機能性フィルム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/07 03:01 UTC 版)
画面保護シートも参照。 機能性フィルムの意味および分類は非常に広範囲に及び、何をもって機能性フィルムと称するかにおいてさえあやふやである。これは、薄層材料が担う役割が多岐に及び、そのような要求に対応すべく多方面からもたらされた技術が集結してそれぞれの成果を結びつけつつある段階にあり、産業界において用語としての意味づけがゆらいでいるためである。事実、上記にて「光学フィルム」としたいくつかのものを「機能性フィルム」とする分類もある。以下は現時点で発表された開発技術を追ったものに過ぎず、これらの内容は日々進展し、場合によってはその分類を根底から覆す発明があり得ることをあらかじめ示唆して置かざるを得ない。 耐候性フィルム ビニールハウスなど屋外で使用するフィルムには、一定の光線透過とともに耐候性が求められる。従来はPVCフィルムが多用されていたが透明性や安価な点から採用されていたもので耐候性は必ずしも良好ではなかった。近年では他の材料への切り替えも進み、PCフィルムやポリオレフィン系フィルムなどが利用されている。フッ素樹脂の一種であるエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)フィルムは耐久性や光透過性および曲線施工の容易さなどが評価され、ドイツのアリアンツ・アレーナでの使用を皮切りに北京オリンピック会場など建築分野での採用が拡大している。 導電フィルム 導電性が付与されたフィルムの総称。ほこりなどを付着させる静電気を防止するものを「帯電防止フィルム」、実際にフィルムに通電させるものを「導電フィルム」と区別する場合もある。これらは用途での区別のほかに、表面固有抵抗値によっても分類される。また、「異方性導電フィルム」のように意図的に方向性を持たせるフィルムも存在する。 導電性の付与には、フィルム表面に二次加工を施す手法と、素材内に導電性物質をコンパウンドさせフィルム成型する手法がある。前者の代表例には金属めっきや蒸着・スパッタリング・コーティングがあり、銀行のATMなどを操作する非接触型タッチパネルや、特定なパターンを形成してICタグのアンテナなどの用途に使用される。後者ではカーボンファイバー・カーボンナノチューブ・金属などを素材中に分散させる手段が用いられる。 プリント配電板用フィルム 携帯電話などの回路基板として使用されるフレキシブルプリント配電板(FPC)やフレキシブル銅張積層板(FCCL)のベースには、耐熱性や寸法安定性の高いPIフィルムが使用されている。他の素材としてはLCP・PET・PENなども用いられる。 低温プレス接着に対応しつつはんだ接着をも可能とする耐熱性を有した基板用フィルムとして、スーパーエンプラの中でも最高レベルの耐熱性を持つポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂をベースに20層以上の多層成型をおこなったフィルムは注目されている。 感光性フィルム 露光やエッチングにより基材にパターンを形成する材料としては液体のフォトレジストが一般的だが、ガラスとの密着性には難がある。感光性フィルムはガラスエッチングに適しており、微細パターンの形成性や腐食性の高いフッ酸への耐性なども評価されている。 保護フィルム 材料を保護するフィルムのうち包装用フィルムよりも複雑な機能を有するものを総称して「保護フィルム」(または「プロテクトフィルム」、「マスキングフィルム」など)と分類する。材料の製造時から運搬および加工までにおいて使用されるが、いずれかの工程において剥がされ、最終製品の材料には使われない場合が多い。代表的なものとして、オレフィン系などのフィルムに粘着層をコーティングした「粘着フィルム」がある。これは、輸送時にキズつきや汚れが生じやすい家具やシステム・キッチンなどの化粧板や塗装面を保護するために一面に貼り付け、設置後に容易に剥がすことができるものである。 キズや汚れまたは埃の付着等その機能を損ないかねない損傷からフィルム材料を保護するために、本体とは別に片面または両面に貼り合わせるPETやポリメチルペンテン(TPX)フィルムなども保護フィルムの一種に当たる。これらは、シリコーンの塗布や接着剤の種類選定などによって、フィルム材料を使用する直前に容易に剥がせるような工夫が施されており、その機能から「剥離フィルム」と呼称される。光学フィルムやプリント配電盤用フィルムの保護に使用される剥離フィルムには、剥がす前の状態で各種の検査を受ける必要があるため、透明性や異物排除が特に強く求められる。 金属製品を錆から保護することを目的とした「防錆フィルム」は、透湿性が低いフィルムに常温で気化する防錆剤をコンパウンドし、意図的にブリードアウト現象を起こさせて金属表面に付着させる機能を持つ。同様の効果を持つ防錆紙と比較すると、防湿性があるために効果が高く、またPETなど透明なフィルムを使用することで金属製品の外観を常時観察できる利点もある。 また、電子回路など微細成型を施す部品をほこりなどから守る「カバーレイフィルム」も、保護を目的としたフィルムの一分野に当たる。 