変形体とは? わかりやすく解説

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へんけい‐たい【変形体】

読み方:へんけいたい

変形菌栄養体粘液アメーバ多数接合して細胞壁のない原形質の塊となったもの。アメーバ運動行い、形を変えながら移動する


変形体

同義/類義語:変形多核体
英訳・(英)同義/類義語:plasmodia, plasmodium

粘菌類アメーバ状細胞多数融合してできる多形態

変形体

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/05 16:29 UTC 版)

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樹上を移動する変形体。遠目には花が咲いているように見える。

変形体(へんけいたい)というのは、変形菌類の栄養体のことである。変形運動をしながら、微生物等を捕食して成長する。

概説

変形体 (Plasmodium) は、変形菌類が活動、成長している時の姿である。変形しながら移動する裸の原形質である。変形菌の名はここに由来する。また、別名の粘菌というのは、運動時に粘液を分泌するためと言われる。その様子がアメーバに多少とも似るため、粘菌アメーバとも呼ばれることがある。

裸の原形質が大きなまとまりで存在することで、生物界では他に例の少ない存在である。そのため、モデル生物としても使われる。特に培養法が確立したモジホコリPhysarum polycephalum)が専ら使われている。

形態

よく発達した変形体は、偏平に広がり、大きいものでは差し渡し数十cmから1mを越える。形としては、先に行くにつれて枝分かれして細くなった管状構造を基本とする。枝の先端は細かく分かれ、それぞれの先からは原形質が、ちょうどホースの口から粘り気のある液体を吹き出したように扇型に広がる。この広がりの全体は、あたかも熱帯のグンタイアリの群の行軍形態に酷似する。ちょうど、グンタイアリが獲物を探索する前線が変形体の扇型の部分に相当し、女王アリや幼虫が守られているビバーク地点が、変形体の扇の要の部分に相当する。

太い管の表面にはゴミが着いている場合もある。この管は変形体の表面から分泌されるポリガラクトースを含む粘液で包まれており、これは、変形体を乾燥などから守る役割を果たしていると考えられる。変形体の移動した後にはこの粘液が残るので、通った後がしばらくはよく分かる。

変形体の内部には多数のミトコンドリアが存在し、それらは原形質中の顆粒と共に細胞全体にわたって流れて行く。いわゆる多核体である。核は、多いものでは億を越えると言う。

変形体全体としては、時速数cm程度の移動速度である。これは、原形質流動が往復運動をするため、全体の移動もわずかに往復運動をしながら行われるので、原形質流動の速度そのものでは移動できないからである。

原形質流動

変形体を構成する管を顕微鏡下で観察すると、その内部が非常に活発に流れているのが観察できる。いわゆる原形質流動であるが、他の多くの生物に見られる原形質流動に比べ、格段に流れが速い。その流速は秒速で1mmを越えるという。普通の植物細胞では0.05mm程度、特に速いシャジクモでも0.1mmである。顕微鏡下で見られるそれは、原形質流動というより、多細胞動物の血液の流れを見ているような気になる。

また、変形体の原形質流動の特徴として、周期的に流れの方向が変わる現象が見られる。ある瞬間に一方に流れているものは、観察を続けると、次第にゆるやかになって止まってしまい、その後、これまでとは逆の方向に流れ始める。一方向の流れは、約30秒から1分位ずつ続く。

変形体は朽ち木などの内部に潜り込んでいることも、表面に広がっていることもある。朽木や土壌の内部に潜り込んでいるときには、変形対の全体は立体的な網目状構造をとる。

変形体に対して迷路学習の様な実験が行なわれた例もある。人工的に迷路を作り、その中の2箇所に餌を置くと、変形体は迷路の中の2箇所の餌場を結ぶ最短距離を結ぶ原形質のひも状の形態をとる。この実験は変形体が複雑な隙間構造の中で食物を得る最適形態を作り出す機能を示していると考えられ、そのために変形体がいかなる情報処理を行っているか、研究が行われた。

変形体の型

変形体にも種によって様々なものがある。大きく発達する種もあれば、ごく小さいものにしかならない種もある。おおよそ以下のような三つの型を認める。

原変形体 protoplasmodium
微小な変形体。脈の構造は作らず、原形質流動の往復運動は見られない。二分裂で増える。ハリホコリ目やコホコリ目に見られ、普通は一つの変形体から子実体が一つだけ生じる。
透明変形体 aphanoplasmodium
初期には原変形体の型に近いが、次第に成長して網状になる。透明で薄く、粘液の鞘を持たない。ムラサキホコリ目のものに見られる。
可視変形体 phaenoplasmodium
先に述べたような典型的な変形体。多くは色素を含むので、見つけやすい。モジホコリ目に見られる。

変形菌以外の変形体

変形体はほぼ変形菌に独自の構造である。しかし、それ以外の生物にも、やや似た構造を形成するものがある。裸の原形質が多核体の状態にあって、アメーバ運動を行うようなものは変形体と呼ばれる。そのようなものを形成するのは、変形菌類のほかに、ネコブカビ類やボウフラキンなどに見られる。いずれも細胞内に寄生する生物である。

