推敲
推敲の推の意味は訓で「おす」と読み、「何かを推薦する」という意味だけでなく、「物理的に何かに力を加えて前進させる」という意味もある。一方で推敲の敲の意味は訓で「たたく」と読み、「何かをとんとんと打つ」や「かたいものやこぶしで打つ」という意味がある。賈島という詩人が漢詩の詩句において「推」という字を当てはめるか、それとも「敲」の字を当てはめるか悩んだ事から生まれた故事成語であるため、推敲の意味としては詩や文章を作る時により適切な字句や表現を求めて、試行錯誤し作品として練り上げる事をいう。
推敲の出典は「唐詩紀事」であり、唐の時代の無名の詩人である賈島が作った詩に対して唐の都の長安の大官であり当時著名な詩人でもあった韓愈がアドバイスをした挿話が語源となっている。以下その詳しい顛末である。賈島は科挙(高級官吏の登用試験)の試験を受けるために長安の都にろばに乗ってやって来て詩を作り、「僧は推す月下の門」の句を思いついた。だが、この句の中の「推」の字を改めて「敲」の字にしようかとも思った。そこで賈島は手を伸ばして、手を推したり、敲いたりするしぐさをしてみたが一向に決まらなかった。そしてうっかりして賈島は長安の長官である韓愈の行列にぶつかってしまった。そこで賈島は韓愈に事の次第を語った。それを聞いた韓愈は「敲の字が良い」と賈島に言った。そのまま二人は並んで行き、詩を論じた。以上が推敲の故事成語の具体的な賈島と韓愈の挿話である。科挙に受かっていないため(当時の科挙では作詩の試験が出題された)作詩に自信がなかった賈島は自分が作った詩の字句の一部を「推」にするか「敲」にするかで悩みぬき、うっかり韓愈の行列にぶつかってしまったため捕らえられるかと思っていた。しかし却って韓愈は親切にもアドバイスをくれ賈島の作詩を手伝ってくれたという訳である。
推敲を重ねるという表現とその類義語との違いについて詳しく説明していく。まず「校正」との違いからである。そもそも校正の校という字には「くらべる」という意味があり、常用漢字表にはない表外読みの訓読みで「校べる(くらべる)」とも読む事からも想像出来るように、校正とは「校べて正す」という意味である。故に印刷物の誤字や脱字などの不備を原稿とくらべ合わせて正すという意味の「校正」と詩や文章を実際に書く場面において、その字句についてあれこれと試行錯誤して練り上げる意味の「推敲を重ねる」という表現とは大きく意味が違うという事が言えるのである。
次に「訂正」との違いを説明していく。訂正の訂という字も正と同じく「ただす」という意味があり、表外読みの訓読みで「訂す(ただす)」と読む。故に「訂正」という熟語の意味は誤りやくいちがいを正すという意味合いが大きく、「推敲を重ねる」という表現が持つような創作的な意味合いは少ないのである。最後に「改訂」との違いであるが、「改」という字は訓読みで「改める(あらためる)」と読む事から、「改訂」は「改めて訂す(ただす)」というのが字義であり、書物の内容などを改めて直すというような意味合いが強く、「推敲を重ねる」のような文章や詩の創作時における練り直しをするという意味はないのである。
文章の推敲をするに当たっての方法やコツであるが、それは文章を書き終えた時にその文章の論理が首尾一貫しているかどうかまず確認してみる事である。文章の論理が首尾一貫していなかったらもう一度書き直す事をお勧めする。そして文章の論理が首尾一貫している場合は次に文章全体の文法的な整合性が取れているかどうかを確認してみて欲しい。「てにをは」が間違っていないかどうか、また主語や目的語が抜けていないかどうかを確認していこう。文法が滅茶苦茶だと文章の趣旨が読者に伝わりづらいのである。次に自分が書いた文章を読み返してみて、自分が書いた言葉の意味を確認する事も大切な事である。知らず知らずのうちに自分でも意味の分からない言葉を使ってしまう事があるからだ。
またより適切な表現がないかどうか類語辞書を使って確認する事も忘れないようにしたい。日本語は語彙が多いので、例えば一人称でも「私」、「僕」、「わし」、「あたし」、「小生」など多種多様な表現があるからだ。文章を読み上げる場や渡す人に相応しいものに仕上げるために推敲は欠かせないものであるので、何度も推敲の経験を積む事も推敲のテクニックを上達させていくためのコツなのである。
