ダムの歴史とは? わかりやすく解説

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ダムの歴史 (だむのれきし)

世界のダム)
 古代都市社会発展するためには、安定的な食料生産前提であり、灌漑用水源としてダム建設必要でした世界四大文明発祥の地では、強力な権力者存在し大規模に労働力動員することができたため、ダムの建設可能でした
 歴史上文献現れる世界最古のダムは、ヘロドトス著「歴史」に登場します紀元前2900年初期第一エジプト王朝の創始メネス王が首都建設するために、堤高15mのダムを築造してナイル流れ変えたとされています。しかしこれはダムではなく堤防ではなかったのかといわれています。ダムと呼べるものとしては、カイロ南方で、エジプト・クフ王朝時代紀元前2750年頃と推定されるサド・エル・カファラダムの遺跡あります。これを最古のダムとするのが現在の定説だといわています。このダムは、ピラミッド建設用石切場労働者飲料水確保するために造られ堤高11m、堤頂長106m、底幅84mと大規模なものであったようです
 古代アラビアでは、シーバ女王有名なサバ王国で、紀元前750年頃、首都マリブの町の給水のためマリブダムが建設されました。このダムは、世界で初め洪水吐備えたダムで、ダム技術史画期的なものでした。マリブダムは2度嵩上げが行われたようですが、その際洪水吐石積み構造嵩上げされています。
 中国では、紀元前240年頃、山西省のグコー川に堤高20mの当時としては世界最高のダムが建設されました。このダムは、14世紀末にスペインのアルマンサダムが完成するまで、1600年余りに渡って世界一高いダムであり続けました
 ローマ人古代の最も偉大な技術者と言われています。ローマ人が、紀元前193年スペイントレド征服したとき、この町の給水のため、堤高20mのアルカンタリアダムを建設しましたローマ帝国遺跡知られるメリダ近くでは、130年頃に堤高19mのプロセピナダムが、またその後堤高28mのコルナルボダムが建設され、これらは現在もなお使用されています。ローマ人また、北アフリカチュニス南西で、2世紀頃カセリンダムを建設しました。このダムは土砂と粗石でできたコア持ち表面水硬性モルタル漆喰継ぎ目固めた切石はめ込み積みでした。
 現存最古のアーチダムは、テヘラン南西1300年頃に建設され堤高26mのケパールダムだと言われます。下流面が半径38mの円筒形をしているアーチダムで、蒙古人によって造られようです。その100年ほど後に、スペイン人建設したアルマンサダムは、下流曲率半径25mのアーチダムでした。スペイン人また、1594年堤高が41mに及ぶ、世界一堤高のチリダムを完成させました。この堤高300年渡り破られませんでした。これもまた上流面曲率半径107mのアーチ状のダムでした。その後、エルシュダム(堤高23m、1632年着手)、レルダム(堤高28m)がスペイン人によって建設されましたが、これらはより薄肉断面のアーチダムでした。
 1747年に北スペイン建設されたアルブエラ・デ・フェリアダム(堤高23m)は、製粉用水車を回すための設備備えており、世界初動力用貯水ダムです。また、近代的バットレス技術採用され最初の大ダムでもありました
 1824年イギリスポルトランドセメント発明され、ダムにもセメント使用されるようになりました。これにより、重力式コンクリートダムやアーチダムが可能となり、イギリスフランス中心にダム技術大きな変革もたらされました。19世紀後半イギリスでは都市化進展し需要まかなうために各地にダムが建設されました。
 アメリカでは1933年より始められニューディール政策一環として各地でダムが建設されました。東部では、TVAテネシー渓谷開発公社)が設立されテネシー川総合開発実施されました。多数のダムを建設し発電かんがい洪水調節により、地域経済の発展図ろうとするもので、大きな成果得られました。西部では、コロラド川大規模なフーバーダム建設されましたが、このダムはダム技術集大成ともいうべきダムで、以降世界ダムモデルとして大きな影響があったといわれています。
 [世界ダムの歴史については、主として竹林征三著「ダムの話」によっています。

