救荒植物とは? わかりやすく解説

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きゅうこう‐しょくぶつ〔キウクワウ‐〕【救荒植物】

読み方:きゅうこうしょくぶつ

山野自生する植物で、飢饉(ききん)の際に食糧になるもの。ノビル・ナズナ・オオバコなど。備荒植物


救荒植物

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/24 07:16 UTC 版)

イモ類は救荒植物として利用された歴史がある

救荒植物(きゅうこうしょくぶつ)とは、飢饉戦争その他で食料が不足した時に、その不足をしのぐために間に合わせに食料(救荒食)として利用される植物である。

概要

救荒植物の種類は多いが、その性質上不快なにおいや味がない部分までたいてい利用される。救荒植物の可食部分は、果実種子地下茎葉柄などである。

救荒植物には無毒のもののほかに有毒だが毒消しが可能なものも含まれる。特に、毒消し・灰汁抜きの手順が煩雑で、他の食べ物があれば手を出さないが、やむを得ぬ場合は食べる、というものもある。ドングリの多くやソテツヒガンバナチューリップ(チューリッピンとツリピン[1][2]という皮膚炎症毒と心臓毒があるが第二次世界大戦時の飢饉「飢餓の冬」[3][4]にオランダで処理されて食べられた。現在では食用改良品種も開発されている)がその例に挙げられる。

ただし、ある地域では普段食用としては見向きもされずに救荒植物と見なされている植物であっても、別な地域においては日常の食糧の1つであると見なされている場合もある。今日一般食材として食べられる野菜・果物類、山菜、ハーブ、生薬、穀類なども元は救荒植物であった事例もあり後に栽培され日常食材として用いられた。ジャガイモ三十年戦争以後に世界中に普及、サツマイモ享保の大飢饉以後に日本全国に普及、トマト#歴史はイタリアの貧困層で食用にしようと考えられてから200年にも及ぶ開発を経てヨーロッパへと広まり、一般食材となったのは19世紀以降である。またエンバクライムギソバなどの穀類及び擬穀類はコムギ、オオムギ、イネなど主要穀物が生育しにくい気候や土質で紀元前に救荒作物として栽培されその後その土地で主要作物として定着した。キヌアなどの擬穀類も同様に南米で栽培され後に栄養価と土質の面から食料安全保障政策で2013年以降作物として欧米及び日本に広がった。その近縁のアマランサスは南米で同様に食用作物として栽培されていたが欧州で観葉植物として園芸種が栽培され、インドや中国で種子、根、葉共に食用作物として栽培され後にキヌア同様欧米や日本でも食用にされた。

救荒植物の例

蘇鉄味噌。経済恐慌時の食糧難で食用にされたが不十分な毒抜きによる中毒もありソテツ地獄と呼ばれた。
そのままでは非常に有毒なヒガンバナ。致死例も存在する。

救荒植物を可食部別に挙げると、以下のように分類することができる。

ただし、上記に挙げられている植物の中でも、例えば伊豆諸島でのアシタバやヨーロッパや日本各地方で山菜として利用されるスカンボや東北地方や沖縄、トルコやギリシャで食用野草やハーブとして食されるスベリヒユなどのように、地域や風習によっては日常的に食べられている植物(いわゆる食用野草・山菜)も存在している。また、地中海沿岸ではオリーブブドウ柑橘類の柔らかくアクが少ない若葉も産地の痩せた土質や乾燥した気候では他に取れない野菜の代用(ビタミン・ミネラル源と食物繊維源)として食べることもある。また野菜として食べられているモロヘイヤも元来は救荒作物であり生育しきった株や種子及び莢は毒性があり、収穫期と蕾発生期のみ葉、茎、根、蕾が食べることができる毒草である[38]

有毒植物の毒抜き

かつて有毒ではあるが毒抜きをして食べられていたものを別記する(※毒が抜けておらず食中毒で死亡事故が起こっていたもの)。

  • ヒガンバナ - 水溶性の毒リコリンを含む球根を持ち、水で解毒して救荒食とした[39]
  • 蘇鉄 - サイカシンホルムアルデヒドなどの毒性物質を含む。水にさらして毒抜きをする必要がある[40]
  • ティフォノドルム・リンドレイアヌム英語版 - 地下茎が有毒でえぐみがあるが、マダガスカルで飢饉が起きたときには、薄くスライスして水にさらし毒抜きし、蒸して食べた[41][42]
  • セイヨウイラクサ(ネトル) - 刺毛があり刺されると腫れになるが、熱を通すと食用となる[43]。ヨーロッパで飢饉のときに食用とされた[44]
  • アカウレ - アンデスでは、毒のある野生ジャガイモ(アカウレ)を乾燥冷凍してチューニョと呼ばれるものにして飢饉の際に食用とした。足で踏んで組織を壊して氷点下に達する気候の高地の夜で干すと水分といっしょにソラニンが抜け凍結乾燥の状態になる[45]