推敲
「推敲」とは、詩文の字句・文章を吟味して練り直すことのことを意味する表現である。
「推敲」とは・「推敲」の意味
「推敲」とは文章の表現を吟味して、自身でよりよく直すことという意味の名詞である。「すいこう」と読む。「唐詩紀事」に漢文で書かれていた挿話をもとにした故事成語だ。短文で説明すると、たとえば一人称の代名詞を「わたくし」にした場合は「わたくしはそのとき、まだ家の事情を知らなかったのです」などとなる。「あたい」を使うと「あたいはそのとき、まだ家の事情を知らなかったんだ」などとなり読者に異なる人物像を想起させることができる。前者にすれば、ある程度経済的に余裕のある家庭に育った女性象が浮かび、後者の場合は東京の下町で育った女性かもしれないと想像させることができる。最初は「私はそのとき、まだ家の事情を知らなかった」と書いたとすれば、文章の内容によって、どの表現がふさわしいかを考えて手を入れるような行為を「推敲」と言う。校正は執筆の終わった原稿を確認して修正することだが、誰が行うかは問わない。文章の内容を洗練するというよりは、文字や文法などの間違いをただす行為である。「推敲」の英訳は不可算名詞のelaborationだ。推は小学校6年生で習うが、敲は漢字検定1級レベルのため小学生が読んだり書いたりするには難しい。JIS水準では第2水準である。
「推敲」の語源・由来
「推敲」の出典は、前述の通り「唐詩紀事」である。唐の無名の詩人であった賈島が自身の書いた詩句「僧は推す月下の門」を推す(おす)にするか敲く(たたく)にするかで迷い、当時、長安の大官であり著名な詩人でもあった韓愈に問うて敲くに改めたというエピソードに由来する。無名の詩人が地位の高い詩人の韓愈に助言をもらえた理由は、賈島が詩句の洗練に集中するあまり韓愈の行列にぶつかったためである。賈島は、科挙(中国の官吏の登用試験)のために詩を作っていたと言われている。捕らえられても仕方のないところ、韓愈が親切に賈島の話を聞いて助言したために後世に残る挿話となり、「推敲」の語源となった。後に賈島も、五言律詩(五言の句が8句からなる漢詩)に優れた詩人となっている。「推敲」の熟語・言い回し
「推敲」の熟語・言い回しには次のようなものがある。推敲するとは
推敲するは「推敲」に、動詞の「する」がついている。この場合のするの意味は、ある行為や動作を行うである。全体の意味は、文章を吟味して練り直しを行うとなる。
原稿を推敲するとは
原稿を推敲するは「推敲する」の前に、名詞の原稿と格助詞の「を」がついた文である。原稿は公表する目的で文章を書いたものや、そのもととなる文章を指す。講演などのための草案のことも言う。格助詞の「を」は 動作や作用の目標、対象を示し、この場合の対象は原稿だ。原稿を推敲するの意味は公表するための文章を書いたもの、またはその文章を吟味して練り直しを行うとなる。
「推敲」の使い方・例文
「推敲」の使い方・例文には次のようなものがある。・卒業論文はとっくにでき上がっていたが、推敲に1週間もかかったので提出が遅れてしまった。
・推敲を突き詰めると、いつまでも原稿が仕上がらない。
・出版されている本の中にも、推敲がおろそかなものがある。
・作文の推敲をすることで、読みやすく伝わりやすい文章になる。
・推敲は中国の唐の時代の、子弟のエピソードがもとになっている言葉だ。
・推敲した文章がよくなっているか否かは、第三者に読んでもらうと判断できる。
・子供が書いた文章には、推敲を重ねる前よりも、もとのままの方が人の心を揺さぶるものがある。
・野口英世の母が英世に宛てた手紙は教科書に載るほど有名だが、推敲されていれば、これほど人の心を打たなかっただろう。
・推敲に正しさはない。
・推敲の程度は書き手次第だ。
推敲
推敲とは、推敲の意味
