SI基本単位
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/19 04:42 UTC 版)
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SI基本単位(エスアイきほんたんい、フランス語: fr:unités de base du Système international、英語: base units of the SI 又はSI base units)とは、国際単位系(SI)において、基本単位として位置付けられている7つのSI単位である。これらは国際量体系(ISQ)において基本量として位置付けられている7つの物理量に対する単位である。
概要

SI基本単位は、SIの前身であるメートル法において、物理量に対して複数ある単位・度量衡を統一することを目的として選ばれた。すなわち、一つの物理量を表現する単位は一つとすること[注釈 1]を目的とする。SI基本単位は7つ存在し、時間と長さ、質量、電流、温度、物質量、光度の各物理量について、それぞれ秒とメートル、キログラム、アンペア、ケルビン、モル、カンデラが定められている。
7つのSI基本単位はSIの主骨格を成している。また、全ての物理量は、物理法則を通じて、基本量の組み合わせにより表現することができる[注釈 2][注釈 3]。2019年の改訂施行によりSI基本単位は7つの定義値(固定された曖昧さのない物理定数および物質固有の特性値)をもとに定義されるようになった。現在もSI基本単位の重要性に変わりはないが、この結果として、全ての一貫性のあるSI単位が7つの定義値をもとに直接に定義・構築できるようになったため、SI基本単位とそれ以外のSI単位(SI組立単位)との間に原理上の区別はない[1]。
一覧
7つのSI基本単位を以下の表に記載する[2][注釈 4]。これらの単位は、7個の定義定数(defining constants)[3]をもとに定義されている。これら7つの定数は数値が固定された一切の曖昧さをもたない値であり、それぞれ物理定数や物質に固有の物性値を指すものである。この値を固定値と見做すことで、7つのSI基本単位はそれぞれ規定されている。
物理量 | 単位 | 現在の定義[4][5] | かつての定義(例) | |
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時間 | 秒 | s | 秒(記号はs)は、時間のSI単位であり、セシウム周波数ΔνCs、すなわち、セシウム133 原子の摂動を受けない基底状態の超微細構造遷移周波数を単位Hz(s−1 に等しい)で表したときに、その数値を9192631770と定めることによって定義される。 | 平均太陽日の1/86400 |
長さ | メートル | m | メートル(記号はm)は長さのSI単位であり、真空中の光の速さcを単位m s−1 で表したときに、その数値を299792458と定めることによって定義される。ここで、秒はセシウム周波数ΔνCsによって定義される。 | 地球のパリを通る北極点から赤道までの長さの1000万分の1 |
質量 | キログラム | kg | キログラム(記号はkg)は質量のSI単位であり、プランク定数hを単位J s(kg m2 s−1 に等しい)で表したときに、その数値を6.62607015×10−34と定めることによって定義される。ここで、メートルおよび秒はc およびΔνCs に関連して定義される。 | 最大密度温度での1 Lの水の質量 |
電流 | アンペア | A | アンペア(記号はA)は、電流のSI単位であり、電気素量eを単位C(A s に等しい)で表したときに、その数値を1.602176634×10−19 と定めることによって定義される。ここで、秒はΔνCsによって定義される。 | 真空中に1メートルの間隔で同じ大きさの電流が流れているとき、両者の間に働く力が1メートルにつき2×10−7ニュートンであるときの電流 |
熱力学温度 | ケルビン | K | ケルビン(記号はK)は、熱力学温度のSI単位であり、ボルツマン定数kを単位J K−1(kg m2 s−2 K−1 に等しい)で表したときに、その数値を1.380649×10−23と定めることによって定義される。ここで、キログラム、メートルおよび秒はh、c およびΔνCsに関連して定義される。 | 水の標準大気圧下での融点と沸点の温度差の100分の1 |
物質量 | モル | mol | モル(記号はmol)は、物質量のSI 単位であり、1モルには、厳密に6.02214076×1023の要素粒子が含まれる。この数は、アボガドロ定数NAを単位mol−1 で表したときの数値であり、アボガドロ数と呼ばれる。系の物質量(記号はn)は、特定された要素粒子の数の尺度である。要素粒子は、原子、分子、イオン、電子、その他の粒子、あるいは、粒子の集合体のいずれであってもよい。 | 1 g/molの原子量または分子量 |
光度 | カンデラ | cd | カンデラ(記号はcd)は、所定の方向における光度のSI単位であり、周波数540×1012 Hzの単色放射の視感効果度Kcd を単位lm W−1(cd sr W−1あるいはcd sr kg−1 m−2 s3に等しい)で表したときに、その数値を683と定めることによって定義される。ここで、キログラム、メートルおよび秒はh、c およびΔνCsに関連して定義される。 | 燭(ろうそく1本の光度) |
表の通り、基本単位の定義の記載順序は、2019年の再定義を経て「時間、長さ、質量、電流、温度、物質量、光度」の順となっている[6]。参考までに、その前の定義の際は「長さ、質量、時間…(以下同じ)」の順序であった[7]。
2019年の再定義
上記のすべてのSI基本単位は、2018年11月16日の第26回国際度量衡総会の決議・採択の結果、新しい定義に置き換えられ、2019年5月20日より新定義は施行、運用されている。この定義の変更では特に、キログラムとアンペア、ケルビン、モルには大きな修正が加えられた[8]。
計量法の定義の変更
第26回国際度量衡総会の決議に基づき、日本の計量単位令におけるSI基本単位の定義が改正された。この改正では、必要最小限の簡潔な定義となっている[9]。なお、秒、メートル、カンデラの定義文は改正されていない。
脚注
注釈
出典
