水上七郎の建設運動とは? わかりやすく解説

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水上七郎の建設運動

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/22 09:47 UTC 版)

誓の御柱」の記事における「水上七郎の建設運動」の解説

発案者水上七郎みなかみしちろう、1881年-1926年)は熊本県出身で、東京帝国大学法科大学法律学科進み筧克彦教授出会い、その思想心酔するようになった。筧教授法学神道とを組み合わせた古神道」「神ながらの道」を提唱していた。 水上は、大学卒業した1910年高等文官試験合格し警察官僚として各地キャリア積み1920年9月滋賀県警察部長に就任した。人の好き嫌い激しく、神ながらの道に没頭しているので、官界での評判芳しくなかった。まるで哲学者宗教家のようだといわれた。水上属す内務省神社非宗教論立場であったが、恩師筧克彦内面根差した精神性考えて神社宗教みなしていた。水上もまた神社参拝霊験求めていた。宗教色の薄い教育勅語でもなく、神社非宗教論煩わされる神社でもなく、漠然と天地神明に誓う形式をとる御誓文選んだのは、普遍的精神世界通じ宗教的記念碑として受け入れやすいかたちで誓の御柱建てていけば、全国普及して国民皇国精神根付かせることができると考えたからであった滋賀県警察部長に就任して3か月1921年1月10日誓の御柱建設の提唱始めた水上次のように考えた当時の社会情勢生活難過激思想国際問題など様々な矛盾噴出しているので、これらを善美化するには、建国精神かえりみ宣揚なければならず、そのためには明治天皇天地神明誓った五箇条の御誓文精神立ち返り各人使命自覚をさせる象徴が必要である。国家標語象徴用いて国民性深めている。国民感化するには深遠な理論よりも簡単な標語なのだ。根本皇国思想にも新しい衣を着せ必要がある。こう考えた水上にとって誓の御柱はその象徴であった水上建設予定地琵琶湖多景島選んだ多景島建てる理由いくつか示しているが、ほとんど後付け理由で、実際にはおそらく当時多景島官有地であったことや、島で唯一人住んでいた見塔寺常住僧侶がいなかったことなどから、この島の信仰基盤弱さ見越してここを選んだ考えられる建設にあたって出資金1人あたり1円以下に抑えることを標榜した。一握り金持ちではなく下層民を含む幅広い人々参加してもらいたいという趣旨であったパンフレット『誓之御柱』を刊行し宣伝つとめた普及団体やさか会において誓の御柱模型製作した。高さ30cmほどのサイズ模型で「床置きとして至極適当」な「祝儀贈物」として製作し模型の底に大正文化維新讃える文言記載した模型1基12円で頒布した同時に魂拭(みたまぬぐい)、別名を弥栄木綿という手拭い頒布した賛同者出資金払い込み先は一笑会の名義で、一笑会の所在地東京市筧克彦であったが、振替貯金口座大阪置かれていた。大阪には建設業者大林組営業所本店)が在った。大林組御柱建設の収纏金と関係があり、後に建設工事請け負うことになる。 建設運動批判晒された。大阪朝日新聞は、募金範囲巡査小学児童芸娼妓など零細に及び、募金方法警察権濫用し強制していると指摘した滋賀県庁内でも理解得られなかった。水上事前根回しなどしなかったので、県知事以下県庁幹部建設計画新聞読んで初め知った県庁内では「水上君の気ちがひの御柱」と噂されていると新聞書かれた。さらに滋賀県会(県議会)でも問題になった巡査商人連れてきて模型書画押し売りするという問題頻発していると指摘された。県警察部長の水上県会答弁県警幹部出席させないなど不誠実な対応をとった。水上1923年三重県内務部長転じるが、三重県でも引き続き建設運動没頭した水上建設運動勤務時間中に皇国精神作興宣伝狂奔」するものとして問題視された。水上監督官から何度も訓戒を受け、御柱建設に関する一切文筆活動差し止められた。 御柱建設に関する執筆差し止められ水上七郎は、1924年3月15日非売品冊子『国之礎』を自ら発行し、これに誓之御柱パンフレット掲載した。この『国之礎』は目次を見ると単なる詔勅集のように見え体裁で、誓之御柱については目次挙げずに、冊子後ろ方にパンフレット忍ばせたパンフレットでは御柱建設趣意について次のように説明している(大意)。 