黄熱とは? わかりやすく解説

黄熱

黄熱はサルヒトおよび宿主とし、によって媒介される疾患である。ヒト感染する致命率は高いが、回復する終生免疫を残す。現在でもアフリカ南米などで地域的流行発生しており、旅行者罹患することもある。

疫 学
北緯15 度南緯15 度挟まれアフリカ熱帯地方には黄熱の浸淫地帯広がっている
(図1)が、例外ジブチソマリア北部マダガスカルなど媒介Aedes )を駆逐した都市である。アメリカ大陸熱帯地方では、北はパナマから南緯15 度に至るまで広がっており(図2)、雨季発生が多い。特にアマゾン川流域熱 帯雨林接した国々地域流行起こし毎年のように患者発生があり、旅行者感染事例もある。患者発生数は、南米アフリカ合わせて年間20 万人といわれている。WHO が把握している患者数表1如くであるが、必ずしも正確な患者数把握していない。アジア太平洋地域には黄熱は存在しないが、少なくとも都市部には、媒介Aedes aegypti生息するため伝播状況整っている地域もある。
第二時世界大戦後大きな流行としては、西ナマ始まりメキシコ終息し中米流行1949~1956)、トリニダード(1954)、エチオピア19601962)、セネガル(1965)、ナイジェリ ア1969)、ブルキナファソ19691983)、アンゴラ(1971)、シエラレオネ1975)、ガーナ197719791983)、ガンビア19781979)などの流行がある。また、最近5年間で流行をみた 国はボリビアブラジルコロンビアペルーセネガルリベリアガーナコートジボアールなど である。

黄熱
黄熱

1.アフリカ大陸における黄熱の浸淫地域(WHO 資料

図2. 南アメリカにおける黄熱の浸淫地域(WHO 資料


1. 黄熱患者数(WHO 発行 Weekly Epidemiological Records より)

年次

患者数

4,336

2,712

295

393

1,439

974

424

190

303

208

-

死亡者数

410

751

102

117

491

247

223

89

117

101

-

病原体
黄熱は、日本脳炎と同じフラビウイルス属ウイルスによってひきおこされる
黄熱の主要な脊椎動物宿主サルヒトである。アフリカでは主にアフリカミドリザルが感染するが、中南米では多種類のサルリスザルマーモセットホエザルクモザルなど)が感染し感染した場合それらのサル致命率は高い。
媒介動物であり、また保有宿主でもある。霊長類嗜好性Aedes 属(主としてアフリカ)、Haemagogus 属(主としてアメリカ大陸)などのいろいろな種が関与するが、Aedes aegypti主たるのである。したがって日本脳炎とは媒介異なる。節足動物中でのウイルスの増殖には4~10日要しそれ以前には感染力はない。


臨床症状
潜伏期通常3~6日である。偶発的な実験室感染では、1013 日とより長い潜伏期の例が報告されている。
軽症黄熱】発熱頭痛が突然出現するが、鼻カタル症状のない点を除けばインフルエンザ類似している。症状頭痛発熱悪心・嘔吐結膜充血蛋白尿などであるが、1 ~3 日回復する
重症黄熱】感染期、緩解期、中毒期の3 段階に明確に分けられる臨床経過特徴である。緩解 期はわずか数時間程度である。発病頭痛眩暈高熱で突然はじまり、第2 病日までにはFaget の徴候高熱にもかかわらず脈拍数48 ~52/分の徐脈”が現われる。黄熱の古典的3徴候は、 黄疸出血鼻出血歯肉出血下血子宮出血)、蛋白尿(高度の蛋白尿であっても浮腫腹水 をきたすことは稀)である。その他の症状として、嘔吐結膜充血顔面紅潮せん妄などがある。
検査所見】病初期には進行性白血球減少主として好中球減少)がみられるが、第10病日までには正常化する血小板数は正常または減少する黄疸がある症例では凝固時間プロトロンビン時間部分トロンボプラスチン時間などが顕著に延長する総ビリルビン直接ビリルビン)の増加GOT顕著な増加(特に黄疸例)もみられる脳脊髄液は正常である。

病原診断
ウイルス分離発症後3日以内採取され血液検体から最もよくなされる検体培養細胞またはオウカ胸部接種するか、あるいはPCR 法用いて遺伝子検出する血清学的検査としては、ペア血清用いたプラック減少中和試験、黄熱IgM 抗体検出などが特異的な検査法である。ただし、中和試験判定時間がかかる(約1週間)のが欠点である。

治療・予防

黄熱

治療としては対症療法のみである。発病すれば致命率20%と高い。したがってワクチン接種による予防が最も重要である。
黄熱ワクチンワクチン株は、Max Theiler が、1927 年にAsibi という名の患者から分離され黄熱ウイルス種々の培養初代細胞頻回継代し、最終的に胎児胚細胞増殖させて弱毒化したものである。これを発育鶏卵接種し弱毒生ワクチン作られる実際に日本使用されているワクチン米国Connaught 社から輸入したのである。これは凍結乾燥品であり、使用直前添付生理食塩水溶解して0.5ml を皮下注射する。国内黄熱ワクチン接種が行われている施設表2 のごとくである。

表2.

黄熱ワクチンは、歴史的世界的に非常に副反応少な安全性の高いワクチンとして知られている。しかし、発育鶏卵接種し作られているので、卵アレルギーでは禁忌である。また、2001年CDCから7例の重い副反応(6例が死亡)について、2001年には雑誌ランセット」にやはり4例(3例は死亡)の重大な副反応に関する報告なされた臨床症状発熱頭痛筋痛症、肝機能障害呼吸不全意識障害錯乱)、多臓器不全などであった
黄熱の汚染地域有する国に入国するときは、ワクチンの接種証明書求められることがある。現在、接種要求される国は表3 のごとくであるが、最新情報渡航前国内検疫所表2)に問い合わせることが勧められる

表3. 国内に黄熱汚染地域をもつ国(2002 年1月17日現在)


アフリカ

アンゴラベナンブルキナ・ファソカメルーンガボンガンビアガーナギニアリベリアナイジェリアシエラレオネスーダンコンゴ民主共和国旧ザイール)、コートジボワール

南アメリカ

ボリビアブラジルコロンビアエクアドル仏領ギアナペルーベネズエラ


感染症法における取り扱い2003年11月施行感染症法改正に伴い更新
黄熱は4 類感染症定められており、診断した医師直ち最寄り保健所届け出る報告のための基準以下の通りとなっている。
診断した医師の判断により、症状所見から当該疾患疑われ、かつ、以下のいずれか方法によって病原体診断血清学診断なされたもの
病原体検出
 例、ウイルスの分離など
病原体遺伝子検出
 例、血液血清からのPCR 法による検出など
病原体対す抗体検出
 例、黄熱IgM 抗体検出
 ペア血清用いたプラック減少中和試験など

国立感染症研究所ウイルス第一部 高崎智彦





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