推敲とは、詩や文章の表現などを見直し、修正を加え練り上げるという意味のこと。語源は昔の中国に唐という国があり、当時そこに暮らしていた賈島(かとう)と呼ばれる詩人が生み出した。その詩人が自分で作成した詩句の「僧は推す月下の門」を仕上げる時に、「推(おす)」の部分を「敲(たたく)」にするかどうか検討していた。そこで韓愈という詩人に相談し、「敲(たたく)」の文字に書き直したという由来がある。英語表記は polish、refine、improve などが挙げられる。推敲の類語
推敲の類語には、訂正(ていせい)、校正(こうせい)、校閲(こうえつ)などがあり、これらは主に語句や字句の誤字、脱字などといった間違いを修正するという意味で使われる。ゆえに校正や校閲は、文などを書いた本人以外の立場にいる者が手を加えることとされ、編集関係の仕事で良く使われる言い方である。推敲の語の例文、使い方
推敲は、作品の著者自身が自分の書いたポエムや文章の字句、表現を練り直すことである。推敲の「推」は「押す」、「敲」は「叩く」ということを指し、自分が創作した詩、文、文章など何度も読み直し、手直しを加え仕上げるということである。例えば、「私は作文を推敲する習慣を付けた」「彼は自作に推敲に推敲を重ねる人だ」という例文が考えられる。推敲を重ねるという表現は日常生活でもよく使われ、苦労して手間ひまをかけて努力した、何度も見直し修正することを心掛けたというニュアンスを伝える使い方である。また、推敲の習慣という表現は、きめ細かく丁寧な作業をするという印象を与えることができる。すい‐こう〔‐カウ〕【推×敲】
推敲
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/22 13:58 UTC 版)
推敲(すいこう)とは、文章を何度も練り直すこと。
唐代、都の長安に科挙(官吏の登用試験)を受けるためにはるばるやってきた賈島は、乗っているロバの上で詩を作っていた。その途中、「僧は推す月下の門」という一句を口ずさんでから、「推す」のほかに「敲く」という語を思いついて迷ってしまった。彼は手綱をとるのも忘れ、手で門扉を押すまねをしたり、叩くまねをしたりしたが、なかなか決まらなかった。あまりにも夢中になっていたので、向こうから役人の行列がやってきたのにも気づかず、その中に突っ込んでしまった。さらに悪いことに、その行列は知京兆府事(長安の都知事)、韓愈の行列であったため、賈島はすぐに捕らえられ、韓愈の前に引っ立てられた。そこで彼は事の経緯をつぶさに申し立てた。優れた名文家であり、漢詩の大家でもあった韓愈は、賈島の話を聞き終わると、「それは『敲く』の方がいいだろう、月下に音を響かせる風情があって良い」と言った。そして、二人は、馬(韓愈)とロバ(賈島)を並べていきながら詩を論じ合った。
このことから「文章を書いた後、字句を良くするために何回も読んで練り直すこと」を「推敲」という。
外部リンク
推敲
出典:『Wiktionary』 (2021/08/13 02:40 UTC 版)
名詞
発音(?)
す↗いこー
翻訳
動詞
活用
翻訳
由来
『唐詩紀事』より、唐の詩人賈島が「僧は推す月下の門」の「推す」を「敲く」にすべきかどうか迷った末、韓愈の助言により「敲く」と改めたことから。
- (白文)賈島赴擧至京。騎驢賦詩、得僧推月下之門之句。欲改推作敲、引手作推敲之勢。未決、不覺衝大尹韓愈。乃具言。愈曰、敲字佳矣。遂並轡論詩。
- (訓読文)島擧に赴くに京に至る。驢に騎り詩を賦すに、『僧は推す月下之門』の句を得。推を改め敲に作さんと欲するに、手を引きて推か敲の勢を作(な)す。未だ決せざるに、覺えずして大尹韓愈を衝く。乃ち具に言ふ。愈曰はく、敲の字佳しと。遂に轡を並べ詩を論ず。
- (現代語訳)賈島が科挙を受けに京師に赴いた。(貧しい者が乗る)ロバに乗って詩を案じていると、『僧は推す月下之門』の句を得た。(さらに考え)『推す』を『敲く』にしてみてはどうかと、(手綱から)手を離して『推す』と『敲く』を模ってみた。決めかねているとき、大尹の韓愈の馬車に衝突した。賈島が事情を詳細に話すと、韓愈は(咎めないで)「敲の字が良い」と言った。そのまま、二人はたづなを並べ詩を論じ合った。
「推敲」の例文・使い方・用例・文例
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