イギリス海軍 組織

イギリス海軍

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/01 22:36 UTC 版)

組織

機雷掃海のためペルシャ湾へ展開する艦隊

イギリス海軍の儀礼上の長はロード・ハイ・アドミラルであり、2011年から2021年まで、エディンバラ公がこの地位にあり、それ以降は空席となっている。この地位は1964年から2011年まではエリザベス女王が就いていた。イギリス海軍の事実上の長は、英国国防会議のメンバーであるファーストシーロード(海軍参謀総長)。国防会議はアドミラルティ・ボード(海軍委員会)に海軍の管理を委託している。アドミラルティ・ボードは艦隊を管理するネイビー・ボード(海軍会議)を指揮する。これらはロンドンホワイトホールにある国防省舎 (MoD Main Building) に所在している。

指揮系統

2023年1月現在

  • ロード・ハイ・アドミラル:該当者なし
  • ファースト・シー・ロード(第一海軍卿・海軍参謀総長)サー・ベン・キー大将英語版
  • セカンド・シーロード(第二海軍卿・海軍参謀次長)マーティン・コネル中将英語版
  • 艦隊司令官アンドリュー・バーンズ中将英語版
  • 准士官カール・スティードマン准尉英語版
人員
海軍はイギリス海軍とイギリス海兵隊から成り、2019年9月の時点で教育訓練を経た正規兵は、29,090名(定員30,600名)であった。[10]

艦隊

トラファルガー級潜水艦、タイアレス (HMS Tireless)
潜水艦
イギリス海軍はヴァンガード級戦略原子力潜水艦を運用しており、潜水艦発射弾道ミサイルトライデント2スピアフィッシュ魚雷を装備しイギリス海軍唯一の核戦力として作戦を遂行している。イギリス政府は2030年代初頭までに4隻のドレッドノート級に置き換える予定である。[11]
また攻撃型原子力潜水艦としてトラファルガー級1隻とアスチュート級5隻を運用しており、さらに2隻のアスチュート級が2026年までに就役し、トラファルガー級は退役する予定である。
クイーン・エリザベス級空母クイーン・エリザベス (HMS Queen Elizabeth, R08)
航空母艦
現在クイーン・エリザベス級2隻が新世代の航空母艦として就役している。計画の遅延と国防予算の縮減により、1番艦の「クイーン・エリザベス」は、売却や2番艦就役後予備役とすることも一時期検討されていた。現在は2番艦の「プリンス・オブ・ウェールズ」とあわせてF-35B ライトニング IIが運用される予定である。
インヴィンシブル級を基に設計されたヘリ空母の「オーシャン」は航空母艦を補完していたが2018年に退役した。クイーン・エリザベス級が同艦の任務も後継する。
海軍補助艦隊に導入された4隻のベイ級ドック型補助揚陸艦と2006年と2007年に導入された2隻のアルビオン級ドック型揚陸プラットホームは海軍の水陸両用作戦能力を強化した。
23型フリゲート、モンマス (HMS Monmouth, F-235)
水上戦闘艦
2023年1月現在、45型駆逐艦6隻と、23型フリゲート12隻を運用している。これらの主な役割は艦隊の護衛の他、麻薬対策、海賊対策、人道支援など、世界規模の海軍展開における任務が含まれる。 [12]45型駆逐艦は、主に対空戦用に設計されており、高性能なSAMPSONレーダーアスター 15アスター 30ミサイルを用いた統合対空システムPAAMSを備えている。[13]
23型フリゲートは延べ16隻が就役したが、2004年にコスト削減の一環として3隻の払い下げが発表され、チリ海軍に売却された。[14]2010年のThe Strategic Defence and Security Review(SDSR)で、残る13隻の23型フリゲートの後継として26型フリゲートで置き換えることが発表された。しかし2015年のSDSRで26フリゲートは対潜型8隻に削減され、通常型として新たな設計の31型フリゲートを5隻調達することとなった。[15]
機雷戦艦艇
サンダウン級機雷掃討艇2隻とハント級掃海艇6隻を運用している。ハント級は掃海掃討という別々の役割を1つの船体にまとめたものである。必要に応じて両艦艇は哨戒艦艇の役割を担うことも可能。[16]
哨戒艦艇
リバー級哨戒艦を8隻運用している。内3隻はイギリス沿岸で主権と漁業権の保護の役割を果たし、5隻はジブラルタル、カリブ海、フォークランド初頭、インド太平洋地域に長期的に前方展開されている。[17]
その他の艦
海軍はイギリス南極観測(British Antarctic Survey)へ提供する専用の艦を委任しており、南極哨戒艦としてプロテクター英語版が建造された。4隻のヘクラ級は、海洋調査艦スコットと交代した。より大型のローバックはイギリス大陸棚や浅瀬を調査する。その他の調査艦には2002年と2003年に就役した2隻のエコー級多目的艦がある。
補助艦隊
1隻の補給艦、6隻の給油艦(内2隻は予備として維持)、1隻の傷病者収容艦、3隻のドック型輸送揚陸艦で構成されている。[18]
2022年には海底ケーブルとガスパイプライン等を保護するための多用途海洋監視船を2隻調達すると発表。商用船を元に改造された1番艦は2023年1月に就役する予定。 [19]

艦隊航空隊

艦隊航空隊は、イギリス海軍の航空機作戦を担当する部門である。 現在、ヘリコプター部隊が対潜哨戒用としてAW-159ワイルドキャッツHM2、AW-101マーリンHM2、輸送用としてAW-101マーリンHC4を、固定翼機はF-35Bライトニング2を運用している[20]
イギリス軍では陸上基地で運用する対潜哨戒機は空軍の管轄になっている。