- ^ “SI文書第9版(2019)日本語版及び関連資料 「国際単位系(SI)基本単位の定義改定と計量標準」”. 国立研究開発法人産業技術総合研究所 計量標準総合センター. p. 98. 2023年8月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年10月4日閲覧。
- ^ 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版 p.98、産業技術総合研究所、計量標準総合センター、2020年4月
- ^ 『国際単位系(SI)第9 版(2019)日本語版』国立研究開発法人産業技術総合研究所 計量標準総合センター、2020年3月。
- ^ "Table 1: The seven base units of the SI" (PDF). A concise summary of the International System of Units, SI (英語). p. 2. 2021年6月21日閲覧。
- ^ 『国際単位系(SI)第9 版(2019)日本語版』国立研究開発法人産業技術総合研究所 計量標準総合センター、2020年3月。
- ^ 表1 SIの七つの基本単位 国際単位系(SI)第9版(2019)要約 日本語版、計量標準総合センター、産総研、経済産業省
- ^ 『Le Système international d’unités (SI)』(8版)国際度量衡局、2006年。
- ^ A concise summary of the International System of Units, SI Table 1 The seven base units of the SI
- ^ 計量単位令の一部を改正する政令案新旧対照条文 経産省 産業技術環境局 計量行政室、2019年5月14日
参考文献
- (準拠すべき基本文献)BIPM 著、産業技術総合研究所 計量標準総合センター 訳『国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版』(pdf)産業技術総合研究所 計量標準総合センター、2020年3月 。 【正誤表】 2022年7月15日 更新『国際単位系(SI)第9版(2019)正誤表』(pdf)産業技術総合研究所 計量標準総合センター、2022年7月15日 。
- 臼田 孝、”新しい1キログラムの測り方 - 科学が進めば単位が変わる”、ブルーバックスB-2056、講談社、2018年4月20日第1刷、ISBN 978-4-06-502056-2
- 安田 正美、”単位は進化する - 究極の精度をめざして”、DOJIN選書 078、化学同人、2018年8月20日第1版第1刷、ISBN 978-4-7598-1678-5
SI基本単位
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/31 04:54 UTC 版)
詳細は「SI基本単位の再定義 (2019年)」を参照 7つの定義定数の数値の固定によるSIの定義では、SI基本単位の定義は定義定数を用いて導き出される。 SI基本単位は秒 (s)、メートル (m)、キログラム (kg)、アンペア (A)、ケルビン (K)、モル (mol)、カンデラ (cd) であり、対応する基本量はそれぞれ時間、長さ、質量、電流、熱力学温度、物質量、光度である。 この7つの基本単位のうち、キログラム (kg)、アンペア (A)、ケルビン (K)、モル (mol) の4つについては2018年11月16日の国際度量衡総会(CGPM)においてその定義が根本的に改定された。残りの秒 (s)、メートル (m)、カンデラ (cd) については定義は本質的にはこれまでと同じであるが、表現が改められた。基本単位の新しい定義は、2019年5月20日に発効された。 なお、基本単位の列挙順序は2019年に、以下の表のとおり、時間・長さ・質量・・・となった。これは時間の基本単位である秒の定義が他のどの基本単位にも依存しておらず、最初に掲げられるべき物理量であるからである。それ以前には、18世紀以来の伝統的な列挙順序である、長さ・質量・時間・・・の順序であった。 SI基本単位の量、名称、記号とその定義量基本単位定義名称記号時間 秒(second) s セシウム周波数 ∆νCs、すなわち、セシウム 133 原子の摂動を受けない基底状態の超微細構造遷移周波数を単位 Hz(s−1 に等しい)で表したときに、その数値を 9192631770 と定めることによって定義される。 長さ メートル(metre) m 真空中の光の速さ c を単位 m s−1 で表したときに、その数値を 299792458 と定めることによって定義される。 質量 キログラム(kilogram) kg プランク定数 h を単位 J s(kg m2 s−1 に等しい)で表したときに、その数値を 6.62607015×10−34 と定めることによって定義される。 電流 アンペア(ampere) A 電気素量 e を単位 C(A s に等しい)で表したときに、その数値を 1.602176634×10−19 と定めることによって定義される。 熱力学温度 ケルビン(kelvin) K ボルツマン定数 k を単位 J K−1(kg m2 s−2 K−1 に等しい)で表したときに、その数値を 1.380649×10−23 と定めることによって定義される。 物質量 モル(mole) mol 1 モルには、厳密に 6.02214076×1023 の要素粒子が含まれる。この数は、アボガドロ定数 NA を単位 mol−1 で表したときの数値であり、アボガドロ数と呼ばれる。系の物質量(記号は n)は、特定された要素粒子の数の尺度である。要素粒子は、原子、分子、イオン、電子、その他の粒子、あるいは、粒子の集合体のいずれであってもよい。 光度 カンデラ(Candela) cd 周波数 540×1012 Hz の単色放射の視感効果度 Kcd を単位 lm W−1(cd sr W−1 あるいは cd sr kg−1 m−2 s3 に等しい)で表したときに、その数値を 683 と定めることによって定義される。 上の表の中には、単位の定義の中に別の単位を用いているものがある。例えば、メートルの定義には秒の定義が前提とされている。単位の定義に求められるのは何より実用性、すなわち現在の社会生活に必要かつ十分な精度を持ち、定義値が容易に実現できることである。このため、定義の独立性は意味を持たない。
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