日本のダム
 日本では古くから稲作が行われ、そのために洪水の危険の多い低湿地移り住みました洪水を防ぐとともに稲作必要な確保するために、溜池などの貯める工夫をしてきました
 日本で最も古い溜池がどこかは厳密にわからないようですが、大阪府史跡・名勝指定されている狭山池は、我が国最古潅漑用ため池と言われることがあります。「古事記」や「日本書紀」にも記述がみられ、古く行基重源ちょうげん、1120〜1206)により改修が行われ、江戸時代初期には豊臣秀頼(1593〜1616) の命を受けた片桐且元(かたぎりかつもと、1556〜1615 )が大規模な改修工事を行うなど、多く改修記録残されています。狭山池では、ダム化への改修工事が行われました。この工事先立ち大阪狭山市在住考古学者末永雅雄博士の提唱により、大阪府土木部の協力のもとに、狭山池調査事務所設立して文化財調査進められました。この調査により発掘された東(ひがしひ)の木製樋管コウヤマキ)について、年輪年代測定法により伐採年代測定したところ、616年との結果得られました。これによって、狭山池築造7世紀前半とする説が、現在有力であるようです。(→日本のダム:狭山池(再)
 満濃池香川県)も古い溜池として有名です。満濃池は、大宝年間701703)に讃岐の国道守朝臣金倉川沿いの谷地湧き水せき止め造ったといわれており、地元満濃町ホームページなど各種資料にこの趣旨記述見られます。満濃町では、2001年満濃池築堤から数えて1300年となるとして、2001年4月からほぼ3年わたって満濃池築堤1300年祭」が開催されました。
 以降日本各地多数溜池作られましたが、近代技術使った本格的なダムと呼べるものは、明治になってからのことで、まず水道用のダムが建設され次いで発電用のダムが建設されるようになりました
 日本初水道用のダムは、長崎市本河内高部ダムです。明治24年完成した堤高18.6mのゾーン型アースダムでした。水道計画・設計には、当時イギリス水道計画・ダム貯水池計画技術導入されており、その後多くの年の水道計画の礎となりました。このダムは現在再開発進められていますが、今後引き続き水道用として使われる計画です。(→日本のダム:本河内高部(再)
 日本最初コンクリートダム水道用のダムで、神戸市布引五本松ダムです。布引五本松ダム水道用の重力式コンクリートダムで、明治33年完成しました英国人ウィリアム・バルトンの指導設計大阪市から招へいされた技師佐野藤次郎です。阪神・淡路大震災にも耐え、改修経て現在でも神戸市水源として使用されています。(→日本のダム:布引五本松(元)
 日本最初発電用コンクリートダムは、栃木県黒部ダムと言われています。大正元年竣工石張りコンクリートダムで、その後改修されていますが、現在も発電使われています。(→日本のダム:布引五本松(元)
 大野ダム山梨県)は、台帳整地形成する発電用アースダムで、大正3年竣工堤高37.3mは当時日本一高いアースダムでした。(→日本のダム:大野
 大正後期には、長距離送電ができるようになり、中部山岳地帯大規模に水力開発行って、それを大都市地域送電することが可能となりましたこのため大正末期から大容量水力発電が活発となりました。代表は、大井ダム有した大井発電所でした。大井ダム木曽川本川締め切る堤高53.4mの重力式コンクリートダムで、「日本初の高さ50mを超えるダム」ともいわれる。(→日本のダム:大井
 昭和5年完成した小牧ダム富山県)は、当時東洋一のダムと言われ堤高79mの重力式コンクリートダムで、今日のような機械化施工技術建設され最初の重力式コンクリートダムとも言われます。(→日本のダム:黒部
 このようにコンクリートダムとしては、まず重力式コンクリートダムが造られましたが、次いでアーチ構造利用して堤体積を大幅に少なくすることができるアーチダムが建設されるようになりました
 日本初めてのアーチダムは、三成ダム島根県)です。三成ダムは、昭和29年3月竣工発電用ダムです。堤高が36m、堤頂長109.7mと小規模ですが、アーチダムの先駆けとなりました。(→日本のダム:三成
 本格的なアーチダムとしては、上椎葉ダム宮崎県)があげられます。難工事克服して昭和31年竣工した堤高110mの大規模ダムです。(→日本のダム:上椎葉
 その後日本経済高度成長によって、労働賃金上昇したため、経済性観点から、投入労働力少なく機械化度合いの高い施工方法求められるようになり、ロックフィルダムが建設されるようになりました初期の頃代表的なロックフィルダムとしては、御母衣ダム岐阜県)があります堤高131mの大規模ロックフィルダムで、機械化施工駆使して建設されました。(→日本のダム:御母衣



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