脚注

  1. ^ 続・楽しい植物 観察入門 - 大日本図書 (PDF) p.6
  2. ^ 園芸療法に注意を要する植物リスト{B}接触でもアレルギー様作用発現するもの (PDF) p.2
  3. ^ 知識の宝庫!目がテン!ライブラリー ポイント2 私たちの身近にチューリップが多いのは、花の咲く準備が完了している球根を植えるだけで簡単に花を咲かせられるからだった!
  4. ^ 花の球根 あなた自身が花開く 食べ物としての価値?それとも観賞物の価値?
  5. ^ BOTANICA ヤブマオとは?特徴や利用法を解説!カラムシなど似た植物との違いは? ヤブマオの利用方法[1]
  6. ^ ヤブマオは微妙な草の味・香り - 雑草生活 ~weed[2]
  7. ^ 食らし旅【体験】和紙の原料、コウゾの葉っぱを利用した餅作り体験!【綾部市】
  8. ^ Arboretum ツクバネ Buckleya lanceolata[3]
  9. ^ News.Magazine.Campers 狩猟・採集 蓼(たで)とはどんな植物?味や効能・美味しい食べ方をリサーチ
  10. ^ 石川県農林総合研究センター農業試験場 > 場内の雑草図鑑 > アレチギシギシ
  11. ^ 植物NAVI
  12. ^ 三河の植物観察 キオン 黄苑
  13. ^ cat-friendly-plants ジニア[4]
  14. ^ 野菜大図鑑 ごぼうの葉は食べられる!栄養は? [5]
  15. ^ BOTANICA イノコヅチとは?花や葉の特徴から食用として効果や用途をご紹介!
  16. ^ 植物の育て方や豆知識をお伝えするよ! 【ヤエムグラのまとめ!】食べ方や花言葉等6個のポイント![6]
  17. ^ 帯広百年記念館 アイヌ民族文化情報センターリウカ アイヌ語で自然かんさつ図鑑 コウライテンナンショウ[7]
  18. ^ 厚生労働省 自然毒のリスクプロファイル:高等植物:テンナンショウ類 概要版[8][9]
  19. ^ Arboretum ツクバネ Buckleya lanceolata[10]
  20. ^ joyful town ♪♪~~この天ぷらは何の天ぷら??[11]
  21. ^ 樹の散歩道 ツツジ科樹木の毒性[12]
  22. ^ 続・樹の散歩道 ノブドウの果実の多様な色は虫えい故なのか? そもそも正常な果実とはどんな色なのか?
  23. ^ みんなの趣味の園 月下美人を食べてみよう[13]
  24. ^ 趣味時間 魅惑の花「月下美人」は不思議がいっぱい[14]
  25. ^ 栃の実のあく抜きの方法や食べ方とは | たべるご”. taberugo.net (2017年6月22日). 2023年8月11日閲覧。
  26. ^ Aki. “栃の実の下処理、あく抜き”. 【Organic Recipe|オーガニックレシピ】. 2023年8月11日閲覧。
  27. ^ トチの実の凶悪なアクを二ヶ月かけて抜いてみた。手強かった”. 東京でとって食べる生活 (2021年2月27日). 2023年8月11日閲覧。
  28. ^ 文月 (2018年11月28日). “栃の実の保存とアク抜きの方法”. 餅つき機で餅を作るためのサイト. 2023年8月11日閲覧。
  29. ^ 田舎センセイによる田舎暮らしでの悩み解決情報サイト いちいの木は有毒!?「オンコの実」は丸ごと食べると危険!
  30. ^ [15] 噛んではいけない - 知床自然センター
  31. ^ GreenSnap スズメノエンドウとは?|花の特徴や花言葉、食べ方やカラスノエンドウとの違いは? スズメノエンドウは食べることができる?薬効は?
  32. ^ Slow food Nippon アハ[16]
  33. ^ 成東・東金食虫植物群落を守る会 ヤブマメの戦略
  34. ^ サバイバル節約術 ヤブマメ <藪豆>
  35. ^ わたしの漢方薬ガイド > 生薬図鑑 > 蒼耳子
  36. ^ アタマの中は花畑 【オナモミ】実は絶滅危惧種だった!?オオオナモミとの違いは?
  37. ^ 公益社団法人日本薬学会 生薬の花 オナモミ
  38. ^ 食品安全委員会 食品安全総合情報システム Q&A 詳細、モロヘイヤについて
  39. ^ 彼岸花』 - コトバンク
  40. ^ ソテツ”. www.pharm.kumamoto-u.ac.jp. 2022年12月2日閲覧。
  41. ^ ティフォノドルム・リンドレイアヌムはどんな植物? わかりやすく解説 Weblio辞書”. www.weblio.jp. 2022年12月3日閲覧。
  42. ^ びっくり! 世界の不思議な植物:食べ物、かざり、薬など暮らしに役立つ 著者: 湯浅浩史 p.57
  43. ^ 道端で見つけた「シソ」 調べてみたら…”. 毎日新聞「医療プレミア」. 2022年12月3日閲覧。
  44. ^ イラクサ』 - コトバンク
  45. ^ 山本紀夫「中央アンデス農耕文化論 : とくに高地部を中心として」『国立民族学博物館調査報告』第117巻、国立民族学博物館、2014年3月、hdl:10502/5278ISSN 1340-6787CRID 1050282676651520256 
    山本紀夫『中央アンデス農耕文化論 : とくに高地部を中心として』 東京大学〈博士(学術) 乙第18010号〉、2014年。doi:10.15083/00007551https://doi.org/10.15083/00007551 

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