御柱建設の目的は、壮麗な皇国精神を最も簡単に我ら眼の前映し出しあらゆる矛盾中に堅実な基礎確立し、これらの矛盾転じて真善美となすことである。 生活難過激思想国際問題など、国内国外矛盾満ちている。神は日本任務授けた全世界背負って立ち、万国模範となって進むという大任を果たすためには、おのれの魂を自覚することが急務である。矛盾転じて善美となすか醜悪となすかは我らが神ながらの魂をもって臨むか否か定まる。こうして皇国弥栄いやさか)と建国精神とは離れることができない。 この建国精神は国の始まったときからいよいよ発揚されてきているが、近く明治天皇践祚初めに臣民率いて天地神明誓った五箇条に簡単明瞭表れている。この五箇条の御誓文によって、明治の代は栄え国家運勢はますます興隆し、皇室基盤はいよいよ固く人民はみな独立独歩準備できたのである。 この皇国精神運用実現形式違いはあるが、現代至っても、いよいよ修養しなければならないそれゆえ天地をも精神をも支えるべき御柱建設し国民進歩根本精神を表わし、これに向かってますます実修の気運起すようにしたいと思う。多景島だけを見れば小さいが、琵琶湖背景とする所である。琵琶湖富士山並んで民族理想権化であり、歴史上場所柄皇国背景とする所であるから、こここそ究極の地であろう。 この事業人々もれなく互いに手を引きあって行うことに意味があると思う。我々の総て発起人となって金銭なり物品なり労力なりを出しあって工事終えたいのである。こうして出来る物は御柱であるから外観は素であろうが、一切人々弥栄え(いやさかえ)の清明心(あかきこころ)の結晶に外ならないあらゆる人々皇国精神各人超越して外面あらわれお互い両立しつつあるものとなる。 この皇国精神こそ、高天原において八百万の神々唱えた伝えられる「.mw-parser-output ruby>rt,.mw-parser-output ruby>rtc{font-feature-settings:"ruby"1}.mw-parser-output ruby.large{font-size:250%}.mw-parser-output ruby.large>rt,.mw-parser-output ruby.large>rtc{font-size:.3em}天(あ)っ晴(は)れ あな面白おもしろ) あな手伸(たのし) あな明(さや)け おけ」という言葉により簡単に表すことができるものである。 以上のような趣意説明続いて御柱に刻むべき五箇条の御誓文全文掲げ次いで弥栄という文字を彫る理由について以下のように説明している(大意)。 弥栄いやさか)とは創造化育生成という意味であってすべてのものが弥々栄(いよいよさか)えたうえにも弥栄いやさか)え、枯れ腐りもせず、理想通りその目的実現していくことを言うのである三種の神器八尺瓊やさかに)の勾玉は、弥栄いやさか)の勾玉であって天津日嗣あまつひつぎ)が万世一系天壌無窮弥々栄(いよいよさか)えることを表わすのであるそれだから弥栄いやさか)の文字記して皇位弥栄いやさか)を祈るとともに我々国民相互弥栄いやさか)を祈る心を表わすのである。 さらに「天つ晴れ」以下の言葉を彫る理由については次のように説明している(大意)。 「天(あ)っ晴(は)れ あな面白おもしろ) あな手伸(たのし) あな明(さや)け おけ」の言葉天の岩戸から天照大神現われ出た時に八百万の神々喜びのあまり異口同音唱えた言葉である(古語拾遺)。我ら先祖八百万の神々喜んだ気持ち忘れないことが世の中進歩するほどいよいよ必要なことであり大切なことであるから、この言葉を記すのである。 以上の小冊子のほか、水上誓の御柱ペーパークラフト自己名義著作し1924年5月10日付けでやさか会より発行し定価20銭で販売した。一応、禁じられ文筆活動ではない。 その後水上佐賀県内務部長転じ多景島からさらに遠くなった。「佐賀へ行つても相変わらず惟神かむながら鼓吹をやつて居るかネ」「役所仕事お留守はしないかネ」「地方行政官として適任思ふかネ」と噂された。

※この「水上七郎の建設運動」の解説は、「誓の御柱」の解説の一部です。
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