それ以外に、実際には変形体と同じ仕組みは持たないものの、やや似通った構造を形成するものがある。それらは、時には変形体に相同のものと見なされ、それらが変形菌に類縁があるという判断の根拠とされたこともある。

細胞性粘菌は、単細胞のアメーバの姿で摂食して分裂増殖する。したがって変形菌のような変形体は形成しない。しかし、ディクチオステリウム類の場合、単細胞のアメーバが集合する際、アメーバが流れを作って集まる姿が変形体に比せられたことがあった。これを偽変形体(pseudoplasmodium)と呼ぶ。これはごく一時的な姿であり、集合の後にはナメクジ状の移動体になる。

ラビリンチュラ類は網状につながった細い糸上の構造の上を紡錘形の細胞が滑って行くものであるが、この網状の構造全体を変形体に相同と見なし、これを網状変形体(net plasmodium)と呼んだことがあった。実際には網を構成しているのは細胞外の分泌物であり、全く異なるものである。

注釈・出典


変形体

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/13 02:10 UTC 版)

変形菌」の記事における「変形体」の解説

アメーバ細胞または鞭毛細胞配偶子としても機能し対応する交配型細胞合体して複相接合子となる。多く変形菌では、交配型多型の1遺伝子座決定されているが、複数遺伝子座からなる交配型をもつものもいる (モジホコリなど)。合体する配偶子の間に形態大きさ差異はなく、同形配偶子である。 接合子アメーバ細胞となり、細胞質分裂伴わない核分裂繰り返し、多原形質塊である変形体 (plasmodium, pl. plasmodia) になる (右図3a, b)。変形体は細胞壁もたないが、しばしばガラクタンを含む粘液鞘 (slime sheath) で覆われている。変形体中では、多数がほぼ同調して核分裂する。結果として、変形体は億単位をもつこともある。この核分裂閉鎖型 (核膜維持される) であり、には中心体存在しない。変形体はふつう目立つ原形質流動示し、しばしば規則的な流動方向逆転見られるこのような原形質流動は、アクチン-ミオシンカルシウムイオン関与している。 変形菌見られる変形体は、以下の3型類別される。ただし、中間的なもの見られる可視変形体以外は、野外確認するのは難しい。 原変形体 (プロトプラスモディウム; protoplasmodium, pl. protoplasmodia)成長して微小であり、の数も少ない。網状構造規則的な原形質流動見られない。ふつう1個の子実体形成する。コホコリ属 (コホコリ目)、ハリホコリ属 (ハリホコリ目)、クビナガホコリ属 (クビナガホコリ目) などに見られる。 透明変形体 (アファノプラスモディウム; aphanoplasmodium, pl. aphanoplasmodia)成長すると、細い原形質からなる粗い網状構造となる。原形質均質規則的速い原形質流動を示す。薄く、色は透明、子実体形成直前着色する粘液鞘を欠く。ふつう分割して子実体になる。ムラサキホコリ属やカミノケホコリ属 (ムラサキホコリ目) などに見られる可視変形体 (ファネロプラスモディウム; phaneroplasmodium, pl. phaneroplasmodia) (右図3a-c)成長すると、網状縁辺扇形構造となる。大型であり、幅が 1 m 以上になるものもいる。原形質顆粒状規則的速い原形質流動を示す (秒速 1 mm 以上に達すことがある)。色はふつう白色から黄色、ときにオレンジ色褐色赤色灰色緑色青色など。色は環境条件で変わることもある。厚い粘液鞘で覆われる。ふつう分割して子実体になる。 変形体は基質上を匍匐し (時速cm達することもある)、負の走光性グルコースなどに対する正の走化性を示す (右図3c)。変形体の通った跡には、粘液質残されることがある。若い変形体は、同じ遺伝型の他の変形体と融合して成長することがある。また変形体を分断しても、それぞれ独立した変形体となる。変形体は、細菌酵母微細胞子生きていない有機物片、さらに変形菌アメーバ細胞鞭毛細胞などを食作用によって取り込み細胞内消化する。また少なくとも一部変形菌は、消化酵素分泌してキノコなどを細胞外消化し、可溶性有機物吸収することができる。モジホコリなどの変形体はオートミール用いて培養できるが、この際に変形体はオートミール細胞外消化していると考えられている。 乾燥高温低温など不適条件になると、変形体は菌核 (sclerotium, pl. sclerotia) とよばれる構造転換する (右図3d)。菌核は、厚い壁で囲まれ小さな (直径 1025 µm) 多核細胞 (spherule, macrocyst) の集合体である。菌核耐久構造であり、長期間休眠することができる (ただし一般的に胞子ほど長期間ではない)。環境好転すると、菌核発芽して融合し、再び変形体になる。

※この「変形体」の解説は、「変形菌」の解説の一部です。
「変形体」を含む「変形菌」の記事については、「変形菌」の概要を参照ください。

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