無機とは? わかりやすく解説

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む‐き【無機】

読み方:むき

無機化合物」「無機化学」などの略。⇔有機


無機化学

(無機 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/20 02:16 UTC 版)

無機化学むきかがく: inorganic chemistry[1][2][3][4])は、研究対象として元素単体および無機化合物を研究する化学の一分野である。[5]通常有機化学の対概念に無機化学が定義され、非有機化合物を研究対象とする化学とされる。

概要

無機化学は炭素以外の全周期表の元素を取り扱い、炭素を含む化合物であっても有機化合物とは見なされない炭素の同素体や一酸化炭素などの化合物も含まれる。有機化合物はおよそ地表にのみ存在し、地球はほとんどが無機物質で構成されている。工業的にも鉄鋼セメント、ガラスなど無機工業製品は生産トン数で有機工業製品を圧倒している[6][7][8]。多様性と複雑性から、すべての元素の性質は簡単な理論で説明できない。

有機化合物以外の物質を研究する化学は無機化学の範疇に含まれ、研究対象で細分化された錯体化学[9]有機金属化学生物無機化学[10][11][12][13](無機生化学)、地球化学[14]鉱物化学、岩石化学、温泉化学、[15]海洋化学[16]大気化学[17][18][19]宇宙化学[20]放射化学、ホットアトム化学[21]、なども広義の無機化学である。

歴史

錬金術の成果が書物として中世ヨーロッパに伝えられて[22]博物学知識集合近代化学の礎となったが、ほとんどは無機化合物についての知見で[23][24]化学自身を研究対象で分類して区別することもなく、18世紀以前は化学と無機化学は同義であった。

18世紀終わり頃から19世紀初頭にかけて、発見されるいわゆる有機化合物の種類が増加するにつれ、起源による物質の分類と研究対象による研究領域の区分が試みられた。1806年頃にスウェーデンイェンス・ベルセリウスは、有機体を意味する "organ" から有機化学 (organic chemistry) や有機化合物 (organic compound) の語を初めて使用した[25][26]。それが学術語や学問領域として定着し、有機化学と有機化合物に相対する学問領域として無機化学と無機化合物の概念が生じた。

有機化学はにより反応性あるいは特性が大きく異なることから、無機化学に比べて早い段階から基の研究を通じて構造論と反応論が展開された。近代無機化学は周期律をはじめとする組成論を中心とした研究が中心であった。無機化学で構造論の起源は、1883年ドイツアルフレッド・ウェルナーが提唱した配位子場理論(配位説、: Ligand field theory[27])である。[28]その後は金属錯体を中心に無機化学は展開し、錯体化学で無機構造化学が確立された。20世紀後半に電子顕微鏡[29][30]X線構造解析などサブミクロンサイズの物理計測が可能となり、構造論は飛躍的に発展した。今日の無機化学は高温超伝導物質のペロブスカイト相など構造論を中心とした研究が主流である[31]

