個体 生理的な面から

個体

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/07 00:56 UTC 版)

生理的な面から

基本的な生命活動、たとえば呼吸や、物質合成、エネルギー代謝遺伝情報の複製などは細胞ごとに行われている。個体としては、細胞ごとの活動を維持し、それを全体としてまとめる働きが必要となる。

具体的な内容としては、細胞間での栄養分や老廃物のやり取り、それらの摂取や排出の取りまとめがそのひとつである。これは、動物の場合には消化系排出系などの器官があるが、それらの間を橋渡しするのが循環系の役割である。植物の場合には維管束系がその役割を果たす。

もう一つは、体内の各部分の働きを調節し、外部や内部からの刺激に対して適切に反応するための、情報伝達の仕組みである。動物の場合、これは神経系内分泌系の二つによって実現されている。植物の場合、ホルモンがこの役割を果たしているが、詳細はいまだに十分に解明されていない。

動物、植物以外の生物においては、これらの仕組みは明快ではなく、特定の器官や組織などを見いだしがたい。菌類においては、細胞間に連絡があり、物質や核などが行き来することが示されている。変形菌の変形体においては、非常に速度の早い原形質流動が、往復運動を行うことが知られているが、これは変形体全体での物質の移動を可能にするためであるとも考えられる。

なお、動物では神経系が内分泌系をも支配する傾向がある。また、高等な動物ほど神経系の前方にまとまったが形成され、機能が集中する傾向がある。特に脊椎動物はその傾向が強い。このため、このような動物ではが個体全体を代表する立場を取る。脳死をもって人の死と見なすのもここに係わるものである。

生殖の観点から

生殖は新しい個体を形成することである。

生命現象のうちで、細胞単位では説明できないのが生殖である。単細胞生物では細胞の増加が個体の増加につながるが、多細胞生物では必ずしもそうでない。特定の細胞による、特定部分での細胞分裂と分化によってしか個体の増加は起こらないからである。そのような部分は生殖器官と呼ばれ、その細胞は生殖細胞と言われる。有性生殖においては、配偶子と呼ばれる特定の細胞が、言わば個体を代表して生殖に与かる。無性生殖の場合、体細胞の一部が、言わば個体発生を再現することで新たな個体を形成する。

遺伝学的観点から

一つの個体は、一つの生殖細胞から、体細胞分裂によって細胞数を増やして生まれたものであるから、一つの個体を形成するすべての細胞は、同一の遺伝情報を持つ。ただし、さまざまな例外がある。免疫に関する情報が書き戻される例、レトロウイルスの感染などはセントラルドグマの逆流である。また、体細胞分裂が不等に行われた場合や、DNA合成時のアクシデントなどによる、細胞レベルの突然変異も起こり得る。その場合、体組織の一部に異常を生じる場合や、ガン化する可能性も考えられる。生殖細胞に突然変異が生じた場合のみ、子孫にその形質が現れる。

体内において生じた異質な遺伝情報を持った細胞が体内に混在する状態をモザイクと言う。昆虫では、体の左右で性別が異なる雌雄モザイクという現象を示す個体がまれに発見され、話題となることがある。これに対し、外部から異質な細胞が導入され、その結果として個体内に遺伝情報を異にする細胞が交じる状態が生じたものをキメラという。

同一個体内の細胞は、原則的に同一の遺伝情報を持つが、逆は成立しない。無性生殖があり得るからである。しかし、体細胞分裂の回数にはある限界があるという考えがある。ゾウリムシなどでもそのようなことが言われるし、哺乳類のクローンに関しても、全くの新生児とは考えられないというものもある。それらは染色体にあるテロメアのふるまいにかかわる現象ともいわれ、これが個体の寿命に関して何等かの役割を演じている可能性が指摘されている。








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