ガラスフィルム スマホの普及のため、スマホのディスプレイの損壊を予防するガラスフィルムも保護フィルムの一種として、見られている。けど、ガラスフィルムは、一般のPET素材によって作られる保護フィルムと異なり、その名の通りガラスからつくられています。NIMASOの検証によって、ガラスフィルムの主なる役割は、スマホを不注意で落下した時に、地面にある砂がスマホのディスプレイに与える損傷を保護するという。 転写フィルム 単体では成型が難しい材料や脆い材料を薄層状に成型する場合に、フィルム上にコーティングなどの方法を用いて一旦形成した後で望む製品表面に移す手法がある。この手法の基板となるフィルムは「転写フィルム」と呼ばれ、保護フィルムと同様に基本的に最終製品の材料にはならない。衣類向けでは、カラープリンターやコピー機で画像をウレタン(PU)フィルムに印刷し熱プレスでTシャツなどの衣類に転写する「プリントフィルム」や、PETフィルム上にカラー層とホットメルト層をコーティングしプロッターで任意な形に切り、熱プレスでスポーツ用ユニフォーム上に名前やゼッケンを転写する「カラーフィルム」などがある。 金属や合成樹脂成型品の表面に木目調などの印刷画像を転写する例では、水溶性のPVAフィルムが使われ転写後に水槽に浸漬しフィルムだけを溶かし、あらかじめ沈めておいた成型品を水面上に引き上げて写し取る。金属色の印刷面を転写したフィルムは、めっき装飾の代替市場で採用されている。 フォトレジストや蛍光材料などの機能膜を転写する例では「トランサー」または「ドライ(DFR)フィルム」があり、極性の大きなPPや二軸延伸PETフィルムが主に使用される。これらは、基板の回路パターンを形成するレジスト塗布工程において精密加工や同じパターンの大量生産に適している。 研磨フィルム(ラッピングフィルム) やすりなどと同様に、シリコンウェハーやガラスディスクなどの仕上げにおいて研磨工程にて使用される。 シリカやダイヤモンドなどの微細粒子をPPやPETフィルムなどの表面にコーティングして製造される。これは廃液を生じる研磨剤スラリーの代替として開発された。 ウインドウフィルム 自動車や住宅などの窓に貼り、断熱や遮光、破損時の破片飛散防止などを目的としたフィルム。耐光線劣化性に優れたPETフィルムを基材とし、ハードコートを施して耐磨耗性を向上させたものが多い。建築材料用の「防犯フィルム」はアクリル接着層などを含む多層から成り、侵入防止やUL規定No.972-1984に合格するレベルの防爆などへ対応したものもある。自動車フロントガラス用には、ポリビニルブチラール(PVB)フィルムが挟み込まれている。 また、光触媒など親水性材料をコーティングし表面の曇りや水滴付着を防止した「防曇性(FG)フィルム」もウインドウフィルムの一分野にあたる。 自動車用ウインドウフィルムについては「スモークフィルム」を参照 装飾フィルム フィルム上に印刷や模様を転写し、装飾に使用される。ペットボトルのラベルから、ラッピングバスのように自動車外装を包む「ラッピングフィルム」の例や、大型の看板、鏡面加工を施してディスプレイ材料とするなど多様な使用例がある。あらかじめ色をつけたフィルムに粘着層をコーティングしたカッティングシートは、コンピュータグラフィックスデザインを直接プリントする転写フィルムに取って変わられた。 接着フィルム フィルム状に成型されたホットメルト樹脂接着剤。加熱することで材料を接着できる。EVA・PU・PE・オレフィン系・NYなどがあり、衣類や自動車内装など用途に応じて選択される。 制振鋼板用フィルム 冷蔵庫や洗濯機などの筐体には、振動などにより生じる共鳴や騒音などを防ぐために制振鋼板(または制振合金)が多く使用される。これらのうち、サンドイッチ型制振鋼板は薄い鋼板2枚の間にフィルムを挟みこんだ構造をしている。フィルムの素材はPE・PUなどの他にニトリルゴムなども使用されており、比較的厚みのあるものが使用される。また、コンパウンド型導電フィルムを使用して電気溶接に適応したものもある。 生分解性フィルム 焼却や産業廃棄物としての処理を必要としない生分解性プラスチックを使用したフィルム。農業用途などでの利用が拡大している。また、包装用途に適応させるための機械適性・ヒートシール対応やシュリンクフィルムもポリ乳酸(PLA)ベースなどで開発が進んでいる。 抗菌フィルム 雑菌の繁殖を抑制する材料を含ませ、抗菌機能を持たせたフィルム。表面に貼り付けることで、プラスチック部品そのものに比較的高価な抗菌剤をコンパウンドさせる手法よりもコストを低減できる。PSやPEフィルムを基材とする場合が多い。使用される抗菌剤は、銀イオン化合物などの無機系・酸化チタンなど光触媒系材料のほかに、わさび成分など天然材料を利用したものもある。 固体高分子膜 固体高分子型燃料電池に利用される。イオン交換基を生成したフッ素系フィルムが使用される。 ゴアテックス 防水透湿性能をフッ素系フィルムで付与している。
※この「機能性フィルム」の解説は、「フィルム」の解説の一部です。
「機能性フィルム」を含む「フィルム」の記事については、「フィルム」の概要を参照ください。
- 機能性フィルムのページへのリンク