故事 た行

故事

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/26 04:31 UTC 版)

た行

他山の石

「名もない山で拾った粗悪な石でも、自分が所有する玉(宝石)を磨くのには役立つ」ということから、他人のとるに足らない言動でも自身の向上の助けとなる事[20]。俗に模範とする意は誤り。

蛇足

断腸の思い

「断腸」とは『世説新語 黜免』の故事に由来。

晋の武将桓温が船で蜀に攻め入れようと三峡を渡った時に、その従者が猿の子供を捕らえて船に乗せた。母猿は泣いて悲しみ、その船を約百里も追って飛び移ったが、悶え苦しみ、死亡。母猿の腹部を切開すると腸がズタズタにちぎれていた[21]

このことから、非常に辛い思いという意味となった。

朝三暮四

非常にと戯れるのが好きな男がいた。この男は家族のことも放っておいて、猿を可愛がるものだから、餌の時間になるといつも猿が寄ってくる。ところがそれが原因で、ある日奥方から「猿の餌を減らしてくれないと、子供たちの食べる物までなくなってしまう」と窘められてしまう。困った男は何とか猿たちを籠絡しようとし、一斉に呼びかけた。これからは「朝には木の実を三つ、暮(ばん)には四つしかやれない」と告げるも、猿たちは皆不満顔。それならば「朝は四つ、暮は三つならどうだ」と言うと、合計七つと変わらないにも係わらず猿は皆、納得してしまったのである[22][23]

そこから朝三暮四は、人を巧みに言いくるめて騙すこと、また猿の立場から、物事の根本的な違いに気付かない愚かな人を指す言葉となった。

天衣無縫

登龍門

虎の威を借る狐

は多くの動物を求めてそれを食べる。ある時、を捕まえた。狐は「君は私を食べてはならない。天は私を百獣の王にしたのだ。私を食べればそれは天の命令に背くということだ。もし信じないのなら私は君の前を歩いてみよう。私を見て逃げない獣はないであろう」といった。そこで虎は狐を放し、狐について行った。すると獣は一行の姿を見て逃げ出したが、それは狐ではなく虎を恐れたためである。しかし当の虎自身は自分を恐れて逃げているとは思わず、狐を恐れて皆逃げているのだと思い、狐の言を信用した[24]

このことから虎の威を借る狐は、大したこともない者が、権力者などの威光を笠に着て威張ることを指すようになった。


  1. ^ 荘子』 秋水
  2. ^ 「井の中の蛙大海を知らず」には実はポジティブな続きがあった! /毎日雑学”. ダ・ヴィンチ. KADOKAWA (2020年10月9日). 2020年12月30日閲覧。
  3. ^ 『後漢書』列伝11・邳彤伝
  4. ^ 『後漢書』列伝9・耿弇伝
  5. ^ 歴代名画記』 巻七 梁
  6. ^ Wikiquoteの中国のことわざに、水衡記を典拠とする記述があります。
  7. ^ 列子』 説符篇
  8. ^ 列子』 天瑞篇
  9. ^ 戦国策』 燕策
  10. ^ 晋書』 車胤伝
  11. ^ 孟子』 魏恵王 上
  12. ^ 淮南子』 巻十八 人間訓
  13. ^ 『史記』項羽本紀
  14. ^ 韓非子』 五蠧篇
  15. ^ 『春秋左氏伝』桓公12年 - 国立国会図書館デジタルコレクション 春秋左氏伝(日本語訳)八二頁
  16. ^  春秋左氏傳 桓公 (中国語), 春秋左氏傳/桓公#桓公十二, ウィキソースより閲覧。 
  17. ^ 孟子』 公孫丑 上
  18. ^ 漢書』 朱雲伝
  19. ^ 晋書』 孫楚伝
  20. ^ 詩経』 小雅 鶴鳴編
  21. ^  世說新語 黜免 (中国語), 世說新語/黜免#2., ウィキソースより閲覧。 
  22. ^ 荘子』 斉物論
  23. ^ 列子』 黄帝篇
  24. ^ 戦国策』 楚策 - 楚の宣王に対して家臣の江乙が話したたとえ話。他国が令尹(宰相)の昭奚恤を恐れるのは、実際は楚王の軍を恐れるゆえと説明するため。
  25. ^ 荘子』徳充符より
  26. ^ 『春秋左氏伝』成公十年より
  27. ^ 『無門関』「六則」
  28. ^ 戦国策』「燕策」より






故事と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「故事」の関連用語

故事のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



故事のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの故事 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS