国際単位系 単位と数値の記法

国際単位系

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/14 04:58 UTC 版)

単位と数値の記法

国際単位系 (SI) は、数値単位を記述するときの記法について詳細な規定を定めている[28][29]

単位の英語名称

単位の名称を英語で書く場合は、立体活字(立体)で表記し、普通名詞として扱う。文頭の場合もしくは表題のように大文字で書き始めるものを除き、単位の名称は単位記号が大文字で始まる場合でも小文字で書き始める。なお、°Cの単位名称の正しいつづりは「degree Celsius」であって、「degree celsius」ではない(Celsius は人名に由来するため大文字の C で始まる)。

  • 例:newton、pascal、weber、sievert

SI接頭語と単位の間には空白やハイフンを置かない。

個々の単位を並べて作った組立単位の名称は空白もしくはハイフンで区切る。

  • 例:pascal second または pascal-second

量記号と単位記号

物理量)の記号は斜体イタリック体)で表記し、通常は、ラテン語またはギリシャ語のアルファベット1文字である。大文字と小文字のいずれも使ってよい。量に関する追加情報は、下付き文字で、または、括弧の中に入れて、加えることができる。

  • 例: g = 9.80665 m/s2  : g斜体であり、重力加速度を表す量記号である。 

単位記号は、その前後の文章で使われている書体にかかわらず、立体ローマン体)で表記する。

  • 例:m = 239.6 g  : g は立体であり、グラム質量の単位)を表す単位記号である。

単位記号は小文字で表記する。ただし、単位記号が固有名詞に由来する場合は最初の文字を大文字にする。

量の性質についての付随情報は量記号に与えるものとし,単位記号に与えてはならない。

  • 例:最大電位差の表現  Umax = 1000 V とする。 U = 1000 Vmax は不可。

Unicode標準では、互換性の為に割り当てられている特殊な単位記号[30][31]ではなく通常のラテン文字を使うことを推奨している[32][33]

量の値の形式

数値は、常に単位の前に来て、必ず 1 字分の空白を使って数字と単位を離す。量の値は数字と単位の積として表され、空白は乗算記号 を表す(二つの単位の間に挿入される空白がそれらの積を表すのと同じである)。この原則は、セルシウス度と(SI単位ではないが)パーセントにも適用され、その単位記号である °C や % の前に空白を挿入する[34]。また、SI接頭語と単位記号の間に空白を置いてはならない。

  • 例: 123.4 kg、30.2 °C   
  • 不適例: 30.2°C(数値と単位記号の間に空白がない)  
  • 不適例: 30.2 ° C(「°」と「C」の間に空白がある)

この原則における唯一の例外は、平面角を表す単位である角度、及びであり、それぞれの単位記号である「°」(度)、「′」(分)、及び「″」(秒)に対しては、数値と単位記号との間に空白を挿入しない(度 (角度)#記法)。

  • 例: 30°28′8″

半角の空白(スペース)

数値と単位の間の空白については、SI国際文書の原文(仏語、英語)では、半角全角の概念がないので、単に空白(仏語 une espace, 英語 a space)と規定している[35]。これは日本語翻訳版でも同じである。ただし日本語文献上の実際の記法としては、この空白は、「半角の空白(スペース)」として運用されている[36][37][38]

数字の形式及び小数点

小数点(decimal marker)は、「.」(ピリオド)でも「,」(コンマ)でもよい。どちらを選ぶかは関連する文章やその言語の習慣によるものとする(小数点#二つの方式)。現在の日本では、「.」(ピリオド)を用いることがほとんどである。 数値が +1 と −1 との間にある場合、小数点の前には常に 0 を置く。

  • 例:−0.234
  • 不適例:−.234

桁の多い数を表す場合には、読みやすくするために、空白(space)を用いて3桁毎のグループに分けてもよい。ただし、グループの間に点「.」やカンマ「,」を挿入してはならない。 しかし、小数点の前または後の桁数が 4 桁のみの場合は、1 桁だけを分けるための空白は設けないことが一般的である。

  • 例:43 279.168 29
  • 不適例:43,279.168,29

このようなかたちで桁数をグループ分けするか否かは、それぞれの選択に委ねられる。設計図、財務諸表、コンピュータが読み取るスクリプト(scripts)などの特定の専門的分野では、このやりかたは必ずしも使われていない[39]。  表中の数字の場合、同じ欄の中で使用する形式は統一する。


注釈

  1. ^ 国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission、IEC)の前身である。
  2. ^ 2019年の改定は、2018年11月に開催された国際度量衡総会で合意に達し、2019年5月20日に発効した。この日が選ばれた理由は、5月20日が1875年にメートル条約が締結された日で「世界計量記念日」となっているためである。
  3. ^ 組み立て単位の定義において基本単位を記載する順序は、SI文書第8版(2006年)と同第9版(2019年)とで異なる。この意図は、対応する物理量の表式によるもので、物理学を基礎としたものである。ただし、一部の組み立て単位についてこの順序は絶対のものではない。
  4. ^ なお、この改訂案が議決された日は2018年11月16日である。
  5. ^ より正確な定義文はSI基本単位を参照。
  6. ^ 国際単位系国際文書における英語の綴りである。meterではない。
  7. ^ 独立した存在は、7つの単位そのものではなく、それらのもととなる7つの定義値(物理定数あるいは物質固有の特性値)である。
  8. ^ a b ただし、歴史的経緯による例外として、キログラム (kg)は、一貫性のあるSI単位でありながら、その名称・記号に接頭語のキロ (k)が含まれている。既にSI接頭語が付いており、キログラムにさらにSI接頭語は付けられない。もちろん、グラム (g; キログラムの1000分の1。一貫性を持たない単位)に対してはSI接頭語を付けてもよい。
  9. ^ units of the SIとも。
  10. ^ 倍量および分量接頭語
  11. ^ BIPMによる原表では当初はCODATA2014の数値が掲げられていたが、その後、CODATA2018の数値に差し替えられた。
  12. ^ 国際単位系国際文書における英語の綴りである。meterではない。
  13. ^ は計量法上は計量単位ではなく、の単位と位置づけられている。
  14. ^ 国際標準化機構(ISO)による ISO 1000 を翻訳した物。ISO 1000 は2009年に ISO 80000-1 に置き換えられ、JIS Z 8203 も2014年に ISO 80000-1 を翻訳した JIS Z 8000-1 に置き換えられた。

出典

  1. ^ 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版, pp. 122, 129–134.
  2. ^ 「図解入門 よくわかる最新単位の基本と仕組み」p67 伊藤幸夫・寒川陽美著 秀和システム 2004年8月10日第1版第1刷
  3. ^ a b 「図解入門 よくわかる最新単位の基本と仕組み」p.23 伊藤幸夫・寒川陽美著 秀和システム 2004年8月10日第1版第1刷
  4. ^ 佐藤文隆、北野正雄 『新SI単位と電磁気学』、pp.2-3、岩波書店、2018年6月19日、ISBN 978-4-00-061261-6
  5. ^ a b 佐藤文隆・北野正雄、「新SI単位と電磁気学」、p.148、岩波書店、2018-06-19、ISBN 978-4-00-061261-6
  6. ^ 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版, p. 91, 第9版への緒言.
  7. ^ 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版, p. 122.
  8. ^ 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版, p. 173.
  9. ^ 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版, p. 175.
  10. ^ SI Brochure: The International System of Units (SI)
  11. ^ 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版, p. 93, 本文に関する注釈.
  12. ^ 国際単位系 (SI) は世界共通のルールです SIパンフレット、産業技術総合研究所 計量標準総合センター 計量標準普及センター 計量標準調査室、2023年3月、最終の第8ページ下段
  13. ^ Previous editions of the SI Brochure SI Brochure: The International System of Units (SI), BIPM
  14. ^ SI文書第9版(2019)日本語版及び関連資料”. 国際単位系(SI)第9 版(2019)日本語版. 国立研究開発法人産業技術総合研究所. p. 98. 2023年8月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年10月4日閲覧。
  15. ^ a b The InternationalSystem of Units (SI) 9th ed. Text in English 2.2 Definition of the SI, p.127
  16. ^ 国際単位系(SI)第9版(2019)要約 日本語版 [リンク切れ]、計量標準総合センター、産総研、経済産業省。表1 SI の七つの基本単位
  17. ^ 『国際単位系(SI)第9 版(2019)日本語版』国立研究開発法人産業技術総合研究所 計量標準総合センター、2020年3月。 
  18. ^ 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版, pp. 99–103.
  19. ^ 国際単位系(SI)国際文書第8版(2006) p.15
  20. ^ 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版, p. 104, 表3.
  21. ^ a b 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版, p. 105.
  22. ^ 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版, p. 148.
  23. ^ 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版, p. 106しかし、接頭語が SI単位と共に使われる場合、接頭語によって、1 以外の係数が導入されるため、結果として生ずる単位は一貫性を持たないものとなる。
  24. ^ 国際単位系(SI)国際文書第8版(2006) p.16下欄訳注、* 訳注:第2章で述べる SI基本単位(表1),そのべき乗の積からなる SI組立単位(表2),固有の名称と記号を与えられた SI組立単位(表3),及び SI基本単位とSI組立単位のべき乗の積からなる SI組立単位(表4)のことを本文書では「一貫性のあるSI単位」と呼ぶ.第3章で述べる SI接頭語(表5)を付した単位は,SI単位ではあるが一貫性のある単位ではない.
  25. ^ 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版, p. 114.
  26. ^ The International System of Units(SI) 9th edition 2019 Bureau International des Poids et Mesures, 2019-05-20, pp.145-146
  27. ^ unified atomic mass unit The NIST Reference on Constants, Units, and Uncertainty. US National Institute of Standards and Technology. 2019-05-20. 2018 CODATA recommended values
  28. ^ The International System of Units (SI) 9th ed. Text in English 5.4 Rules and style conventions for expressing values of quantities, pp.149-150
  29. ^ 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版, pp. 116–120.
  30. ^ AltCodeUnicode.com ALT Codes for CJK Squared Latin Abbreviations
  31. ^ CJK Compatibility
  32. ^ The Unicode Standard, Version 14.0 Chapter 22 Symbols p.839 p.865 p.896
  33. ^ Unicode Technical Report #25 UNICODE SUPPORT FOR MATHEMATICS p.11
  34. ^ 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版, p. 118.
  35. ^ SI国際文書(仏語、英語) (仏語)p.38 5.4.3 Écriture de la valeur d’une grandeur, (英語)p.149 5.4.3 Formatting the value of a quantity
  36. ^ 理科年表2022、p.372、ISBN 978-4-621-30649-9、2021-11-30
  37. ^ 単位や学名等の記載方法について JAB NL512:2015 p.3/9、公益財団法人 日本適合性認定協会、2015-10-01(第1版)
  38. ^ 物理量・数値・単位と分率の表記についての提言 岩本振武、ぶんせきの泉、p.342、ぶんせき、2017年8月
  39. ^ 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版, p. 119.
  40. ^ 「図解入門 よくわかる最新単位の基本と仕組み」p24 伊藤幸夫・寒川陽美著 秀和システム 2004年8月10日第1版第1刷






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