王立海兵隊

イギリス海兵隊は水陸両用作戦で活動する軽歩兵部隊であり、イギリス政府の海外における軍事・外交目標を支援するために短期間で展開することが可能。
機動性の高い歩兵旅団(第3コマンドー旅団)と、7つのコマンド部隊で編成され海軍の様々な部隊に部隊派遣が行われている。海兵隊はあらゆる環境や天候の下での活動を想定しているが、特に水陸両用戦、山岳戦、極地戦、遠征戦に専門知識と訓練を費やしている。イギリス海兵隊はアメリカ海兵隊、オランダ海兵隊と国際的なつながりをもつ。
海兵隊にはイギリス海軍の音楽部門である音楽隊が含まれる。

注釈

  1. ^ イギリス空軍が保有し、艦隊航空隊と共同運用。2021年11月に喪失した1機を含まず、アメリカを拠点とする第17飛行隊で運用される3機を含む。

出典

  1. ^ The Royal Navy”. Britannica Online. Encyclopedia Britannica. 2010年5月16日閲覧。
  2. ^ What We Do | Royal Navy” (英語). www.royalnavy.mod.uk. 2023年2月1日閲覧。
  3. ^ [1]
  4. ^ 青木栄一「英海軍艦隊勤務の変遷-帆走時代から汽走時代へ-」『世界の艦船』703号、海人社、2009年3月。
  5. ^ イギリス海軍の最新鋭空母クイーン・エリザベスがインド太平洋に…日英関係はどうなる?:東京新聞 TOKYO Web”. 東京新聞 TOKYO Web. 2023年1月31日閲覧。
  6. ^ 英、加速する「脱欧入亜」 中国・北朝鮮の脅威に対抗、EU離脱控えアジア接近” (2018年9月20日). 2018年10月11日閲覧。
  7. ^ Ingham, John (2013年3月18日). “Royal Navy is now 'too small' to protect Britain” (英語). Express.co.uk. 2023年1月31日閲覧。
  8. ^ “コラム:最強を誇った英国海軍「凋落」の教訓”. Reuters. (2016年8月22日). http://jp.reuters.com/article/column-gb-navy-warship-idJPKCN10U0OL 2016年9月1日閲覧。 
  9. ^ Use of the Union Jack at Sea”. Flags of the World. 2010年5月16日閲覧。
  10. ^ “Strength of British military falls for ninth year” (英語). BBC News. (2019年8月16日). https://www.bbc.com/news/uk-49365599 2023年2月1日閲覧。 
  11. ^ HMS Audacious” (英語). TheyWorkForYou. 2023年2月1日閲覧。
  12. ^ Wright, Mike (2017年9月9日). “Royal Navy arrives in British Virgin Islands bringing much-needed aid to the Hurricane Irma-ravaged territory” (英語). The Telegraph. ISSN 0307-1235. https://www.telegraph.co.uk/news/2017/09/09/royal-navy-arrives-british-virgin-islands-bringing-much-needed/ 2023年2月1日閲覧。 
  13. ^ Products & Services - BAE Systems”. web.archive.org (2007年10月15日). 2023年2月1日閲覧。
  14. ^ Products & Services - BAE Systems”. web.archive.org (2007年10月15日). 2023年2月1日閲覧。
  15. ^ Strategic Defence and Seculity Review 2015”. 2023年2月1日閲覧。
  16. ^ Navy News”. 2023年2月1日閲覧。
  17. ^ River-Class Offshore Patrol Vessels, UK” (英語). Naval Technology. 2023年2月1日閲覧。
  18. ^ Royal Fleet Auxiliary | Royal Navy” (英語). www.royalnavy.mod.uk. 2023年2月1日閲覧。
  19. ^ Mothership to support autonomous mine hunting systems arrives in the UK | Navy Lookout” (英語). www.navylookout.com (2023年1月30日). 2023年2月1日閲覧。
  20. ^ First UK fighter jets land onboard HMS Queen Elizabeth” (英語). GOV.UK. 2023年2月1日閲覧。
  21. ^ Trafalgar Class | Royal Navy” (英語). www.royalnavy.mod.uk. 2023年2月1日閲覧。
  22. ^ Portsmouth | Royal Navy” (英語). www.royalnavy.mod.uk. 2023年2月1日閲覧。
  23. ^ Clyde | Royal Navy” (英語). www.royalnavy.mod.uk. 2023年2月1日閲覧。
  24. ^ RNAS Yeovilton | Royal Navy” (英語). www.royalnavy.mod.uk. 2023年2月1日閲覧。
  25. ^ RNAS Culdrose | Royal Navy” (英語). www.royalnavy.mod.uk. 2023年2月1日閲覧。
  26. ^ Director of Overseas Bases” (英語). GOV.UK. 2023年2月1日閲覧。
  27. ^ Defence Secretary strengthens ties between UK and Oman” (英語). GOV.UK. 2023年2月1日閲覧。
  28. ^ Director of Overseas Bases” (英語). GOV.UK. 2023年2月1日閲覧。
  29. ^ 補助艦隊所属艦含む
  30. ^ command ships
  31. ^ command ships
  32. ^ assault ships
  33. ^ Glaze, Ben (2022年9月8日). “UK will buy a maximum of 74 Lightning stealth warplanes - 64 fewer than planned” (英語). mirror. 2023年2月1日閲覧。
  34. ^ UK armed forces equipment and formations 2020” (英語). GOV.UK. 2023年2月8日閲覧。
  35. ^ 小林 p 12
  36. ^ 小林 p 10





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