主要、関連項目

研究対象

脚注

  1. ^ Bailar, J. C., & Trotman-Dickenson, A. F. (Eds.). (1973). Comprehensive inorganic chemistry (Vol. 3, p. 1387). Oxford: Pergamon press.
  2. ^ Cotton, F. A., Wilkinson, G., Murillo, C. A., Bochmann, M., & Grimes, R. (1988). Advanced inorganic chemistry (Vol. 5). New York: Wiley.
  3. ^ Cotton, F. A., & Lippard, S. J. (Eds.). (1959). Progress in inorganic chemistry (Vol. 4). John Wiley & Sons.
  4. ^ Wells, A. F. (2012). Structural inorganic chemistry. Oxford University Press.
  5. ^ "「無機化学: その現代的アプローチ」, 平尾一之・田中勝久・中平敦著, 東京化学同人.
  6. ^ Rogers, R. P. (2009). An economic history of the American steel industry. Routledge.
  7. ^ Bridge, J. H. (2014). The Inside History of the Carnegie Steel Company: A Romance of Millions. University of Pittsburgh Press.
  8. ^ Ghosh, S. N. (Ed.). (2003). Advances in cement technology: chemistry, manufacture and testing. CRC Press.
  9. ^ 柴田村治. (1979). 錯体化学入門. 共立全書.
  10. ^ Bertini, I., Bertini, G., Gray, H., Gray, H. B., Stiefel, E., Valentine, J. S., & Stiefel, E. I. (2007). Biological inorganic chemistry: structure and reactivity. University Science Books.
  11. ^ Rehder, D. (2014). Bioinorganic chemistry. Oxford University Press.
  12. ^ Kaim, W., Schwederski, B., & Klein, A. (2013). Bioinorganic Chemistry--Inorganic Elements in the Chemistry of Life: An Introduction and Guide. John Wiley & Sons.
  13. ^ Metzler-Nolte, N., & Kraatz, H. B. (2006). Concepts and models in bioinorganic chemistry. New York: Wiley-Vch.
  14. ^ White, W. M. (2020). Geochemistry. John Wiley & Sons.
  15. ^ 今橋正征. (2010). 温泉の化学. 日本温泉気候物理医学会雑誌, 74(1), 7-9.
  16. ^ Riley, J. P., & Chester, R. (Eds.). (2016). Chemical oceanography. Elsevier.
  17. ^ Warneck, P. (1999). Chemistry of the natural atmosphere. Elsevier.
  18. ^ Visconti, G. (2001). Fundamentals of Physics and Chemistry of the Atmosphere. Berlin: Springer.
  19. ^ Finlayson-Pitts, B. J., & Pitts Jr, J. N. (1999). Chemistry of the upper and lower atmosphere: theory, experiments, and applications. Elsevier.
  20. ^ McSween Jr, H. Y., & Huss, G. R. (2010). Cosmochemistry. Cambridge University Press.
  21. ^ Willard, J. E. (1955). Radiation chemistry and hot atom chemistry. Annual Review of Physical Chemistry, 6(1), 141-170.
  22. ^ Martin, S. (2011). A Pocket Essential Short History of Alchemy & Alchemists. Oldcastle Books.
  23. ^ Levere, T. H. (2001). Transforming matter: a history of chemistry from alchemy to the buckyball. JHU Press.
  24. ^ Maxwell-Stuart, P. G. (2008). The chemical choir: A history of alchemy. Bloomsbury Publishing.
  25. ^ Kyle, R. A., & Steensma, D. P. (2018, May). Jöns Jacob Berzelius–A Father of Chemistry. In Mayo Clinic Proceedings (Vol. 93, No. 5, pp. e53-e54). Elsevier.
  26. ^ Wisniak, J. (2000). Jöns Jacob Berzelius a guide to the perplexed chemist. The Chemical Educator, 5(6), 343-350.
  27. ^ Figgis, B. N., & Hitchman, M. A. (2000). Ligand field theory and its applications (Vol. 158). New York: Wiley-Vch.
  28. ^ 上村洸, 菅野暁, & 田辺行人. (1969). 配位子場理論とその応用. 裳華房. 129.
  29. ^ 『電子顕微鏡の理論と応用』電子顕微鏡学会、丸善、1959年。
  30. ^ 外村彰、黒田勝広『電子顕微鏡技術』丸善、1989年。ISBN 4621033956
  31. ^ Boix, P. P., Nonomura, K., Mathews, N., & Mhaisalkar, S. G. (2014). Current progress and future perspectives for organic/inorganic perovskite solar cells. Materials today, 17(1), 16-23.

外部リンク


無機

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/03 00:49 UTC 版)

昭和電工」の記事における「無機」の解説

セラミックスアルミナ)、電気製鋼用人黒鉛電極電材用ファイン・カーボンを生産

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「無機」を含む「昭和電工」の記事については、「昭和電工」の概要を参照ください。

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無機

出典:『Wiktionary』 (2021/06/26 09:00 UTC 版)

名詞

 (むき)

  1. 生命関与ていないこと。生物らしいじを与えていないこと。
  2. 化学化合物炭素含んでいないこと。構成する元素種類は多いが、単調な種類構造化合物がある。
  3. 無機質」「無機栽培」「無機化学」「無機化合物」の

関連語

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