 訳注:第2章で述べる SI基本単位(表1),そのべき乗の積からなる SI組立単位(表2),固有の名称と記号を与えられた SI組立単位(表3),及び SI基本単位とSI組立単位のべき乗の積からなる SI組立単位(表4)のことを本文書では「一貫性のあるSI単位」と呼ぶ.第3章で述べる SI接頭語(表5)を付した単位は,SI単位ではあるが一貫性のある単位ではない.
  25. ^ 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版, p. 114.
  26. ^ The International System of Units(SI) 9th edition 2019 Bureau International des Poids et Mesures, 2019-05-20, pp.145-146
  27. ^ unified atomic mass unit The NIST Reference on Constants, Units, and Uncertainty. US National Institute of Standards and Technology. 2019-05-20. 2018 CODATA recommended values
  28. ^ The International System of Units (SI) 9th ed. Text in English 5.4 Rules and style conventions for expressing values of quantities, pp.149-150
  29. ^ 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版, pp. 116–120.
  30. ^ AltCodeUnicode.com ALT Codes for CJK Squared Latin Abbreviations
  31. ^ CJK Compatibility
  32. ^ The Unicode Standard, Version 14.0 Chapter 22 Symbols p.839 p.865 p.896
  33. ^ Unicode Technical Report #25 UNICODE SUPPORT FOR MATHEMATICS p.11
  34. ^ 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版, p. 118.
  35. ^ SI国際文書(仏語、英語) (仏語)p.38 5.4.3 Écriture de la valeur d’une grandeur, (英語)p.149 5.4.3 Formatting the value of a quantity
  36. ^ 理科年表2022、p.372、ISBN 978-4-621-30649-9、2021-11-30
  37. ^ 単位や学名等の記載方法について JAB NL512:2015 p.3/9、公益財団法人 日本適合性認定協会、2015-10-01(第1版)
  38. ^ 物理量・数値・単位と分率の表記についての提言 岩本振武、ぶんせきの泉、p.342、ぶんせき、2017年8月
  39. ^ 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版, p. 119.
  40. ^ 「図解入門 よくわかる最新単位の基本と仕組み」p24 伊藤幸夫・寒川陽美著 秀和システム 2004年8月10日第1版第1刷






国際単位系と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「国際単位系」の関連用語

国際単位系のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



国際単位系のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの国際単位系 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS